ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第10章・EP005

あるサッカー界の新星の迷い1

「倉崎。海馬にチームオーナーを任せるって言った、もう1つの理由は解ってる?」

 名古屋の有名な喫茶店の、駐車場から出発する軽自動車の後部座席で、メタボ監督が言った。

「オレの……海外移籍ですか」
 サッカー界の新星は、答えた。

「解ってるなら、イイね。倉崎の才能なら、出来る限り早く海外に挑戦しなきゃダメよ」

 信号が、赤に変わる。
軽自動車は、横断歩道の手前の停止線で止まった。

「ですがデッドエンド・ボーイズは、オレの我がままで立ち上げたチームです。まだリーグ戦が始まったばかりの段階で抜けてしまっては、アイツらに申しワケが……」

「サッカーチームのオーナーなんて、金だけ出してりゃイイのよ。チームの戦術や選手起用にまで、口出しされちゃ溜まったモンじゃないね」

「口出ししているつもりは、無いのですが?」
「だったらそんな仕事、海外に居たって出来るじゃない?」
 膨らんだ腹に、シートベルトをめり込ませながら語る、セルディオス監督。

「オーナーなんてのは、たまに顔出すくらいが丁度イイね。それより倉崎は、日本のサッカー界期待の新星でもあるんだから、もっと将来をちゃんと考えなきゃダメよ」

「はい……」
 年長者の諫言(かんげん)に頷(うなず)く、期待の新星。

 名古屋の車線の多い道路で、軽自動車の横を、たくさんの車が我先にと追い越して行く。
喫茶店で人の金で食べまくったメタボ監督は、やがて大きなイビキをかいて寝てしまった。

「あの、海馬コーチ」
「どうした、倉崎さん?」
「この辺りで、降ろしてもらえませんか?」

「ア? 駅までもう少しだぜ。そこまで、送って行くよ」
「いえ。実は、急用を思い出しまして」

「急用って……」
 軽自動車の運転席に、窮屈そうに座っている男は、チラリとバックミラーを見る。
そこには、真剣な眼差しの倉崎 世叛が映っていた。

「わかったよ。この辺で、イイんだな」
「はい。今日は、有難うございます」
 頭を下げる、デッドエンド・ボーイズの若きオーナー。

「オーナー代理の件だケドよ。少しだけ、考えさせてくれ。監督の手前OKしちまったが、やっぱ簡単には決めらんねェや」

「解りました。デッドエンド・ボーイズとしても、代理のキーパーも見つかってませんから」
「オレが言うのも何だが、早急に見つけた方がイイぜ。正直、オレがレッドでも貰って退場したら、控えのキーパーすら居ないんじゃよ」

「……はい」
「ンじゃ、またな。倉崎さん」
 軽自動車は、サッカー界の新星を置き去りにして、車の群れの中へと消えて行った。

「もう、地域リーグの戦いは、始まってしまっている。日高グループの3チームが参加した今、今年の昇格を狙うにはもっと戦力が必要だ」

 サッカー界の新星は、スマホを取り出し通話を終えると、近くの地下鉄の出入り口に駆け込む。
数駅だけ乗って、慌てて改札を通って地上へと出た。

「スマンな、一馬。急に、呼び出しちまって」
 公園のベンチの前で立っている少年に、駆け寄るサッカー界の新星。

「……あの……今日は1体?」
 か細い声で、少年が口を開いた。

「実はな、一馬。お前に、託して置きたいモノがあるんだ」
「ボ、ボクに……?」

「ああ。お前ももう、懐かしく感じるかも知れない。オレの弟の、ノートだ」
 サッカー界の新星は、1冊のノートを少年に差し出す。

「こ、これって!?」
「ああ。死んだ弟、ヤコブのノートさ。これをお前に、託したいと思ってる」

 ノートには、大勢のサッカー少年のプロフィールが、事細かく書かれていた。
少年はかつて、それを手がかりにデッドエンド・ボーイズのメンバーを集めた過去を持つ。

「実はな、一馬。オレの元には、海外クラブからオファーが届いている。労働ビザやら何やらあって現実的じゃない話も多いが、中には興味を惹かれるオファーもあってな」
 サッカー界の新星と少年は、公園のベンチに座った。

