ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第9章・42話

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オアシスの激戦~3

「ムウ。これはやはり、石化の能力……!?」
 ルーシェリアは咄嗟に目を閉じると、身構えた。

「しかし何故じゃ。リザードマン風情が、石化など使えるハズも無かろうに」
 聴覚と魔族の勘で、オアシスに不気味にたたずむ少女たちの気配を探る。

「どうやら、ただのリザードマンでは無いようですな、ルーシェリア殿」
「……お主、イヴァンかえ。彼奴らの眼を見るで無いぞ」

「心得ております」
 イヴァン騎士団長は、研ぎ澄まされた剣を鞘から抜く。
すると刀身に、蛇の髪をした少女たちの姿が映った。

「なる程……考えたモノじゃな」
「いにしえの英雄の、技にございます」

「あの髪……メドゥーサか、ゴルゴン姉妹の能力を持った者たちかえ」
「数は、10人以上おりますぞ」

「それにしてもお主らまで、ケイオス・ブラッドとか申す魔王に、飛ばされたのじゃな」
「はい。娘たち共々、次元の狭間に飲まれてしまいました」
 イヴァンは剣で自らのマントを斬り、それで3人の娘の眼を隠す。

「どうやらあの魔王は、シャロリューク殿との1対1の対決を望んでいる様ですな」
「妾たちには、あの者たちの相手をするようにも望んでいるのじゃろうな」
 皮肉を口にする、漆黒の髪の少女。

「しかし油断をすればカーデリア殿の様に、石にされてしまいますぞ」
 砂漠の太陽の下には、不釣り合いな美しい少女の石像。
それはかつて、カーデリア・アルメイダと呼ばれていた。

「早くヤツらを倒して、カーリーの呪いを解いてやりたいのじゃが……」
「このままでは、近づくコトすら儘(まま)なりませんぞ」

「父上、まずはボクたちが仕掛けるよ」
「ボクたち、オオカミだから目が見えなくたって平気」
「アイツらの力を、探ってみよう」

 目隠しをしたパトラ、パニラ、パメラが、イヴァンを見上げる。

「本来であれば大切なお前たちを、危険な目に遭わせたくは無いのだが……」
「そうも言っておれん様じゃぞ。ヤツらの方から、仕掛けて来おった」
 ルーシェリアの黒い剣に、迫り来る蛇の髪をした少女たちが映った。

「キヒヒ……」
「お前たちも、石になれ!」
「この砂漠で、砂に埋もれな」

 少女たちは小柄だったが、腕や脚には鋭い爪があり、それを巧に使って攻撃を繰り出して来る。

「マ、マズいのじゃ。眼を閉じたまま、かわせる攻撃では無いのじゃ」
「こ、このままでは、いずれ隙を突かれて石に……」

 ルーシェリアもイヴァンも、少女たちの攻撃に苦戦する。
その様子を、魔王ケイオス・ブラッドは満足げに眺めていた。

「妹たちも、新たなる能力に目覚めつつある様だな。ククク」
「妹だぁ?」
 赤毛の英雄が、エクスマ・ベルゼの炎を纏って攻勢に転じる。

「アレが、テメーの妹だって言うのか?」
「血が繋がっているワケじゃ無いが、共に育った者たちだ」
 砂漠の空に、爆炎と虚無の黒い球が入り混じる。

「ま、まさかお前たちは……サタナトスの!?」
「ああ、兄弟だ……」
 エクスマ・ベルゼと、刻影剣・バクウ・プラナティスが、激しく斬り結んだ。

「クケケ……ケイオス兄さまも、赤毛の英雄と殺り合ってるみたいね」
「次はアタシたちが、お前らを石像にしてあげるよ」
 砂漠の砂に足を取られ消耗し切った2人に、襲い来る蛇の髪の少女たち。

