ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第04章・03話

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5光秒かなたの艦隊戦

「やれやれ……人類って生き物は、千年も経っても戦争をやっているんだな」
 漫画やアニメで使い古された、お決まりの文句だ。

「他の動物さんたちは、戦争なんてしませんからね」
 ウンウンと納得する、小動物みたいな雰囲気のセノン。

「まあ人類だけが、お互いの勢力争いを『戦争』って呼んでるに過ぎないケドね。他の動物だって縄張り争いはするし、同族同士で殺し合うこともあるさ」

『なるホド……おもしろい考え方をされますね、艦長は』
 フォログラムの、ベルダンディは言った。

「でも、因果な話だな。イーリアス(古代ギリシャの叙事詩)じゃ、アキレウスとパトロクロスは親友同士なのに、この宙域じゃ戦争をやっているなんて」

『わたしには、人間が戦争をする意義は理解できません。現在の戦争の首謀者は、国ではなく巨大企業であり、双方の戦力は艦載機だけでなく戦艦も空母も無人なのです』

「無人機同士で戦ってるのか。それ、マジで戦争やる意味あるの!?」
『わたしには、理解できないと言ったばかりですが……』
「ああ、ゴメン。でもそれちょっと、オレにも解らない」

『現在も、戦闘が行われている模様です。映像を、ご覧になられますか?』
「時間の無駄な気もするが、今の時代の艦隊戦とやらを見ておくか……」
 するとスクリーンに、巨大な戦艦や空母が航行している映像が映し出された。

『主に緑色の戦艦や空母が、小天体であるアキレウスが主星のグリーク・インフレイム陣営の戦力となります。艦載機の色は赤ですね』

「それじゃ、もう一方の蒼い戦艦や空母が、パトロクロスが主星のトロイア・クラッシックってワケか。こっちの艦載機の色は、黄色なんだ。しっかし相当ハデなカメラアングルで、撮影されてるな?」

『専用の撮影用無人機からの、映像です。戦っているのはどちらも、軍事産業が主体の企業ですので、顧客へのアピールも含めて撮影されております』

「兵器の、プロモーション映像ってワケか?」
『はい。彼らが製造する艦艇を入手したいと考えている顧客は、太陽系中におりますから』

「それも、歪(いびつ)な話だよな。それで戦争に巻き込まれでもしたら、どうする気だ」
「戦争になんか、巻き込まれたくはないですよ。おじいちゃん!」
 栗色の髪の少女が言った。

「ちなみにこの戦闘空域と、この艦とはどれくらい離れてるんだ?」
『およそ、5光秒といったところでしょうか』

「……え?」
 ベルダンディは、とても解りづらい表現を用いる。

「確か、一光秒が約30万キロメートルだから、5光秒だと大体150万キロメートルか。地球の感覚で言えば、月までの距離が38万キロだから、かなり離れているように思えるが?」

『実際に、なんの影響もないと言っていいくらいには、離れてます』
「ほらな。心配ないってさ、セノ……どうした?」

 『世音(せのん)・エレノーリア・エストゥード』は、スクリーンを指さしていた。

「見てください、おじいちゃん。戦争……終わっちゃったみたいです」
「そんなハズ……?」
 慌ててボクも、スクリーンを見上げる。

「ホ、ホントだ。両方の陣営の戦艦や空母が、砲撃を止めちまってるぜ!?」
「やられた艦載機も、プカプカ漂ってる……」
「まだ開戦して間もないってのに、どういうコト!?」

 真央、ヴァルナ、ハウメアも、理解が追い付いていない様子だ。

「ねえパパ、見て見てェ!」
 ボクの周りに集まってくる、六十人の娘たち。

「緑の戦艦も、蒼い戦艦も、一緒になって……」
「どっか行っちゃうよ?」

「……一体なにが起きてやがる!? 説明しろ、フォログラム!!」
 プリズナーも、苛立ちをベルダンディへとぶつける。

『可能性として、考えられるのは……』
「戦艦や艦載機を制御しているコンピューターが……乗っ取られた?」

 ボクの答えを聞いたフォログラムの少女は、コクリと頷いた。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第03話

