ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第8章・24話

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王都の激闘7

 廃墟と化した王都を見降ろす丘に、かの国の国王が夕日を背に立っていた。

「王よ。王のお力添えで、国民の多くを救うコトができました」
 片膝を付き、頭を垂れる歴戦の老将。
彼の背後には、難を逃れた国民が大勢付き従っている。

「このセルディオス、再び王と轡を並べて戦いに挑めたコト、万感の想いにございます」
 けれども、既に死人となっていた王は返事をしない。

「奇妙なモノだな。アンデットとなった王の戦いぶり、老齢とは思えぬ強靭さであったわ」
 騎士国家の代表、ジャイロス・マーテスが感嘆した。

「誰かが使った、リ・アニメーションの魔術の影響でしょうよ。アンデットと化すコトで、永遠の命を望む者もいるくらいだからね」
 魔導国家の代表、リュオーネ・スー・ギルは、自らの見解を述べる。

「でも、与えられた仮そめの命も、あと僅か……」
 神聖国家の代表、ヨナ・シュロフィール・ジョの言った通り、王は橙色の太陽の光に溶けるように消えて行った。

「国を護ろうとした王の志、我らが必ずや果たしましょうぞ」
 東国より落ちた伸びた侍や忍びたちの国家代表、カジス・キームスは、夕日に決意を示す。

「キレイ事は、抜きにしようや、カジスの旦那。アンタんトコは既に、部下を皇女の元へとやっているって話じゃねえか?」
 獣人の国家代表、ラーズモ・ソブリージオが、訝し気な顔をカジスに向けた。

「可笑しなことを申すな。皇女殿下に王都の危機を知らせる為の、ただの伝令だ」
「どうだかな。皇女に取り入って、元帥長の座を狙っているんじゃねえのか?」

「イヤイヤ。もっと尊大なコトを、計画してるのかもね」
「なにを企んでるってんだ、リオーネ?」
「そりゃあ皇女を、妻にするコトでしょうよ」

「下らん戯言を。我に、そのような野心などござらん」
「人の心のウチなど、知れたものでは無いわ」
「そうね、ジャイロス。アンタも男だし、同じコト考えても不思議じゃなくてよ」

「我ら騎士は、主に絶対の忠誠を誓うのだ。侍如き下郎と、同じにするな」
「聞き捨てならん。騎士とて主に背いた者も、大勢いるでござろう!」
 騎士と侍は、自らの剣の鞘に手を掛ける。

「お止めください、お二人とも。王が身罷られたばかりだというのに!」
「ヨナ様の仰られる通り。今はまだ脅威が、完全に去ったワケでは無いのですぞ」
 業を煮やしたヨナと、セルディオスが、権力争いを始める者たちを諫めた。

「フン、まあいいさ。オレは、皇女に部下を派遣するコトにするぜ」
「わたしも、選りすぐりの騎士を選抜しよう」
「わたしはパ~ス。権力争いより、魔導探求の方が面白いし」

「困ったモノですな、ヨナ様」
「ええ。ですが仕方ありません。ヤホーネスは王を失い、今まで抑えられていたモノが、抑えられなくなっているのです」

 雲が晴れて現れた夕日も、山の彼方へと没しようとしていた。

「魔王との戦い、見事であったぞ、雪影よ」
 オレンジ色の軍団を率いる男が、白紫色の髪の剣士に声をかける。

「此度はご助力いただいたにも関わらず、サタナトスを討ち漏らしてしまい、申し訳ござらん」
 グラーク・ユハネスバーグに、不器用ではあるが謝意を伝える雪影。

「謙遜すんなって。魔王を相手にアレだけの戦いができるだけでも、凄まじいモノだぜ」
「そうですよ。単騎で魔王を倒してしまわれたのですから」
 グラークの後ろに従った二人の騎士が、剣士の武勇を褒め称える。

「単騎では……ない。コヤツらの協力があった」
「フン、別に協力してやったワケじゃない」
「我らは、我らの戦をしたまでよ」

「素直じゃないな。ネリーニャもルビーニャも」
「でも、二人の力添えがあったのは事実です。方法は問題アリですが」
 双子司祭も、二人の存在を認めつつあった。

「だが、サタナトスはまだ、生きている」
「そうだな、雪影。ニャ・ヤーゴへと帰還し、対策を考えるとしよう」
 オレンジ色の軍装の部隊は、剣士たちを伴い帰路に就く。

 こうして、ヤホーネスの王都を巡る戦いは、終わりを告げた。

 