「アイシクル・トラストォ!!!」
 オオカミ少女の、可愛らしい声がシンクロする。

「ぎゃああッ!!!」
「ぐええぇぇ!?」
 蛇の髪の少女たちが、醜い悲鳴を上げた。

「い、一体、何なのじゃ!?」
「砂漠に……氷のツララが!!」
 ルーシェリアとイヴァンの前には、無数のツララが砂漠の砂から生えていた。

「あ、脚が……脚がぁぁ!?」
「うげ……ぐう!」
 ツララは、少女たちの様々な部位を貫いている。

「こ、これは、お前たちがやったのか?」
 3人の娘を、見下ろす父親。

「うん、そうだよ」
「父上、今だよ」
「アイツらの姿、いっぱい映ってる」

 イヴァンが周りを見ると、突き立ったツララのどれにも、蛇の髪の少女たちの姿が映っていた。

「悪しき娘たちよ、済まぬが容赦は出来ぬ」
「今までの痛み、そっくり返すのじゃ!」

 2人の剣が、蛇の髪の少女たちの頭を、次々に刎ね飛ばした。

 

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この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第31話

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モニタールーム

「ところでもう、撮影は始まっているのかしら?」
 瀬堂 癒魅亜は、嫌そうな顔をしながら問いかけた。

「イヤ、まだだよ。ここは一応はキミの部屋だからね。主の帰りを、今や遅しと待っていたところさ」
「アンタにしちゃあ、殊勝な心掛けじゃない」
 久慈樹社長に対しても、上から目線のユミア。

「それで、返事はどうなんだい。ユミア?」
「馴れ馴れしく、呼ばないでくれるかしら」
 ボクも普段から呼んでしまっているが、いいのだろうか……?

「まあ今回は、新型アプリのお試しって感じだし、みんな次第だケド」
「彼女たちは、キミらが来る前に意志を聞いて置いた。全員、異存はないよ」
「相変わらず、用意周到ね。だったら、問題ないわ」

「戦争にしろ、ビジネスにしろ、勝敗は事前準備に拠るところが大きいからね。では、お言葉に甘えて始めさせて貰うとしよう」
 既に部屋に入っていたスタッフが、社長の合図で一斉に動き出す。

「前もって説明した通り、今回配布したスマホには、我がユークリッドが開発を進めていたアプリ、ユークリッターが入っている」
「みんなのスマホに、アプリを入れるワケじゃ無いのね?」

「データを取りたいと、思っているからね」
「今さらデータ検証が、必要なワケ?」

「無論、自信はあるさ。あらゆる業界から選りすぐったスタッフが、開発に関わっているからね」
「だったら……」
 どうやら2人の会話にも、カメラが向けられている様だ。

「ソフトは、完全に近いと思うよ。だけど、実際にどんなワードが検索され、どんな感じでマインドマップが広がって行くのか、まだ未知数なんだ」

「なる程……実際の女の子たちの、生の検索データを採りたいってワケね?」
「ああ。彼女たちが検索しているワードは、貴重なサンプルになる」

「でも、それってプライバシー……あ、だから用意したスマホを渡したのね」
「当然ながら、事前に彼女たちの同意は取ってあるよ。フフ、完全に名前の声とまでは行かないまでも、貴重なデータが集まって来ている……」

 天空教室の隣の部屋にはデスクが持ち込まれ、パソコンが複数台起動している。
大勢のスタッフが、大量に並んだモニターを見ながら、ヘッドセットで会話をしていた。

「さて、どんなワードが上がって来ている?」
 久慈樹社長も、スタッフの背中越しにモニターを覗き込む。

「王洲 玲遠(おおしま れのん)は、ヒーロー物アニメや、特撮のワードが大きく膨らんでいるな」
 モニターは、数値のみが映し出されるものもあったが、ユークリッターの画面を直接映しているものもあった。

「でも、おかしくない?」
 ユミアが、疑問を呈する。

「このアプリは、より多く検索されたワードが巨大な惑星になり、やがて恒星になって他の惑星を従えるんでしょ?」
「スキンに惑星を指定した場合、そうなるね」

「だけどアニメはともかく、特撮ヒーローなんてワードを入れるのって、レノンくらいじゃない?」
「レノンも、酷い言われようだな。でも、確かにそうか。天空教室には、女子生徒しか居ないワケだし」