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ライブハウス

「先生……見ちゃいましたぁ?」
 柔和な笑顔とは裏腹に、なにやらドス黒いオーラを纏っている卯月さん。

「み、見てない! 一瞬だったからな。アハハハ……」
「ホントですかあ? ウソついてません?」
「そんなコト言って、ホントは見たんじゃ?」

「や、やだな。そんなワケ無いじゃないか」
 花月さんと由利さんにも突っ込まれ、思わず目が泳いでしまう。

「そんじゃ先生、ここにおるみんなの下着の種類と色、言ってみてみィ?」
 真っ赤に茹であがったツインテールの女の子が、階段の上から問いかける。

「えっと確か、卯月さんが白と薄いグレーの縞々で、花月さんがピンクに白のフリル、由利さんがメロン色のレース、キアが純白の子供っぽいパンツに、ヘンなキャラがお尻にプリントされた……あッ!」

 『時すでに遅し』ということわざが、脳裏に浮かんだ。

「なにが『あ!』やねん。めちゃめちゃバッチリ見とるやんけ!」
 教室では口数も少なく、大人しくボクの授業を受けていた女の子が、すごい剣幕で怒っている。

「よ~もそんなんで、見とらん言えたなあ。ほんまスケベな先生やで!」
 関西弁の言葉だけでなく、キアの両脇の赤い髪の毛も激しく揺れて、しっかりと怒りをアピールする。

「あ、でもキャンさん。そろそろライブの時間なんじゃ?」
 卯月さんに指摘されて、慌てて左手の内側の時計を覗き込むキア。

「ホンマやぁッ! 急がんとアカン。それもこれも、先生がけったいな教室始めるからやで。おかげでこっちは、午前中しかライブ入れれんようになってもうたんや!」

「え? でも、土日は教室も休みだから……」
 そう返した言葉の先には、赤い髪の少女はすでに居なかった。
ギターケースであろう大きな荷物を抱え、何度も転びそうになりながら駆けていく。

「キャンさんのバンド、まだ駆け出しだから土日は高くて借りられないんです」
「そうなんだ。なんて名前のバンド?」

「『チョッキン・ナー』です」
「へ? ちょっきん……これはまた、かなり個性的な名前のバンドだな」
「先生もライブ見れば、キャンさんの面白さがわかりますよ」

 ボクたちは、キアの駆けて行った方向に歩き出すと、すぐに古びた雑居ビルの地下へと続く階段が目に入った。

「マイナーなライブハウスって地下にあるイメージだったケド、まさにその通りの場所だな。これじゃ、大雨とか降ったら浸水しちゃうんじゃ……」
「おかしな心配してないで、さっさと入ってください!」

 三人の女子高生にせかされて、少しカビ臭い階段を降りると、扉の向こうから音が漏れ聞こえる。

「このドアを開けると、爆音が……」
 予想していた通り、すべての言葉がかき消される。

 スマホをかざして中に入ると、髪をオレンジに染めた長身の男性ボーカルが、ステージの上で激しく頭を振っていた。

 隣で、卯月さんたちが何かを必死にアピールしていたが、激しい音に邪魔されて全然聞こえない。
恐らく、キアのバンドのコトだと思われるので、テキトーに相槌を入れる。

 今さらだが、赤いツインテールの彼女の名前は、可児津 姫杏(かにつ きあ)。
姫にあんずと書いてキアと読むのだが、キアンからキャンになったのだろうと推測する。

「お、いよいよキアのバンドが出てくるのか?」
 前のバンドの演奏が終わると、自分の声のボリューム調整が上手くいかず、ついつい大声を出してしまう。

 するとステージ横から、キアとバンドのメンバーたちが駆け出してきた。
キアのギターは、有名なカニ料理専門店の巨大な動く看板みたいに、リアルに美味しそうに装飾されている。

「ハイ、どうも~。キャンでぇす! 今日は、小汚いライブハウスに足を運んでくれて、ホンマありがとな~」
 彼女はしょっぱなから、ライブハウスの笑いを取っていた。

 