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キング・オブ・サッカー・第三章・EP006

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フットサル大会

「倉崎さん。我々のチームも五人となりました」
 いつものコンビニのフードコート。

「サッカーをするには人数が足りませんが、フットサルなら可能ですよ?」
 珍しく白峰さんが、積極的な提案をした。

「お、それいいねえ。河原での練習だけじゃ、いい加減飽きてたしな」
「自分もそろそろ、実戦形式の訓練が必要と思っていたところだ」
「オレさまの脚に驚く相手の顔が、早く見たいぜ」

「フム、確かに。練習だけじゃ、連携を確かめるのも限界があるからな」
 やった、倉崎さんも乗り気だ。

 フットサルは、五人対五人で行われる、ミニチュア版サッカーみたいなモノだ。
実際にそれだけで独立した競技になってるし、プロリーグだってある。

 そして何より、五人ってコトは、ボクも含まれてるんじゃ?

「実は事後承諾を期待して、既にエントリーはしておいた」
「流石は優等生。やるコトが早いねえ。で、場所は?」

「明日、この近くの体育館で小さな大会が開かれる」
「体育館か。それだと、インドア用のシューズが必要なんだが」
 紅華さんが、雪峰さんに尋ねる。

「外であれば、サッカーの練習用スパイクで何とかなったのだがな」
「中学ン時は、持ってたぜ。華麗な足技を磨くのに、フットサルやってたしな」

「陸上の短距離用スパイクじゃ、話になんねェよな?」
「あんな前の方だけ棘が付いてるやつで、ボールをコントロールできるのか、クロ」
「クロ言うな、ピンク頭。まあ、流石にキツイだろうがよ」

「杜都。お前の靴も、軍隊とかが履いているデザインに見えるが」
「倉崎司令。自分の半長靴では、やはり問題でありますか?」
「そんなモン、普段から履いてんじゃねえよ。水虫になるぞ」

 あぐゥ。ボクも、持ってない。
体育シューズじゃ、ダメなのかな……と、目で訴えてみる。

「ヤレヤレ、仕方ない。今からスポーツショップに行ってみよう」
 頭を抱えた倉崎さんは、みんなを連れてスポーツ用品店へと向かった。

「悪いが、使用頻度を考えると、あまり高額なモノは無理だ。考えて買ってくれよ」

「倉崎さん、スカウトされた時は、気前の良いこと言ってたのに、ケチ臭くなったよな」
「現実の社長ともなれば、当然だ。備品も、人数分揃えるのだぞ。幾らかかると思ってる」
「一人1万として、5人だと……ゲゲ、5万かよ!?」

「クロ、偉いぞォ。よくできたなあ」
「ピンク頭、テメーケンカ売ってんのかよ!」

「一人、5千円にしよう。な、それで選んでくれ」
 華々しいスーパースターの言葉は、庶民染みていた。

「領収書をお願いします」
「宛て名はなんに致しましょう?」
「デッドエンドボーイズ・サッカークラブで……」

「倉崎指令の、あんな姿を見ていると……」
「もっと高くて、カッコいいのが欲しかったなんて……」
「流石に悪くて、言えねェよな」

 倉崎さんを見つめる、三人の目がなんだか寂しそうな気がする。
でも、新しいスパイクを買って貰ったんだ。
明日の試合は、頑張らなくっちゃ!

 翌日は日曜日で、天気は土砂降りの雨だった。

「カーくん、こんな雨の日にどこ行くの。サッカーできないよ?」
「今日はフットサルの試合なんだ。たぶん、ボクも出れそうでさ」
「そうなの。じゃあアタシも、付いて行っちゃおうかな」

「な、なんで奈央がくるんだよ!?」
「応援だよ。それに倉崎って人が、どんなコトやってるのかも知っておきたいし」

「奈央が知る必要、無いだろ」
「いーじゃん、別に。ホラ、行くよ」
「まったく強引なんだからぁ」

 雨で濡れた道路に、ピチャピチャと二つの傘が揺らめいた。

「一馬、オメーも隅に置けないな」
「か、彼女持ちかよ、一馬。見損なったぜ!?」
「哀れだねえ、クロ。彼女の一人や二人、連れて来れね~のかよ」

 胸を張って豪語する紅華さんの後ろで、スカウトの時に会った七人の女子高生たちが、黄色い声援を送っていた。

 