「キーワードについては、スタッフによる事前モニターの他に、有名な検索エンジンの数値を参考に、仮のビッグデータを構築してあるのさ」
「ふ~ん。了解、そう言うコトね」

「なにが、なんだか……!?」
 2人の会話に、全然着いて行けないボク。

「他には、どんなワードが上がってる」
「はい、ランダムに切り換え表示いたします」
 久慈樹社長に釣られ、ボクとユミアをモニターを覗き込む。

「ハードロックや、ビジュアル系バンド……これはキアかシアちゃんたちね」
「司法試験に、過去の裁判に置ける判例……これは確実に、ライアだな」

「家賃収入、格安アパート物件、土地価格の推移……これなんか、テミルに決まってるわね」
「芸能人の裏の顔、スキャンダル特集……これは、アロアかメロエだろう」

「フフ、これは面白い。可憐なる少女たちの心の内が、赤裸々に暴かれていく」
 久慈樹社長が、無邪気に笑い転げている。

「ちょっと、アンタ趣味悪いわよ」
「キミたちだって、嬉しそうに読み上げてたじゃないか」
「そ、それは……」

「最終的に、ビッグデータがどう変化するか、愉しみだ」
「でも、たった2~30人くらいの入力で、大して変わらないんじゃないの?」

「ビッグデータに与える影響力は、平等では無いよ」
「え……そうなの?」
 モニターに釘付けだった少女が、素早く横を見る。

「勿論さ。彼女たちは今や、有名人の仲間入りをしているからね」
 ここ数日で、世の中に顔を知られるようになったボクの生徒たち。

「彼女たち以外の有名人も、ビックデータに与える影響が大きくなる様に設定してある」
「それって、ただの一般人の影響は少ないってコトですか?」

「当然じゃないか。どこの誰とも知れないヤツの意見に、大した価値は無いよ」
 久慈樹 瑞葉は、悪びれもせずに言い切った。

 

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一千年間引き篭もり男・第06章・07話

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交渉の場

「普段は傍観者を決め込む、キミにしては珍しい判断じゃないか、アポロ?」
 金髪の好青年が、隣を歩く古代のブロンズ像の様な男の顔を覗き込んだ。

「今は傍観者など、演じていられる状況では無いのでな、メリクリウス」
「『時の魔女』が、絡んでるとあっては……が、理由かい?」

「そのコトは、最重要機密なのだぞ。ディー・コンセンテスの場以外で、口に出すなど……」
「ボクが言いたいのはね。他に理由があるんじゃないかってコトさ、アポロ」
 メリクリウスは、涼しい顔でほほ笑んだ。

「何が言いたい?」
「キミが、今回の交渉責任者に名乗り出た、本当の理由が気になってね」
「理由など明白だ。かの謎の艦隊を、放って置くワケには行くまい」

「それだけじゃ無いだろう。あの艦には、キミの許嫁が載っているらしいじゃないか」
「メリクリウス、キサマ……」
 アポロの鋭い眼光が、金髪の好青年を捕らえる。

「火星の開発に大きく寄与した、影の功労者カルデシア財団。そのご令嬢が、かの艦隊に拉致されたんだ。キミが、黙っていられるハズが無いよね?」
 今度は、弦月の如き目がアポロを映した。

「確かにわたしは、カルデシア財団の宇宙エネルギー機構代表ではある。だが、たったの1人の命など、今回の大事の前では意味を成さない」
 アポロは、メリクリウスの前から立ち去った。

 元々、フォボス(敗走・混乱)どダイモス(恐怖)と呼ばれる、2つの衛星を従えていた火星。
赤い惑星は地球人によって、新たな衛星を手に入れる。
ハルモニア(秩序)と呼ばれる、人の手によって造られた衛星が、軍神の名を持つ惑星を周っていた。

