ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第一章・EP003

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二対一

 トラス橋が河をまたぐ、河川敷。

「……やっぱ来ちゃった」
 入学式が終わり、桜の花びらが舞い散る土手にはツクシが顔を出している。

「奈央は怒るだろうケド、このまま何もせずにサッカーを辞めるなんてイヤだ」
 けっきょくボクは、ポケットに放り込まれた名刺の住所を頼りに、河川敷を訪れていた。

「でも、倉崎さんのサッカークラブって、どこにあるんだ?」
 見たところ、河川敷にサッカーを練習している人もいないしなあ?

 名古屋の、それなりに大きな街を流れる一級河川の堤防沿いには、遊歩道があってランニングや犬のさんぽをしている人たちが行き交う。

 河川敷まで下りて行けば、砂の野球グランドがあり、サイクリングコースも通っていたが、小さなサッカーグランドには人すらいなかった。

「地元の高校のサッカー部が、使ってそうなグランドだな……」
 ここが、倉崎さんのデッド・エンド・ボーイズのグランドなのかな?
グランドに降りて、砂をすくってみる。

 ジャリジャリとサラサラの間くらいの砂だ。
「こんな場所で練習すれば、足腰が鍛えられそう」
家から持ってきたボールを、さっそく転がしてみる。

「あ。やっぱ、砂にスパイクの跡がある。誰かが練習してたのかな?」
 グランドには、無数の足跡が刻まれている。
すると急に、背後から声がした。

「あ? こないだの一年じゃねえか」「なんだ、こんな場所で?」
「ひょっとして、やっぱ入部したくなったとかで、オレたちを待伏せかぁ?」
 振り向くと、怖そうな顔がたくさん並んでいる。

 ヤバイ! ウチのサッカー部の、先パイたちだ。
急に顔の筋肉が強張って、口から言葉が出ない。

「オイ、何とか言えよ?」「またまた黙りかあ?」
 ひょっとして謝罪すれば、許してもらえそうな……雰囲気じゃ無いよね、これ。

「なんだお前、サッカーボール蹴ってたのか?」
「だがよ。ここはオレら、曖経大名興高校サッカー部のサブグランドだぜ」
「勝手に使ってんじゃねーぞ、コラァ!」

 えー、ココそうだったの? ヤ、ヤバイ……早く退かないと!
そう言えばウチの学校のサッカー部は、立地が大都会である名古屋のど真ん中で、グランドが無いから外のグランドを使っているとか言ってたな。

「オラ、ボールはあっちだぜ!」
 屈強な体躯の先パイが、ボクのボールを河に向かって蹴り飛ばそうとする。

「う、うわ……」
 ボクは反射的に左足の足裏でボールを引いて、右脚の後ろへと隠した。
かなり広い河なので、ボールが流されたら拾いに行けない。

「おわッ!?」
 蹴り飛ばすハズだったボールが消え、ハデにスッ転ぶ先パイ。


「ぎゃははは。コイツ、空振ってやんの!」
「ダッセーやつ」
 他の先パイにからかわれ、顔が真っ赤になる屈強な体の先パイ。

「こ、この……いい度胸じゃねえか。一年が、先パイをコケにしやがってよォ!」
 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ! 先パイ、マジでキレちゃってる。

「今は少しばかり油断したがよォ。オレら曖経大名興高校サッカー部は、県大会じゃベスト4に残る強豪なんだ。テメーみたいな一年、本気を出せば簡単に……」
 そう言いながら、後ろに下がったボクの前を、勢い良く通り過ぎて行く先パイ。

 口はぜんぜん動かないクセに、体はナゼか反応してしまう。

「なんだよ、またかわされてるじゃねえかよ?」「一年相手に、だらしねえな?」
 二人の先パイがボクを前後に挟み込んで、同時にボールを取りに来る。
取られた方がいいのか? でも、大事なボールを河に放り込まれたら……。