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この世界から先生は要らなくなりました。   第04章・第13話

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閑静な住宅街の狂気

 『キア』こと可児津 姫杏の家は、閑静な住宅街にあった。

「立派な家が、建ち並んでる……ケド、空き家も多いな」
 モダンな一戸建て住宅の多くは、生活感もあってキレイな車が車庫に留まっている。
けれども何件かは、真新しい住宅の庭を雑草が支配し始めていた。

「これも、世の流れか。教民法やユークリッドの台頭によって、多くの失職者が出たからな」
 荒れ果てた家々の主の姿を想像しつつ、ボクはキアの家を探す。
ユミアが気を利かせて、プリントアウトしてくれた地図を見ながら。

「ここ……か。ここだな、間違いない」
 地図が示していた場所には、真新しい白い家が建っていた。

「窓が割れて、段ボールで塞がれている。キアのお父さんが、やったのか……」
 それとも、他の原因で割れたのかも知れない。

 ボクは、ご都合主義な後者であるコトを祈りつつ、インターフォンを鳴らした。

「返事が無い。ドアにカギはかかってないし、留守じゃないと思うが」
 しばらく待つと、ドアが僅かに開く。

 家の玄関は薄暗く、ドアの隙間から人の気配がした。
濁った黄色い瞳が、ボクを恨めしそうに見上げている。

「……」
 思わず、固唾を飲んだ。

「なんだ、テメーわ。ウチになんの用だ?」
 ドアが開くと、中年の男が靴箱に寄りかかりながら立っていた。

「ボクは……」
「見たトコ、児童相談所のヤツらじゃねえみてェだな」
 男が口を開くと、アルコールの臭気が漂う。

「可児津 姫杏さんの、お父さんでしょうか。ボクは、キアさんの担任の……」
 ボクは、男が右手にぶら下げていたビール瓶を見て、言葉を止めた。

 茶色いガラス瓶には、ベットリと血がこびり付いていたのだ。

「これか……イヒヒ、これね」
 男は、うすら笑いを浮かべる。

「別に、なんでもねェよ。ただちィとばかし娘が生意気言うんで、しばいてやったんですわ」
 男は、相当に酔っていた。
ボクは泥酔した男を払い除け、土足で男の家に上がり込む。

「オイ、テメーなに勝手に人の家上がってんだぁ、このヤロォ」
 背後で、酔っぱらいが喚き散らしているのが聞こえる。

「キア、どこだ。居るんなら、返事をしろ!」
 大声で呼びかけると、扉の向こうで微かな声が聞こえた気がした。

「キア、そこに居る……のか!?」
 扉の向こうは台所で、電気は消してある。
慌てて、証明のスイッチをオンにした。

 テーブルの上には、食べかけのスルメや焼き鳥の串が、無造作に散らばっている。
チャックのお洒落な床には、焼酎やウイスキーの空き瓶やペットボトルが転がっていた。

「せ、先生……」
「お、お姉ちゃんが……」
 テーブルの向こうから、幼い声が聞こえた。

 聞き覚えのある声。
キアのバンドのメンバーでもある、妹たちの誰かだ。
テーブルを回り込もうとするものの、冷蔵庫の中身が床にぶち捲けられていて邪魔をする。

「……いやァ」「ひえェ」
 なんとかシンクの前に辿り着くと、座り込んだ二人の少女が互いに抱き合っていた。
彼女たちは怯えた目で、ボクを見上げている。

「確か、実杏ちゃんと理杏ちゃんだったね。キアは、どこに……」
 キアの双子の妹である、二人の小学生は冷蔵庫を指さす。
ボクのアパートには置け無そうもない、巨大で高機能なタイプだ。

「ま、まさか……ウソだろ!?」
 冷蔵庫の扉が、僅かに開いていた。
そこから、光と共に赤い髪の毛が漏れ出ている。

「キアッ!!?」
 扉を開けると、悪夢のような光景が詰まっていた。

 巨箱の中に、可児津 姫杏と、妹で中学生の詩杏が押し込められている。
二人の少女の顔は、人形のように真っ白だった。

「わああ、キア、シア!!」
 二人を中から引きずり出す。
この時のボクはもう、現実なのか夢なのかの区別もつかない状態だった。

 