「セノン、真央、クーリア。それに、他のみんなも聞いてくれ」
 ボクは、MVSクロノ・カイロスの艦橋に集った、乗組員(クルー)たちを前に演説する。

「火星にある太陽系最大の統治機関、ディー・コンセンテスとの交渉が行われるコトになった。まずは交渉の場として、衛星ハルモニアが指定されたんだ」

「ハルモニアって……本当ですか、おじいちゃん?」
「ああ、セノン。たった今、アポロと名乗る交渉相手から、正式な回答があってね」

「これでやっと、ハルモニア女学院に帰れるんだな!」
「う、嬉しい……」
「ああ、早くみんなに会いたいよ」

 真央も、ヴァルナも、ハウメアも、手を取り合って喜んでいる。
元々、彼女たちは火星圏の住人であり、ハルモニア女学院に通っていたのだから当然だろう。

「ケッ、アポロが出て来やがったか」
「知っているのか、プリズナー?」

「知っているっも何も、オレの直接の雇用主だぜ。当然、オレなんかに名を明かしちゃいねェがな」
 ボクの問いかけに、アッシュブロンドの髪の男は大きく口元を歪めた。

「アポロがカルデシア財団のご令嬢の、身柄を確保する様に指示したのはほぼ確実ね」
 トゥランも、相棒の意見を補完する。

「だけど前に、クーリアのお爺さんが依頼主だって、言ってなかったか?」
 今度は、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダに問いかけた。

「アポロは、わたくしの許嫁です」
「キミの……許嫁!?」

「カルデシア財団の名誉会長であるお爺さまは、わたくしの両親がシャトルの事故で亡くなって以来、塞ぎこんでしまわれて、現在の実質的トップはアポロなのです」

「つまり、キミを助ける様に依頼したのが、キミのお爺さんで……」
「爺さんの指示を受けて、オレを雇い入れたのが、アポロってこった」

「どちらにせよボクは、カルデシア財団のトップに目の仇にされてるってコトだよな?」
「ま、そうなるわな」
「なんでおじいちゃんが、カルデシア財団に目を付けられてるんですか!?」

「コイツは、クーヴァルヴァリア嬢や、お前も含めたハルモニア女学院の生徒たちを、何人も拉致した張本人なんだぜ」
「わたし達、おじいちゃんに拉致されたワケじゃありません!」

「でもなあ、セノン。アポロや火星側は、そう思ってないだろうな」
「この艦の艦長は、宇宙斗艦長……」
「艦長も、時の魔女の創ったこの艦に拉致されたって言っても、信じて貰えるかどうか」

 3人のオペレーター娘が、的確に現状を述べた。
状況証拠だけ並べれば、ボクが彼女たちを拉致した犯人と推理されても、全くおかしくは無い。

「ま、用心深いアポロのコトだ。交渉の場を火星やこの艦じゃ無く、中立の場所を指定して来やがったのも、何か思惑があるのかも知れねえぜ」
 いつに無く、相手を警戒するプリズナー。

「そのアポロと言う人物は、策略家なのか?」
「小細工を好むタイプじゃねえが、野心家ではあるぜ」

「例えどんな相手であろうと、ちゃんと話し合うしか無いってコトか……」
 MVSクロノ・カイロスは、衛星ハルモニアに進路を向けた。

 