「ありゃ。な、なんでボールが取れねえ?」
「ムムゥ、二人がかりだってのに……」

 ボクは、後ろから来る先パイを右にかわすと、前から来た先パイにボールを取られないように、足裏で引いてボールを体の後ろへと隠す。
それからは、二人の先パイが一直線に重なるようにボールを動かした。

「コ、コイツ、オレら二人を相手に、顔色一つ変えてねえぞ……」
「そ、それに、なんてキープ力だ。ナマイキなだけのコトはあるぜ」


 後ろの先パイが、左から前の先パイの前に出ようとすると、ボクも左に動いて前に出させない。
常に一対一の環境を作り出す。

「あ……!」
 すると、ボクのボールが別のボールに弾かれた。

「だ、誰だ!」「ジャマすんのは?」
 先パイたちと始めて意見が合ったボクも、弾かれたボールの転がった先を見る。

「ジャマして悪かったな、一馬。来てたのか?」
 そこには、見覚えのあるジャージ姿の男が立っていた。

 

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萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十七話

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侘び・寂び・萌え

「な、何故じゃ!? あの小童は、妾が事故に見せかけ始末したハズ……」
 渡辺の姿を一番の驚きで迎えたのは、舞台の最深部に潜む経営コンサルタントの女だった。

「もう、遅いよ渡辺先パイ!」
「どこ行ってたの。心配したんだから!」
 慌てて壇上へと続く階段を駆け上がる渡辺を、双子は叱り付ける。

「双子の言う通りじゃわい、心配かけおって」
「みんな時間かせぐの、とってもタイヘンだったガオ~!!」
「ボクも舞台袖で見てて、すっごくハラハラしちゃったよ!」

「ホンットにゴメン! 色々とあって……結局、絹絵ちゃんも見つからなかった」
「そ、そんな……」「まったく絹絵ったら、どこ行っちゃったんだ!」
 気を揉む双子姉妹は、最後の舞台用の黄色とピンクの着物に着替えていた。

「……絹絵ちゃんは、必ず後で見付けるから!」
 メガネの少年の強い意志を帯びた言葉に、一同はそれ以上詮索するのを止める。

「今は茶道部の……いや、オワコン棟が誇る極者部のメンバー全員の、最後の見せ場だ」
 渡辺は気を引き締め、顔を二度ほど叩いてから舞台へ上がって行った。

「どこかで見いてくれ、絹絵ちゃん。オレは必ず、みんなを笑顔にするから!」
 橋元も壇上に上がると、巫女・美娘ダンシング部の天原 礼於奈から声がかかる。

「橋元、あんたにしちゃあ良くやった。渡辺をちゃんと連れ戻してくれたんだね」
「何だよ礼於奈? オレには、醍醐寺 沙耶歌って『フィアンセ』が居るんだぜ?」
「バ、バッカじゃないの! そんなんじゃ無いよ~だ。フンっだ!」

「もう、ふぜけてる場合じゃないわ、蒔雄。最後の仕事が残ってるわよ!」
 副会長に耳を引っ張られながら、生徒会長もステージに上がる。

「あ~あ、もう尻に敷かれてやがんの……」
 天原 礼於奈は、少しだけ寂しそうに微笑んだ。

「みなさま、長らくお待たせ致しましたぁ。いよいよ我がオワコン棟の大トリの登場だぜ!」
 橋元 蒔雄が、得意の演説能力をフル回転させる。
「え~、見た目はメガネのちょっと地味なヤツだが、決めるときは決める男だぁッ!」

