ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第12章・03話

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「バルガ王、ベリュトスが謁見を申し出ております」
 若き海洋生物学者が、山積みにされた書類に埋もれる王に言った。

 海底都市であるカル・タギアには、崩壊してしまった神殿はあったものの城と呼べる施設は無く、替わりに御殿のような建物が政治中枢機構として機能している。
その最深部にある部屋の、豪奢な椅子に居心地悪そうに座った王が反論した。

「シドン、お前嫌がらせか。ンなモン、勝手に通せよ」
「バルガ王、すでに王となられたのですから、もっと威厳のある言葉遣いを……」
「見てくれなんざ、どうだってイイ。それよりこの書類の山、お前が何とかした方が早く無ェか?」

「仕方ありませんね、では前を少し開けますので、ベリュトスに会って下さい」
 そう告げるとシドンは、王の前の書類の山を何束か持って、自分の席に向かう。

「よォ、ベリュトス。久しいな」
「忙しいトコ、すいません。バルガ王」
「お前とオレの仲だ。堅苦しい話は、抜きにしようぜ。それより、なんの用だ?」

一千年間引き篭もり男・第07章・14話

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アンチエージング・カプセル

 永く続く坂を登り、ボクたちは外交館の前に立っていた。
目の前にある建物は、他の建物と同じように白い壁にオレンジ色の屋根をしている。

「ここが、ヴィクトリアの外交館なんですか?」
 火星の大都市アクロポリスを見慣れてしまったボクには、いささかみすぼらしく思えた。

「このヴィクトリアは現在、地球の政府機関として機能しているのです」
「え、地球が存在するのに、コロニーに地球の政府機関があるのですか?」
 ミネルヴァさんの言葉に、反射的に反論してしまう。

「それは、いずれ解るコトです……参りましょう」
 黒いスーツに着替えていたミネルヴァさんは、颯爽と外交館の中へと入って行った。

「はい……2人とも、行くぞ」
 振り返ると、アンティオペーが門前の庭木に止まっていた蝶に興味を示している。

「蝶なんか見てないで、ホラホラ早く」
「わわ、押さないでよ、メラニッペ―!」

 ライム色の天然パーマの少女に背中を押され、目の前を通り過ぎて行くアンティオペー。
ボクも中に入ると、警備員たちの敬礼が出迎えてくれた。

「宇宙斗様ですね。わたしは、ヴィクトリアの領主、ニケ―と申します」
 警備員の列の最深部に立っていた、真っ白な髪の少女がカーテシーと呼ばれるお辞儀をする。

「ボ、ボクは、群雲 宇宙斗です。よ、よろしく……」
 少女は、現在のアンティオペーたちよりは大人びていて、女神のように整った顔をしていた。

「ミネルヴァ様から、お噂はかねがね伺っておりますわ。火星では時の魔女の侵攻に対し、ずいぶんとご活躍されたのだとか?」
 スカイブルーの瞳が、ボクを見つめている。

「いえ……力及ばず、人々に多大な被害を出してしまいました」
「それでも、貴方がいなければ被害はさらに拡大したと、聞き及んでおりますわ」

 純白の長い髪を揺らし、外交館の奥へと歩き始めるニケ―。
ボクたちは、接待室へと通された。

「紅茶を、ご用意いたしました。お寛(くつろ)ぎ下さい」
「わあ、美味しそうなお菓子まで……あ、スミマセン」
 お喋りな口を押え、謝るアンティオペー。

「フフ、可愛らしい従者さんを、お連れなのですね」
「い、いえ。彼女は、ボクの乗って来た艦の艦長なんです」
「まあ、そうでしたの。これは、失礼なコトを言ってしまいました」

 白い磁器のティーセットを前に、少女たちの笑い声が零れる。
すると、黒いスーツを着た女性が口を開いた。

「ニケ―、わたくし達がここまで来るまでに、カメラに撮られた映像はありますか?」
「ご心配には及びません、お姉さま。既に、手は打ってあります」
 どうやらマーズさんの追跡を、気にしているらしい。