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP019

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ドライブシュート

 亜紗梨 義遠さんとボクは、壁パスの練習を始めた。
まずは相手のパスをトラップし、パスで相手に返す練習だ。

 この人、どことなくボクに似ているな……。
それが亜紗梨さんに対するボクの、最初の印象だった。

 髪型もボブヘアだし、どことなく女のコっぽい感じがする。
それに、このパス。
ボクの蹴り易いところに、ピタリと飛んできてるんだよね。

 すると亜紗梨さんは、ニコッと微笑んだ。
パスが左側に、大きくずれる。

 ミスじゃない。
これって、ワン・ツーのパスだよね。
ボクは走り込んでパスを受けると、同じ要領で前方にパスを出す。

「ナイス、パス。御剣くん」
 亜紗梨さんが、柔らかい声で言った。
今度はダイレクトに、パスがボクの前方に蹴られる。

 ダイレクトパスなのに、かなり正確だ。
ちゃんと、ボクがスピードを落とさずに走り込める範囲に、ボールが出て来る。
ボクもダイレクトで、パスを折り返した。

「中々、やるな。それ!」
 亜紗梨さんは、あえて距離を取ってパスを受けると、やはりダイレクトでボールが返って来る。

 パスに、ワン・ツーの距離を離そうって意図が、込められている。
よし、それならボクも距離を取って……あ、しまった!
ボールが、けっこう前方に転がってしまった。

「これで、フィニッシュだ、御剣くん」
 なんと亜紗梨さんは、既にそこに走り込んでいる。
そして、右脚から可憐なアーリークロスが上がって来た。

 このボール……ヘディングは得意じゃ無いケド……。
ボクは頭で軽く触って、ボールの方向を変える。

「ナイスゴールだね、御剣くん」
 駆け寄って来た、亜紗梨さんが言った。
ボールは、海馬さんが転がり練習をしていたゴールの右隅に、吸い込まれていた。

「へー、やるジャンか、亜紗梨」
 あ、紅華さんだ。

「海馬コーチが言ってた通り、オレが抜けてから腕を上げやがったな」
「トミンに比べれば、まだまださ。それに、ゴールを決めたのは御剣くんじゃないか」

「あんなモン、ほぼお前が獲らせたゴールだろ」
 紅華さんの意見は正しい。
ボクがやったコトと言えば、来たボールの方向を変えただけなんだから。

「謙遜すんなって。綺麗なアーリークロスだったぜ」
 黒浪さんもやはり、亜紗梨さんの技術の高さを褒めてる。

「ノープレッシャーだったからね。ディフェンスが居たら、こうは行かないよ」
 うわ、凄い冷静だ。

「確かに試合じゃ、相手と競り合って上げないと行けないモンな」
「一馬のヘディングだって、あんなフリーじゃ打てね~だろうしよ」
 ……ですよね。

「そうね、みんな。試合での、プロのディフェンスのプレッシャー、ハンパ無く高いね」
 先方への挨拶から戻って来た、セルディオス監督が言った。

「それに海馬。練習だからって、簡単にゴールを割らせ過ぎね」
「え……でも今は、キャッチングの転がり練習を……」
「御剣と亜紗梨の動きみて、止めたいとは思わなかったね?」

「は、はあ……」
「なんとも、心配ね」
 困った顔をしたメタボ監督は、ゴールの右隅に転がっていたボールを何度かリフティングする。

「プロってのは、売られたケンカは買わなきゃダメよ、海馬」
「セルディオス監督……なに……を……?」
 唖然とする海馬さんの目の前で、監督がシュート体制に入った。

「まあ、見てるね」
 宙に浮いたボールを、太い右脚が擦り上げる。
タップンタップンと揺れる、大きなビール腹。

「こ、これは……!?」
 ボールは大きな弧を描き、相手ゴールの上空に達すると、急激に落ちる。

「ド、ドライブシュートォ!?」
 セルディオス監督が放ったボールは、90メートル先のゴール右下に決まってしまった。

「ス、スゲェ。今、ボールがメッチャ落ちたぞ!」
「確かにドライブ回転をかけたシュートも凄いケド、この距離を決めてしまうなんて」
 黒浪さんと亜紗梨さんが、驚いてる。

「セルディオス監督って、実は凄い選手だったのか?」
「だからそう言っているだろう、紅華」
「いやだってあの腹だぜ、雪峰。早々に信じられっかってんだよ」

 ……うん、ボクも半信半疑だった。

「オイオイ、お前ら。感心ばかりしてんじゃねェよ」
「あん、どうしたんスか。コーチ?」
「あんなシュートを、決めてしまったら……」

「あ……」
 ボクたちは全員一斉に、相手エンドを見た。

「出来たばかりのチームが、ずいぶんと舐めたマネしてくれるじゃねえか」

 すると、ハーフウェイラインを越えて、オーバーレイ狩里矢の1人の選手が、ボールを転がしながらやって来ていた。

 