 無邪気に遊びまわる子供たちの姿はすでに無く、街路灯が明るい光を放ち始めていた。

 前へ   目次   次へ 

一千年間引き篭もり男・第08章・86話

舞い戻った女神

「あ、あそこだよ。ボクのオリジナル!」
 バル・クォーダのコックピットの中で、群雲 美宇宙(みそら)が叫んだ。

 無数の星が煌(きら)めく全天の宇宙に、漂うゼーレシオン。
それは、プラネタリウムで小さな星を見つけるよりも、困難な作業だった。

「こんなダダッ広い宇宙で、よく見つけられたな」
 プリズナーが、美宇宙の頬っぺたをつまんで、左右に引っ張る。

「ホントですよ。救難信号すら出してないのに、よく解りましたね」
 並行するテオ・フラストーのパイロットである、メルクリウスさんも美宇宙を褒めた。

「ホレホロレモ……って、いつまで引っ張ってんだい。痛いじゃないか!」
 美宇宙が、プリズナーの手を跳ね除ける。

「ギャハハ。オメーに、バル・クォーダ任せてやってんだ。多少は本体イジっても、イイだろ?」
「イイワケ無いでしょ。んモウ!」
 美宇宙はコミュニケーションリングにて、バル・クォーダと1体となっていた。

「ですが宇宙斗艦長は、どうして救難信号を出さなかったのでしょう?」
「さあな。ゼーレシオンの救難システムに、ダメージでもあったんだろ」
 プリズナーは、美宇宙の後頭部を眺めながら、大きくアクビをする。

「それより、ブラックホールが消滅したって、ホントなのかな?」

「バルザック大佐は、観測者として名を馳せた方です。消失の原因は解りませんが、ネメシスは元々存在自体があり得ない、ブラックホールでしたからね」

「……ンなコトより、さっさと艦長を救助して、コキュートスに追い付かなと、太陽系の最果てで置いてけぼりを喰らっちまうぜ」
「それもそうですね。では、急ぐとしましょう」

 バル・クォーダと、テオ・フラストーが、ゼーレシオンに接近して来る。

 ミネルヴァさんを救えなかった自責の念と、彼女を失った喪失感でいっぱいのボク。
1000年前のように、ゼーレシオンのコックピットの中で、膝を抱えて丸まっていた。

 ~その頃~

 地球でも、ボクと同じ様に、自責の念にかられる少女が居た。

「おじいちゃん……ゴメンなさい。わたしは、みんなを護れませんでした……」

 彼女は、真珠色の巨大イルカ(アフォロ・ヴェーナー)へと続くタラップの途中で立ち止まり、大勢の人間が亡くなったドームを見上げる。

「どうした、セノン。行くぞ」
 彼女の親友が、背中から声をかけた。

「マケマケ……わたしが、もっと上手くやってれば……」
 今にも泣き出しそうな、栗色のクワトロテールの少女。

「そりゃ、人間にはムリってモンさ。アタシだって、たくさんの選択肢があったハズだ。だけど、最善の選択を選んだのかと言われれば、違うと答えるよ。アタシらは、神サマじゃ無いんだからさ」

「うん、真央の言う通り……」
「セノンは、よくやったよ。水を手ですくっても、零れてしまう水だってある。救えなかった人たちには申しワケ無いケド、セノンが救った命もたくさんあると思うよ」

 ヴァルナとハウメアも、栗毛の少女を慰めた。

「貴女たち、早くアフォロ・ヴェーナーに入りなさい。隕石の雨が止んだとは言え、このセノーテも脆(もろ)くなっているわ」
 巨大な真珠色のイルカの中から、トゥランの声がする。

「行こうぜ、セノン」
「はい……」
 親友に促(うなが)され、アフォロ・ヴェーナーへと続くタラップを登り始めるセノン。

 その時、巨大セノーテの下にある地下ドッグが、大きく揺れた。

「やべェ、やっぱ岩盤が脆くなってやがる!」
「急いで、セノン……」
「岩でも落っこちて来たら、お終いだよ!」

「は、はいですゥ!」
 真央たちに言われ、慌ててタラップを駆け上がろうとするセノン。
けれども彼女は、天井が空いたドームの中に、眩(まばゆ)い光を見た。

「アレは……」
 光の中に、異形の姿のサブスタンサーが顕(あらわ)れる。

「なにしてんだ、まったく!」
 真央が、強引にセノンの手を引いた。

 直後にタラップが切り離され、激しい揺れの中を真珠色のイルカは、潜水艦ドッグの黒く淀んだ水の中へと潜って行く。
海中のトンネルを抜け、黒い雨が降り続ける海面へと浮上した。