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一千年間引き篭もり男・第05章・21話

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悲劇の始まり

「お、おじいちゃん。一体、何が起きたんでしょうか!?」
 小惑星パトロクロスの内部にいるボクたちには、今の状況が解からない。

 ボクは咄嗟に、周りの状況を確認した。
地面が揺れている。
街の人が立っていられないくらいの振動が、何度も襲っていた。

「地球で起こるような地震じゃないし、恐らくデブリの衝突でもない」
 すると、前を歩いていた三人の内、サックスブルーの短髪の少女が地面に伏せながら振り返る。

「確かにここは、小惑星の内側を繰り抜いて作られた街だ。地球みたいな岩盤(プレート)同士の歪みや、火山由来の地震は発生しないケドよ……」

「どうして、デブリの衝突でないって言える?」
「デブリに関しては、この小惑星のAIが発見し、軌道を予測して対処してるんじゃないのか?」

「まあ、そうだね……なる程」
 水色のセミロングの髪の少女は、小さく頷いた。

「それじゃあ宇宙斗艦長は、この揺れの原因が解かるのかい。残念ながら、コミュニケーションリングに情報は伝わってないんだ」
 最後の一人である、ドレッドヘアの少女に問いかけられる。

「何者かが、惑星の外装を攻撃しているんだ」
「な、何者かって、誰なんですか?」

「一番に考えられるのは、ギリシャ群の軍事企業、グリーク・インフレイム社の艦隊だな」

「それこそパトロクロスのAIが、接近を許すハズないんじゃないか?」
「だけど、電子戦に負けた可能性もある……」
「でも、接近に気付かないなんてあるのかな?」

 真央とヴァルナ、ハウメアの会話は、自問自答としてボクの脳内でも起きていた。

「とにかく、今は急いで艦に戻ろう。考えるのはその後だ」
 ボクはそう判断したものの、街の中のあらゆる場所に防護壁が張り巡らされ、帰還の妨げとなる。

「クッソ、こっちも壁で塞がれちまってる」
「こっちもダメ……」
「区画(ブロック)ごとに、完全に遮断されてるよ、どうする!?」

「せめて、トゥランでもいてくれたらな」
「ご、ごめんなさい、役に立てなくて」
 栗色のクワトロテールの少女が、申し訳なさそうに俯く。

「別にセノンが謝るコトじゃ、ないだろ」
「でも、もうお手上げだね……」
「こんな分厚い壁に阻まれちゃ、攻撃が止むまで待つしか……」

「いや。身体が壁を通り抜けられなくても、情報なら可能なハズだ」
「そ、そうですね。コミュニケーションリングで、手あたり次第アクセスしてみます」
 セノンの言葉に、彼女の三人の友人も頷いた。

「宇宙斗艦長。クロノ・カイロスには無理だったケド、この惑星の指令室に繋がったぜ」
「デイフォブス代表が、会いたがってる」
「今、指令室までの経路を送ってもらったよ」

「そうか。ナビゲートは任せる、真央」
「マケマケ、お願いなのです」
「ヘイヘイ、任されたぜ」

 真央・ケイトハルト・マッケンジーに先導され、ボクたち五人は揺れる小惑星の街を苦労しながら進み、パトロクロスの指令室へと辿り着いく。
指令室は、パトロクロスの内側に築かれた街を照らす、人工太陽の内部に存在した。

