ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十四話

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ナース服・学生服化……

「……き、絹絵ちゃんは、無事なんですか……先輩!?」
 渡辺は戦々恐々と、先パイの表情を伺う。

「ゴメンなさい……お母様の隙をついて助けられたのは、あなただけなの……」
 千乃 美夜美は、申し訳なさそうに俯いた。

「あの『狸のコ』が戦っていてくれなかったら、血溜まりを作ってお母様を欺くコトなんて、到底出来なかったわ」
「狸って……! それじゃあ絹絵ちゃんも、やっぱ先パイみたく……!?」

「そう……あの子は狸よ」
 キツネの少女は、ゆっくりと頷く。

「そ、そんな……狸って……絹絵ちゃんは……まさか!?」
 渡辺は、絹絵と出会ってからの、彼女の言動を思い出した。

「……まさか、あの時の!!?」
 それは学校帰りの坂道で、トラックにはねられ瀕死の重傷を負った狸のことだった。

 体育館の舞台はすでに、『ナース服・学生服化推進委員会』に交代していた。

「はあぁ~い、お集まりの皆様。わたし達が、愛のこもったお注射で癒しちゃいますよォ~♪」
 部長の香住 癒音ら五人の少女達は、観客に向って悩殺的なポーズを取って見せる。

「相変わらず体の方は、揃いもそろって発育不足じゃがのォ!」
「負けるで無いぞ、癒音ちゃん!」
 会場の一角に陣取ったお爺ちゃん達から、励ましの声がかかる。

「ヘンな励まし方しないでって、いつも言ってるでしょ!?」
「いいぞ、いいぞ、ユ・ノ・ン!!」「ユノンちゃ~ん!!」
 老人たちは、意に介してない様子だった。

「オホン。わたし達は、発育不足でお悩みの女の子のためにも、ナース服を学校の制服として採用してもらうため、日々活動を行っておりますの」
壇上で、力説をする香住 癒音。

「男子の学ランは陸軍の制服、女子のセーラー服は海軍の制服が元になっているのですわ。それなら、平和と慈愛の象徴でもある、ナース服にだって可能性は……」
 会場では、あくびと苦笑いが広がっていた。

「……相変わらずグラマーと言えば、『ナース服お姉さま』と思い込んどるようじゃの……」
「そこがまた、可愛ええんじゃがな~♪」
 うっとりと表情が緩む老人たち。

「……渡辺……まだか? 茶道部の出番はもう直ぐなんだぞ……」
 おかしなステージを横目に見ながら、生徒会長はヤキモキしていた。

「まったく、双子どもまでミイラ取りがミイラになりやがって……」
「蒔雄。ここはわたし一人で大丈夫だから、貴方も行ってあげて……!」
 副会長はもう、運命に流されるだけの少女ではかった。

「悪ィな 沙耶歌。後は任せる……頼んだぞ!」
「蒔雄こそ、絶対に渡辺くんたちを連れて来て……!」「おう、任せとけ!」
 橋元は素直に、副会長の言葉に乗った。

「頼んだわよ。わたしの、チャラチャラした騎士(ナイト)さま!」
 醍醐寺 沙耶歌は、舞台を駆け降り体育館を出る橋元の姿を見送った。

「渡辺先パイも、どこ行っちゃったの!」
「絹絵も無事だといいケド……もう間に合わないよォ~!」
 双子は絹絵の割れた茶碗の欠片を持って、一端学校に戻って来ていた。

「お~い、楓卯歌! 穂埜歌!」
 途方に暮れる双子が振り向くと、生徒会長の姿があった。

「あっ、橋元だ。ねえねえ、どうしよう!?」
「二人とも、全然見つからないんだ!」

「なんだって? シルキーもまだ、見つかってないのか!?」
「そうだよ。かなり色んな場所を探したんだけど……」
「あと、学校の前で交通事故があったみたい」

「オイ、それってまさか!?」
 一瞬、蒼ざめる橋元 蒔雄。

「でもね。トラックが電柱にぶつかった、だけっぽい」
「今のところ、人身事故じゃないみたい」
「なんだよ焦らせんなよ!」

「だけど、これが……」「道端に……」
 楓卯歌と穂埜歌は、手の中にある物を見せる。

「……欠片? これって、シルキーの抹茶茶碗じゃないか!?」
「割れてるし……それにホラ、血が付いてる!?」
「やっぱ絹絵の身に、何かあったんじゃ……!?」

「あ~あ、何となく読めたぜ」
 泣き出す寸前の双子に向かって、橋元がいつものチャラついた表情で言った。

「読めたって……何が?」
「……橋元、どういうコト?」
 顔を見合わせる、双子姉妹。

「つまりだ。シルキーは、渡辺に買って貰った大事な抹茶茶碗を割っちまったんで、怒られるのが怖くて、出るに出て来れないのさ!」
「……え!?」「そうなの……かな?」双子は半信半疑だった。