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・41話

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オアシスの激戦~2

 砂漠に開けられた2つの穴は、勢いは弱まったものの未だに砂を呑み込み続けている。

「ケッ……人様の剣を、随分と器用に使い熟(こな)すじゃねえか」
 赤毛の英雄は、エクスマ・ベルゼの巻き起こす炎をバーニアの様に地面に当て、宙高く飛び上がった。

「無論だ、シャロリューク。この剣は、オレの身体の一部に等しい」
 魔王ケイオス・ブラッドは、刻影剣となったバクウ・プラナティスで、空を切り裂く。
すると上空のあちこちから、大量の砂が噴き出した。

「ア、アレは……飲み込まれていた、砂漠の砂ではありませんか!?」
 娘を抱えたイヴァン騎士団長も、降り注ぐ大量の砂から逃げるのに必死だ。

「砂など、オレの火炎でガラスに変えてやるぜ!」
 灼熱の剣・エクスマ・ベルゼによって、砂は無数のガラスに変えられ、魔王に目掛けて放たれた。
けれども、鋭利なガラスの針は魔王の身体を捉えるコト無く、砂丘の上に突き刺さる。

「のわ、危ないのじゃッ!?」
「ちょっとシャロ、下のコト考えて戦ってよ!」
 その何本かは、カーデリアとルーシュエリアの周囲に散らばっていた。

「ワリィ、ちと焦り過ぎたみてーだ」
「焦るって……シャロ」
 パッションピンクの髪の少女は、不安な瞳で宙の赤毛の英雄を見つめる。

「どうやら赤毛の英雄が、あの姿で居られる時間は限られておる様じゃな」
「そうね、あのシャロが焦るだなんて、普通じゃあり得ないわ」
 カーデリアは、奏弓・トュラン・グラウィスカの4ッつの弦を引き絞った。

「仕方ないのォ、妾も加勢するぞえ」
 ルーシェリアも、魔眼剣エギドゥ・メドゥーサスを出現させ、カーデリアと背中を合わせて身構える。

「心配し過ぎだぞ、お前ら。こんなヤツ、軽く捻って……」
「なるホド。キサマ、サタナトスに魔王にされた影響で、本来の力を取り戻せていないのだな」
 シャロリュークの真後ろに、姿を現すケイオス・ブラッド。

「テメッ、この!?」
「遅い……」
 闇と幻影の魔王が、赤毛の英雄を袈裟斬りにしようとした……その瞬間。

「ムッ!」
 何本もの矢が、魔王を捉えようとしていた。

「小賢しいヤツらが。これは、オレとシャロリュークとの闘いだ」
 魔王は一旦身体を翻し、矢を撃ち落とす。

「知ったコトでは無いのじゃ」
「シャロは、殺らせはしないわ!」

「フッ、まあいい。そろそろ、仕上がっている頃だろう」
「何を言っているの!?」
「惑わされるで無い、カーリー」

「丁度いい。キサマらには、実験台になって貰うとしよう」
 魔王ケイオス・ブラッドは、2人の少女目掛けて剣を振るった。

「ふ、2人とも、避けろォーーーーー!!?」
 英雄の叫びが、砂漠に木霊する。

「こ、これは、闇……なのかえ!?」
「いやあぁぁ、シャ、シャロォ!!?」
 2人は、刻影剣バクウ・プラナティスの生み出した、闇に呑まれた。

「キ、キサマッ!!」
「言って置くが、2人を殺しては居ない。そこのオアシスまで、飛ばしたまでだ。最も、今後も死なない可能性は低いがな」

「なんだって……!?」
 赤毛の英雄は、本来の目的地だったオアシスを見た。
黒い球体が出現し、それが消えると2の少女がそこに吐き出される。

「あ痛たた……死ぬかと思ったのじゃ!」
「でもアイツ、どうしてアタシたちを殺さなかったのかしら?」
 砂を振り払い、立ち上がる2人の少女。

「解せぬのォ。ヤツの斬撃の正体は、『無』じゃ。あのまま虚無空間にて妾たちを、消滅させれば事足りたハズなのじゃが……」
 魔王の行動を、訝しがるルーシェリア。

「ねえ、シェリー。どうやらアイツの目的が、見えたわ」
「なんじゃ……と……」

 ルーシェリアが顔を上げると、逆光のオアシスの茂みや泉の中から、少女たちのシルエットが2人を睨んでいた。

「このコたちが、酒場の情報にあったトカゲ女ね」
「ほう。もっと、怪物染みたのを想像しておったが、少女では無いかえ」

 背中から、砂漠の太陽を浴びる少女たち。
胸や腰を覆う程度のみすぼらしい衣しか身に着けておらず、身体の外側の皮膚は鱗で覆われている。
お尻からは、小さなトカゲの尻尾が生えていた。

