ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第五章・EP035

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最後の攻防

「ス、スゲエぜ。アイツ、杜都と同じくらいの距離を沈めちまっぞ!」
 黒浪さんが、ベンチで目を丸くした。

「だが彼のシュートは、威力もスピードも、それ程では無かったように見えたが」
「ええ、ですがアウトに回転がかかってました。それで取れなかったのでしょう」
「なる程、キーパーから逃げて行くボールか」

「そうだぜ、雪峰、柴芭。野洲田のヤツは昔っから、シュートにスクリュー回転がかかるクセがあってな。クセを直さず、そのまま得意技にしたんだ」
 紅華さんが、自分のコトのように自慢する。

「か、変った得意技だな」
「ま、本人は意図せずかかっちまう回転だから、決まるときは決まるって感じだがな」

「だが、これで同点だ。この試合、あるいは……」
「そうだぜ、監督。予想が外れたんじゃねぇか?」

「こんなハズじゃ、うう……」
 スコアボードを眺めながら、言葉を詰まらせるセルディオス監督。

「オッシャ、なんとか同点には持ち込んだぜ!」
 グランドではシュートを決めた野洲田さんが、ガッツポーズを作っていた。

「あと少しで止められたのに、クソ!」
「どうだかな。そんな貧弱なタックルじゃ、オレのスクリューシュートは止められんぜ」
 悔しがる旗さんに、余裕の表情で帰陣する野洲田さん。

「アナタこそ、マグロがどうとか言ってましたが、大したスピードではありませんね」
 最初に抜かれた湧矢さんも、悔しいのか吐き捨てる。

「そりゃな、マグロは昔は時速100キロで泳ぐなんて話もあったがよ。最近の研究じゃせいぜい7~8キロらしいぜ。ま、水の水圧を受ける海ん中じゃ、それでも凄いんだがな」
 冷静さを欠いた2人は気付かなかったが、それは鈍足ドリブルの言い訳に過ぎなかった。

「なんてこった、同点にされちまったじゃねえか!」
「意外に、決定的な仕事ができる選手が多いな」

「呑気なコト言ってんじゃねえぜ、九龍。この試合……」
「ああ。勝つのは、オレたち狩里矢だ」

 試合再開のホイッスルと同時に、狩里矢のツートップがドリブルとパスを織り交ぜながら、デッドエンド・ボーイズのゴールに向けて突進して来た。

 審判が、チラリと腕時計を確認する。
試合は90分を使い切り、ロスタイムへと入っていた。

「せっかく、野洲田が決めてくれたんだ!」
「ここさえ守りきれれば、同点で終えられる」
「何としても、通すな!」

 汰依さん、蘇禰さん、那胡さんの3人が、突破を許すまいと立ちはだかる。

「ケッ、雑魚が雁首揃えたところで、オレたちが止められっかよ!」
 ボールを持っていた新壬さんが加速し、汰依さんと蘇禰さんの間を抜く。

「そんなの読めてんだよ。ここだァ!」
 同僚2人が限定したコースに、タックルを仕掛ける那胡さん。

「そりゃ、こっちもな……」
 新壬さんは、後ろ脚で九龍さんにバックパスを出す。
次の瞬間、ボールを持たない新壬さんの脚を、那胡さんが刈り取った。

『ピーーーッ!』
 けたたましくホイッスルが鳴り、ファウルが宣告される。

「し、しまった……」
 那胡さんはイエローカードを提示され、項垂れた。

「PKにはならなかったが、絶好の位置だぜ」
 ペナルティエリアの左前で、新壬さんがボールをセットする。

「みんな壁を作れ。ここさえ護り抜けば、ヤツらの陰謀は完全に阻止される!」
「オーケー、旦那。キーパーはザルな海馬コーチだ。気合入れて護れ!」
 キャプテンマークを巻いた龍丸さんの指示に、野洲田さんが応えゴール前に壁が築かれる。

「ヤ、ヤベェ……脚が、震えて来たァ」
 海馬コーチの、セルライト塗(まみ)れの脚がブルブル震えた。

「キーパーは、あのヘッポコ親父だ。壁さえ越せば決まるぜ」
 新壬さんが、ゴールの右隅を狙って助走に入る。
そうはさせまいと、必至に飛ぶデッドエンド・ボーイズの構築した壁。

