ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

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 ライアも、大切な人を亡くしていたのか。

 ユミアは、兄である倉崎 世叛が病死している。
タリアは、教師だった父親が自殺をしていた。

 親族を亡くした少女が三人。
キアも、父親が失職してアルコールの溺れ、大変そうだ。

 ……やはり、意図的に問題を抱えたコたちが、集められたのだろうか?

 ユミア以外の生徒を集めたのは、他ならぬ久慈樹 瑞葉社長だった。

「先生……タリアはもう、ここには来ないの?」
 栗色のソバージュ髪の少女が、問いかけてくる。

「昨日は深夜だったから、タリアを叔父さんのアパートに送ったんだ」
 ユミアに昨日の状況説明をしながら、スマホの時計を見る。

「まだ十時前だな。これから彼女を、迎えに行こうと思う」
「タリアを……でも、素直に来てくれるかしら?」
「なんとかするさ。せめて、新しい先生を迎えてでも、教室は残したい」

「そんなのイヤよ。わたしが契約したのは、先生なのよ!」
 ユミアが叫んだ。

「ああ。久慈樹社長がニューヨークから戻るまでは、キミらの先生だ」
 ボクは天空教室を出ると、急ぎ足でエレベーターホールに向かう。

「待って下さい、先生。わたしも同行致します」
「そんじゃアタシも、行こっかなあ」
 エレベーターの乗り込んで来たのは、ライアとレノンだった。

「意外だな。来るとすれば、ユミアかと思ってた」
「彼女には、残った生徒を纏めてもらうように、頼んできました」
「それはライア。キミが、適任だと思うんだが?」

「そうですね。ですが今回の事件、警察も動いているのでしょう?」
「ああ。キミのお父さんは、警察官……だったよな?」

「残念ですが、そう言う期待はしないで下さい」
 正義の少女は、寂しい背中を見せ俯く。

「父は……汚職をして、警官を辞めました」
「エエ、そうなの。あれだけ正義面しといてェ!?」
「コラ、レノン!」

「いえ……そう思われても、仕方ありません」
 エレベーターは、高速で降下する。
「実際、正義面以外の何モノでもありませんから」

































































































































































一千年間引き篭もり男・第05章・04話

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英雄の提案

「わたしは、トロイア・クラッシック社の代表として提案する」

 MVSクロノ・カイロスの艦橋に出現した、巨大スクリーン。
向かって右側に映っていた英雄が消え去り、左側の英雄がフルスクリーンとなる。

「一度、貴艦に我が社の者を派遣したいのだが、受け入れては貰えないだろうか?」
 屈強な肉体を誇る、デイフォブス=プリアモスが言った。

「詰まるところ、こっちの情報収集が目的なんだろ?」
 プリズナーが、相手の意図をボクに伝えるように返す。


「こちらとしても、艦隊を乗っ取られたのだ。まずは情報を得たい」
「つまりあなた方は、ボクらを主星に近づけたくはない……と?」

「それはそうだろう。キミたちの艦の性能も解らないまま、主星であるパトロクロスに招き入れるコトは出来ない」

「な、なんでですかぁ?」
 セノンが疑問を口にした。

「彼らからすれば、当然だぜ。セノン」
「あの人まだ、この艦が艦隊を乗っ取ったって思ってる……」
「主星を護る艦隊や守備網まで、乗っ取られたらって普通は考えるよ」

 真央たち三人の意見は、どうやら正解らしい。
デイフォブスは反論しなかった。

「こちらの要求ばかり申した。当然、それ相応の対価は献上しよう」
 通信はそれで中断し、スクリーンは消え去る。

「ヤレヤレ。あのオッサン、何をくれるって言うんだ?」
「さあね。余り期待しない方が、良さそうだ」

「だがよ、艦長。どうしてヤツの話に乗った?」
「罠かも知れないのに……か。そうだなあ」

 空間から消えた、巨大スクリーンのあった場所を見上げる。

「一つは交渉できそうな相手に、思えたからだ」
「それ以前に、交渉しない選択肢もあったハズだが?」

「今の最優先は、セノンや真央、クーリアたちをハルモニアに還すコトだ」
「つまりヤツと、小娘たちを還す交渉をすんのか」
「ああ。特にクーリアは、カルデシア財団の要人だろ?」