「……とは言えこの姿では、動くのもままなりません。例のモノは、用意出来ていますか?」
「例のモノ?」
 ボクは思わず、会話に割り込んでしまった。

「もちろん、ご用意してありますわ。宇宙斗艦長も、ご覧になられますか?」
「へ……見てイイのであれば……」
 ボクの返答を聞くと、ニケ―さんはミネルヴァさんの方を見る。

「別に、構いませんが……」
 大人びたミネルヴァさんが、少しだけ頬を赤らめた。

「では宇宙斗様と、ミネルヴァさまはこちらへ。お2人は、紅茶でも飲みながらお待ちください」
 アンティオペーとメラニッペ―を残し、接待室を出るとエレベーターで1階だけ上り、右に折れて突き当りの部屋に入る。

「今までの部屋とは、まったく雰囲気が異なりますね」
 青白い照明に、みずみずしい植物が並んだプラント。
床は黒光りする金属で出来ており、黒い壁には青い計器類が並んでいた。

「こ、これは……カプセル!?」
 そして何よりボクを驚かせたのは、部屋の真ん中に置かれたカプセルだった。

「冷凍睡眠カプセル……ってワケじゃ、ないんですよね」
 いやが応にも、黒乃の作ったカプセルを思い出す。
ボクはそのカプセルで、1000年もの間眠っていたのだから。

「このカプセルは、細胞を活性化させる装置ですの。人の1つ1つの細胞を若返らせる、アンチエージング・カプセルですわ」
 ニケ―さんが、説明をくれた。

「へ~、そうな……ええッ!?」
 何気に振り返ったボクは、思わず固まってしまう。

「どうしたのです、宇宙斗艦長?」
 気の強そうな女性の顔に、美しいクワトロテールのミネルヴァさん。

「どうしたって……そ、そ、その……」
 彼女の身体には、何も身に付けられていなかった。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第08章・第43話

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 プレジデントカルテットのステージが終わり、興奮冷めやらぬ観客席。
間髪入れずに、ざわめきが支配する。

「お、見ろよ天井。星空になってるぜ」
「解像度、ハンパねぇな」
「まるで、プラネタリウムに来たみたいだ」

 ボクも首を上げると、天井のクリアパネル全面に、美しい星空が映し出されていた。

「ホントにキレイだな。この演出だと、もしかして……」
 ボクは、次のアイドルグループを予想する。

 すると天井の星空の一角に、ひときわ眩い星々が現れた。

「やはりな……昴(すばる)、プレアデス星団だな」
 真っ白な星々から、真っ白なローブを着た少女たちが4方に散らばる。

「おお、プレー・ア・デスティニーだぜ!」
「空中を飛んでるわ、天女みたい!」
「マジ、スゲー」

 プレー・ア・デスティニーの、アステ、メルリ、エレト、マイヤ、タユカ、カラノ、アルキの7人の少女たち。
それぞれの髪色である光を、光らせながら優雅に宙を舞っていた。