「亜紗梨、頼んだぞ」
「ああ、龍丸。ここは決めさせないよ」
 ゴールの右隅には、センターバックの一角である亜紗梨さんがカバーに入っていた。

「な~んてな。任せたぜ、忍塚」
 けれども新壬さんは、セットしたボールを蹴らずにそのまま走り抜ける。

「ケケ、本命は狙いはこっちよ!」
 残されたボールに、後半開始早々にロングシュートを決めた、忍塚さんが走り込んでいた。

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・09話

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共鳴

『ギェエエエエーーーーー!!!』
 悲鳴とも聞こえる、醜い声を上げる深紅の魔王。

「そ、そんな……ガラ・ティアさんまで、魔王に……!?」
 吸盤の付いた真っ赤な脚が、四方八方に広がって街の建物に巻き付き、人々を締め上げる。
蟹の巨大ハサミを振り回し、舞人たちに攻撃を仕掛けて来た。

「舞人さん、絶望するのは後です」
「今は、対処法を考えるときだよ」
 リーフレアとリーセシルは、互いの杖をクロスさせて水の渦を創り上げる。

「水の精霊たち、力を貸して」
「水の牙(ウォーターファング)!」
 渦巻から無数の水の刃が飛び出して、魔王の吸盤付き触手を切断した。

「や、やった!」
 脚を奪われ、建物の上に崩れ落ちる魔王。
捕まっていた海の民も、解放され水の中へと泳ぎ去る。

「流石に、そこまで簡単じゃないみたい」
「脚が、再生されて行きます」
 双子司祭の指摘した通り、真っ赤な巨大触手は切断面から新しく生え替わっていた。

「ど、どうします。リーセシルさん、リーフレアさん」
「そ、そうだね。ガラ・ティアは既に、魔力の高い人間を魔王へと変える、サタナトスの剣によって斬られてたんだ」

「サタナトスに、また遅れを取ったって言うんですか!?」
「魔王となったガラ・ティアさんを救う、対処法はただ1つ……」
 リーフレアは、舞人を見つめた。

「ボクの……ジェネティキャリパー」
「そうです、舞人さん。サタナトスの、プート・サタナティスが人を魔王と換えるように、アナタの剣も魔王を少女の姿へと変えるのですから」

「だけど、そのせいでシャロリュークさんが……」
 蒼い髪の少年の脳裏に、赤毛の英雄と少女の面影が浮かぶ。
少女の姿となった赤毛の英雄は、還らなかった。

『ギュエエエェェェーーーーー!!』
 哀しみの叫びの声と共に、街を破壊し人々を襲う深紅の魔王。
美貌の女将軍の成れの果ては、市場に打ち捨てられた大量の魚介類を捕食し、巨大化する。

「アレはもう、ただの魔王だよ。自我を、完全に失っている」
「魔王となったシャロリューク様も、こうだったのですか?」
「はい……そうです」

 海底の街を破壊する魔王ガラ・ティアと共に、忘却の海底神殿を打ち壊した魔王アクト・ランディーグも、紫色の海龍の姿を巨大に変貌させていた。

「ね、姉さま、マズイです。早くここを対処して、バルガ王子たちの救援をしないと……」
「舞人くん、お願い。そうじゃなきゃ、わたしたちがガラ・ティアを、倒すしか無くなっちゃうよ!」
 双子司祭の願いに、仕方なく舞人も覚悟を決める。

「ジェネティキャリパーーーーー!!」
 漆黒のガラクタ剣を振り上げ、醜く変貌したガラ・ティアへと斬りかかった。

「グッ……うわ!?」
 けれども、深紅の魔王を中心に黒い波動が発生して、舞人は弾き飛ばされてしまう。

「ね、姉さま。こ、これはッ!?」
「わからない……けど、ガラ・ティアの中に、何か感じるよ」

「ククククク、流石に察しが良いじゃないか、リーセシル」
 妖しく、冷たい声がした。
それはリーセシルにとっては、王都での魔王との戦いの時に聞いた声だった。

「お前は……サタナトス!?」
「ね、姉さま!?」
 慌てて姉の元へ身を寄せる、リーフレア。

「随分と、遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ」
「それじゃあ、ガラ・ティアたちを魔王にしたのは!?」
「やはり、アナタの仕業なのですね!」