「そうね。確かにクーヴァルヴァリアが、乗っ取った艦隊を率いるこの艦に居たら、火星との外交問題に発展しかねないわ」

「カルデシア財団と、トロヤ群の軍事企業との戦争勃発か?」
 相棒のトゥランの見解に、ニヤつくプリズナー。
「それはそれで、見物だがな」

「戦闘を行えば、ブリッジに攻撃が直撃する可能性だってある」
 そうなれば、今ある光景が一瞬で消え去るかも知れない。」
ボクは、艦橋の中を見回した。

 隣にはセノンが立っている。
オペレーター席に座るのは、真央、ヴァルナ、ハウメアの三人の少女。

「パパァ、お風呂行こうよ」「闘いで、汗かいちゃったし」
「戦闘のあとの、銭湯だぁ」「にゃはは」
 無邪気にボクの腕を引っ張る、六十人の娘たち。

「しかし彼は、よくボクなんかと交渉をする気になったな」
 改めて、少女だらけの艦橋に驚いた。

 それから一時間が過ぎる。
その間に娘たちは渋々、銭湯へと出かけて行った。

「艦長、通信が入っているよ」
「あと前方に、アーキテクターと思われる機体が、十三機……」
「着艦許可を求めてるね、どうする?」

「恐らく、デイフォブスの言ってた使者だろう」
「だが、トロイの木馬って可能性もあるぜ」
「トロイア・クラッシック社なだけに、洒落にならんな」

『念のため、ウィッチレイダーたちに警戒をさせましょう』
「そうだな……」
 再び巨大スクリーンが、空間に出現する。

「うわああ!」「なになに!?」
「コラァ、お風呂覗くなァ!」
 そこには、湯舟に浸かる少女たちが映っていた。

「覗くも何も、一緒に入ってたじゃないか?」
「パパはいいの!」「おとーさんだから」
「でも、そこの目つきの悪いの!」

「アア、オレのコトか?」
「お前は、見るなァ!」「えっちぃ!」

「テメーらの裸なんぞ、なんの価値も無いコトくらい解かんねェのか?」
「な、なんだとォ!?」「パパ、コイツ失礼!」
 娘たちは、プリズナーと喧嘩を始めてしまった。

「仕方ない、ボクが出迎えるよ」
 ボクは、艦長の椅子から立ち上がった。

 

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ある意味勇者の魔王征伐~第8章・6話

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死者への手向け

 村に戻ると夕日が沈みかけ、辺りは暗闇に覆われようとしていた。
その夜、一行は崩れっ去った教会の地下室に宿泊する。

「シャロリュークさん……」
 蒼い髪の少年は、俯いたまま呟く。

「この村……どうなっちゃうんですか?」
「そうだな。子供たちだけ戻ってくるコトも、できねえからな……」
 赤毛の英雄の言葉は、廃村を意味していた。

「せめてサタナトスの手がかりだけでも、見つけ出せればよォ」
「そうね……あのシスター、何が伝えたかったのかしら?」
 クーレマンスも、カーデリアも、やるせなさを隠せないでいる。