「見た感じ、大して強くは無さそうね」
「イヤ、油断するでない。何かが、変じゃ」
「何かって?」

 ルーシェリアが答えるまでも無く、その『変化』は顕現する。
少女たちの長く伸びた髪の毛が、意思を持ったかの様に四方に広がったのだ。

「こ、このコたち、髪の毛がヘビだわッ!?」
「マズイのじゃ、カーリー。ヤツらの眼を、見てはならぬのじゃ!」
「え……?」

 ルーシェリアの忠告は時すでに遅く、彼女の目の前にはカーデリアの形をした石像が立っていた。

 

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この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第30話

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遅刻

「だけど、今の話を聞いた限りでは、キミの心象はともかくそこまで悪辣な人間には……」
 ボクの反論は、直ぐにユミアに遮られる。

「でしょうね。確かに最初はそんなモノだったわ」
 ユミアは丸めていた脚を地面付け、大きく伸びをした。

「それにしても、タクシー遅いわね」
 突然、話題を換える栗毛の少女。
どうやら、それ以上話してくれる気は無いらしい。

「ユークリッターの発表がされるかもって、時だからな。上の階もあの有様だったし」
「まったくマスコミのヤツら、自分たちの交通ルールの遵守には、メチャクチャ甘いんだから」
「マスコミ嫌いは、久慈樹社長だけじゃ無いみたいだな」

「アイツと一緒に、しないでくれる」
 再び脚を抱え、丸くなるユミア。

「こっちはお兄様……兄さんが大変な時でも、容赦なく取材されたんだから」
 ボクはまた、彼女の心の触れられたくない部分に、触れてしまったのかも知れない。

 ユークリッド本社の地下駐車場から、かしましい少女の声は消え、替わりに沈黙が場を支配する。

「それにしても、タクシー全く来ないな。遅れるんなら、連絡くらいくれても良さそうなのに」
 やっとの思いでボクが口を開いたのは、30分以上経過した後だった。

「あッ!!」
 突然、大声を上げるユミア。

「い、いきなり、どうしたんだ。ビックリするじゃないか」
 正直、心臓が止まるかと思った。

「ゴメン、先生。タクシー、マンションの方に呼んじゃった……」
「え!?」
 そりゃ、いくら待っても来ないワケだ。

「マンションって、天空教室の方だよな」
「うう……わたしったら、ごめんなさい」
「ミ、ミスは誰にだってあるさ。えっと、今の時間は……」

 スマホのデジタル時計は、『12:42』となっていた。

「どうしよう、午後の授業が始まっちゃうわ。わたしはともかく、先生が遅刻はマズいわよね」
 アワアワと、慌てふためくユミア。

「午後一は、ボクの授業だからな。事情を話して、他の先生に換わってもらうか……」
 スマホを取り出し、ユークリッドの事務局に電話をかけようとしたその時、ユミアがボクのシャツを引っ張った。

「ねえ、見て。枝形先生だわ」
 ユミアの指先を追って行くと、高級車がズラリと並ぶ駐車場に1台だけ場違いなミニの車があり、それに中年の男性が乗り込もうとしていた。

「おや、これはお若い先生じゃねェですか。また会いましたな」
 枝形 山姿郎は、シワの寄った水色のシャツに黄色いネクタイをしていて、隣でユミアもあからさまに眉をひそめている。

「今日から先生の次の時間に、歴史の授業を任されたんだがよ……アレ、1時から授業だってのに、こんなところでブラついてて大丈夫かい?」
「実は、全然大丈夫じゃなくてですね……」