「キミたちこそあの時は、よくも魔王ザババを倒してくれたね。だけど今日は、あの時の男は居ないじゃないか?」
 街を覆うドームの天井から、無数に零れ落ちる海水の瀧を背に、金髪の天使が微笑む。

「サ、サタナトスーーーーッ!!」
 そこに舞人が、怒りに任せ斬りかかった。

「これはこれは、新たな英雄くんじゃないか」
 金髪の少年は、いとも簡単にそれをかわす。

「お前がパレアナを……シャロリュークさんをおおぉぉーーーーッ!!?」
 着地と同時に、再び斬りかかる舞人。

「冷静じゃないな。失望したよ」
 今度は、自らの剣で斬り結ぶコトを選択するサタナトス。

「な、なん……だッ!?」
「何ィ、け、剣が!?」

 舞人とサタナトス、2人の剣が激しく共鳴した。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第06章・第06話

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教師の光と影

「……たっく、なんでこんな騒ぎになってるのよ」
 栗色の髪の少女が、遥か天空にある自分の部屋から、下界に集まった世話しない群集を見降ろしながらため息を付いた。

「ゴメンなぁ、ユミア。アタシが、勘違いして先生に喰いついちゃったばかりに……」
 金髪たてがみの少女が、申し訳なさそうに項垂れる。
部屋のデジタル時計は、午前10時を回っていた。

「わたしも愚かだったわ。ユミアと先生との労使契約を、婚姻届けと勘違いするだなんて、今考えてたらあり得ないコトよ。本当に、ゴメンなさい」
 正義を重んじる少女ライアも、自らの失敗に顔を赤らめる。

「そんなに謝らないで、レノン、ライア。根本的に悪いのは、久慈樹社長なんだから」
 ユミアは寝室に戻って、ピンク色のパジャマを脱ぎ捨てながら言った。
そこは時計の様にベットが並んだ寝室で、多くの少女たちが元気に飛び跳ねていた。

「アイツが勝手に先生と、賭けまがいの契約をしたのが問題なのよ」
「えっと確か、アイドル教師の方のユミアの笑顔を、3ヶ月で取り戻さなきゃいけないんだっけ?」
 レノンも、だらしなく着ていたオレンジ色のパジャマを脱ぎながら、返事を返す。

「貴女たち、もう10時なのよ。もっと早く起きて、着替えたら」
「え~、アタシはこれでも、早起きな方なんだケド」
「わ、わたしは元々、夜型だし……」

「困ったモノね」
 ライアも同じ寝室で寝起きするウチに、大雑把でいい加減な少女と、夜にネトゲやスマホゲーに没頭する少女の性格も、大体は把握していた。

「と、とにかく悪いのはアイツ。みんなだって弱みに付け込まれて、こんな部屋で見世物みたいな生活をさせられてるのよ。ユークリッドの被害者よね」

「確かに、弱みに付け込まれたってのはあるわ。でも正直、ユークリッドに拾ってもらって無かったら、もっと悲惨な生活になっていた可能性が高いわ」

「ウチも同じだなぁ。それに天空教室のみんなって、いいヤツばっかジャン。カワイイ子もいっぱいだしさ。な~、アリスゥ」
 レノンは、白いもふもふ髪の女のコを引っ張り寄せ、ホッペをプニプニする。

「や、やめて下さいィ~!」
「止めなさいって、アンタ!」
 レノンの頭をポコンと叩く、アイボリー色の髪の少女。

「イッタ~、何だすんよメリー」
「嫌がってんだから、止めなさいって。アリスもいい加減、反抗しないとダメよ」
「はぁい、メリー先生」

「メリーも、すっかり良い先生ね。2人の学力も、それなりに上がってるんじゃない?」
 ユークリッドの制服に着替えたユミア。
メリーはレノンとアリス、2人の生徒の学力アップに一役買っていた。

「相変わらずユミアは、上から目線ね」
「そ、そうかしら、ゴメンなさい」
「まあいいわ。一緒に暮らしてみて、それがけっこう天然だって解ったし」

「天然ですって。それ、酷くない」
「わたしは数学に置いては、ユークリッドのアイドル教師である貴女から、たくさん教わっているのよ。つまり、貴女はわたしの目標なワケ」