「この上に聖堂があって、シスターが祈りを捧げていたのか……」
 石の床に寝転んだ舞人は、穴の開いた天井を見ながら思った。

「結局ボクは……この村の人を誰一人として救えなかった」
 孤児として教会に育ち、幼馴染みのシスターもいる少年。

「とんだ『英雄』だな……」
 彼にとって、小さな村の惨劇は他人事では無かった。

 次の日、谷間の村に朝日が昇る。

「まったく、昨日の悪夢がウソのように、キレイな朝日だぜ」
「でもシャロ。朝日をキレイって思う村人は……」
「もうこの村には、いねえんだな」

 崩れた建物だらけの村。
シャロリュークは、舞人は、名前も……顔さえ知らない大勢の村人の『墓』を建てた。

「誰も埋まっていない墓を作って、何の意味がある?」
「所詮は生き残った人間の、自己満足だろうに」
 人間の行動が解せない、ネリーニャとルビーニャ。

「それは概ね、正しいのじゃろうな……」
 漆黒の髪の少女は墓に、近くに咲いていた花を手向ける。

「のォ、ご主人サマよ。付いて来てはくれぬか?」
「どうしたの、ルーシェリア……」

「地下室に見せたい物があるのじゃ」
「地下室って……今朝までいた場所だろ?」
「それが崩れた壁の先に、部屋が見つかったのじゃ」

「ミーたちがみつけたミル」
「修行で壁を殴ってたら、崩れたでござるレヌ」
 それは、舞人たちが墓を作っている時の出来事らしい。

 あまり気乗りがしない舞人だったが、ルーシェリアに付いて行く。
一行も後に続くと、崩れた壁の先に小さな小部屋が存在した。

「一体、何を見せたいって言うんだ。ボクは疲れて……」
「アレを見るのじゃ。あの『絵』をのォ」

「絵だって……それが一体?」
 舞人は、ルーシェリアの指差す先に掲げられた、一枚の『絵』を見て驚愕する。

「こ、これって……まさかッ!?」
 絵には、金髪で真っ白な肌の少年が描かれていた。
「そうじゃ。この絵の人物は……」

「『サタナトス』じゃないか!!」

 絵の中の少年は、右側に白い鳥の翼を生やし、左には黒い蝙蝠の羽を生やし他姿で描かれている。

「描かれてんのは、紛れも無くサタナトス本人だぜ」
「でもよォ、シャロリューク。どうしてサタナトスの絵が……」
「教会なんかに、あるのかしら?」

「それに、この絵……誰が描いたんでしょうか?」

「推測じゃがな。あのシスターが、描いたモノでは無いかのォ」
「そんじゃこの部屋は、シスターのアトリエってとこか」
 辺りを見渡すと、絵の具やキャンバスの破片が幾つも転がっていた。

「部屋は比較的良好だわ」
「探せば他に、手がかりが見つかるかもな」
 一行は部屋を、くまなく捜索する。

「こっちの戸棚に、絵が仕舞ってあるぜ」
「ホントだ、何枚もあるわ」

「どの絵にも、サタナトスと一緒に、『蒼い髪の少女』が描かれてますね?」
「ご主人サマよ。これは何か、あるのやも知れぬぞ?」

「サタナトスの過去……か」
「シスターが言ってた、『忌まわしき過去』という言葉も気になるわ」
「この『蒼い髪の少女』と、何か関係があるのかよ?」

「調べてみる価値は、ありそうじゃな。ご主人サマよ?」
「ああ、ルーシェリア」
 舞人はルーシェリアと共に、村に留まってサタナトスの過去を調べ始めた。

 

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キング・オブ・サッカー・第一章・EP020

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次のターゲット

「随分と要求値高いな、アンタ」
 それは、小さな児童公園での出来事だった。

「不服か?」
「イヤ……むしろその方が、やる気になるってモンよ」

 紅華さんは二~三歩前に進むと、倉崎さんが差し出した右手の前に立つ。

「……んで、コイツの言ってた、金が支払われるってのは?」
「トップリーグの様には出せないが、バイトくらいの報酬は出す予定だ」

「マジかよ、なら決まりだ」
 紅華さんの右手は、倉崎さんの右手を握った。

「ちとワケありで、自分の学費くらいは稼ぎたかったからな」
 紅華さんがお金を欲しがる理由って、なんだろ?
「サッカーやれて、金が貰えるんなら言うコトねえぜ」

「紅華 遠光。ようこそ、プロサッカーの世界へ」
 一足先に、プロサッカー選手とした脚光を浴びた男が、拳に力を込める。

 ……プ、プロかあ。
憧れてはいたケド、全然意識してなかった。
ボクもお金を貰うんなら、プロサッカー選手……なのだろうか?