 事情を説明すると、クリーム色のミニカーみたいな車はボクたちを後部座席に乗せ、勢いよく地下駐車場を飛び出した。

「このオンボロは、4人乗りっちゃぁそうなんだがよ。見ての通りの小ささだ。身体をしっかり折り曲げてねえと、マスコミ連中に見つかっちまうぜ」
 バックミラーに映った中年オヤジの口元が、嬉しそうに笑っている。

「は、はい」
「ちょっと、どこ触ってんのよ!」
「仕方ないだろ。この狭さに隠れてるんだから」

 車で5分も走ると、天空教室のあるマンションの地下駐車場に辿り着いた。
そこには、一台のタクシーがドアを開けたまま待っている。

「すみません。こちらの手違いで、間違った場所に……」
「若い先生。あとはやっとくから、先行きな」
「では、お言葉に甘えて」

 ボクとユミアは、急いでエレベーターに乗り込み、ギリギリで天空教室へと転がり込む。

「先生。そんなに慌てて、どうしたんですか?」
 正義を重んじる少女、新兎 礼唖が言った。

「す、すまない、ライア。遅刻しそうだったんでな……ハアッ、ハア」
「じゅ、授業は、まだ……始まってないみたいね」
 ボクもユミアも、息を切らしていた。

「先生の授業なら、30分遅らせるんだって」
「何でもユークリッドの新作アプリを、天空教室のみんなで試して欲しいってコトでさ」

「そ、そうなのか、レノン、タリア」
「そだよ」
「今、色々と触っているところだね」

 あっけらかんと言い放つ、レノンとタリアの暴れん坊少女コンビ。

「随分と遅かったじゃないか、キミたち」
 すると後ろから、久慈樹社長の声が聞こえた。

「うわあ、アンタ居たの?」
「ずっと前にね。キミたち、どこを寄り道してたのかな?」
「色々と、事情があったのよ」

「聞いての通り、彼女たちにはユークリッターを使って貰っているんだ。先に触ったキミたちには、今回は遠慮してもらうよ」
 若き社長は、ソファーに座りながら優雅にワイングラスを傾ける。

「つまり……授業まであと30分余裕があると?」
「もう。なんだったのよ、わたし達の苦労はァ!」
 ボクたちは、背中を合わせてヘタリ込んだ。

 

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キング・オブ・サッカー~登場人物紹介・007

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柴芭 師直(しば もろなお)

ポジション :DF
身長    :180cm
体重    :72kg
利き脚   :右脚
背番号   :8
愛称    :シバ・占い魔術師
出身地   :神奈川県
好きな食べ物:鯛の塩釜焼き、アワビ、モモ
嫌いな食べ物:梨、スルメ

プロフィール

 一馬たちデッドエンド・ボーイズが参加したフットサル大会で、マジシャンズ・デステニィーを率い参加したフットボーラー。
互いのチームが対戦するコトは無かったが、その後デッドエンド・ボーイズに加わる。

 カードによる占いを得意とし、一般的にタロットカードとして知られる大アルカナの22枚と、日本でトランプと呼ばれるカードのルーツでもある56枚の小アルカナを使って占う。

 奇術師としても一流で、手品を使って場を和ませたりもするが、本気で占うときは、奇術師のトリックは使わない。

 サッカーに置いても、トリッキーなプレイスタイルは健在で、ボールを体の中央に置き、相手の動いた方向と逆に抜ける、マシューズ・トリックを得意とする。
魔術師らしい、背筋をピンと伸ばしたプレイスタイルで、相手の勢いを止める能力に優れる。

 時折り繰り出されるロングシュートも、枠の外からゴールの枠内に入る軌道を描く為、キーパーがキャッチし辛いモノとなっている。
守備に置いても、相手のシュートを自陣のゴールに戻りながらヒール(踵)でクリアするなど、人が驚く高度なプレイをする。

 フットサル大会に置いて倉崎を占った時、占いの結果に不吉なモノを感じた為、チームに参加した。

 

 →キング・オブ・サッカー・第一話