「アイツら、凄いな。あの高さから吊るされてるなんて……」
「アラ……先生ったら、高所恐怖症なワケ?」
「そ、そう言うワケじゃないさ」

 ユミアに言われ、子供っぽく反論してしまう。

「そろそろ、始まるみたいね」
「あ、ああ。そうだな」
 メロディアスな曲が流れ始め、会場が再び盛り上がって行った。

「みなさ~ん、今日はライブに来てくれて、どうもアリガト~!」
 蒼い光を纏った、パステルブルーの長い髪の少女、アステが空宙から叫ぶ。

「ホ、ホントにこんなにたくさん来てくれるなんて、ゆ、夢のようです」
 引っ込み思案なメルリが、モスピンクの巻き髪ツインテールに、ピンクの光を纏わせながら言った。

「今日はわたし達頑張るから、みんなも楽しんで行ってね!」
 真っ白な光を纏い、真っ白な髪を靡かせながらピョンピョンと宙を跳ねる、エレト。

「ボクたち、プレー・ア・デスティニーは、みんなを笑顔にしたくて生まれたんだ」
 オレンジ色の髪に、オレンジの光を纏ったマイヤが、元気に飛び回る。

 思えば彼女たち7人は、同じテニススクールに通っていた。
その帰り道に、少年たちによって盗撮の被害に遭ってしまう。

「アイツらも、辛い時期があったろうに……よく立ち直ってくれたモノだ」
 盗撮された動画をネットに拡散され、一時はパニックになっていた彼女たち。
ボクは少しだけ、肩の荷が降りた気持ちになっていた。

「それじゃ、わたし達のデビュー曲、聞いて下さいですゥ」
 ウェーブのかかった桜色の長い髪のタユカが、桜色の光を羽織りながら甘えた声を出す。






























キング・オブ・サッカー・第7章・EP004

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連行される一馬

 地域リーグの開幕直前、ギリギリ滑り込むカタチで加入が認められた、清棲デッドエンド・ボーイズ。

「カーくんたちのチーム、地域リーグだっけ。加入が、認められたのよね?」
 オレンジジュースを飲みながら、自宅のリビングでくつろいでいると、奈央が言った。

「奈央がどうして、知ってるんだよ?」
「ん~、亜紗梨さんに聞いた」
 どうやら奈央と亜紗梨さんは、まだ親しくしてるみたいだ。

「その割には、ぜんぜんテレビで放送されないわね」
 気怠そうに呟く奈央は、向かい側のソファーに座っている。

「放送されていたよ、深夜のニュースでチョットだけ……」
「なんで、もっと放送されないのよ?」
「名古屋には、Zeリーグのトップリーグに所属する、名古屋リヴァイアサンズがあるからだよ」

「そっか。確か、倉崎って人も居るんだよね?」
「倉崎さんは、ウチのオーナーでもあるんだ。今はケガして、試合には出て無いケドね」

「最初に遭ったときは、胡散臭い人だと思ったケド、まさかホントにサッカークラブのオーナーだったなんてね。しかも、高校生なんでしょ?」

「ウン、今は高校3年生」
「高校生で、プロサッカー選手で、チームオーナーかぁ。だったらもっと、放送されていても良さそうじゃない?」

 再放送のドラマを見終わった奈央は、ボクの家のテレビをリモコンでポチポチと変え始めた。

「あッ、もしかしてコレ、そうじゃない?」
 ボクの方に顔を向ける、奈央。

「アレ、カーくん?」
 けれどもボクは、既に家を飛び出していた。

「奈央のヤツ、サッカーなんて興味無かったハズなのに、今日はやけに喰いついて来たな。ひょっとして、亜紗梨さんの影響かな?」
 サッカーボールを転がしながら、近所の公園に向かうボク。

「そうだ、練習場に行ってみよう。誰か、居るかも知れない」
 モヤモヤした気持ちを振り払うように、川べりの練習場へと向かった。

「やっぱ、誰も居ないや。元々、デッドエンド・ボーイズ専用の練習場ってワケでも無いモンな」
 湿った土と砂の入り混じったグランドに降りると、ボクはボールを置きシュート練習を始める。

 まずは破れかけのゴールに向けて、普通にシュート。
それから段々と距離を取って、ミドルシュートの練習に移行した。


「杜都さんは強烈なパワーミドル、柴芭さんは外から巻いてくるシュートを持っている。ボクもこのシュートを、ある程度はモノにして置かないと……」
 オーバーレイ狩里矢との練習試合で、偶然決められたシュート。