 舞台の中央には、羽織はかま姿となった渡辺と、浅間 楓卯歌と浅間 穂埜歌の双子姉妹、それに艶やかな赤い着物姿の『千乃 美夜美』が立っていた。

「……な、なぜお前が、ココに……!?」
 彼女の母親は、美しい娘の姿を驚愕の眼差しで見つめる。
それに気づいた娘も、視線から顔を逸らさなかった。

「茶道部・部長にして『萌え茶』の創始者ぁ~ッ!」
 そう言って、拳を高く突き上げる。
時間稼ぎのため、間延びした会場の雰囲気を変えようとの試みだ。

「渡辺ぇぇーー文ぃ貴ぁぁッ! 奴の点てる抹茶は絶品だぁぁぁーーーー!!」

 双子姉妹も、橋元の言葉を納得して聞いている。
「……いっつも寝っ転がって、呑んでるからね」
「そこだけは説得力ある」

 親友でもあり、悪友でもある生徒会長に、かなりのオーバーアクションで紹介された渡辺は、何歩か歩み出てマイクの前に立つ。

「故あって、茶道部の部長を務めさせていただいております、渡辺です」
 メガネの少年は、少しだけ緊張の混じった言葉で、集まった観客に語りかけた。

「茶道とは、『侘び・寂び・萌え』の三つの要素が重要なのです!」

「何だよ『萌え』って?」「茶道にそんなの入ってないぞ~ッ!」
 意表を突いた渡辺の一言に、会場中が大爆笑に包まれる。

 壇上には、双子も使った簡易式の畳が敷かれていた。
渡辺もそこに座ると、おもむろに抹茶茶碗を取り出す。

(あっ……あのお茶碗って、フーミンと始めて会った時の……)
 美夜美の瞳に映ったのは、藤色をした抹茶茶碗だった。
自分が『カチュリーン』と命名し、ナマイキな後輩にダメだ出しされたコトを思い出す。

 渡辺は、抹茶を点て始める……と、誰もが考えた矢先。
「この抹茶茶碗には……このコが似合うと思うんです。いや、絶対に合ってます!!」

 少年は抹茶茶碗に、美少女フィギュアをINした。

 

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キング・オブ・サッカー・第一章・EP002

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倉崎 世叛

「キミ、サッカーやってるだろ? 左右の太ももの大きさが、極端に違うからね」
 男は一馬の脚を、ペタペタと触りながら言った。

 意思の強そうな瞳に、スラリと高い鼻、揺らぎのない自信を象徴するかの様な眉をしている。

「……あ?」
 いきなり見ず知らずの人間に脚を触られ、顔を強張らせる一馬。
けれども男の質問に、少しだけ緊張が緩む。

「な、なんなんですか、アナタは!」
 一馬の隣で、奈央が叫んだ。

「左利き……少なくとも、キックに関してはそうだろ?」
「人の話、聞いてますか? アナタは誰なんです。これ以上、カーくんの脚を触ったりしたら、警察呼びますよ!」

 奈央は、人見知りで喋れない一馬を押しのけ、男との間に割り込んで仁王立ちをする。

「そうか。いきなり失礼したね。オレはこういうモノだよ」
 ジャージ姿の男は立ち上がると、ポケットの財布から一枚の名刺を取り出す。

「えっと、なになに? 『デッド・エンド・ボーイズ代表取り締まり役』!?」
 一馬が受け取った名刺に書かれていた情報を、奈央が読み上げた。

「『倉崎 世叛(くらさき よはん)』……それが、アナタの名前なんですか?」
 一馬は相変わらず真顔のままだったが、ボクもそれ知りたい……とばかりに頷く。

「ああ、そうだ。こう見えて、サッカークラブのオーナーをやっている。よかったらキミ、ウチのチームに入らないか? 今ちょうど、メンバーを募集してるトコなんだ」
 倉崎の誘いの台詞に、自分の高校のサッカー部に入れなかった、一馬の目がキラキラ輝く。