「ええ、メリーってもしかして、教師を目指してんのか?」
「でもでもォ、教え方上手いし、向いてると思うです」
 2人の生徒も、顔を見合わせ納得する。

「そ、そうね。元々、子供の頃の夢でもあったし、アンタたちに勉強を教えてるうちに、わたしも目指してみようかなって考え始めたのよ」

「凄いよ、メリー。わたしは、先生って職業を好きになれなかったから……」
「意外だわ。だって動画の中の貴女は、あんなにキラキラと輝いていたじゃない」

「それは、お兄さまが生きていた頃の話。お兄様が死んでからは……もう……」
 言葉を繋ぐコトが出来なくなった少女に、レノンとアリスが寄り添う。

「つまり、笑顔のアナタが輝いているのは、もう何年も前の動画なのね」
「オイ、メリー。もうその辺に……」

「いいのよ、レノン」
 顔を上げたユミアの眼は、真っ赤に腫れていた。

「わたしは、お兄様に喜んで欲しくて、先生をやっていたのよ」
 意を決し、心を開こうとする少女。

 その時、天空教室のある超高層タワーマンションの地下駐車場に、1台の真っ白な高級外車が意気揚々と入って行った。

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一千年間引き篭もり男・第06章・22話

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宇宙のオオカミ

 ロッジのガラス戸を利用したモニターに、深淵の宇宙で行われる艦隊戦の様子が映し出された。
砲火を交える、2つの陣営の艦隊。

「マーズめ。軽はずみな行動を……!」
 アポロは席を立って、モニターを怒りの碧眼で凝視する。

「ど、どうして戦闘になっているんだ。ボクは……」

「ええ。これは恐らく、マーズの暴走でしょう」
「宇宙斗艦長の艦隊は、仕方なく応戦していると言ったところでしょうね」
 メリクリウスとセミラミスさんも、同様に表情を曇らせていた。

『モニター、マーズ様に切り替わります』
 女性ぺレーターの声と共に、再びガラス戸の画像が切り替わる。

「よお、アポロ。悪いが勝手に、戦端を開かせて貰ったぜ」
 真っ赤な髪に、燃えるようなオレンジ色の瞳、褐色の肌をした男が、モニターに映し出された。

「どう言うつもりだ。キサマにそんな権限は無い。さっさと、艦隊を撤収しろ」
 マーズに対しても、高圧的な態度を崩さないアポロ。

「お前こそ、オレに命令する権限は無えハズだ。そいつらとの交渉は任されたんだろうが、オレはディー・コンセンテスから、軍の管轄権と火星圏の治安維持を任されている」
 今度は、火星の影響下であろう宙域を航行する、深紅とオレンジ色の大規模艦隊が映し出される。

「それに、とっくに戦争は始まってんだよ。そいつの艦の装備に、オレの管轄する、フォボスのマーズ宙域機構軍のコンバット・バトルテクター、十二機が破壊されちまってるしな」
 艦隊は巨大戦艦と宇宙空母を中心に構成され、どの艦の側面にもオオカミの紋章が刻まれていた。

「ヤレヤレ。確かにアナタは、火星圏代表であり、マルステクター社の会長ですが……」
「だからこそ慎重に物事を運ばねば、返って火星圏を危険に晒すと解からないのですか」

「これはこれは、宇宙通商交易機構の代表・メリクリウスと、カルデシア財団のご令嬢・セミラミス・カルデシア・アタルタギスじゃねえか。死んだと思われていた妹が生きていて、さぞや残念だろ?」

「それはいささか、聞き捨てなりませんねえ」
「いくら貴方と言えど、無礼が過ぎるのではありませんか!」
 サーフパンツの金髪の青年は涼しい顔をし、白いビキニの女性は、豊かな胸を揺らし怒っている。

「無礼ですって、セミラミスお姉様。何を白々しいコトを、言っておいでなのかしら?」
 すると褐色の男の傍らから、1人の女性が現れた。

「あのコ……クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダが死んで、最も利を得るのは、次の後継者候補であるお姉さまではなくて?」

「ナ、ナキア。どうして貴女が、マーズ様と一緒に居るのよ!?」
「わたしが誰と一緒だろうと、お姉様には関係の無いコトだわ」
 女性は、しなやかな筋肉で覆われた腕に、自分の身体を絡みつかせる。