「ドライブシュートだッ!」
 ボクはあのときの感覚を呼び起こしながら、ミドルシュートを放つ。
ボールの下側を、こそぎ上げるようにして撃ち上げた。

「うわあぁ!」
 するとボールは、ゴールバーの遥か上空を越え、遊歩道の方へと飛んで行ってしまう。

「ダメだ、セルディオス監督みたいに、上手く行かないや」
 慌ててボールを追いかけていると、一級河川をまたぐトラス橋の上で、スーツ姿の大人が数人駆けずり周っているのが見えた。

「こんなところにスーツって、見かけないよな。なにか慌ててるみたいだケド……まあいいか?」
 ススキの群棲してる辺りを、探し始めるボク。

「お、あったあった……ンンッ!?」
 ススキの中でボクは、自分と同じ顔を見つけた。

「うわあ、なんだッ!?」
 目の前のボクの顔も、ボクを見て驚いている。
けれども、よく見ると髪の色が少し違うし、長い気がした。

「オイ、今声がしなかったか?」
「橋の下かも知れん。行ってみよう」
 するとナゼか、橋の上の大人たちが降りて来る。

「マ、マズい、見つかったのか!」
 目の前のボクの顔は、ボクの口を塞ぎススキの群棲の奥深くに、ボクを引きずり込んだ。

「どうやらまだアイツら、ボクには気付いていないみたいだ。でもこのままじゃ、時間の問題か……」
「ムウ……グウゥ!?」
「あ、ゴメン、苦しかった?」

「プハッ……、ゼハー、ゼハー!」
 手を離され、必死に息を吸い込むボク。

「それにしてもキミ、ボクにそっくりでメチャクチャ良い男じゃないか?」
 少しだけ髪色の違う、ボクが言った。

「キミは……?」
 自分にそっくりなせいか、初対面なのに話せる。

「ボクは、出羽 北斗(でいわ ほくと)。それよりキミ、このジャージを着てくれないか」
 ボクはジャージを手渡される。

 なんだか、星がいっぱいついた黒いジャージ……なんでこれを、ボクに?
 疑問に感じながらも、ジャージを着るボク。

「悪く思わないでくれ」
「う、うわあッ!」
 ボクは北斗と名乗った人に、ススキ野から押し出される。

「北斗くん、こんなところに居たのか」
「さあ、記者会見場に戻るぞ」
 2人のスーツを着た大人が、ボクの両腕をガッシリとホールドした。

「へ……なんで?」
 ボクは2人の大人に、連行されて行った。

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ある意味勇者の魔王征伐~第12章・02話

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バルガ王の誕生

 その日、崩壊し王を失った海底国家、カル・タギアに新たなる王が誕生した。

「みんな、よく戻ってくれた。知っての通り、オヤジのヤロウが大魔王にされちまってよ。悪いがしばらくの間、このオレが玉座に座るコトになった」
 新王は、海皇の象徴である蒼いマントを纏い、頭には真珠の散りばめられた黄金の王冠を被っている。

「バルガ王子ーーー、アンタに付いて行くぜーーーッ!!」
「バカ、もう王子じゃなくてバルガ王だろ!」
「イヤ、そうだった、アハハ!」

 街の広場に集まった海の民は、地上の王国ほどは格式ばってはおらず、王との距離も近かった。

「戴冠っつっても、正式なモンじゃねぇ。海皇の宝剣たる『トラシュ・クリューザー』も、オヤジのヤツが持って行っちまったからな」

「いえ、兄上。例えそうであったとしても、今のカル・タギアの王は、兄上を置いて他におりません」
 ギスコーネが、兄に向って片膝を付きながら傅(かしず)いた。

「オイ、ありゃあギスコーネのヤツじゃねェか!」
「アレ、バルガさまとギスコーネさまって、犬猿の仲じゃなかった?」
「自分の派閥まで作って、バルガ王子を目の仇にしてたクセに、どう言った風の吹き回しだ?」