「今日からキミも、我が『デッドエンド・ボーイズ』の一員だ」
「名刺見たときから思ってたんだが、縁起でもねェチーム名だな」

「ま、名前の通りだよ」
 ボクもちゃんと喋れれば、そこは突っ込みたかった。
「何かに行き詰ったヤツくらいしか、入ってはくれないだろう?」

「……言い返せないのが、腹が立つな!」
「そう怒るな。とりあえず、これでメンバーは二人になったな」
「あ……今、なんつった?」

「メンバーが、二人になったと言ったんだが」
「そ、それって、オレとアンタ?」
「イヤ、お前と一馬だ」

「ふざけんなんよ!」
 そ、なるよね~。

 それから紅華さんは十分くらいの間、倉崎さんを問い詰めた。

「つまりアンタは、名古屋リヴァイアサンズとプロ契約を結んでいるから、デッドエンド・ボーイズの試合には出られないんだな?」

「そうだ」
「そうだ……じゃ無いっスよォ、倉崎さん」
 紅華さんが、ため息をつく。

「あと最低、九人はいないとサッカーできないんスよ?」
 ボクもその横で、必死に頷いた。

「問題ない」
 倉崎さんの眼がボクを見たので、預かってたノートを見せる。

「サッカーが上手くて、何かに行き詰ってそうな高校生を、何十人かピックアップしておいた」

「こりゃ、かなり念入りに調べて……ん、オレのもあんな?」
 自分の情報を、読み始める紅華さん。

「天性のドリブラーで、相手の意表を突くのが上手い。ほぼ全てのプレーを左足一本でこなし、左サイドからのクロスさえ左足で上げる」
 そこまでは、良いことが書いてあるんだ。

「守備はほぼせず、スタミナに問題あり。フィニッシャーとしては凡庸であり、ドリブルを効果的に使えていない。我がままで、組織的なチームプレーには向かない……」
 読み進めるにつれて、声のボリュームが小さくなっていった。

「ま、気にするな」
「気にしますよォ!」
「そうか、だがそれは、現時点での評価だ」

「つまり、フィニッシャーとして点を決め、司令塔としての役目もこなせと」
「最初の要求としては、それくらいが妥当なところだろう」

「ヘイヘイ。判りましたよ」
 文句をいいつつも、パラパラとノートをめくる紅華さん。

「ん……この雪峰 顕家ってヤツ、知ってんな」
「そうか、どんなプレーヤーだと感じた?」

「小学生の頃、選抜チームで同じになった時、少し話したくらいの印象っスよ」
「ああ、構わない」


「ポジションはセカンドボランチのコンダクター(指揮者)タイプ。一つ一つのプレーがやたら正確で、オレと違って頭脳でプレーする感じ」

「オレの評価も、似たようなモンだ。だが彼は、サッカーを続ける気は無いらしい」
「え、それって……?」

「彼は中学受験で有名進学校へと進み、高校も同じ学園の高等部に所属している」
「そこ、サッカー部は無いんスか?」
「あるにはあるが、到底彼のレベルには及ばん。同好会に近いレベルだ」

「それじゃ、望み薄っスね」
「ああ……惜しいプレーヤーだが残念だ」

 倉崎さんは諦めていたケド、ボクは何故か彼が気になった。

 

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この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第18話