「ミネルヴァさん……地球を……お願いします」
 宇宙へと飛び立つ、アフォロ・ヴェーナー。
そのリビングの中で、栗毛の少女は地球に舞い戻った女神(ミネルヴァ)を想った。

 前へ   目次   次へ 

ある意味勇者の魔王征伐~第13章・92話

レオ・ミーダス

「な、なんだよ……いったい、何が起きているんだ!?」
 目を覚ました因幡 舞人が、最初に見た光景は闘技場で争う人々の姿だった。

「どうやら周辺の国々が、ラビ・リンス帝国に対して叛旗(はんき)を翻(ひるがえ)したようじゃな」
 舞人に膝を提供していた、ルーシェリアが現状を説明する。

「そ、そんな……戦争が、始まってしまっているのか!」
「予期せぬカタチじゃがな。事前に、計画されていたコトらしいの」

 闘技場に奴隷として連れて来られた7人の少年と7人の少女が、それぞれの武器を手に闘技場に残った数少ない兵たちと戦っている。
その中の1人の少年が、舞人やルーシェリアの前に立ちはだかった。

「キサマの身に纏(まと)っている鎧……雷光の3将の物だな。ミノ・アステ将軍と見受けるが、拙者の得た情報とは少々異なるな」

 少年は、コーヒー色の身体に黒い髪を頭の後ろで結わえ、鷹のような鋭い眼光をしている。
銀色の縁取りのある緑色のコートの下に、金色の鎧を装備していた。

「前任者は、故あって亡くなっての。ついさっき、妾が跡を継いだのじゃ」

「左様であったか……拙者は、レオ・ミーダス」
 少年は、背中に挿した細身の剣に手を掛ける。

「スパ・ド・ルーリアが、我が故郷よ。襲名を終えたばかりとは言え、ミノ・アステの名を継いだのだ。容赦は、出来ぬ!」

 レオ・ミーダスは、剣を抜くと1瞬でルーシェリアとの間合いを詰めた。

「……なッ!?」
 重力剣(イ・アンナ)で、いなせると踏んでいたルーシェリアは、剣に手を掛けるのが遅れる。

「させない!」
 けれども舞人が、ルーシェリアの前に立って、レオ・ミーダスの攻撃を防いでいた。

「ホウ。キサマも、その者の仲間か。ならば、容赦はせぬ!」
 レオ・ミーダスは、再び神速で間合いを詰め、剣を振り抜く。

「イ・アンナ!」
 けれどもその動きは、ルーシェリアの重力剣によって封じられた。

「クッ!? 身体が……重い!」
 膝を付く、レオ・ミーダス。

「残念じゃったな。キサマの相手は、ご主人サマ1人では無いのじゃ」
 重力剣を少年に向ける、漆黒の髪の少女。

「待って、ルーシェリア。この人と、話がしたいんだ」
「言って置くが、この者はまだ奥の手を隠しておるぞ」
「うん。判ってる」

「ならば、好きにするが良かろう」
 ルーシェリアは、剣を下げ他の者との戦闘へと向かった。

「情けをかけたつもりか……蒼き髪の少年?」
 レオ・ミーダスの鋭い眼光が、舞人を捉える。

「そうじゃない。ボクはこのクレ・ア島に、戦争を止めるためにやって来たんだ」

「戦争を、止めるためだと?」
 訝(いぶか)し気な顔をする、レオ・ミーダス。

「ボクは、ヤホーネスの生まれだ。ボクの国は、サタナトスと言う1人の少年によって、大きな被害を受けた。海底都市であるカル・タギアも、同じような状況なんだ」

「ヤホーネスでは王都が壊滅的な被害を受け、年老いた王が死に新たに若き女王が立ったと聞く。カルタギアでも海皇が魔物と化し、若き王が跡を継いだとの情報だったが……それが、たった1人の少年の仕業だと言うのか?」

「そうだ。ラビ・リンス帝国ですら、サタナトスの脅威を受けている最中なんだ!」
「なんだと!?」

「今、サタナトスは、ミノ・リス王の元へと向かっている。このままじゃ、王の身が……」

「フハハハ、なるホドな。いくら計画していた反乱とは言え、コトが上手く運び過ぎていると思っておったわ。まさか拙者らの他にも、ミノ・リス王を暗殺しようと考える者が居ようとはな!」

