ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第11章・33話

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黄金宮への進入

「ねェダーリン、スゴイよね。こんな海溝の底に、古代都市があったなんてさ」
 スプラ・トゥリーが、後ろの舞人に、華奢な体をもたれさせながら言った。

「高度な文明だったようじゃな。建物がどれも、金ピカの黄金で出来ているのじゃ」
 ルーシェリアが、舞人の腰に回す手の圧力を強めながら言った。

「ボクは、ダーリンに言ったんだケド」
「妾とて、ご主人サマに言ったのじゃ」
 銀色の鱗を輝かせるリュウグウノツカイに乗りながら、2人の少女が火花を散らす。

「もう、いい加減にケンカは止めろよ、2人とも。だけど、さっきの地震は凄かったよな。ヤホーネスやカル・タギアに、被害とか無きゃ良いケド」
 あちこちに住人の亡骸が沈む、失われた古代都市を行く舞人たち。

「ボク、イヤな予感がするよ。あの地震、海皇サマが引き起こしたんじゃないかな」
「地震の発生時、強大な魔力を感じたのじゃ。海皇が大魔王にされたと見て、間違いあるまい」

「だったら、急がないと。バルガ王子たちが、危ない!」
「そうは言っても、リュウグウノツカイじゃ大したスピードは……」
「み、見るのじゃ。街の中央に、巨大な宮殿があるのじゃ!?」

 一行の前に姿を現したのは、巨大な黄金のドーム状の屋根を持った、壮麗な宮殿であった。
周囲には幾つもの塔が聳え、柱や壁は繊細な彫刻が刻まれている。

「見てアソコ。バルガ王子たちのサメが、入口の門の辺りに繋がれてる」
「どうやら王子たちは、このドームの中で大魔王と戦っているようじゃな」

「行こう、ボクたちも。なにが出来るか解らないケド、行かないワケには行かない」
 3人を乗せたリュウグウノツカイは、宮殿の門へと向かった。

「ここ……空気があるよ。海水が流入して、水浸しだケド」
 舞人は、口にくわえていた水中呼吸の丸石を、吐き出す。

「恐らく、さっきの地震の影響だね。それまでは、地上やカル・タギアと変らなかったんじゃないかな」
「その様じゃな。絵画やキレイなツボが、そこら中に浮いておるわ」

「この浸水の勢いじゃ、いつ水没してもおかしく無いな」
「そうだね、ダーリン。深海の魔法は、維持したまま行くよ」

「懸命な判断じゃな、軟体動物の小娘よ」
「軟体動物言うな!」
 宮殿内の回廊を走りながらでも、2人のケンカは継続される。

「ところで小娘よ、お主は戦力になるのかえ?」
「こう見えて、海皇さまから7本の槍の1本を授かった、7海将軍の1人だからね。そっちこそ、戦力にはなるんだろうね?」

「そう言えばルーシェリアも、剣をサタナトスのヤツに奪われたんだよな!?」
「フッ、抜かりないわ。秘密にしておったが、実は今回の伝令に当たって、レーマリアが新たな魔剣をくれたのじゃ」

「戦えないのは、ボクだけェ。またジェネティキャリパーの力を、開放しなきゃならないハメに……」
「うわあ、タンマ、タンマ。その剣の力はもう、2度と使っちゃダメだよ!」
 顔を真っ赤にしたスプラが、慌てて止める。

「イカと思うておったが、まるでタコじゃな。コヤツの臓物は、さぞ珍味であったじゃろう?」
「ひ、人の内臓を、珍味言うなァ!!」

「2人とも、ケンカなんてしてる場合じゃない。前に、巨大な渦巻きが!?」
「うわあッ!?」
「の、飲まれるのじゃ!?」

 渦を巻いた巨大な海水の柱が、辺りの壁や床ごと3人を薙ぎ払った。
凄まじい海流の中を何度も巡回した後、舞人たちは外へと弾き飛ばされる。
そこは、バルガ王子たちが大魔王と死闘を繰り広げた、中央の吹き抜けホールだった。