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ある意味勇者の魔王征伐~第7章・1話

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赤毛の少女

 その日……舞人は、体の上に妙な圧迫感を感じて目が覚めた。

 辺りを見ると、そこは長年慣れ親しんだ教会のベットで、一人の少女が自分の眠っていたかけ布団の上で、気持ちよさそうに寝入っている。

 幼馴染のシスター、パレアナではなかった。
ルーシェリアより、もっと小柄なのだ。

「キミは誰だい? ……ボクを看病でもしてくれていたのかな?」
 蒼髪の少年は、紅いボサボサ髪の少女の肩を揺すって起こした。

「……オ、オウ? 目が覚めたか……舞人! 体は大丈夫か?」
 見た目が十歳程度の少女は、馴れ馴れしく少年を呼んだ。

「随分とワイルドな感じの女の子だなあ。パレアナの知り合いの子かな?」
 舞人は、赤毛の少女をヒョイッと抱き上げる。

「そう言や礼がまだだったな。助けてくれて、サンキューな……舞人!」
 少女は、やんちゃな笑顔でニカッと笑った。

「……へっ?」
 舞人の脳裏に段々と、サタナトスと刃を交えた時のコトが思い浮かんでくる。

「いやぁ~参った参った。イティ・ゴーダ砂漠で魔王と戦ってたら、いきなり後ろからバッサリだもんな~? サタナトスってヤツの剣は、『人を魔王に変えちまう』みてーだが……オメーのお陰で大量殺戮者にならずに済んだぜ!」

 蒼髪の少年は、抱き上げた『赤髪の少女』を見て、額に脂汗を浮かべた。

「……あの……もっ……もしかして…『シャロリューク』さん……ですかぁ?」
 舞人は、少女が否定してくれるコトに願いをかけて聞く。

「おうよ!」
 けれども彼の耳は、最悪の返答を脳に伝えてきた。

「ゴメンなさい! ゴメンなさい! ゴメンなさい!」
 頭を抱え、天を仰ぐ蒼い髪の少年。
「ああ……ボクはなんとゆーコトを、してしまったんだあぁぁーーーーッ!?」

 舞人は教会の床に頭を擦りつけて、ひたすら謝る。
「シャロリュークさんを、こんな姿にしてしまって! 人類の希望であり、救国の『赤毛の英雄』をよりにもよって、いたいけな少女の姿にィィィーーーー!?」

「落ち着けって、舞人。名誉も肩書きも、命あってのモノダネだ。それに『女の体』ってのも、意外と悪くは無いのかもな? ……胸はぺッタンコだし、背も小っちゃいケドよ」
 少女にされた当の本人は、意外にもあっけらかんとしている。

「……ああ……ボクは『間抜け』どころか『大・大・大間抜け』だああぁぁ!?」
 けれども少年は、自分が犯した罪の大きさに押し潰されそうになっていた。

「せっかく『女の体』になったんだしよ。上手く利用しね~手はねえよな、舞人!」
「……ふえ?」
 舞人には、赤毛の英雄の言葉が理解出来ない。

「今日はニャ・ヤーゴの城で、あのクソガキ……サタナトスの討伐に向けた会議が、開かれるらしいんだぜ。ヤツを野放しにしておくのは、危険すぎっからな」
「……そ、そうなんですか……?」戦いのあとの記憶が無い、舞人。

「オメーは戦いで疲れて眠ってたみてーだから、リーセシルたちが気を遣って起こされなかったが……流石に目覚めたとあっちゃ、出席しないワケにもいかんだろ?」

「は……はい……」舞人は、憂鬱に返事をする。
(この教会に、プリムラーナ将軍やカーデリアさんが尋ねて来たときも、メチャクチャ緊張したもんなあ。でも、流石に断れないよなあ?)

