ラノベブログDA王

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この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第02話

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少女たちの決意

「ねえ、先生。どうしよう。世間の注目を浴びるのって、簡単なコトじゃないわ」
 ユークリッドのアイドル高校生教師として、世間の注目を一身に浴びてきた瀬堂 癒魅亜。

「ネットじゃ散々誹謗中傷もされるし、時には脅迫されたり、命が危険に晒されるコトだってあるのよ」
 彼女の言葉は、彼女自身が言葉の暴力によって、心を傷つけられたコトを示している。

「わたし達、覚悟はできてます」
 禄部 明日照が言った。
彼女は、テニスサークルの7人の少女のリーダーだ。

「アステさん、それは生半可な覚悟ではありませんか。もし、世間の荒波に対処する自信がないのであれば、悪いコトは言いません。辞めておきなさい」
「お姉様の言う通りですわ。芸能界の厳しさや残酷さは、幼少の頃より知っているつもりです」

 安曇野 亜炉唖(あずみの あろあ)と、芽魯画(めろえ)のゴージャスボディの双子姉妹も、ユミアの意見に賛同する。
二人からはネット動画で名を売って生きていく、覚悟とプライドを感じる。

「わたし達の動画は、海外サイトで拡散されちゃってるんです」
「久慈樹社長は、何とかしてくれるって言ってくれましたが……」
 戸次 芽瑠璃と、蔵澤 絵零兎が顔を俯かせながら言った。

「メルリちゃんもエレトちゃんも、実に現実を見ているねェ。一度ネット上にアップされた動画は、ユークリッドの力を持ってしても、完全に消去するのは難しい」
 ユークリッドの社長は、仰々しく手を広げ嘯(うそぶ)く。

「ボクたち、あんなヤツらに負けたくないんだ」
「悪いコトしたのはアイツらなのに、こそこそ隠れて生きていくなんてイヤだよ」
 麻井 舞依弥と、丹下 手結夏が、スポーツ少女らしい負けん気を見せる。

「マイヤ、タユカ、貴女たちの主張は正しいわ。でも正義を貫くのは、とても大変で辛いモノよ」
 新兎 礼唖が言った。
正義を重んじるライアですら、7人の行動は危うく見えたのだろう。

「わたしたちには、立派で優しいお姉様たちが付いております」
「アチシたちだけ蚊帳の外なんて、やだぁ」
 家長 袈螺埜と、弓尾 杏屡希の瞳には、美乃栖 多梨愛の姿が映っていた。

「カラノ、アルキ、これは遊びじゃないんだぞ」
「解かっておりますわ、タリアお姉様」
「だいじょぶじょぶだよ」

「ヤレヤレ……どうする、先生」
「どうするって、ホントにいいのか、お前たち」
 頭を掻きながら、七人の中学生に目を移す。

「はい、もう契約もしちゃいました」
「わたし達も、天空教室の仲間になりたいよ」
「ね、お願い。いいでしょ?」

 7組みのキラキラした瞳が、ボクを見つめる。
「仕方ない……大人しく授業を受けるんだぞ」
幼さの中にも妖艶さを備え始めた少女たちに、ボクは押し切られた。

「これで可愛らしい女の子の顔に、モザイク処理をする必要もなくなったワケだ」
 上機嫌にワイングラスを回し、昼間から酒を飲む久慈樹 瑞葉。

「幼い彼女たちを、ずいぶんと煽動してくれましたね」
「何のコトかな。ボクはただ、真実を教えてあげたまでだよ」
 揺れる白ワインにボクを映し、ほくそ笑む。

「あのコたちは、わたしが護るわ。絶対に、アンタなんかの思い通りにはさせない!」

「それは、世間様次第だよ。キミたちを傷付けるのは、ボクじゃない」
 教室のカメラが、社長を捉える。

「ネットやSNSに屯(たむろ)する連中の、降らない正義感や常識論……さ」

 ボクは、社長が言った言葉の意味を、まだ本当には理解していなかった。

 それからボクは、午後の授業の教鞭を取る。
7人の女子中学生の年齢の少女たちも加わり、天空教室はまた新たな動画を視聴者に提供した。

 会ったことすら無い視聴者たちは、久慈樹 瑞葉の狙い通り、言葉の刃を少女たちに向け始める。

 それが問題となって表面化するのは、まだ少し先の話だった。

 

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