「お? 乗り気じゃないか、キミのお兄さん」
「カーくんとは、幼馴染みです! 同い年ですから」

「そっか? てっきり、妹さんかと思ったよ」
 倉崎は奈央の容姿を観察しながら、悪びれるコト無く言った。

「う~~!」
 背の小ささや童顔に、コンプレックスのあった奈央は、生理的に倉崎が好きになれない。

「ダメだよ、カーくん。この人、怪し過ぎだから」
「オイオイ、オレのどこが怪しいって言うんだい?」
「全てです! 何もかもです!」「そいつは酷いな……」

「いきなり見ず知らずの人の脚を、ペタペタ触るなんて怪しさ全開でしょ。それにどう見たってあなた、高校生くらいですよね?」

「まあ、そうだな。高校三年だ」
「高校生が、サッカークラブのオーナーだって言うんですか!」
 奈央の的確な攻撃に、頭を掻きながら一馬を見る倉崎。

「クラブは今年、立ち上げたばかりでね。メンバー不足なんだ。クラブのオーナーってのは、ホントだよ。もちろん、トップリーグ所属のビッグクラブじゃあないケドね」
「それでも、クラブのオーナーなんですよね? あまり、お金持ちには見えませんケド」

「そうだな、今のところはね。金はこれから稼ぐところなんだ」

「あのですねえ……」
 奈央は呆れかえる。

「そんないい加減な話、誰が信じるって言うんですか。高校三年なら、わたしたちより先輩なんですから、もっとちゃんと将来を考えてですね……」
 小言モードに入る奈央を厄介と思ったのか、倉崎は耳を塞ぐようにフードを被る。

「……よかったら、見学においでよ。待ってるから」
 倉崎は奈央に聞こえないくらいの小声で呟くと、一馬のポケットにコッソリ名刺を入れて、走り去って行った。

「もう、人の話も聞かないで!」
 奈央は、一馬が最初に倉崎に渡された方の名刺を取り上げて、ビリビリと破く。

「カーくん、あんなヤツの言うことなんか、ぜったい信じちゃダメだよ!」
ゴミとなった名刺は、奈央の財布に仕舞われた。

「倉崎……世叛。一体、彼は何者なんだろう?」
 背の小さな幼馴染みを尻目に、一馬の中で倉崎に対する興味は膨れ上がる。

 彼のズボンのポケットには、もう一枚の名刺が残されていた。

 

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キング・オブ・サッカー・第一章・EP001

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御剣 一馬

 その日、『御剣 一馬』は、サッカー部の部室中央に立っていた。

「何だ、お前……さっきから突っ立って、一言も喋らないでよォ?」
 年季の入った外の看板には、『曖経大名興高校サッカー部』と書かれている。

「オイオイ、口はついてんだろ?」「何とか言いやがれってんだ!」
 奥の窓際に座ったいかつい顔の男たちが、端正な顔立ちの少年に睨みを利かした。

「少しばかり顔がいいからって、スカした態度とってんじゃねーぞ、コラァ!?」
「サラサラした髪が自慢か、なあ? 一年がナマイキなんだよ!」
 先輩風を吹かしながら、言いがかりにも程がある態度で威圧を強める。

 細い眉に切れ長の目……御剣 一馬の風貌は、彼らがやっかむのも致し方なしと思えるくらいに、彼らとは対照的な涼しい顔だった。

「先パイであるオレたち相手に、眉一つ動かさないとはいい度胸じゃねえか?」
「その右手に持ったモンは、入部届けだろ」
「出すのか出さねえのか、いい加減はっきりしろ!」

 ……それから、三十分が経過した。

「だあああッ!? だからなんで一言も喋らないんだよ!」
「何がしてーんだ、お前?」
「入部してーんなら、さっさとそれ出しやがれってんだ!」

 するとサラサラ髪の一年生は、入部届けを持った方の手を高々と挙げる。

『ダアアアアァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!」
 御剣一馬は『入部届け』を、部室の汚い長机に叩きつけた。

「お……おま、どんだけ根性座ってんだ、コラァ!!?」
「無言を貫いた挙げ句が、これかぁッ!?」
 それでも『御剣 一馬』は、表情一つ変えずに無言で立ち続けている。

「ワケわかんねーにも、程があるぜ……!」
「もう、いいから出て行け。お前みたいなヘンなヤツ、絶対に入部させねーからな!」
 いかつい顔の先輩たちは、ついに彼を強引に追い出した。