「クッ、緑触槍『アス・ワン』!」
 スプラが、その象徴たる槍の触手を伸ばして、空中に投げ出された舞人をキャッチする。

「なんじゃ、ご主人サマだけ助けおって!」
「キミは飛べるから、イイじゃないか。現に、そうしてるし」
 ルーシェリアは、背中にコウモリの翼を生やし宙を飛んでいた。

「アリガト、スプラ。助かったよ」
「エヘヘ、どういたしまして」

「ムウ、悠長なコトは言ってられんぞ、ご主人サマよ。見るのじゃ!」
 頬を膨らませたルーシェリアが、ホールの向こうを指さす。

「こ、これは……大魔王がやったのか!?」
 ホールから、壁や床が何十階層に渡ってえぐり取られ、それがはるか先まで続いていた。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第07章・第07話

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山積する課題

「先生、申し訳ございません」
「わたし達、10時からプロフィールビデオの撮影がありますので、失礼します」
 ライアとメリーたちプレジデントカルテットの4人が、出勤したばかりのボクの横を通り抜けて行く。

「わたくし達も、10時半から、撮影を予定しておりますのよ」
「今はキアさん達が、プロフィールビデオを撮影されていますわ」
 露出度の高い衣装を着たアロアとメロエの双子姉妹が、ソファに座りながら言った。

「そうなのか。しかしお前たち、勉強の方は大丈夫なのか?」
「え、ええ、それはその……大きな問題は無いかと」
「だ、大丈夫ですわ。ユークリッドの動画なら、いつでも見れますし」

「いつでも見れる動画であっても、アイドル活動で疲れていれば、見る気も無くなるんじゃないか? それにちゃんと自分の学んでいる範囲を順に見なければ、学力も身に付かないだろう?」

「と、ところでメロエさん。わたくし達もそろそろ、撮影の会場に移動した方が良さそうですわね」
「そ、その通りですわ、お姉さま。先生、ゴメンあそばせ」
 ウェヌス・アキダリアの2人も、逃げ去るように天空教室を飛び出して行く。

「仕方ない、アステやメルリたちは撮影まだなんだろ。今のうちに、予習を……」
「え、えっと今わたし達、歌の歌詞覚えてるトコだから……」
「先生、ゴメンなさい!」

 プレーア・デスティニーの7人の少女たちは、ボクの顔を見るなり慌てて、円形に置かれたベッドが並ぶ寝室へと引き籠ってしまった。

「アイツら……すみません、先生」
 すると、7人の守り役であるタリアが、申し訳無さそうに頭を下げる。
「イヤ、今はオフだから、強要はできないよ。タリアは歌詞、覚えなくて大丈夫なのか?」

「アタシは、曲の合間に少し謳う程度だから」
「そうか。キミは、7人のお姉さん的存在だ。上手く、守ってやってくれ」
「ああ。元々そのつもりで、アイドル引き受けたからな」

 相変わらずパーカーを着た少女も、寝室の扉を開け中へと入って行った。

「困ったモノだな。こんなコトじゃ、久慈樹社長が出した条件をクリアできないぞ」
 目の前に広がる、閑散とした天空教室の景色。
レノンとアリスが戯れていて、クララが窓辺でノートパソコンを開いてる。

「たった3人か。この教室も、ずいぶんと寂しくなってしまったな」
「それもこれも、アイツの策略よ。一体、何を企んでるのかしら!」

 隣を見ると、ユミアが腕を組んで仁王立ちしていた。

「お金をチラつかせて、人の弱みに付け込んでみんなをアイドルにするなんて、許せないわ!」
「でもさ、ユミア。アロアたちは、芸能界デビューしたがってたじゃん」
「キ、キアさんたちも、ロックバンドで頑張ってたです」

「彼女たちは、良いのよ。それが自分の意思なんだから。でも、ライアやメリーなんて、仕方なくアイドルやらされてるじゃない。カトルやルクスだって、ワケの解らない人形のお守りなのよ!」