「お待ちしておりました、宇宙斗艦長」
 黒きギリシャ民族衣装を着た背の高い男が、軌道エレベーターを降りたボクたちを出迎える。

「デイフォブス代表。現在の状況を教えていただけますか?」
 完全な球体の内部の部屋は、石レンガ造りの城塞都市を訪仏とさせるデザインになっていた。

「現在、グリーク・インフレイム社の赤き艦隊が、我らがパトロクロスを取り囲んで砲撃を仕掛けてきているのです」

「艦隊の接近には、気付かなかったのですか?」
 ボクの問いかけに、黒き英雄の後ろに控えていた少女が答える。

「ギリシャ群の約一万隻に及ぶ艦隊が、いきなりパトロクロスの周囲に現れたのです」

「そ、それは、ホントなんですか!?」
「はい……」
 イーピゲネイアは、静かに瞳を閉じた。

ある意味勇者の魔王征伐~第8章・23話

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王都の激闘6

 リーフレアの魔法力場構築によって、巨大な壁が魔王の巨体を閉じ込める。
そこにリーセシルの召喚した流星が、瀧のように天空から降り注いだ。

「フッ、流石だな。これでは魔王とて、一溜りもあるまい?」
 雪影は、魔王が消え去りガラ空きになったサタナトスに向かって、跳躍する。

「それはどうかな。ボクは、時空を切り裂けるんだ」
「再び、次元の狭間へと逃げようというのか……そうはさせん」
 白夜丸が輝き、時間の流れが遅くなる。

「そのクビ、貰った」
 黒楼丸が、サタナトスの真っ白な首を飛ばしたかに見えた。

「ククク、誰が逃げるなんて言ったかな?」
 けれども漆黒の刀は、すんでのところで止められている。

「な、なんだと?」
 黒楼丸を止めたのは、獅子のレリーフされた剣だった。

「そ、そんな……」
「あ、あの腕は……魔王の!?」
 強力魔法を放った双子姉妹の顔が、驚きの表情に変わる。

「既にあらゆる場所で、時空を切り裂いていたというのか?」
 剣は、空間から現れた腕に握られている。

「わ、わたし達の魔法を、回避したっての?」
「で、でもどうやって、魔王の巨体を……」

「簡単な話さ。別に魔王だからって、巨大である必要はどこにも無いんだよ」
 腕から先も出現した、魔王の身体。
それは、雪影より多少大きい程度のサイズにまで、小さく縮んでいた。

「なる程な。身体を縮ませて次元の狭間を通り……」
「アイツらの魔法を、回避したと言うワケか」

 獅子や鷲との戦いを終えたネリーニャとルビーニャが、いつの間にか雪影の後ろに立っている。

「大きさってのは、都市や城を破壊するのには役立つケドさ。キミみたいな剣士を相手にする場合、返って不利になったりもするからね」
 サタナトスを守護するように、人間サイズの魔王ザババ・ギルス・エメテウルサグが立ちはだかった。

「小さくなったところで、我が剣の錆びとなる未来に変わりは無い」
 雪影は、魔王ザババに高速の斬撃を、次々に加える。

「そいつはどうかな?」
 魔王の六本の腕に握られた獅子と鷲の剣は、それをことごとく跳ね返した。

「ザババは、古代の戦いの神でもあるんだ。キミの二本の剣じゃ、いずれ防ぎきれなくなるよ」
「クッ……!」
 サタナトスの言葉は現実となり、実際に押され始める雪影。

「だらしの無いヤツめ。なれば我らが力を貸そう」
「剣の数が増えれば、何の問題もあるまい」
 ネリーニャとルビーニャが、雪影の加勢に入ろうとする。

「必要ない。この雪影、見くびってもらっては困る」
 白紫色の髪の剣士は、魔王の剣を弾いた勢いを利用し距離を取った。

「なんのつもりだい、納刀なんかして。まさかボクに、降参するワケじゃないだろ?」
 何かを感じたのか、サタナトスは時空の狭間に身を隠す。
……と、同時に、魔王ザババが六本の腕で、刀を納めた雪影を急襲した。

「無論、そんなつもりは無い。我が奥義、とくと見るがいい」
 剣士の眼が、鋭く輝く。

「開闢(かいびゃく)の斬光!!!」
 雪影の腰に下げられた二本の鞘から、白き刀身の剣と黒き刀身の剣が解き放たれた。

「なッ……にィ!?」
 白夜丸からは眩い閃光が、黒楼丸からは漆黒の暗闇が広がり、やがてそれらは交じり合う。

『グオオオオォォォォーーーーーーーーーーーッ!!?』
 一つとなった光と闇のエネルギーは、魔王の斬撃を全て反射しその体を貫いた。

「クソ、間に合わな……!?」
 背後にいたサタナトスも、時空の狭間を閉じるのが一瞬だけ遅れ、身体の半身を喪失する。

「ヤツは逃れたか……」
 剣士の視線の先には、金髪の少年の姿は無く、荒廃した王都の姿が映っていた。

「どうやら、あちらも終わった様だぞ」
 街の外では、オレンジ色の軍装のオフェーリア軍が、魔物の大軍を壊滅させる。

「我らが呼び出した死者の群れも、ほぼ灰塵と化したようだしな」
 垂れこめた雲が晴れ夕日が差し込むと、生き残ったアンデットたちも、再び天へと召されて行った。

 