 それから一時間後……御剣 一馬は一人の女子高生と、川沿いの土手を歩いていた。

「あ~~~、またやってしまったぁあッ!!?」
 御剣一馬は、天を仰ぎ見る。
「すべての勇気を振り絞って、入部届けを出しに行ったのにィ、また一言も喋れなかったぁ~~!!」

 暖かくなり始めた日差しの元、真新しい制服に身を包んだ少年が叫ぶ。
「しかも、緊張のあまり入部届けを……入部届けを、机に叩きつけちゃったあぁッ!?」
 サラサラヘアーの頭を抱え、のたうち回る一馬。

「カーくん、アンタねえ。人前に出ると緊張して喋れなくなるの、何とか治んないの?」
 彼の叫びを聞いた女子高生は、ハアッと溜め息を付く。

「ムリだよォ、奈央。ボクが極度の上り症なの、知ってるだろ? 先パイたちに、ダメでドジで、要らないヤツだと思われたァ!」

 隣を歩く、サラサラヘアで端整な顔立ちの幼馴染みを横目に、奈央は思った。
(一馬の頭の中じゃ、未だに子供の頃のイジメられっ子のままなんだろうケド……アンタ、随分と背も伸びたし、カッコ良くなっちゃってるんだからね)

 土手を歩く二人は、奈央とは違う制服を着た女子高生の集団とすれ違う。
途端に、顔が強張る一馬。

「ねえねえ、今のコ見たぁ?」「めっちゃイケメンじゃん?」「でも、彼女持ちィ?」
「大して可愛くなかったよね、彼女」「だね~、不釣合い!」
 後ろから聞こえてくる女子トークを聞き流しながら、奈央は横目で一馬を見る。

「きっと先輩たちにも……イケメンでナマイキな一年だと思われたのよ……」
 一馬の幼馴染みの女子高生は、小さく呟く。

「ん? なんか言った?」
「カーくん、外見はカッコよくなってんだケドねえ……中身が……」

「やっぱ終ってるよねえ? だって自分の学校のサッカー部に、入部断られたんだモン」
 再び溜め息を付く女子高生の隣で、再び天を仰ぐ一馬。
「ああ、プロのサッカー選手になるっていう、ボクの夢があああぁぁぁッ!?」

 すると一人のジャージ姿の男が、土手をランニングしながら向こうからやって来た。
男はジャージのフードを頭に被り、顔はあまり見えない。
男は、二人の横を通り過ぎるかと思われたが、一馬の前にしゃがみ込んだ。

「……キミ、良い脚してるね」
 男はフードを外すと、若い青年の顔が現れた。

 

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一千年間引き篭もり男・第04章・05話

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巨大アームの艦

『どう対処なされますか、艦長。前方の艦に進路を塞がれ、後方の艦隊からの離脱が難しくなりました』

 目の前に現れた漆黒の艦は、急速回頭して船首の四つのアーム部分をこちらに向ける。

「な、なんかおっきな、イカさんみたいなのですゥ!?」
 巨大な四本のアームを大きく広げ伸ばし、二千四百メートルもの巨体を誇るMVSクロノ・カイロスを補足しようとした。

「この艦だって、時の魔女のモノだろうに……一体、なにを考えてボクに艦を渡した!?」
 目の前で広がる巨大アームは、大航海時代の船に巻き付くクラーケン(巨大海洋生物)を思わせる。

「仕方ない……主砲はあるのか、ベル?」
『フォトンブラスター三連装主砲が、艦の中央に三門ございます』
「漆黒の艦の、アームの中央部に目掛けて発射、そのスキに離脱する」

『ミッションを承りました。これより実行いたします』
 ベルダンディはそう言うと、艦橋の下に広がる街の中央上部を横断する、支えのような構造物に備えつけられた主砲が動き出す。

「全部自動で行われるのか? 『人の手の入らない戦争』というのも、不気味なモノだな」
 ボクが感慨にふけっていると、MVSクロノ・カイロスご自慢であろう主砲が、火を噴いた。
真っ白な閃光が、漆黒の艦の中央部と結ばれる。