「アラ、それが彼女たちの意思なのよ。例えお金が絡んでいても、断るコトだって出来たのだから」
 窓際に座っていた、クララが言った。

「断ったら、アイツにここから追い出されるかも知れないのよ!」
「よく観察なさいな。わたしやそこの2人も、アイドルにスカウトされているのよ。それでも追い出されるなんてコトには、なっていないわ」

「そうかもだケド……何が言いたいのよ、クララ」
「要するに彼女たちは、それぞれに思惑があってアイドルを選んだってコト」
 そう言い残すと、クララも玄関へと立ち去る。

「オー、ユミア。みんな居なくて寂しいなら、貴女もアイドルやればイイじゃないデ~スか」
 金髪に真っ白なタキシードのようなスーツを着た男が、入って来るなりユミアに話しかけた。

「マ、マーク、なんでわたしがアイドルやらなきゃ行けないのよ」
「単純な話ね。ボクが見たいよ」

「もう、アンタのせいで、こっちはこっちで大変なコトになってるんだからね!」
 ユミアも怒って、何処かへ出かけてしまう。

「ヤレヤレ、問題は山積みだな」
 ボクは広く開いたソファーに、ドカっと腰を降ろした。

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一千年間引き篭もり男・第06章・46話

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別れの宇宙港

 火星のテーマパークでの、夢のようなひと時は終わりを告げる。

 ホテルに戻ったボクは、みんなとの豪華なディナーの後にシャワーを浴びて眠った。
翌日に目を覚ますと、窓から朝の光がベッドの上に差し込んでいる。

「おじいちゃん、おはようございます」
 可愛らしい笑顔が、ボクに向けられた。
それは1000年の眠りから覚めて、最初に見た笑顔でもあった。

「おはよう、セノン。昨日はよく眠れたかい?」
「まあ、それなりですね。おじいちゃんは、ずいぶんグッスリと眠ってましたケド」

「昨日は一日中遊園地で遊んで、疲れたからな」
「クヴァヴァさまとは……観覧車で、なにを話したんですか?」

「ふえ!?」
 突然の質問に、声が裏返ってしまう。

「べ、別に、大したコトじゃないよ……」
 観覧車でのクーリアとのキスを思い出し、思わず顔を背けた。

「そう……ですか」
 セノンは、寂しそうに微笑むと、真央たちの方へと駆けて行った。

「今日は、ハルモニア女学院のコたちと、別れる日なんだな……」
 思えば、MVSクロノ・カイロスの艦長に就任して最初に決めた任務が、彼女たちをハルモニアに還すコトだった。

 ボクたちは、ホテルをチェックアウトする。
それからみんなで、アクロポリス空港に向かうバスに乗り込んだ。

「ここが、アクロポリス宇宙港の内部か。どことなく、地球の空港にも似てるな」
 宇宙港には、カウンターやチェックゲート、行き先案内版があって、大きな窓からは民間のモノであろう宇宙船がたくさん見える。

「でも、地球の空港とは違ってるトコも、あるハズだぜ」
 真央に言われて、行き先案内板を見上げる。

「ガニメデ、イオ、タイタン、エンケラドゥス、ヴェスタ、セレス、アガメムノン……どれも、宇宙図鑑で見た名前ばかりだ」

「それだけじゃない、距離も変わる……」
「太陽系の天体は、太陽の周りを周ってるからね。遠くもなれば、近くもなるよ」
 ヴァルナとハウメアも、ボクの背中から指摘した。

「言われてみれば、そうだな。地球と火星が接近するときもあれば、太陽を挟んで反対の位置にある場合もある。公転スピードや公転軌道も違うから、目的地までの距離や時間が、大幅に変わってしまうのか」

「ま、そう言うこったな。オレも最初は、驚いたぜ」
「ところで艦長。ハルモニア行きのシャトルは、もう来てるわよ」
 プリズナーとトゥランも、宇宙港に姿を見せていた。

「ああ、わかってる」
 ボクの瞳は、自然に栗色の髪の少女を映す。

「これで……お別れですね、おじいちゃん」
 セノンは、目から涙を溢れさせていた。

「だけど宇宙斗艦長。これからクロノ・カイロスに帰って、なにかやるって目的もないんだろ?」
「真央……そうだな。火星の宇宙艦隊が再編されるまでの間は、領域の警備には当たるコトになるが、その先は考えていない」