「まあまあ、仲が戻ったのなら何よりじゃわい」
「でもよ。この国をこんなにしやがったサタナトスって野郎を、手引きしたのはアイツって話だぜ」
「そうだ、死んじまったヤツも、たくさん居るんだ。すんなり許せるもんか!」

 国民たちの憎悪の目が、ギスコーネに向けられる。

「コイツは、何発かぶっ飛ばしてやったんだが、そんなコトで死人が生き還るモンでも無ェコトは、解っている。だが今は、それ以上に重要な問題が……」

「バルガ王。ボクの罪は、自分が1番解っております。罪は、甘んじて受け入れましょう」
 民に向って、深く頭を下げるギスコーネ。

「スマンな……みんなの不満も、最もだ。だが今は、コイツの力も必要なんだ。どうかこの通りだ、コイツの罪を、オレに預けてくれ!」
 冠が落ちそうになるくらい、深く頭を下げるバルガ王。

「ま、まあ、王がそこまで言うんなら……な」
「仕方ないわね、もう悪さすんじゃ無いわよ」
「王子の右腕になって、補佐してやりな」

「済まない……みんな……」
 涙を零す、ギスコーネ。
このとき彼は、自分の罪深さを心底理解した。

「バルガ王、罪深き弟を救うなど、王として立派な心掛けだと思いますわ」
 グラマラスな身体に、真紅の鎧を纏った女将軍が言った。

「ウン、そだね。マント着てると、確かに王さまっポイかも」
 ライム色の水着に、透明な鎧を来た少女も続く。

「ガラ・ティアに、スプラ・トゥリーか。お前らは、オレに従ってくれるか?」
「もちろんですわ。このガラ・ティア、バルガ王に忠誠を誓いましょう」
「ボクも、王に忠誠を誓うよ。愛するのは、ダーリンだケドね」

 2人にまで減ってしまった、7海将軍(シーホース)も、王に対しヒザを付き、頭を下げた。

「まずはこのカル・タギアの、復興を目指すぜ。みんなの力を、貸してくれ!」
 バルガ王のぶっきら棒な演説に、海の民たちから歓声が沸き起こる。

「おうよ、バルガ王。任せな!」
「こうしちゃいらねぇ。潰れた建物を撤去して、建て直すぞ!」
「まだ、避難したままのヤツらも、呼び寄せようぜ!」

 広場は活気に溢れた民で、ごった返した。
けれども、物陰からその様子を見ていた1人の少女が、広場を立ち去る。

「ン、アレは……」
 王の後ろに控えていたベリュトスだけが、そのコトに気付き後を追った。

「おい、キティ。こんなところに居たのかよ」
 海底都市の漁港の桟橋に立つ、鍛えられた体躯の男。

「うわ、ベリュトス……なんでお前が、ここにィ!?」
 漁港と言っても漁船は殆ど存在せず、あったとしても半壊している。
倉庫も市場も加工場も、それぞれが大きく崩れていた。

「お前の気持ちは、解るつもりだ。オレも、兄貴を亡くしたからよ」
「そう……でもわたしは、姉さんが死んだのを、この目で見たワケじゃない」
 男が見つけた少女は、瓦礫の上に座って海を見つめている。

「ティルスが死んだのが、信じられないのか?」
「当たり前でしょ、姉さんが簡単に、死ぬハズが無い」
 海と言っても、海中のため水平線は無く、魚が泳ぐ海がそこにあった。

「まあ、そうなるよな。オレだってまだ、兄貴が死んだなんてウソみてーに思ってるし」

「そう……やっぱ姉さんは……」
 少女はうずくまりながら、むせび泣く。
ベリュトスは、その背中をいつまでも見守った。

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一千年間引き篭もり男・第07章・13話

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白い街並み

 恐らくは、ボクが眠っていたフォボスよりも歴史のある、ドーナツ型のコロニー。

「大きなドーナツが、いくつも連なってますね。なんだか、お腹が空いて来ました」
 アンティオペーが、言った。

「キミらも、来るのは始めてなのか?」
「それはもちろんですよ。わたし達は起動してからずっと、トロイルスに配備されてましたから」
 オリティアが、答える。

「オリティア、もう少し人間らしい表現はできないのですか。わたし達はすでに、人間たちによって飼いならされた戦士ではないのよ」
 ライム色の天然パーマの少女が、仲間を注意した。