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命の価値

「ユミアの様子は……どうだった?」
 色々と塞ぎこむ理由のある女子高生の状況を、三人に尋ねる。

「夜中に帰って来てから、ベットに入ってすぐに寝ちゃってたよ?」
 あまり観察力が高く無さそうな、レノンが言った。

「ユミア、何かあったの?」
「何も聞いてないのか、ルクス」
「そりゃあ……まだそこまで親しくないし」

「でも言われてみれば、今朝も落ち込んでいたような気がする」
 カトルの代わりに、双子の姉のカトルが答える。

「ユミア自身に、何かあったわけじゃあ無いんだがな……」
 ボクは三人の女子高生と共に、タワーマンションの受付へと向かった。

「久慈樹社長は本日、出張のためお戻りにはなりません」
 受付嬢の丁寧な台詞は、ボクを少し安心させる。
それは、問題の先延ばしに他ならないのだが。

「ねえ。ひょっとして、タリアが何かやらかしたとか?」
 天空へと伸びる透明なチューブを上昇する、籠の中でレノンが言った。

「あ、ああ……」
 ライオンのようにガサツな女の子の言葉に、ボクは少し驚く。

「いずれ解かるコトだから言ってしまうが、傷害事件を……な」

「ええ、ホントォ……って、障害を受けた側なの?」
 ボーイッシュな双子の、妹の方が喰いついて来た。

「いや……暴漢の男を、何人も病院送りにした側だな」
「あの人、そんなに強かったのか」
 姉のカトルも関心している。

「暴漢たちに襲われていた、女子中学生を助けようとしての行動だ」
「でも先生、それってマズイんじゃないか?」
「理由はどあれ、この時期に障害事件を起こしたとなると……」

「ああ。生徒の起こした問題は、教師の責任だ」
「せ、先生、辞めちゃうの?」

「自分から辞める様なコトはしないが、どう判断されるかは判らない」
 それから、エレベーターが最上階へと辿り着くまで、沈黙が続いた。

「だから言っているでしょ」
 天空教室のドアの前に付くと、中から少女たちの声が漏れ聞こえる。
「タリアは中学生の女の子たちを助けるために、やったんだって」

「だからと言って、暴力を振るっていい道理がありません」
「じゃあどうすれば良かったワケ。女の子たちを、見捨てるのが正しかった?」

「直ぐに警察に、通報すべきでした」
「特撮ヒーローじゃないのよ。警察が到着するまで、何分かかると思てるの」
 言い争っているのは、ユミアとライアの様だった。

「警察が万能でないコトは、理解しています」
「万能どころか、民間人を助けようともしないじゃない」
「それは、貴女のコトを言っているのですか?」

「ええ、そうよ。ストーカー被害に遭っても、何も動いてくれなかった」
「確かに警察にも、限界があります。民間人一人一人に、ボディーガードとして付きそうコトも出来ません。そんな豊富な人員は、ありませんから」

「だったら今回のタリアの行動だって、理解できるでしょうに!」
「出来ません。彼女の行動は、自らの命を危険に晒すモノです!!」
 ライアの振るった正義の剣に、ユミアは言葉を詰まらせる。

「例え万能で無くても、今の日本の法と秩序を護っているのは、警察なのです」
 ピンク色の髪を、宝石で飾った少女はそう言い切った。

「ライア……もしかしてキミの親族には、警察官が?」
 後ろから声をかけたボクに、二人の少女はビクッと反応する。

 二人とも興奮の余り、ドアを開けた音すら聞こえ無かったらしい。

「そうですね……わたしの父は警察官……」
 いつに無く、歯切れの悪いライア。

「いいえ、警察官だった……と言うのが、正しい認識なのでしょうね」

「も、もしかして、ライアのお父さん。殉職を……?」
「そんな格好の良いモノでは、ありませんよ」

 彼女が信条とする正義の剣も、いささか揺らいでいるように感じた。

「ただ、命というモノは一度失われてしまえば……」
「二度と取り返すことはできない……それは、理解できるわ」

 二人の少女の顔が、僅かに穏やかになる。

 

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一千年間引き篭もり男・第05章・03話

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疑念

 MVSクロノ・カイロスの艦橋にて、ボクは……。

「どうだろうか、若き艦長。我がトロイア・クラッシック社と業務提携を結べば、貴艦にとっても多くのメリットがある。悪い話ではないと思うが?」

 二つの軍事企業の代表と、交渉を続けていた。

「ボクは、冷凍睡眠者(コールドスリーパー)だ」
 その情報を出すべきか迷ったが、開示する事にする。
「生まれたのは二十一世紀だから、キミより遥かに年上だと思うよ?」