 重力の枷(かせ)を外されたレオ・ミーダスは、再び神速で間合いを詰める。

「その攻撃は、読めて……ッ!?」
 剣撃を受け止めようとした舞人の身体が、フッ飛ばされて闘技場の壁に叩き付けられえた。

「拙者が刀、大暗刻剣(マハー・カーラ)は、全てを重力から解き放つ」
 レオ・ミーダスの剣は、黒く輝いていた。

 前へ   目次   次へ 

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第78話

生前の約束

「わたしは、警部補のマドルと申します。改めて、お話を伺っても宜しいでしょうか?」
 ハリカに目配せをしながら、マドルが言った。

「モチロン、構わないっスよ。竹崎先生が、あんなコトになっちまって、先生にお世話になった者はみんな、憤(いきどお)りを感じてるです。事件解決の足掛かりになるんなら、何だって聞いて下さい」
 若く正義感に溢れる、勇壮な声が答える。

「竹崎弁護士には、事件の解決に大いに協力いただいておりました。警察としても、誠に申し訳なく思っております。それで、遺言状が偽せ物だったと言うのは……?」
 警察の警部補を名乗る、男装のマドルが謝罪した。

「知っての通り、弁護士ってのは守秘義務があるんで、滅多なコトは口にできないし、先生はそのお手本の様な方でした。ですがあの日は、酒が入っていたのか、オレに少しだけ愚痴をこぼしたんです」

 男の口調から、竹崎弁護士がいかに部下から慕われていたかが推察出来る。

「あの日と言うのは、正確にいつだか解りますか?」
「アレは、先週……先生の亡くなった日の、3日ホド前でしたかね」
 若き弁護士の声が、答えた。

「先生は、酒はあまり嗜(たしな)まれないのですが、その日は弁護士界隈(かいわい)の飲み会がありまして。珍しく先生も、最後まで残ってらしたんですよ。他の連中は、はしご酒で他の居酒屋に行っちまったんですが、オレはなんとなく先生の様子が気になって」

「普段と、様子が違ったのですか?」
「ええ、何となくですがね。それで、先生に杓(しゃく)をしながら、話しかけてみたんですよ」

 ボクの脳裏に、徳利(とっくり)を持った若き弁護士が、竹崎弁護士に杓をする姿が思い浮かんだ。

「鬼頭くん。わたしはもしかすると、殺人の片棒を担がされているのかも知れない」
 竹崎弁護士の声が、巨大なドーム会場に流れる。

 もちろん、それは生前の声であり、回想シーンを解かりやすくする為の演出だった。

「え! それは今、担当されてる例の館の……」
「出来れば、酒の席のコトと聞き流して欲しい。こんなコトを言うのは、弁護士としては失格だからね」

「え、ええ、解りました。明日には、キレイさっぱり忘れるコトにしますよ」
「フフ……そうしてくれると助かるよ」
 マジメな印象だった竹崎弁護士の声も、少し酔いが回っているように聞こえる。

「わたしの預かった遺言状のせいで、2人の少女の命が失われてしまった。あの遺言状は、本当に重蔵氏の遺したモノだったのだろうか……」

「……と、言いますと?」
 若き弁護士が、お猪口(ちょこ)に酒を注いでいる姿が思い浮かんだ。

「遺言状はかつて、すでに手を動かすコトも困難だった重蔵氏が、最初に殺されてしまったトアカさんに代筆を頼んで書かれたモノでね。わたしも、ほか2人の弁護士と遺言状を預かったが、内容自体を確認したワケじゃないのだよ」

「それじゃあ先生は、遺言状がすり替えられたとでも!?」
「遺言状は、弁護士協会が預かっている。そんなコトは、あってはならないんだ!」
 声を荒げる、生前の竹崎弁護士。