「ナキアって……もしかして、セミラミスさんの!?」
「ええ。あのコは、わたくしの実の妹よ……」
 モニターを見つめるセミラミスの瞳は、どこか物悲しさを秘めていた。

「始めまして、宇宙斗艦長。わたしは、ナキア・ザクトゥ・センナケリブ」
 そう名乗った女性は、セミラミスより僅かに若く、胸やお尻も少しだけ小ぢんまりとしている。

「初対面ながら恐縮ですが、アナタの艦隊は間もなく、宇宙の藻屑となって消えるでしょう。この艦、ナキア・ザクトゥと、マーズ様の率いる6個艦隊によってね」

 日に焼けた肌に、カーネーション色のロールしたツインテールは床まで伸び、大きな釣り目にはエメラルド色の瞳が輝いていた。

「ナキア・ザクトゥは既に、カルデシア財団の後継者争いからは外れている。マーズ、キサマそんな女を囲っていたのか?」
 アポロが言った通り、彼女の名前にだけ『カルデシア』の名が、入っていない。

「まあな。長い歴史の中には、さらに大勢の後継者候補が居ながら、王となった者も大勢居るんだぜ」
「マ、マーズ様。心より、お慕い申し上げております」
 頬を紅く染め、潤んだ瞳で軍神を見つめるナキア。

「これより、オレ自らが旗艦に移って指揮を執る。アポロ、キサマはせいぜい、任された交渉とやらでも進めて置くんだな」
 マーズは、ナキアの腕を振り解いてキスをすると、画面外へと歩き出す。

 軍神に率いられたオオカミの群れは、一斉にボクの艦(MVSクロノ・カイロス)へと牙を剥けた。

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP034

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お魚パワー

「な、オレのパスが、読まれていただと!?」
 九龍さんが落したボールに背後から飛び込んで、旗さんの前でカットする。

「スゲー。一馬のヤツ、ポストプレーを予測してやがったのか!?」
「ポストプレイは、最も予測し易いプレイの一つですからね」
「落とす相手との間に入って、カットすれば良いってか。なる程ねえ」

 柴芭さんの分析に、腕を組み納得する紅華さん。

「でも、奪ったところで、どうなるね。レギュラーは全員、体力の限界よ」
「攻撃に繋げられる選手は、いないと言うコトですか」
「イヤ、雪峰。後半から入った、汰依、蘇禰、那胡が居るぜ。アイツらなら……」

「紅華が 推薦するだけあって、確かに3人は良い選手よ。だけど、局面を打開できる選手、違うね」
 セルディオス監督も、相変わらず辛らつな現実を突きつける。

「こんなサイドライン際でボールを取ったところで、無駄ですよ。キミは一体どこへボールを、出すって言うんです?」
 旗さんが、直ぐに気持を切り換えてボールを奪いに来る。

 ……確かに、ボールを預ける先が無い。
着地した九龍さんも、体制を立て直しプレッシャーをかけて来る。
ど、どうしよう!?

「一馬、こっちだ!」
 ペナルティーアーク付近で、誰かが手を上げている。
ボクはそこに、パスを入れる他無かった。

「ナイス判断、一馬」
 ボールを受けたのは、3枚のセンターバックの一番右に配置されていた、野洲田(やすだ)さんだった。

「守備は任せたぜ、龍丸の旦那」
「ウム、ヤツらがどんな陰謀を廻らせていようと、止めて見せる」

「……っしゃ、いっちょぶちかましてやんぜ!」
 野洲田さんは、龍丸さんにバックラインを任せて、ドリブルを開始する。

「何なんだ、今度はまた違うセンターバックが、オーバーラップし始めましたよ。3枚全員が、リベロだとでも言うんですかァ?」
 愚痴を言いつつも旗さんは、再び切り換えて野洲田さんを後ろから追っていた。

「湯楽さん、ここはボクがアタックに行きます。後ろ、任せましたよ」
「了解。なるべく、自分でボール取ってね」

「解かってますって。後半から入った選手で、ボクだけまだ何も活躍してませんからね」
 やる気のない先輩に、そう宣言した湧矢さんが、野洲田さんの前に出て勢いを止めようとする。