「そうか、これは失礼をした……」
 デイフォブス=プリアモスは、顔を曇らせながらも謝罪した。

「フン。我々より年上とは、そう言うコトか」
 もう一人の交渉相手である、アキレウス=アイアコスは顔を歪める。

「だが、千年も前の人間など、時代遅れの骨董品に過ぎん」
 あくまで尊大に振舞う、ギリシャの英雄。
「お前とてアウストラロピテクスを、尊敬しているワケではあるまい?」

「確かにそうですね……」
 ボク自信、中身はただの高校生でしかない。
年寄りを尊敬しろと言う意図は無かった。

「そりゃそうだ。ただ、年を喰っているからと言って、尊敬されるモンじゃねえ」
 プリズナーが、嘲る。
「人が尊敬心を抱くのは、アンタには備わって無さそうなモノに対してだからな」

「何だと、キ、貴様ッ!?」
 画面に映った英雄の一人が、立ち上がって怒りを露にする。

「大企業のトップがこの器では、先が思いやられる」
「デイフォブス……貴様らのトップとて、下らぬ人間ではないか!」
「わたしはそれを、断じる立場にない……」

 大画面モニターの中で行われる、企業間闘争。
デイフォブス=プリアモスは、トロイア・クラッシック社の会長では無い。
それは、理解できた。

『どう致しますか、艦長』
「そうだな……」
 ボクは、少しだけ考えた。

 こんな状況下でも、『時澤 黒乃』であれば即決するだろうな……。
彼女は、迷いという感情からは、かけ離れていた気がする。

「まず、あなた方にとって、到底信じがたい話をしたい」
「何を言っている?」
「意図が解らない」

「つまり、あなた方の会社の艦隊を奪った、経緯について話したい」
「ほう、盗人の弁明とやらか?」
「そう思われても仕方ないが、艦隊を奪ったのは我々ではない」

「例え詭弁であろうと、もう少しまともな嘘をついたらどうだ?」
「現状を見れば我々二社の艦隊は、旗艦を中心に艦隊として運用されている」

「ま、状況から見りゃあ、そう思うだろうよ」
 プリズナーが指摘した通り、彼らの立場であればそう考えるだろう。

「……ですが、ハッキングを行ったのは、我々ではなく別の艦です」
「下らん冗談だ。ならばその艦は、今どこにいる?」

「ボクたちが苦戦の末、なんとか撃破しました」
「ヤレヤレだ。これ以上は、聞くに堪えんな……」
 アキレウスは再び豪奢な椅子に、ふんぞり返る。

「いや、確かに貴艦のある宙域で、交戦があったと推測できる観測データがある」
 デイフォブス=プリアモスが言った。

「そうだよ、漆黒の闇の魔女の残骸が、存在するハズだ!」
「そいつが、艦隊を乗っ取った張本人」
「確かめて貰えば、わかるよ」

 真央、ヴァルナ、ハウメアの三人が、オペレーター席から叫んだ。

「残念だが今は、観測機までもが貴様らの傘下にある状況だ」
「我々に、それを事実と認識する為の手段は無い」

 どうやら、勝手に飛び回るカメラ付きの艦載機たちは、都合のいい情報しか彼らに提供していない様だった。

「そうやって偽の情報を流し油断させ、我々の他の艦隊をおびき出し、乗っとる算段であろう?」
 アキレウスは、今度は冷静に立ち上がる。

「その手には、乗らぬわ……」
 スクリーンの半分から、英雄が消えた。

「ヤレヤレだぜ。正直に話したところで、あんな話信じられっかよ」
「……それも……そうだな」
 ボクは艦長の椅子に深く座り、天を仰いだ。

「オレは貴公の話を、信じてみようと思う」
 その時、もう一人の英雄が言った。

 