「だったら、問題ない……」
「艦長は別に、ディー・コンセンサスと敵対してるワケじゃない。むしろ、人類の味方だからね。交渉次第では、何とかなるんじゃない?」

「そ、そうですよ。ヴァルナ、ハウメア、良いコト言うです」
 急に元気になる、セノン。

「ハルモニアに遊びに来て下さい、おじいちゃん。絶対に約束ですよ!」
「ああ、そうだな……そうするよ」

 栗色のクワトロテールが舞い、ボクの胸へと飛び込んで来るセノン。
ボクは彼女を、優しく抱きとめた。

 それから、セノンや真央らハルモニアの少女たちは、シャトルへと乗り込む。
他の場所で、クーリアとの別れを済ませお付きの少女たちも、シャトルの窓から手を振っている。
やがてシャトルは、滑走路から飛び立って行った。

 セノン……いつかキミに、逢いに行くよ。
ボクは、心の中で決心する。

「あのコたち……行ってしまいましたね」
 ボクの隣にいつの間にか、クーリアが立っていた。
今日の彼女は、純白の軍服にピンク色のスカートを纏っている。

「そうだね。キミもこの後、あの艦の艦長に就任するんだな」
 宇宙港には既に、真っ白な船体の優美な艦が係留されてあった。

「ええ、艦長。わたくしはいずれ、カルデシア財団の後継者となる定めにありました。それが少しばかり、早まったに過ぎません」

「でもこれで、お互いに『艦長』って立場だな」
「え……ええ、そうですわね」
 クーリアは、緊張の糸がほぐれたかのように笑い出す。

「行こうか、クーリア艦長」
「はい、宇宙斗艦長」
 ボクたちは、新造艦の観艦式へと向かった。

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP021

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バッグの中身

 曖経大名興高校の郊外にある、グランド。
バスが降りて来た土手には、色んな学校のみんなのカバンが放り出されている。

 ウォーミングアップを始めようとしていたデッドエンド・ボーイズに、岡田先輩率いる曖経大名興高校サッカー部が近づいて来た。

「邪魔クセーな」
 岡田先輩が、目の前にあったカバンを蹴り飛ばす。

「ああ、オレさまのカバン!?」
「ああ?」
 ギロリと睨む鋭い眼光に、たじろぐ黒浪さん。

 紫がかった学ランを来た集団は、そのまま挨拶もせずにボクたちの間を素通りし、自分たちの更衣室へと向かった。

「な、なんだかお前の学校、やけにヤンキー率高いよな」
「そう言えば、県内でも有数の治安の悪い学校でしたよね」
「何年か前に、殺人事件とか無かったっけ?」

 黒浪さんと柴芭さんと、紅華さんが言った。
言われてみると、ウチの学校って物騒なのかな?
確かに窓に鉄格子がされてるし、机も椅子も教壇もボロボロだケド。

「一馬、今日は荷物運びね。ボールが入ったカバン、バスから降ろして来るよ」
 セルディオス監督に言われて、ボクはコクリと頷いた。

 やっぱ今日の試合、使って貰えないのか……残念。
そう思いながら、マイクロバスに向かって駆け出すボク。

 うわあ、こっちって更衣室のある方じゃないか。
なるべく、近づかないようにしよ。

「オイ、1年。挨拶して来い」
 すると更衣室の中から、岡田先輩の低いが声が聞こえて来た。

「なんだァ、不服か?」
「い、いえ。別に……」
「だったらさっさと、言って来やがれ!」

 更衣室の扉が開き、誰かが勢いよく飛び出して来た。
ボクはその誰かと、鉢合わせする。

「み、御剣!?」
「あ……」
 目の前に立っていたのは、クラス委員長の千葉 蹴策だった。

「ま、見ての通りだ。流石に、一筋縄で上手くは行かないな」
 千葉委員長は、ボロボロにされたユニホーム姿で、顔は眼の上が赤く腫れあがっている。
口元からは、血が垂れていた。