「そうは言うが、メラニッペ―。自由と言うのは、案外面倒でな。任務意外に、これと言ってやりたいコトが思い付かん」
「オリティアらしいわね。アナタ、休暇中でもずっと、過去の歴史やら戦略やらにアクセスしてるし」

「我らは、アマゾネスなのだ。それホド、おかしなコトでも無いだろう?」
「そうかしら、わたしはメラニッペ―ほどじゃないケド、お洒落やグルメにも興味があるわ」

 3人のアマゾネスたちが、女子トークに花を咲かせている間にも、テル・セー・ウスは、宇宙港のドッグに固定される。

「では、宇宙斗艦長、参りましょう」
 落ち着いた大人の顔で、ミネルヴァさんが言った。

「その前に質問なんですが、このコロニーの内部は荒廃してしまっているのですか?」
「太陽系の中心地では無くなったものの、荒廃とまでは言えないでしょう。各コロニーに住む人々の数は、わたくしが居た頃よりもむしろ増えていると聞いております」

「ミネルヴァさんは、このコロニーの出身なんですか?」
「ええ、既に100年くらい前の話です。ミネルヴァ(戦争の女神)を名乗るようになってからは、帰郷も果たせておりませんでした」

 見た目は、20代の美しい女性にしか見えないミネルヴァさんは、実際は200歳前後の年齢なのだと自ら言っていた。
流石のボクも、女性の年齢に対するそれ以上の詮索は止め、話題を変える。

「3人も同行して、構いませんか?」
「ええ、それは構いませんが……」
 少しだけ、眉をひそめるミネルヴァさん。

「艦長、わたしはこの艦の艦長です。なのでわたしは、残ります」
「ムリをするな、アンティオペー。街に出て、ショッピングでもしたいのだろう?」
「オ、オリティア。そ、そんなコトは……」

「ここは、わたしが残ろう。2人は、ヴィクトリアの街を愉しんでくるといい」
 レンガ色のストレートヘアをした少女が、言った。

「いいのか、オリティア?」
「構わないですよ。むしろわたしの場合、落ち着いて戦略や戦術を研究する時間を得られることの方が、有難いのです」

「わ、悪いわね、オリティア。お土産、持って来るから」
 明らかに街に降りたがっていたテル・セー・ウスの艦長は、あっさりと案を飲む。

 それからボクとミネルヴァさんは、2人のアマゾネスと共に艦を降りた。

「見て見て、宇宙斗艦長。オレンジ色の屋根の白い家が、たくさん並んでいるわ」
「細長い街並みが、ずっと傾斜しながら空の彼方まで続いているのも、不思議な感じね」
 街に飛び出すなり感想を述べる、アンティオペーとメラニッペー。

 ドーナツ型コロニーの、外側の構造物に張り付くカタチで形成された街並み。
永遠に続く上り坂の道路の両脇に、白い家々が建ち並ぶ。

「地中海……ギリシャとか、クロアチアに近い感じだな」
 ギリシャのアクロポリスや、クロアチアのドブロブニクを彷彿とさせる風景を前に、ボクは思わず自分の時代の世界観を言ってしまった。

「さぞや、美しい街並みだったのでしょうね」
「いえ、実を言うと、実際に行ったコトは無いんです」
 引き籠りだったボクの行動半径など、日本どころか街すら出ない領域に収まっている。

「そう……ですか」
 ミネルヴァさんの美しい表情が、曇った。

 気を悪くさせたのかと思ったが、それは見当違いだった。
それからボク達は、長い坂道を上って外交館へと脚を踏み入れるコトとなる。

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