「マグロって魚は、止まると死んじまうんだ。悪いが、ここで止まるワケには行かねェ!」
 何の躊躇も無く、突進する野洲田さん。

「うわ、ちょっとマジかよ!?」
 このままでは、正面衝突をしてしまうと判断した湧矢さんが、進路を開けつつもタックルを繰り出す。

「温いな。そんなタックルじゃ、マグロの勢いは止められんぜ」
「ぐわッ!?」
 タックルの脚ごと弾き飛ばし、直線的なドリブルを続ける野洲田さん。

「オラオラ、もっと魚喰え。骨を太くせんと、パワーが生まれんぜ」
 野洲田さんは、ドリブルの勢いのまま、湯楽さんにショルダーチャージを喰らわす。

「ぎゃあッ、痛いィ!?」
 これまで、何人ものドリブラーを止めて来た湯楽さんの壁が、簡単に突破される。

「な、なんだか、意外に脆いな。アイツには、オレですら止められたのによ」
 ベンチの紅華さんが、悔しさを滲ませた。

「あの湯楽と言う選手は、ファーストボランチにアタックに行かせ、かわしたコースを読み、長い脚(リーチ)でボールを刈り取るプレイを得意とする。どうやら接触(コンタクト)プレイは、それ程得意では無い様だな」

「マジかよ、雪峰!?」
「まさか、そんな弱点があったなんてなァ」
 2人のドリブル―は、顔を見合わせ感心する。

「どいつもこいつも、カルシウムが不足してんなァ」
 野洲田さんが、海遊するマグロの如き勢いのまま、脚を振り合上げる。

「やらせるかァ!」
 けれどもその背後には、旗さんが迫っていた。

「今度、ウチの食堂の魚定食、喰いに来な!」
 僅かに早く、シュートが放たれる。

 緩やかな弧を描いたシュートは、狩里矢のゴール右隅に吸い込まれた。

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・08話

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美しさと醜さ

「頭が空っぽの骸骨如きが幾ら群れたところで、このガラ・ティアの珊瑚槍『エリュ・トゥラー』が防ぎ切れると思って?」

 深紅の女将軍のコーラルピンク色の槍が、黒き骸骨兵を破砕する。

「醜い骸骨など、泡を使わなくとも単純な打撃で十分倒せますわ」
 ガラ・ティアを取り囲んでいた20体ほどの骸骨兵は、次々に砕かれ大地に還った。

「マ、マズイよ。こんなにも早く、スパ・ルトイが倒されちゃうなんて」
「まだ、呪文の完成には時間が……!?」
 長い詠唱を必要とする高度な魔法を唱える双子姉妹を、護る兵士は既に存在しない。

「ウフフ、可愛らしい顔のコたちね。きっと招来は、美しい女性に成長するコトでしょう」
 無防備となったリーセシルとリーフレアに、じわじわと歩み寄るガラ・ティア。

「でも残念だケド、貴女たちにはここで死んで貰うわ。わたくしには、時間がありませんの!」
 珊瑚槍エリュ・トゥラーを構えて、一直線に双子司祭の身体を貫こうとする。

「2人は……殺らせない!」
 けれども女将軍の槍は、おかしなパーツがゴテゴテとくっついた剣によって阻まれた。

「アラ、坊や。まだ立ち上がれたの?」
 マゼンタ色の髪を掻き上げ、妖しい瞳で舞人を見つめるガラ・ティア。
「そのまま気を失っていれば、死なずに済んだかも知れないのに残念ね」

「ボクが、2人を護らなきゃいけない。もう、大切な人が死ぬのなんて、まっぴらだから!」
 ジェネティキャリパーを構え、双子司祭の前に立つ舞人。
幼馴染みの少女を失い、憧れの英雄もこの世を去った今、彼は覚悟を決めていた。

「勇ましい坊やだコト。でも、無謀な勇気ね」

「そうかも知れない。だけど、ガラ・ティアさんはどうして戦うんです。神殿が破壊され、国のみんなが大変な目に遭ってるんですよ。貴女は、この国の将軍なんでしょう?」

「わたくし達7将軍は、ダグ・ア・ウォン王にお仕えする身。ダグ・ア・ウォン王が魔王となられた今、我らもその尖兵となって戦うしかありませんの!」
 大量の泡を纏った槍で、舞人に突進するガラ・ティア。