 赤毛の少女は、足取りの重い舞人を引き連れ、教会を出るとニャ・ヤーゴ城へと向かった。
スタスタと城門をくぐり抜けようとするが、城兵につまみ出されてしまう。

「あの……シャロリュークさんが、その姿になったってコトは……?」
「言ってね~よ。自分で言うのもなんだが、オレって影響力が大きいからな」
 それはそうだろうと、心の中で思う舞人。

「まあ、ルーシェリアって娘の意見なんだが……な。今の人類にとって、英雄ってのは心の拠りどころみてーだからな」

「ルーシェリアが……」
 舞人は、彼女が色々と気を遣ってくれているコトに感謝した。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第02話

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可児津 姫杏

 最初は熱でフラついていたが、ドラッグストアで風邪薬を買って炭酸水で流し込むと、気分も幾分か良くなり腹も空いてくる。

「あ、お腹が鳴りましたね。先生も朝はまだなんでしょ?」
「気分が悪くて、食べる気にならなかったからね」
「じゃあ、ハンバーガーでいいですか? ここ、スマフォクーポンが使えるんですよ」

「ああ、ぜんぜん構わないよ」
 まだ次にアパートも決まっていない現状では、ハンバーガーショップのお値打ちなモーニングセットは、むしろ有難かった。

 ボクがさっそくハンバーガーを頬張っていると、女子高生たちはよくありそうな限定メニューのハンバーガーを、スマホで撮影してSNSにアップしている。

 正直に言えばボクは、一度見た単語や文章などは、覚えようと思えば一瞬で覚えてしまうのだが、ことコンピューターやSNSに関しては致命的に覚えられなかった。
スマホも、同じメーカーのシリーズを使い続けている。

 ちなみにだが、SNSがソーシャル・ネットワークサービスの略語であることも覚えているし、動画のストリーミング配信の仕組みなんかも知っている。

 ようは、スマホのどのボタンを押せばどうなって、どこをクリックすればどのページに飛ぶのかも解からず、使いこなせないでいるのだ。

「ところで気になったんだケド、ライブのチケットは持ってきてるよね?」
 卯月さん、花月さん、由利さんの三人の女子高生は、カバンやバッグの類を一切持っておらず、少し不安になって聞いてしまった。

「え? 今どき、これですよ」自分のスマホを振る、卯月さん。
「もしかして先生、電子チケット知らないんですかぁ?」
「先生のもさっき、送っておきましたよ。サイトで登録、まだとか?」

 まだも何も、やり方が解らない。
こうなってしまうとボクに、『恥を忍んで聞く』以外の選択肢は残されていなかった。

「先生、ウチのお父さんでももっとSNS、使いこなしてますよ?」
「ネットで登録するだけが、どうしてあれだけ理解できないんですか?」
「面目ない……」ボクはこうやって、劣等生の気持ちを理解している。

 地下鉄の中でも散々に言われた。
改札を出た先の階段を、女子高生の後ろに付いてトボトボと歩いていると、後ろから誰かがぶつかった。

「おっと!? ゴメンやで、あんちゃん」
 クルクルとした真っ赤なツインテールが、慌ただしくボクの目の前に出て舞い踊る。
「ウチは今、ちーとばかし急いどるん……やって、アレ?」

 顔を上げると、階段を昇る三人の女子高生の後ろに、茹で蟹のような色のツインテールの少女がいた。

「あれ、キミは……?」
 その時、駅に地下鉄の車両が入ってきたのか改札の方から風が吹き、少女たちのあまり長くないスカートを舞わせる。

「いやあああ!?」「きゃああ!!」「うわあああ!!?」
 可愛らしい悲鳴をあげ、スカートを抑えつける卯月さん、花月さん、由利さん。

「先生、なに見とんねや! エッチィ!?」
 真っ赤な髪の少女は、ボクのみぞおちに左ストレートを叩き込んだ。

「ぐはッ!?」腹に激痛が走り、呼吸が止まる。
 ボクは、その場にうずくまった。

「あ、あなた、キャンさんじゃないですか!?」
 卯月さんが大きな声を出す。

「ホントだぁ。あたしたちこれから、キャンさんのライブに行こくところなんですよ」
「間近で会えて、光栄です。あれ……でも今、先生を先生って?」
 由利さんが、首をかしげている。

「可児津 姫杏(かにつ きあ)。彼女はボクの生徒……なんだ」

 教室では、普通の黒髪ツインテールだった少女は、ボクの教え子だった。

 

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糖尿病で入院中に描いたイラスト・003・キング・オブ・サッカーのトップ絵