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キング・オブ・サッカー・第三章・EP005

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スピードVSテクニック

「どうだ、ピンク頭。この黒狼さま脅威のスピードに、驚いたか?」
 疾風みたいな脚をお披露目した黒浪さんは、ボールを転がし戻ってくる。

「お前、このチームのドリブラー枠みてーだケドよ。今日からその看板、貰い受けるぜ」
 獲物を狙う目をした狼の 前に、紅華さんが立っていた。

「ああ、驚いたぜ、犬ッコロ。ちゃんとボールを取ってこれて、偉いぞォ」
 う、うわあ。紅華さん、それは言い過ぎなんじゃ?

「誰が犬ッコロだ、コラァ。オレは黒狼、孤高のオオカミよ!」
 中二病、全開だよォ、黒浪さん。

「クロ、お手」
「アンッ!」
 差し出された紅華さんの右手に、黒浪さんの右手が乗った。

 ……え?
しばらく、時間が止まった。

「い、いや……これは……その……」
「ま、まさかホントにやるとは、思わなかったぞ」
 流石の紅華さんも、顔が引きつってる。

「オ、オレさまは、手を払い退けようとしただけだ!」
「お、おう……」
 あまりの苦しい言い訳に、反論すらしなかった。

「しょ、勝負だ、ピンク頭。この屈辱は、ドリブル勝負でそそいでやるぜ!」
「テメーが勝手に、自爆しただけじゃねーか。勝負は受けてやるがよ」

 デッドエンドボーイズの、二人のドリブラーの決闘(デュエル)が幕を開ける。

 黒浪さんが高速ドリブルを開始し、紅華さんを軽く抜き去ってゴールを決める。
次にボールを持った紅華さんが、華麗なテクニックで黒浪さんをかわし、ゴールネットを揺らした。

 ……それが延々、十回ほど繰り返される。

「紅華も黒浪も、ドリブル能力が半端なく高い反面、ディフェンス力は低い」
「二人が勝負をすれば、ボールが持った方が勝利する。当然の結果だ」
 倉崎さんや白峰さんの分析は、やる前から予想されていた。

「やるじゃねえか、クロ。だが、オレの方が上だぜ」
「犬みたく呼ぶんじゃねえ。オレさまのが上だ!」
 相変わらず火花を散らす、紅華さんと黒浪さん。

「お前たち、その辺でいいだろう。お互い、相手のドリブル力の素晴らしさは解かったハズだ」
 倉崎さんが、二人の間に割って入る。

「お言葉ですが倉崎さん。コイツのドリブルは、ただ縦に速いだけっスよ」
「よく言うぜ。お前のチャラついたドリブルなんて、時間の無駄だ」

「ふむ。口では何とでも言えるが二人とも、互いのドリブルを一度も止められていないだろう?」
 雪峰さんが、ヤレヤレと言った表情で二人を見つめた。

「テメー雪峰。オレが、コイツのヘボいドリブルを、止められないだって?」
「そりゃあこっちの台詞よ。お前のチャラいドリブルなんか、直ぐに止めてやる」

 二人のドリブラーは、直ぐに勝負を再開する。

 でも、まだ勝負を続ける意味なんて、あるんだろうか?
結果は、変わらないと思うんだケドな。

「フフ、勝負を続ける意味はあるさ、一馬」
 え、倉崎さん?
……うう、心を読まれた。

「そうだな、御剣隊員。二人の勝負の方向性が変わった」
 杜都さんの眼差しの先で、勝負を繰り広げる二人のドリブラー。

 紅華さんの華麗なドリブルに、スピードで食らい付こうとする黒浪さん。
黒浪さんのスピードを止めようと、全力で進路を塞ぎに行く紅華さん。

 ディフェンスが嫌いな二人が……必死になって守備してる。

「なるホド。お二人が彼らを挑発したのは、これが狙いだったのですね」
「そうだ、杜都。二人のドリブル力に疑いの余地は無いが、守備力は課題だったからな」

 倉崎さんと雪峰さんは、最初からこれを狙って二人を煽ったんだ。

「しばらくの間、この状態を維持して、二人の守備力を向上させましょう」
「そうだな。ヤツらには悪いが、それが一番のようだ」

 華麗なるドリブラーの紅華さんと、高速ドリブルの黒浪さん。
二人の勝負は夕暮れまで続き、それからも事あるごとに再開された。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第04章・第12話