「そ、その……ケガ!?」
「ああ、これか。岡田先輩たちに、ボコられてな。だが沙鳴のコトはちゃんと抗議したし、部の在り方を変えるべきだとも言った」

 ス、スゴイな、委員長。
その代償が、体のケガなんだ。

「じゃあな。この試合、なんの気まぐれだかオレも使って貰えるんでな。お前も頑張れよ」
 委員長は、ボクのチームの方へと駆けて行った。

 ……頑張れと言われても、ボクは試合に使って貰えないんだ。
でもやっぱ、委員長に選ばれるだけあって良い人だな。
そう思いながら、海馬コーチから受け取ったキーで、バスのドアを開ける。

「確か、紅華さんが陣取ってた一番奥の席の、前の席に置かれてたよな」
 無人のバスの中では、ちゃんと話せるボク。

「あった、これだこれ……ンンッ!?」
 2人がけの椅子に置いてあった黒いスポーツバッグが、なにやらモゾモゾ動いてる。

「うわぁ、なんでバッグが動いてるんだ。だ、誰かのイタズラかなあ!?」
「キャッ!」
 転がって、床に落ちたバッグから女のコの悲鳴が聞こえた。

「な、なんだ。このバッグ、中身がボールじゃ無いんじゃないか!?」
 ビク付きながら、バッグのジッパーを開ける。
すると中身は、ヒザを抱えて丸まった人間だった。

「に、人間が詰まってたァ。し、しかも、体形からして女のコだぞ!?」
 中に詰まっていたのは、ジャージを着た人間で、腰がくびれお尻も大きいから、女のコだと解かる。
頭にはナゼか、剣道の面を被っていた。

「キ、キミ……もしかして、沙鳴ちゃん?」
 流れで話しかけると、面の中の可愛い瞳がボクを睨んだ。

「そ、そうよ!」
 少女はバッグから起き上がって、面を取る。
黒いツインテールが、優雅に宙を舞った。

「コッソリ抜け出して、アイツを闇討ちしてやろうかと思ったのに、どうして戻って来んのよ!」
「そ、そう言われても……」
 何処となく奈央に似ているせいか、普通に喋れてしまう。

「まあいいわ。昨日は醜態を晒したわね……その……」
「ああ。漏らしちゃったコトなら、誰にも言わないから」

「堂々と、言ってんじゃないわよ!!」
 顔を真っ赤にしながら怒る、沙鳴ちゃん。

「まあいいわ。作戦変更よ。これからわたし、アンタのチームのマネージャーになるから」
 そう言うと少女は、剣道の面を被り直した。

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・32話

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大魔王の力

 海皇パーティーの目の前で、ドロリと溶け落ちる巨大なタマゴ。
 現れた巨大な腕が、バルガ王子を目掛けて振り下ろされた。

「お、王子ィィ!?」
 ホールの天井から吊り下げられていたタマゴを、解き放ったティルスが悲鳴のような声を上げる。
巨大な蒼い鱗に覆われた腕は、王子の居た場所の金属の床を破壊した。

「あんなんで、やられるかよ、ティルス」
 バルガ王子は、側近の少女の傍らに着地する。

「しっかし、王子。どうしやす。海皇さまは……」
「こりゃあ、とんでも無ェ化け物にされちまってるぜ」
 宮殿の吹き抜けホールに聳え立つ、蒼い巨体に驚愕する、ビュブロス、ベリュトスの漁師兄弟。

「7海将軍のヤツらが魔王にされてもうた時より、何倍も巨大やで」
 料理人見習いのアラドスの目にも、異形の大魔王の姿が映った。

 オレンジ色のヒレの付いた腕は4本あり、タコやイカのような吸盤の着いた触手が無数に、胸の辺りからマントを纏うように生えている。
頭から背中にかけても翼のようなヒレを持ち、手足の指の間には水かきがあった。

「オヤジ……こんな姿にされちまいやがって!」
 ティルスを抱え、大魔王と化したダグ・ア・ウォンの腕による連続攻撃をかわす、バルガ王子。

「王子、お気を付けください。双子の司祭さまから預かった宝珠が、余りの強大な魔力により砕けてしまいました。7海将軍たちが、それぞれの槍を媒介とし魔王にされたのに対し、海皇様は宝剣『トラシュ・クリューザー』を御身に宿しているモノと思われます」