「アニメみたく光速のビームが、ゆっくり飛んでくワケじゃないんだよなあ……」
 二次元世界のロボットアニメで見慣れた光景とは、若干の差異はあったものの、結果的に巨大な漆黒の艦は大爆発を起こした。

「今だ、右舷から突破だ!」
『了解です、艦長』
 大爆発の中を潜り抜けて、巨大な艦体が進んでいく。

「やったぜ、じいさん。ナイスな采配じゃねえか!」
「ホント、艦長の椅子も伊達じゃない」
「お風呂を覗いたときは軽蔑したケドね」

 真央とヴァルナはボクを褒めたが、ハウメアにチクリと釘を刺された。
「ア、アレは忘れてないんだ?」
 今の彼女たちは、二つの記憶を持っている。

『彼女たちの記憶は、艦橋に上がる時点で返却してあります。この艦での偽りの記憶も、しっかりと覚えていますよ』
 ベルダンディは、眉一つ動かさずに言った。

「千年後の未来にあっては、人の記憶もここまで曖昧になってるんだな」
「オイ、艦長さんよォ。どうやらまだ、終わってねえみたいだぜ!?」
「……え?」「うわあッ!?」「きゃあああああーーーーッ!!?」

 プリズナーが指摘した瞬間、艦が急にストップされる。
「巨大な触手は、艦の後方にも存在したようですね」
 プリズナーの相棒のアーキテクター、トゥランが言った。

 爆発から現れた巨大なアームが、MVSクロノ・カイロスの後方に巻き付いている。
「マジでクラーケンみたいな艦だな!? ど、どうする!?」
すると爆発の中から、別のモノが飛び出してきた。

「ア、アレって戦闘機ですか!?」「今度は、艦載機での戦闘かよ!」
「この艦にも、艦載機はあったよな……」
 ボクは、六十人もの娘たちに視線を送る。

「へっへー!」「やっと、わたしたちの出番だね?」「まかせといて!」
「あんなヤツら、すぐにやっつけちゃうんだから!」
 無邪気にはしゃぐ、十歳の女の子たち。

「勇ましいこったな。ウィッチ・レイダーのガキどもは。トゥラン、お前も出れるか?」
「誰に言っているのかしら? 単体性能では、あのコたちに負けるハズは無いわ」
 どうやらコンバット・バトルテクターにも、プライドとか矜持があるらしい。

「お前らも、だいじょうぶか。お前らのアーキテクター、ずいぶん小っちゃいケド?」
「ウィッチレイダーを、ナメないでよ!」
「小っちゃいってコトは、当たりづらいってコトなんだから!」

「パパは艦橋で見てて!」「パパに、イイとこ見せちゃうよ!」
 娘たちとトゥランは、エレベーターで艦橋を降りて行った。

 

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糖尿病で入院中に描いたイラスト・007・キング・オブ・サッカーのトップ絵

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なんとか完成かな?

 『キング・オブ・サッカー』のラノベブログ用トップイラスト、何とか完成かな。
時間、かかったぁ!!

 下書きは、糖尿病で入院中にコピー用紙に描いてたもので、コピーしてスキャナーで取り込んで、下書きにしてます。
サッカーものだけあって、キャラ多い。

サッカーラノベとして

 イラストも完成まで漕ぎつけたコトだし、いよいよ本格的に連載しようかと思ってます。
連載中の他のラノベも、そろそろ終わってしまうものもあるので。

 サッカーはメジャーなスポーツだケド、それ故に評価も厳しくなりうそう。
戦術面、技術面、ちゃんと描かんとなあ。

カーくんをヨロシク!!

 主人公は、『御剣 一馬』です。
見た目はイケメンだケド、中身は頼りない感じの少年ですね。
幼馴染みの少女には、子供の頃の愛称である『カーくん』と呼ばれてます。

そんな彼と、デッドエンド・ボーイズの個性豊かな面々が織りなす、ファンタジックなサッカーをご期待下さい。

 カーくんをヨロシク!!