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変わり始める世界

 天空教室は、久慈樹社長の茶番の道具にされた。

「角度はこんなモンすかね」
「自動フォーカス、被写体追尾機能を持った最新鋭のカメラだ。壊すなよ」
 撮影スタッフによって、無数の小型カメラが設置される。

「これじゃやってるコトは、あのコたちを襲ったヤツらと変わらないじゃない」
「少しばかり、度が過ぎやしませんか、社長」
 ユミアとタリアが、久慈樹社長に詰め寄った。

「キミはともかく、ボクシング経験のある後ろの娘に殴られたら、タダじゃ済まなさそうだね」
「そうよ。タリアは既に何人もの男を、病院送りにしてるもの」
「よせよ。そこ、自慢するところじゃねーし」

「もちろん、カメラの設置は教室の中だけにするよ。視聴回数稼ぎには、ローアングル撮影くらいしたいところではあるが……」
「高価なカメラが、ペシャンコになってもいいならやるといいわ」

「解ってるよ。そんなコトをすれば、例の弁護士に上げ足を取られかねないからね」
 久慈樹社長は、引き連れて来たスタッフと共に部屋を後にする。

「これでやっと、いつもの教室に元ったわね、先生」
 栗毛の少女は、ホッとため息を付いた。

「ふえ~、ヤレヤレだよ。緊張した~」
「おい、バカライオン。撮影は続行されてるのを忘れるな」

「うえええ、そ、そうだったぁ!?」
 タリアに注意され、慌てて開いた脚を閉じるレノン。

「カメラのマイクで、音声も録音されてるんだよな」
「そりゃそうでしょ、先生」
「下手に噛めにゃ……あッ、しま!?」

「ぷっ、プフフ……」
「ギャハハ、噛めにゃいだって。先生カワイイ」

「ユミア、レノン~!」
 教室が、穏やかな笑いに包まれる。

「それじゃあ、授業を始めるぞ。今日は、社会科の授業だ」
 一つだけ空いたキアの席が気になってはいたが、ボクは教壇に立った。

 その日の授業を、教室のちょっとした変化くらいにしか思って無かったのだ。

「ところでタリア、彼女たちは馴染んできてるか?」
 授業が終わるとボクは、制服の下にフード付きパーカーを着た少女に話しかける。

「そうだね、けっこう馴染んて来たと思う」
 タリアか関わった事件の、被害者である七人の少女たち。
まだ中学生の年齢の彼女たちが、高校生との集団生活に馴染めているかが心配だった。

「心配ないですよ、先生。お姉さま以外の先パイも、みんな優しいですし」
 パステルブルーのロングヘアの少女が言った。

「それを聞いて安心したよ、アステ」
「アステは、テニスサークルのリーダーなんだ。みんなをよく纏めてくれている」
「エヘヘ。それホドでも……」

「アステったら、タリアお姉さまに褒められて照れてるわ」
「べ、別に照れてなんかないよ」
 顔を真っ赤に染めながら反論するアステに、サークルの仲間からも笑いがこぼれる。

「どうやら心配は無さそうだな。オレはこれから、キアの家に行ってみるよ」
「先生、住所知ってるの?」
「悪い。また頼まれてくれないか、ユミア」

「まったく、世話の焼ける先生ね」
 ユミアはそう言いつつも、手早く情報を集めてくれた。

「そう言えば先生、転居期限は明日までなんでしょ。もう次の転居先は、見つかった?」
「それが、まだなんだ」
「そ、そう。大丈夫なの?」

「大丈夫では無いんだが、やっぱキアのコトの方が気になるし……」
「仕方ないわね。目ぼしそうな物件、見つけといてあげるわ」
「な、なるべく手ごろな値段で、頼む」

 アパート探しをユミアに任せ、ボクは下界へと降るエレベーターに乗る。

「キアのヤツ、妹の身を心配してたよな。何もなければいいんだが」
 最後に見た彼女の背中に、カニ爪エレキギターは無かった。

「ユークリッドと教民法によって、人生を狂わされた人たち……」
 久慈樹社長の言葉には、可児津 姫杏やその家族も含まれているのだと、改めて感じながら高層高級マンションを後にした。

 

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