「マジかよ、シドン。それじゃあ少なくともオヤジを1度は倒さねェと、トラシュ・クリューザーは取り出せないってコトか!?」

「お、王子。ダグ・ア・ウォンさまが!!」
 バルガ王子の腕に抱えられたティルスが、大魔王がなにかしようとしているのに気付く。

 4本の腕をX字に伸ばし、それぞれの腕に魔力を蓄積し始めた。
すると宮殿の金属で出来た床が、大きく揺れ始める。

「うおァ、こりゃあ地震だぜッ!?」
「クソ、立ってられねェ!」
 漁で鍛えた兄弟が立っていられないホドの激しい揺れが、深海の宮殿を襲った。

「なんや、上の方でもゴツい音がしよったで。こ、ここは、リヴァイアス海溝の真下に造られた街なんやろ。もし、上の水が押し寄せて来よったら……!?」

「そうだな、アラドス。我々は、一瞬にして水圧に押しつぶされるだろう。深海の魔法も、役には立つまい。リヴァイアス海溝の水圧に耐えられるのは、ダグ・ア・ウォン様だけなのだからな」
 四つん這いのアラドスに対し、浮遊魔法を自身にかけたシドンが、冷静に答える。

「オヤジをどうにかして、止めねェと。シドン、オレたちにも浮遊魔法をかけてくれ!」
「心得ました」
 海洋生物学者は、バルガ王子とティルスに、浮遊魔法をかけた。

「行くぞ、ティルス。まずはお前の氷の剣で、オヤジの動きを止めてくれ」
「了解です、王子。『コキュー・タロス』!!」
 蒼い肌に青緑色の髪をした少女が、氷の剣を振りかざす。

 床や天井を伝った氷が、大魔王の4本の腕を氷漬けにした。
けれども氷はひび割れ、ダグ・ア・ウォンが再び動き出そうとしている。

「『クリュー・サオル』!!!」
 王子が、黄金の長剣で上空から強力な一撃を放った。

「オヤジよ。しばらくの間、黄金となって眠れ!」
 眩い光が、大魔王を黄金像へと変化させる……かに思われた。
けれども王子の一撃は、渦を巻く巨大な4本の水柱によって阻まれる。

「な、なんだとォ!?」 
「王子、水柱で攻撃して来ます!」

 4本の水柱は、竜巻のように周囲の絵画や装飾品を巻き込みながら、海皇パーティーの6人を次々に飲み込んで行った。

 深海の宮殿は、地震によって徐々に浸水し始める。
やがて海の底へと、消えようとしていた。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第07章・第06話

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アイドルとお金

「まったくキミたちは、なんてコトをしてくれたのさ!」
「お陰でボクたちは、全国ネットで恥を晒しちゃったんだからね!」

 天空教室に着くと、星色の髪にそっくりな顔をした2人の少女たちが、机に置かれた2体の人形を相手に怒りをぶちまけていた。

「ニャハハ、カトルとルクスのパンツ、めっちゃ丸見えだったモンね」
 金髪タテガミヘアの少女が、腹を抱えて笑い転げている。

「もう、レノンったら他人事だと思ってェ!」
「全然笑いごとじゃ、済まされないんだからね!」

「まあまあ、あんなモノは些細なファンサービスよ」
「ネットで繰り返し再生されてる様だケド、気にする必要は無いわ」
 机に置かれたレアラとピオラは、涼しい顔で双子を慰める。

「あんなモノ言うなァ、人形のクセにィ!」
「気にするよ。お嫁に行けなくなっちゃったら、責任取ってよね!」
 

「まったく、ガミガミとうるさいコたちね」
「クドクドと、何度も同じコトを。聞き飽きたわ」

「なんだってェ。きいいぃぃ!」
「もうアッタマ来た。こんなナマイキな人形、たたき壊してやる!」

「アラ、いいのかしら。貴女たちの仕事は、わたし達の天空教室でのサポートでしょ?」
「お金が貰えなくなるわよ。それに、わたし達は1体幾らすると思っているのかしら?」
 『サラマン・ドール』の2人は、人間である双子に対して完全に優位に会話を進める。