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萌え茶道部の文貴くん。第七章・第七話

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大盛況

 文化祭・復讐劇は晴天に恵まれ、多くの来客でごった返していた。

「今日はスゴイ人だかりですね、先パイ」
「そうね、フーミン。あの屋台で何か買っていきますか?」
 千乃 美夜美の繊細な指が、一条 明美の屋台を指さす。

「さあさ、よってくアルよ~♪」
「今日は、フルーツ中華マンのお披露目ね♪」
「ピーチマン、マンゴーマン、メロンマンもあるアルよ~♪」

 威勢のいい声で、自慢の中華マンを売る屋台。
大須の出店時より多くのミニスカチャイナ服少女が、呼び込みをしていた。

「じゃあオレは、ピーチマン」
「わたしは、メロンとマンゴーに、マスカットマンを貰おうかな」
「せ、先パイ、そんなに食べるんですかぁ!?」

「毎度おーきにアル~♪」
 一条さんに渡された異色中華マンを手に、ボクたちはプールの方へと向かう。

 プールには浅く水が張られ、水着姿の少女たちがサバイバルゲームに興じていた。
その手には、無骨な軍用ライフル風に改造された『水鉄砲』が握られている。

「あのコたち、めっちゃ気持よさそうだね、フーミン」
「水が張ってあるから、弾切れの心配は無いですしね」
「そっか、なるホド考えたな」

「おっ、姉ちゃんの着てる水着、寒冷地用のスプリッター迷彩じゃね?」
 プールサイドから無精ヒゲのおじさんが、ボーイッシュな女の子に声をかけている。
「お兄さん、ミリタリーマニア?」

「おうよ。姉ちゃん、サバゲ雑誌で取り上げられてたコだろ?」
「まあね。ウチの水鉄砲サバゲ部、普通のサバゲもけっこー強いから」
「それにしてもみんな、マニアックな迷彩の水着着てんな?」

「わたしのデザート迷彩、可愛いでしょ?」
「ウッドランド迷彩のが、お洒落ですよね、伊吹先パイ!」

「やっぱ、夏と言えば洋上迷彩一択っしょ!」
「現代は情報戦の時代。デジタル迷彩がクール」

「こらこら、お前らそんなコトでケンカすんなよ」
「ガハハ、部隊まとめんのも大変だな」
 ボクたちは、そんなやり取りをプールの金網越しに通り過ぎ、校舎の方へと向かう。

「見て見て。あの小さな女の子たちのカチューシャ、丸いのが光ってて可愛いね」
「あっちの男の子たちも、恐竜の粘土細工で喜んで遊んでますよ」
 二つのアイテムとも、出処がどこか検討は付いた。

「あら、茶道部の歴代部長のお二人では、ではありませんか」
 メイド服を着た少女が、恭しくお辞儀をする。

「やあ、御子神さん。今日はフェンシングの出し物じゃないの?」
「残念ですが本日は、可愛らしいお尻はご覧いただけません」

「イヤイヤイヤイヤ……違うから!?」
 メイド流剣道部・部長は、いきなり上映会での出来事を振ってきた。

「アレはたまたま映ったお尻を、橋元のヤツが勝手に編集して……」
「フーミン、言い訳はみっともないよ」
「みっともないです、ご主人様」

「二人とも、もう勘弁してよぉ!」
 一度暴落したボクの株価は、未だに暴落したままの様だ。

「冗談はさて置き……」
 御子神 涼香は言った。
「本日は我が『メイド流剣道部』は、メイドの方をメインにしております」

「メイドの方って、紅茶でおもてなしとか?」
「それもございますが、メイドと一概に言っても、様々な役割や種類があるのですよ」
「へ~、そうなんだ?」

「ハウスキーパーたるわたくしの下に、パーラーメイド、ランドリーメイド、チェインバーメイド、スティルルームメイドと、しっかり役割分担をして、お持て成しをさせて頂いております」

 教室の中には、本気で貴族の大邸宅をを管理できそうな人数の、メイドたちが働く。
紅茶を運んだり、ケーキを取り分けたり、てきぱきとお客さんを接待していた。

「これは……わたしたちも、負けてらんないね」
「そろそろ戻りますか、先パイ」
「ええ、そうね」

 二人は足早に、自分たちのブースへと戻った。

 

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