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入院中に描いた下書き

 糖尿病で入院中描いたイラスト、まとめてラノベ用のトップ絵にしてみました。

 元は漫画として描こうと思った作品でしたが、ネームを集英社に持ち込んだら落とされてしまった。

 その時は、いつも見てくれていた担当のH氏が夏休みかで、若い新人の担当者さんに見てもらったんだよね。
結果は変わらなかったかも知れないけれど、信頼する担当に見てもらえばよかったかな。

 久しぶりの持ち込みだったから、H氏もすでに担当編集者じゃなくて、副編とかになってた可能性もあるかも。
(ちなみにH氏は、バクマンという漫画で副編から編集長になってた)


キング・オブ・サッカー

 『キング・オブ・サッカー』という作品は、プロのサッカー選手を目指す少年、御剣 一馬が自分が通う高校のサッカー部に入部できなかったところから始まります。

 今でこそサッカーはメジャーな題材ですが、週刊少年ジャンプで『キャプテン翼』が連載されたのが、サッカー人気を押し上げる大きな原動力になったと思います。

 でもキャプテン翼以降、週刊少年ジャンプで連載されたサッカー漫画って、ほぼ人気も出ずに終わっちゃうんですよね。
そんな壁に、ボクもチャレンジしてみたワケですが……残念な結果でした。

 サッカーがメジャーになるに連れ、技術だとか戦術とかを描くサッカー漫画が多くなってしまったケド、本質はそこじゃない気がする。
大空 翼がそうであったように、サッカーを楽しむ心が大事なんじゃないかと。

 そんな感じで描いたのが、キング・オブ・サッカーという作品でした。

 リベンジみたいな意味も込めて、今回ラノベにしようかと思った次第です。
トップ絵が完成しだい、載っけてく予定です。

ある意味勇者の魔王征伐~第6章・10話

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サタナトスVS舞人

 舞人が憧れた『赤い髪の英雄』は、今まさに大勢の人々が暮らす、ニャ・ヤーゴの街を破壊しようとしていた。

「人間どもの希望を、その両肩に背負った英雄が、魔王と化し人間どもを焼く尽くすのさ。どうだい……これホド面白い余興って、他にないだろう?」
 天使の如く純粋な微笑みを浮かべる、サタナトス。

「そんなコトは、させない! ボクの憧れた英雄は、太陽のように温かく人を惹きつけるから『英雄』なんだ!」
 勇ましく、ガラクタ剣を構える舞人。

「ヤレヤレ……キミはどこまで愚かなんだい。絶対的な強さを誇るシャロリューク=シュタインベルグが、魔王と化しているんだ。キミの能力で、伏防げるホド甘い炎じゃないと思うケド?」

 舞人の前で渦を巻く巨大な炎のトルネードが、サタナトスの言葉を裏付ける。

「聞いてくれ、シャロリュークさん! ボクは、あなたの背中に憧れた。あなたみたいに、カッコ良くなりたかった。あなたみたいに、大ぜいの人たちの喝さいを浴びたかった!」
 蒼髪のボサボサ頭の少年は、有りっ丈の力を『ジェネティキャリパー』に込める。

「アハハハ、この後におよんで英雄に命乞いかい? だけどムダさ。彼の意識はもう無いんだ。このボクの剣、『プート・サタナティス』によってね」

 紅き魔物が、真っ白に輝く灼熱の魔弾を放った。
「ご主人サマ、逃げるのじゃ!!?」
白く透き通った手を伸ばす、ルーシェリア。

「シャロリュークさんを、『魔王』になんてさせるものかあぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」

 少年の叫びもろとも、煌めく超高熱の光がすべてを飲み込んだ。

「……ご、ご主人サマァァァァァーーーーッ!!?」
 漆黒の髪をした少女の、悲痛な叫びも完全に爆音にかき消される。

 地面や岩盤をも蒸発させる、真っ白な光の熱風が辺り一面を焼き尽くす。
岩石の混じった土煙が霧のように辺りを覆い、丸くくり抜かれた地上に干上がった川の水が流れ込んだ。