「ひ、人の弱みに付け込んでェ」
「お、覚えて置きなさいよ」
 怒り心頭の双子姉妹は、ボクの前をズカズカと通り過ぎて行った。

「カトルとルクスは、ずいぶんとお冠(おかんむり) だな。それにしても2人は、お金が必要だから人形のサポートを引き受けたのか?」

「あ、先生だ。そうみたいだよ。なんでもカトルが、心臓に難病の持病があるみたいでさ。その治療費を稼ぐためじゃないかな?」
「そ、そうなのか。初耳だぞ、レノン」

「エッへへ。2人とはかなり、親しくなったからね」
「心臓の持病だなんて、場合に寄ったら命に関わるコトじゃないか」
「だから2人とも、発作止めの薬とか持ち歩いてるよ。カトルは、激しい運動とか無理みたい」

「病気がちだとは聞いていたが、まさかそこまで深刻な病気だったなんて……」
 天空教室の教師となって数か月、カトルの心臓の状態に思い至らなかったコトに、後悔の念が過ぎる。

「心臓の手術ともなると、高額の医療費が必要になるのね」
「まったく人間と言うのも、不便な生き物だわ」
 レアラとピオラの入った2つの人形が、3頭身の顔を見合わせた。

「お金が必要と言う点では、わたしもそれホド変わらないわね」
 正義を重んじる少女、新兎 礼唖(あらと らいあ)が、机の前のソファーに座る。

「ライア、キミもお金が必要だから、アイドルになったのか?」
「ええ、そうです。弁護士になる為には、難問の国家試験を受けなきゃならないわ。ここでいただけるお金だけじゃ、まかない切れませんので」

「わたしも、似たようなモノね。教師を目指すと決めたからには、それ相応の出費は覚悟しています」
 八木沼 芽理依(メリー)が、 ピンク色の髪を宝石で飾った少女の隣に座った。

「まさかメリーとライアが、アイドルを選ぶなんて思ってもいなかったよ」
「合理的に考えれば、ステージに立つアイドルをやっていれば、教壇に立つ度胸は付きますからね。それに今は、教師になる道も狭き門ですから」

 やはりメリーもボクと同じく、教民法が施行された現在の、動画のアポイントメンターとしての教師になるつもりは無いらしい。

「わたしは、純粋にお金の為ですね」
 牧師見習いの少女、我柔 絵梨唖(がにゅう えりあ)も、ライアとメリーの隣に座る。

「エリア、キミがお金を必要とする理由はなんだ?」
「教会の修繕費ですね。借金をして教会を改装したものの、牧師である父が倒れて寄付も激減してしまって、どうにもならない状態なんです」

「それは不動産あるあるっスね。目処を付けて借金して家を買って、当てにしてた収入源が無くなって、家を手放さなきゃならなくなった顧客も、何人か居たっスからね」

 天棲 照観屡(あます てみる)が、エリアの隣に座り、『プレジデントカルテット』の4人は、1つのソファーに集った。

「テミルさん、それはわたくし達一家のコトを、仰っているのではなくて?」
「ですがいつかお姉さまと2人で、あの家を取り戻して見せますわ」
 『ウェヌス・アキダリア』のユニット名を名乗ったアロアとメロエが、テミルの言葉に反発する。

「そんなつもりは無いっスよ。アタシだって、プニプニ不動産を大きくする野望の為に、軍資金がどうしても必要なんス!」

 アイドルとしての道を歩み出した、何人もの少女たち。
その理由にお金が絡んでいるコトに、ボクはやるせなさを感じずには居られなかった。

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一千年間引き篭もり男・第06章・45話

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大観覧車

 紅い惑星の地平線に、紅い夕陽が沈もうとしていた。

「火星のドーム内の僅かばかりの大気では、ここまで空が紅く染まるコトは無い気はするんだが……」
 大観覧車のゴンドラに揺られながら、ボクは演出されたトワイライトタイムに愚痴をこぼす。