「す、すまんな、鬼頭くん。今日は、呑み過ぎたようだ」
「い、いえ。誰だって、そんな日もありますって」

「すまないが鬼頭くん。今日の話は……」
「大丈夫ですて。オレの記憶力の無さは、先生が1番ご存じでしょう?」
「ハハ、そうだったな……」

 それを最後に、2人の師弟弁護士による会話は終わる。

「先生との約束を、破るハメになっちまったが、それも事件を解決する為なんだ。先生には、あの世で再会したときに謝って置くんで、頼みますぜ、お巡りさん!」

「我々警察に、お任せください。必ず事件を、解決して見せますよ」
 若き警部補は、快諾する。

 けれども、その約束も果たされるコトは無かった。

 前へ   目次   次へ 

キング・オブ・サッカー・第10章・EP004

あるメタボ監督の決断3

「フィッシュフライバーガーになります。ご注文は、お揃いでしょうか?」
 もう何度も足を運んで来た女性店員が、テーブルの4人の男たちに伺いを立てた。

「それじゃ、追加で……」
「セルディオス監督、それ以上は身体に悪いですよ」
 メタボ監督の、機先(きせん)を制す倉崎 世叛。

「そう? まだ腹八分目だケド、仕方ないね」
 メタボ監督は渋々、メニューを元あった位置に戻した。

「話を本題に戻すと、デッドエンド・ボーイズの代表を今後どうするかと、スポンサー集めをどうするかってコトだな?」

「ええ。正直、企業マネージメントの出来る優秀な代表であれば、スポンサー集めも同時に解決しそうなモノですが……」
「ウチの予算で、そこまでの人材を確保できる可能性は薄いです」

 チームの現状を示す、柴芭と雪峰。

「だろうな。なにをするにも、金が必要か。だが、その金を払ってくれるスポンサーを、集めないコトにはチーム運営も立ち行かない。悩ましい、話だ」
 ため息を吐く、サッカー界期待の新星。

「そこで、倉崎に提案があるね」
 メタボ監督が、食べかけのフィッシュフライバーガーを、皿に戻しながら言った。

「なんでしょうか、監督」
「実は、ある男を雇って欲しいね」
「ある男……セルディオス監督の、知り合いですか?」

「倉崎も、柴芭や雪峰も知ってるね。なんせその男は、ウチの運転手なんだから」
「え……それじゃあ、まさかその男と言うのは?」

「もちろん、海馬 源太(かいば げんた)よ」
 メタボ監督は、堂々と言った。

「海馬コーチですか?」
「ですがチームの代表となると、経営や経理などを覚える必要が……」
 不安を吐露(とろ)する、柴芭と雪峰。

「わたしも長年、サッカーの現場を見て来たケドね。弱小クラブの代表なんて、究極の雑用係よ。チーム内のヒエラルキーで言えば、最下層だってあり得るね」

「そ、そんなモノですか?」
 倉崎 世叛は、納得が行っていない顔だった。

「Zeリーグ1部の、名古屋リヴァイアサンズのチームオーナーなら、そりゃ1流の経営者だろうし雑用係ってコトは無いね。でも、チームスタッフを大量に雇えない小さなクラブの代表は、色んなコトをやらなきゃチームが回らないね」

「言われてみれば、そうですね。とりあえずの代表代理であれば、海馬コーチが適任かも知れません」
「経営や経理なら、オレと柴芭でサポートします」

「柴芭や雪峰が助けてくれるなら、なんとかなりそうだな。海馬コーチに、打診して見るか」
「それじゃ、早速電話かけるね」
 スマホを取り出す、メタボ監督。

「ええッ!? オレがチーム代表って、マジで言ってるんスか!?」
 呼び出されたメタボキーパーが、最大限に驚いた表情をしていた。

「そりゃ、毎試合大量失点喰らってるんで、現役引退を言い渡される覚悟はしてましたケド。デッドエンド・ボーイズのチームオーナーって、オレに務まるとも思えませんが……」

「心配無いね。さっきまで居た、柴芭と雪峰がサポートしてくれるから」
「引き受けてくれると、有難いんですが」
 お気楽な顔のメタボ監督と、真剣な眼差しのサッカー界期待の新星。

「く、倉崎さんにまで言われちゃ、考えなくも無いですケド、ホントにオレなんかでイイんですか?」

「キーパークビになって、現役引退なんだから、贅沢は言えないよ」
「オレも引退は覚悟していて、サッカーの仕事に携(たずさ)われればって思っちゃいましたケド、ホントにオレなんかで大丈夫?」

「大丈夫かどうかは、やって見なくちゃ判らないね」
「そんな、無責任な……」

「でも現状、チームオーナーまで倉崎ってのは、相当無理があるのは事実ね」
「お願いします。どうか、引き受けてはくれませんか?」

「わ、解ったよ。だケド、チームオーナーって、まず何をやりゃイイんだ?」
「まずは、資金源の確保ね。スポンサー探しの、営業から始めるよ」
「オ、オレが、営業ッスか?」

「そんなの直ぐ慣れるよ。だけどそんなブクブクの身体で、着れるスーツある?」
 メタボ監督は、言った。

 前へ   目次   次へ 

一千年間引き篭もり男・第08章・85話

真っ白な光

 この1000年の間に起こった、幾多の戦争や災害によって、地球の環境は劇的に悪化してしまった。
人類の進出した太陽系の中心は、汚れた地球では無く、テラ・ホーミングを終えた火星となっている。

