ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第19話

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正義と力

 ライアも、大切な人を亡くしていたのか。

 ユミアは、兄である倉崎 世叛が病死している。
タリアは、教師だった父親が自殺をしていた。

 親族を亡くした少女が三人。
キアも、父親が失職してアルコールの溺れ、大変そうだ。

 ……やはり、意図的に問題を抱えたコたちが、集められたのだろうか?

 ユミア以外の生徒を集めたのは、他ならぬ久慈樹 瑞葉社長だった。

「先生……タリアはもう、ここには来ないの?」
 栗色のソバージュ髪の少女が、問いかけてくる。

「昨日は深夜だったから、タリアを叔父さんのアパートに送ったんだ」
 ユミアに昨日の状況説明をしながら、スマホの時計を見る。

「まだ十時前だな。これから彼女を、迎えに行こうと思う」
「タリアを……でも、素直に来てくれるかしら?」
「なんとかするさ。せめて、新しい先生を迎えてでも、教室は残したい」

「そんなのイヤよ。わたしが契約したのは、先生なのよ!」
 ユミアが叫んだ。

「ああ。久慈樹社長がニューヨークから戻るまでは、キミらの先生だ」
 ボクは天空教室を出ると、急ぎ足でエレベーターホールに向かう。

「待って下さい、先生。わたしも同行致します」
「そんじゃアタシも、行こっかなあ」
 エレベーターの乗り込んで来たのは、ライアとレノンだった。

「意外だな。来るとすれば、ユミアかと思ってた」
「彼女には、残った生徒を纏めてもらうように、頼んできました」
「それはライア。キミが、適任だと思うんだが?」

「そうですね。ですが今回の事件、警察も動いているのでしょう?」
「ああ。キミのお父さんは、警察官……だったよな?」

「残念ですが、そう言う期待はしないで下さい」
 正義の少女は、寂しい背中を見せ俯く。

「父は……汚職をして、警官を辞めました」
「エエ、そうなの。あれだけ正義面しといてェ!?」
「コラ、レノン!」

「いえ……そう思われても、仕方ありません」
 エレベーターは、高速で降下する。
「実際、正義面以外の何モノでもありませんから」

「あ……なんかゴメン」
 レノンは謝ったが、ライアからは何も返って来なかった。

 マンションを出ると、ポケットの中のスマホが震える。
「あ、ハイ。そうです、昨日の……」
 ボクは内容を確認すると、スマホを切った。

「ねえ、先生。誰からぁ?」
「警察だよ。昨日の事件で、被害にあった女の子たちが見つかったって」

「え、タリアがボコったのって、男たちじゃないの?」
「その男たちから、色々とされたコたちだよ」
「ふえ、なんのコト?」

「今朝のわたしとユミアの言い争いを、聞いてなかったみたいですね」
「途中からだったし、なに怒ってんのかな~って」
 二人の少女のIQには、かなり開きがあるらしい。

「とりあえず警察には、授業が終わってから顔を出すつもりだ」
「まずは、タリアんトコだね」
 ボクは二人の生徒と共に、地下鉄に乗った。

「随分と、治安の悪そうな街ですね……」
 ライアはユミアと同じ感想を漏らしたが、態度は平然としている。

「そっか。タリアって今、こんなトコ住んでんだ」
「まるで昔からの、知り合いみたいな言い方だな?」
「知り合いだよ……」

「……え?」
 ボクも、ライアも思わず驚いた。

「タリアのお父さんが生きてた頃は、まだウチの近所に住んでてさ」
 事件のあった高架下を通り過ぎると、上から遮断器の音が聞こえる。

「アイツもウチも、家庭が上手く行ってない時期だった。よく家を飛び出しては、暴れまわってたモンだよ。二人とも、腕っぷしだけは強かったかんね」

「それは、暴力に他なりません。そんなコトをして……」
「なんになるかって。タダの憂さ晴らしさ」
「ただの憂さ晴らしで、暴力を振るうなど言語道断です!」

「でもライアのお父さんも、汚職したって言ってたじゃんか」
「……恥ずかしい話ですが、その通りです……」
 赤い光が、暗い壁にチカチカと反射する。

「父は幼いわたしに、正義の大切さを教えてくれました……」
「自慢のお父さんだったんだな?」

「……昔の話です。今は、この世で最も軽蔑していますから」
 そう呟いた少女の顔は、寂しさに満ちていた。

 

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