「そこは、テーマパーク側の粋な配慮と言うものです。大人としては、あまり詮索せずに受け入れるべきではありませんか?」
 ムードを台無しにする発言に、目の前の少女が機嫌を損ねた。

「ゴメン、クーリア。どうもボクは、女のコと2人きりで観覧車に乗ったコトが無くて……何を話したらいいか、わからないんだよ」

「フフフ。でしたら、わたくしも同じです。男の人と2人きりで、デートの真似事などをしたコトがございませんから……」
 向いの席に座る少女が、美しい顔を夕日に染める。

 彼女の名は、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダ。
大財閥・カルデシア財団のご令嬢であり、財団後継者の第1候補でもある。

「せっかくキミの友人たちが、セットアップしてくれたんだ。せめてゴンドラに乗っている間だけでも、デートでいいんじゃないかな……」
 眼下のテーマパークのあちこちで、彼女の取り巻きの女のコたちが観覧車を見上げていた。

「そう……ですわね。あのコたちには、とても感謝しております。今回のコトばかりでは無くて、常にわたくしと共に居てくれたコトに。ですが彼女たちとも、もう一緒には居られなさそうです」

 ゴンドラから見える、アクロポリス宇宙港。
その宇宙ドッグの隙間から、巨大な白い船体をした優雅な艦が係留されているのが見える。

「キミは明日、キミの名を冠した艦の艦長に就任する。その艦は、新たに再編される火星艦隊の旗艦でもあるんだね」

「そうなれば否が応でも、わたくしは火星艦隊の指揮官の重責を負わされるでしょう。実質の指揮はアポロが執るとは言え、自由なハルモニア女学院の生活には、戻れませんでしたわね」

 寂しそうな顔で、微笑む少女。
目には薄っすらと、涙が浮かんでいた。

「ゴメン、キミをハルモニア女学院に戻すって約束、守れなくて……」
「いえ。艦長は最善を尽くしてくれました。それにこれは、火星側の事情ですから」

 論理的な言葉を並べる、ボクとクーリア。
およそデートには、向いていない2人なのだろう。

「艦長は……セノンさんのコトを、どう思われているのですか?」
「ど、どうして、そんなコトを……」
 昨日のホテルでのキスが、脳裏に過る。

「どうしてでしょうか、自分でもよく解りませんわ」
「セノンは、妹みたいな存在だよ。素直で無邪気で、周りを明るくしてくれる、とてもいいコだ」

 それがセノンに対するボクの、論理的な答えだ。
けれども論理じゃ無い部分で、ボクはセノンをどう思っているかは解らない。

「艦長には他に、好きな方がおられるのですか?」
「そうだね。1000年前、ボクはある女のコに誘われて、山奥の廃鉱に行った。廃鉱にあった彼女の創った冷凍カプセルで、ボクは1000年の眠りに着いたんだ」

 思えばボクにとって最初のデートが、時澤 黒乃との廃鉱探検だったのかも知れない。

「彼女は未来には来れなかったケド、ボクを未来へと導いてくれた大切な女性だよ」
「そう……なのですね」
 黒乃と同じクワトロテールの女の子は、顔を伏せていた。

「艦長、見て下さい。花火が上がってます」
「ドームの中で……イヤ、止めておこう。ここは素直に、キレイだと言うべきか」
「それは、懸命な判断ですわね」

 夜空に咲く鮮やかな大輪の花火が、クーリアの顔を様々な色に変化させる。
どことなく黒乃を思わせる均整の取れた顔に、ボクはしばらく見惚れてしまった。

「艦長……」
 花火は終わり、ゆっくりと下降するゴンドラ。
遊園地では、夜のパレードが始まっている。

「どうか、今だけは……」
 ボクの方へと、飛びつくクーリア。
真珠色の長い髪と、ピンク色のクワトロテールが揺れる。

「クーリア……」
「宇宙斗艦長……」
 ボクは人生で、2度目の口づけをした。

 パレードを彩る賑やかな音楽が、小さな音量で聞こえて来た。

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