「宇宙斗は……地球を元の美しい蒼い星に、戻せると思っているの?」
 ツィツィ・ミーメのコックピットの中で、クワトロテールをヘルメットから伸ばした少女が、ボクに向かって聞いて来た。

 地球は、放射能や科学物質に汚染された雨が降り続き、その雨が流れ込む海は黒く淀んでいる。
多くの人類は地球を捨て宇宙に進出し、僅かに残った人達が、病んだ大地にしがみついていた。

「ボクの時代にやっていた、子供向けのアニメであれば、敵のボスを倒せば壊れた街が1瞬にして元通り……めでたし、めでたしでハッピーエンドだったのにな」

「でも現実は、アニメや絵本の物語の様には行かないわ……」
 ミネルヴァさんが、寂しそうな顔を見せる。

「貴女の言葉は、重いな」
 ボクは、言った。

 現在の地球を統括し、地球の意志を決定する量子コンピューター、ゲー。
その言いなりとなって、ひたすら自分の任務を忠実にこなして来た彼女。
けれども今の地球は、彼女の望む姿には程遠いだろう。

「少なくとも、ボクが生きている間に、地球が元の状態に戻る可能性は低そうだ。でも、何世代か人類が年を重ねて、科学を発展させれば可能性はあるんじゃないかな。キミが望んだ、蒼い地球が……」

「もうイイのよ。ミネルヴァと呼ばれた女は、地球の汚れた大地で死んだわ。ここに居るわたしは、ただの幻影よ」

「幻影……か。あのブラックホールも、幻影なら良かったんだが」
 目視できるワケでは無い天体、ブラックホール。

「ブラックホールの中って、どうなっているのかしらね」
「唐突だな。それはあと少しで、判明するんじゃないか?」

 ゼーレシオンとツィツィ・ミーメは、ネメシスと名付けた超小型のブラックホールに、引き込まれようとしていた。

「その時に、わたし達は生きていられる保証は無いわ。答えて」
 ヘルメットのバイザーの向こうで、黒乃にソックリな顔がボクをジッと見ている。

「そ、そうだな。ブラックホールは、何か特別な天体な気がするんだ」
「どんな風に?」

「恒星は、その莫大な重力によって物質を圧し潰すケド、ブラックホールは重力や空間自体を圧し潰してる感じかな」

「ウン、そうかも。わたしも、そんな気がするわ」
 バイザーの中の顔が、柔らかな笑顔を見せた。

「だけど、もうどれだけ時間が残されているか……え!?」

「宇宙斗……貴方は、ゼーレシオンに戻って」
 小さな両手が、ボクを卵型のコックピットから押し出す。

「うわッ!?」
 再び宇宙に放り出される、ボクの身体。
ゼーレシオンとツィツィ・ミーメの間が、かなり離れてしまっていた。

「ミネルヴァさん、なにか考えがあるのか?」
 ボクは、ゼーレシオンのコックピットに辿り着き、巨人と1体となる。
視界が宇宙1色に覆われると、直ぐにツィツィ・ミーメを探した。

「……なッ!?」
 いきなり激しい衝撃がゼーレシオンを襲い、ボクの脳ミソまで揺らす。

 ゼーレシオンが、ネメシスに1直線に引っ張られていた軌道から、大きくズレた。

「ま、まさか、ミネルヴァさん!!?」
 慌ててボクは、本来の軌道の方向を見る。
そこにはツィツィ・ミーメが居て、ブラックホールの重力で急激に引っ張られていた。

「ボ、ボクを助けようと……そんなコトッ!?」
 軌道を変えようとするも、ツィツィ・ミーメとの距離は開くばかりで、どうにも出来ない。

「宇宙斗……貴方に会えて、良かったわ」
 ゼーレシオンの高感度センサーが、ミネルヴァさんの声を捉えた。

「なに言ってるんだ、ミネルヴァさん!!」
 ゼーレシオンの巨大なセンサーアイが、遠ざかるツィツィ・ミーメをボクの脳裏に映した。

 やがて、異形のサブスタンサーの姿は消え、直後に真っ白な光がほんの1瞬だけ輝きを放つ。
ゼーレシオンは、その光から遠ざかって行った。

 前へ   目次   次へ