ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第05章・04話

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英雄の提案

「わたしは、トロイア・クラッシック社の代表として提案する」

 MVSクロノ・カイロスの艦橋に出現した、巨大スクリーン。
向かって右側に映っていた英雄が消え去り、左側の英雄がフルスクリーンとなる。

「一度、貴艦に我が社の者を派遣したいのだが、受け入れては貰えないだろうか?」
 屈強な肉体を誇る、デイフォブス=プリアモスが言った。

「詰まるところ、こっちの情報収集が目的なんだろ?」
 プリズナーが、相手の意図をボクに伝えるように返す。


「こちらとしても、艦隊を乗っ取られたのだ。まずは情報を得たい」
「つまりあなた方は、ボクらを主星に近づけたくはない……と?」

「それはそうだろう。キミたちの艦の性能も解らないまま、主星であるパトロクロスに招き入れるコトは出来ない」

「な、なんでですかぁ?」
 セノンが疑問を口にした。

「彼らからすれば、当然だぜ。セノン」
「あの人まだ、この艦が艦隊を乗っ取ったって思ってる……」
「主星を護る艦隊や守備網まで、乗っ取られたらって普通は考えるよ」

 真央たち三人の意見は、どうやら正解らしい。
デイフォブスは反論しなかった。

「こちらの要求ばかり申した。当然、それ相応の対価は献上しよう」
 通信はそれで中断し、スクリーンは消え去る。

「ヤレヤレ。あのオッサン、何をくれるって言うんだ?」
「さあね。余り期待しない方が、良さそうだ」

「だがよ、艦長。どうしてヤツの話に乗った?」
「罠かも知れないのに……か。そうだなあ」

 空間から消えた、巨大スクリーンのあった場所を見上げる。

「一つは交渉できそうな相手に、思えたからだ」
「それ以前に、交渉しない選択肢もあったハズだが?」

「今の最優先は、セノンや真央、クーリアたちをハルモニアに還すコトだ」
「つまりヤツと、小娘たちを還す交渉をすんのか」
「ああ。特にクーリアは、カルデシア財団の要人だろ?」

「そうね。確かにクーヴァルヴァリアが、乗っ取った艦隊を率いるこの艦に居たら、火星との外交問題に発展しかねないわ」

「カルデシア財団と、トロヤ群の軍事企業との戦争勃発か?」
 相棒のトゥランの見解に、ニヤつくプリズナー。
「それはそれで、見物だがな」

「戦闘を行えば、ブリッジに攻撃が直撃する可能性だってある」
 そうなれば、今ある光景が一瞬で消え去るかも知れない。」
ボクは、艦橋の中を見回した。

 隣にはセノンが立っている。
オペレーター席に座るのは、真央、ヴァルナ、ハウメアの三人の少女。

「パパァ、お風呂行こうよ」「闘いで、汗かいちゃったし」
「戦闘のあとの、銭湯だぁ」「にゃはは」
 無邪気にボクの腕を引っ張る、六十人の娘たち。

「しかし彼は、よくボクなんかと交渉をする気になったな」
 改めて、少女だらけの艦橋に驚いた。

 それから一時間が過ぎる。
その間に娘たちは渋々、銭湯へと出かけて行った。

「艦長、通信が入っているよ」
「あと前方に、アーキテクターと思われる機体が、十三機……」
「着艦許可を求めてるね、どうする?」

「恐らく、デイフォブスの言ってた使者だろう」
「だが、トロイの木馬って可能性もあるぜ」
「トロイア・クラッシック社なだけに、洒落にならんな」

『念のため、ウィッチレイダーたちに警戒をさせましょう』
「そうだな……」
 再び巨大スクリーンが、空間に出現する。

「うわああ!」「なになに!?」
「コラァ、お風呂覗くなァ!」
 そこには、湯舟に浸かる少女たちが映っていた。

「覗くも何も、一緒に入ってたじゃないか?」
「パパはいいの!」「おとーさんだから」
「でも、そこの目つきの悪いの!」

「アア、オレのコトか?」
「お前は、見るなァ!」「えっちぃ!」

「テメーらの裸なんぞ、なんの価値も無いコトくらい解かんねェのか?」
「な、なんだとォ!?」「パパ、コイツ失礼!」
 娘たちは、プリズナーと喧嘩を始めてしまった。

「仕方ない、ボクが出迎えるよ」
 ボクは、艦長の椅子から立ち上がった。

 

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