「王さまが、魔王に……そんな!?」
「舞人くん!」
「気を付けて下さい!」

「ハッ……クッ!」
 リーセシルたちの叫びを聞き、寸でで剣を使って槍を止める蒼き髪の英雄。

「わたくしの槍は、その程度では止められなくてよ」
「グワアアアァァァーーーーッ!!」
 槍を止めても尚、大量の泡が身体に纏わり着き、バブルパルスの衝撃が舞人を襲う。

「さ、さあ、これで貴女たちを護る邪魔者は、居なくなりましたわ」
「残念だケドまだ、舞人くんは倒れて無いよ」

「……なッ!?」
 リーセシルの言葉に、後ろを振り返る女将軍。

「ボクはまだ……ここで倒れるワケには行かないんだ」
「ぼ、坊や。アナタは、ナゼそこまで……!?」

 その時、大きな爆音と共に、衝撃波が神殿の辺り一体を襲った。

「う、うわああ!」
「し、神殿に、怪物が現れたぞォ!?」
 遠くの方で、街の住人たちが騒いでいる。

 それは、バルガ王子の率いる海皇パーティーと刃を交えていた、アクト・ランディーグ将軍の変わり果てた姿だった。

「お、おぞましですわ。あの様な化け物など……!!」
 深紅の女将軍は、意表を突き舞人に襲い掛かる。

「ガハッ!」
 地面に叩き付けられ、何度もバウンドする舞人。

「貴女が、時間が無いと言った意味が、解りました」
「それは、こう言うコトだったんだね……」
 詠唱を続けながらも、哀しい瞳で女将軍を見る双子司祭。

「何を言っているの、小娘風情が」
 蒼い髪の少年を脚で踏みつけ、槍を胴に突き刺す構えのガラ・ティア。
舞人が見上げたその顔に美しさは無く、醜く歪んでいた。

「いい加減に、死んでしまいなさい。坊や……グフッ!」
 舞人に槍を突き立てようとした女将軍が、胸を押さえて苦しみ始める。

「ど、どうしたんです……ガラ・ティアさん!?」
「み、見ないで……」
「え?」

「ギャアァ……こ、こんな姿……イヤァ!」
 舞人が呆気に取られていると、女将軍の腹部が大きく膨らみ始めた。

「お願い、見な……ブゴォ!?」
 象徴だった深紅の鎧が弾け飛び、水着が裂け、身体のあらゆる部位が肥大化する。
美しい顔は、膨張した身体に飲み込まれ、腰から吸盤が無数に付いた脚が伸びた。

「ガラ……ティアさん?」
 青褪める少年の目に映ったのは、タコの様な真っ赤な無数の脚と、蟹の様な巨大ハサミを持った、醜悪な魔王の姿だった。

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キング・オブ・サッカー~登場人物紹介・021

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旗 鬨由(はた ときよし)

ポジション :MF
身長    :173cm
体重    :58kg
利き脚   :右脚
背番号   :13
愛称    :旗、トキ
出身地   :埼玉県
好きな食べ物:みそポテト・焼きトン
嫌いな食べ物:グレープフルーツ

プロフィール

 狩里矢のユース出身のボランチで、無尽蔵の運動量を誇る。
動物をこよなく愛し、動物からも愛される性格。

 幼い頃から、飼い犬である獅牙丸とともに、原っぱで日が暮れるまでボールを蹴り合って遊んでいた。
驚異的なスタミナや、味方を活かしたショートパスの能力は、この体験によって身に着けたモノ。

 新壬からは、九龍、忍塚、湯楽らと共に四天王と呼ばれるが、本人的は恥ずかしいネーミングだと嫌がり、頑なに拒否する。

 同じボランチの湯楽とは、ダブルボランチとして名コンビを組んでおり、旗が運動量を活かして相手にプレッシャーをかけ、湯楽が長いリーチを生かしてボールを刈り取るプレイを得意とした。

 ドリブル力もあり、スピードやダイナミックさこそ無いものの、タッチ数が多く方向転換が容易なドリブルスタイルで敵陣に斬り込む。

 ボールキープは若干苦手としており、中央で勝負するよりもサイドに展開してからのクロスで、チャンスメイクをするコトが多い。
稀に、自らフィニッシャーとなる場合もある。

 練習場にすら犬を連れて来るくらいの、愛犬家。

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