「バ、バカな……!? 灼熱の炎が街を襲わないだと?」
 宙を舞いながらも、驚きを隠せないサタナトス。
それどころか、光の炎の一部が金髪の少年を襲っていた。

「このボクに傷を負わせ……なお且つ、あの攻撃を防ぎ切ったと言うのかッ!?」
 巻き上げられた土砂や岩石が、バラバラと舞い落ちる先には、地面に横たわる少年と傍らに立つ少女の姿があった。

「ど、どういうコトだ。真っ白な光の渦が……段々と小さくなっていく!?」
 消し飛ばされた左半身を押さえながら、ルーシェリアに問いかける。

「まったく……ご主人サマは、なんと言う無茶をするんじゃ……」
 ルーシェリアは血塗れの少年の頭を、自らの膝枕に乗せ汚れた額を拭く。

「ど、どこへ行ったんだ……赤毛の英雄。いや、赤毛の破壊神は!!?」
「そんなモノは、もうどこにもおらんのじゃ」
「お前、なにを言って……!!?」

 驚きの表情を浮かべるサタナトスの瞳に映ったのは、赤い髪の少女の姿だった。
少女は全裸で、魔王シャロリュークがいた場所に横たわっている。

「ああ、そうじゃとも。お前の剣が、人を魔王へと変えてしまう能力であれば、ご主人サマの剣はな……魔王を女の子に変えてしまうのじゃ!」
 ルーシェリアは、自らの自慢のようにそう答えた。

 彼女の言葉には、『もし、この青髪の少年に手出しをすれば、全力を持って相手をする』と言う気迫が込められており、傷を負った金髪の少年は手を出すのをためらう。

「フッ……まあいいさ。計画通りでは無かったが、これで『赤毛の英雄』は失われたんだ。完璧なハズのボクの計画に、狂いが出てしまったのは腹立たしいケドね」

 サタナトスはそう吐き捨てると、蜃気楼の剣士から奪った幻剣・『バクウ・ブラナティス』で『時空の扉』を創って、その中へと消え去った。

「ヤレヤレ……じゃのォ。何とか、行ってくれたか?」
 実際のところ、ルーシェリアに戦う力など殆ど残されてはいなかった。

「ご主人サマよ、カッコ良かったぞ。まあ、少しだけじゃが……な」
 少女は、全ての力を出し尽くして気を失った少年の額に、軽く口付けをする。

「しかしのォ……ご主人サマよ。これからどうするのじゃ? 人間どもの希望の象徴である赤毛の英雄を、女の子に変えてしもうて」

 漆黒の髪の少女が目線を送った先には、全裸の『紅い髪の少女』が横たわっていた。

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この世界から先生は要らなくなりました。

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目次

第一章・先生を必要としない世界

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話

第二章・ユークリッド

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話

第三章・星空の教室

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話  第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話  

第四章・新たなるメディア王

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第ニ十ニ話 第ニ十三話 第ニ十四話
第ニ十五話    

第五章・扇動される世界

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話
第三十一話 第三十ニ話 第三十三話
第三十四話 第三十五話 第三十六話
第三十七話 第三十八話 第三十九話

第六章・新米教師とスキャンダル

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第ニ十話 第ニ十一話
第二十ニ話 第ニ十三話  

第七章・壮大なる実験

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話
第三十一話 第三十二話 第三十三話
第三十四話 第三十五話 第三十六話
第三十七話 第三十八話  

第八章・生徒たちのステージ

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話  

第九章・教師としての試練

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話

第十章・冥府のアイドル(ベルセ・ポリナー)

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話
第三十一話 第三十二話 第三十三話
第三十四話 第三十五話 第三十六話
第三十七話 第三十八話 第三十九話
第四十話 第四十一話 第四十二話
第四十三話 第四十四話 第四十五話
第四十六話 第四十七話 第四十八話
第四十九話 第五十話   

第十一章・神於繰 マドルの事件簿

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話
第三十一話 第三十二話 第三十三話
第三十四話 第三十五話 第三十六話
第三十七話 第三十八話 第三十九話
第四十話 第四十一話 第四十二話
第四十三話 第四十四話 第四十五話