この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第05話

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四十代リストラ

 牛丼チェーン店のカウンターではない席に、七人の少女たちと座るボク。
 男性客の割合が圧倒的に多い牛丼屋では、まず見かけない光景では無かろうか?

「キアの家って、経済的に大変なのか?」
「せやな。正直、大変や。オトンが仕事クビになってもうたさかいな」

「それってユークリッドや、教育民営化法案の影響だったりするのか?」
 教育民営化法案が施行され、学校教育が民間へと移行されて十年。
公務員でなくなったコトで失職した教職員は、山のように存在した。

「ウチのオトンは、美容師の専門学校の教師やったんや。普通の学校の先生と違って、動画さえ見ておけば解かるっちゅうモンでもないんで、ちっとは安心しとったんやが……」

「あ、前にお昼の情報番組でやってました。失職した教職員が、美容師の学校や、美術やデザイン、コンピューター関連の専門学校に殺到してるって」
 卯月さんが指摘する。

「確かに教員免許を持ってれば、選択肢には挙がってくるか。若い世代なら、それぞれの分野に興味があるなら、やっていけそうだし」

「それなんや……」可児津 姫杏は、力なく言った。
 ステージでは、真っ赤に染まって暴れまくっていたツインテールも、今は焦げ茶色になって力なくうなだれている。

「専門学校も経営が厳しゅうて、できる限り若くて安上がりな人材を雇いたいみたいなんや」
「まあ専門学校も、営利企業だからな。とは言え、キアのお父さんは何歳?」

「た、たしか四十……四十一やったかな?」
「四十二です、姉さん」「せ、せやせや!」
 しっかり者の妹に指摘される、ツインテール少女。

「確かに商売人やさかい、しゃーない部分もあるで。せやけど、四十になった途端クビにされる世の中で、どないして子供育てるっちゅうねん!!」

 キアが発した台詞は、『彼女の父親が発したモノ』そのままだろうと、ボクは思った。
「四人も娘がいて、高校受験やら大学受験やらで、以前なら大変だったんだろう」

「学校自体が、無くなってしもうたんや。学力テストは盛んになったケド、高校や大学に行く必要ものォなったさかい、その辺は金がかからんで有り難いわ」

「でもユミアの開いた、ボクの教室には参加するんだろ?」
「あれは、金が出る方やさかいな。流石は天下のユークリッドや。気前ええわ」
 ボクはその事実を、初めて知った。

「ウチはこのあと先生の授業やさかい、シア……ミアとリアを頼んだで」
「このコたちより、うちにいるもっと厄介なのの方が問題だケドね」
「せやな。オトンにも、あんま酒飲まんように言うといてな」

 それからボクとキアは、卯月さんたちやキアの妹たちと別れ、ユミアのマンションに向かった。
やたらと豪勢なロビーで、ツインテール少女がとつぜん立ち止まる。

「先生、ちょっくら先行っといてんか」
「ん、どうしたんだ、キア。なにか用事か?」

「ここの決まりやねん。私物は一階のロッカーに預けとけって。まあスマホやノートパソコンなら、持ち込みOKなんやケド……」
 さすがに『巨大なカニ爪ギターは』は、マズいらしい。

 ボクは一人で、エレベーターに乗った。
扉が閉まる瞬間、一人の男の姿がエレベーター前面の透明ガラスに映る。

「やあ、久しぶりだね。授業は順調かい?」
 男は言った。

「はい。久慈樹社長。今のところ、大きな問題はありません」
 振り返ると、男は爽やかにほほ笑む。

「そうかい。だがね……『重要な問題』というのは、常に水面下で進行してしまうモノなんだ」

 反論する余地のない言葉だった。

「ボクの生徒たちに、お金が支払われているらしいですね」
「おや、もう気付いたのかい? 中々に優秀じゃないか……」

 ボクが、押し黙ったままでいると、久慈樹 瑞葉は深いため息をつく。

「それはそうだろう? うら若き少女たちの人生を、キミやユミアの茶番に付き合わせているんだからね」

 

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