「まあ、多分そんなところだろ? とりあえずお前らは先に行って、抹茶を点てる準備をしてろ。渡辺はオレが、必ず見つけて戻るから……」

 橋元は二人を体育館に向わせ、万全の準備をさせた。

この世界から先生は要らなくなりました。   第02章・第20話

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二組の双子

 ボクの先生デビューは、微妙な空気感のもと終わった。

「果たして、彼女たちは納得してくれたのだろうか……」
 自分の授業を終えると、生徒である少女たちの顔を見渡してみる。

「今日の授業は、これで終わりです。なにか解らないことがあれば、どんどん聞いてくれ」
 けれども、生徒からの反応は無く、礼をした後にユミアに声をかける。

「ユミア、キミはどうする?」
「どうするとは?」
「彼女たちと共に、暮らしていけそうか?」

「べ、別に子供じゃないんだから、なんとかするわ。大体、超セレブマンションの最上階のフロアを一人で貸切るのが贅沢過ぎたのよ」
 ボクの言葉に、ユミアの顔が一瞬だけ曇った。

「部屋の大きさの話をすればそうだろうが、心の問題があるからな。久慈樹 瑞葉は、ずいぶんと個性的な生徒を用意してくれたみたいだし」

 豪放磊落(ごうほうらいらく)なレノン、気の小さなアリス、正義の剣を振りかざすライア、合理主義者のメリー……四人だけ挙げても、かなりの個性の持ち主たちだった。

「そうね、退屈しないで済みそうだわ」
 久慈樹 瑞葉の名を出した途端、彼女は強がって見せる。

「しかし、いくら広くてもベッドは一つだけなんだろ? 女の子がソファーでゴロ寝とか……」
「させるワケ無いじゃない。付いてきて」

 ユミアは、円筒形のマンションの中央部の、完全に丸い部屋へと案内する。
「おーい、みんな来てみてくれ。これからみんなが寝る部屋だってさ」
 ボクは、始めて担任する生徒たちに声をかける。

「え、なになにィ?」「寝るお部屋……あるですか?」
 ボクは生徒たちと共に、中央の部屋へと入った。

「スゲー、なにこの部屋!?」「真ん中に、太陽みたなランプがあるです」
 アリスが言った通り、円形の部屋の中央には、オレンジ色に輝く太陽のようなオブジェの灯りがあり、その周りを取り囲むようにいくつものベッドが配置されていた。

「アイツ……久慈樹社長に、事前にベッドを十二個用意するように言われたのよ。最も、二つほど人数には足りないみたいだケド……」
 確かに、名簿で確認したボクの生徒たちは十四人であり、ベッドはそれより少なかった。

「久慈樹はムカつくヤツだけど、仕事に関しては完璧のこなすのよ。人数を間違えるなんて、珍しいコトもあるようね」
 すると、生徒の中から四人の少女が歩み出る。

「あの……ボクたち双子ですから、ベット二人で一つでいいですよ?」
 彼女たちは、星のように明るい金髪の持ち主で、青い澄んだ瞳をしていた。

「キミたちは、白鷺 佳斗瑠(しらさぎ かとる)と、白鷺 琉倶栖(しらさぎ るくす)だね」
 二人は、ショートヘアにヘアバンドをしていて、そこからかチェーンのアクセサリーを垂らしている。

「先生、どうして……」「わたしたちの名前を?」
 二人の青空のような瞳に、ボクの顔が映る。

「ああ……実はボクは、一度ちゃんと見た文章は、それが難解な数式でもない限り記憶してしまうんだ」
「ええ!? ウソ、あの一瞬で!?」
「先生が名簿を見たのって、ほんの一瞬だったよね!?」

 カトルとルクスは、そっくりな顔を見合わせる。
「なに、そのチートスキルわ!」
「ボクたち、英単語だって漢字だって、必死に暗記してんのに!」

「それ、友人にもよく言われたよ。でも、見たのは名前くらいだ。プライバシーに関する情報は、見てないから安心してくれ」
 問題のチートスキルは便利でもあり、厄介な代物でもあった。

「それでは、わたくしたちの名前もご存じですの?」
「わたくしたちも、ベッドは一つで構いませんコトよ?」
 クルクルと巻いた水色の髪に、桜色の瞳の双子少女が言った。

「安曇野 亜炉唖(あずみの あろあ)と、安曇野 画魯芽(あずみの えろめ)だよね?」
 ボクの答えに二人の小柄なお嬢様は、ニコリとほほ笑んだ。

ある意味勇者の魔王征伐~第6章・9話

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灼熱の絶望

 巨大な紅き魔物と化した『赤毛の英雄』は、口から『光と灼熱のブレス』を吐く。

「ぐわああああぁぁぁぁーーーーーーーーーーッ!!?」
 舞人は、『ガラクタ剣・ジェネティキャリパー』で、壊れた溶鉱炉のような攻撃を必死に耐えた。
けれども舞人の周りの草原は熱と衝撃はで、原型をとどめないほどに破壊される

「……ヤレヤレじゃのォ? 一瞬で川が蒸発してしまったでは無いか……」
 ルーシェリアは、教会の倉庫から選んで自らの剣とした、『エギドゥ・メドゥーサス』を抜いて、金髪の少年に斬りかかった。

「おっと、危ないなあ。でも、キミたちこそ一体何者だい?」
 そう言いながらもサタナトスは、自らの剣でルーシェリアを叩き落とす。
「この状況で生きているなんて、『名のある冒険者』か何かかな?」

「きゃあああああぁぁぁぁーーーーーーー!!?」
 漆黒の髪の少女は、地面に叩きつけられ土煙が上がる。

「ルーシェリアーーーーーーッ!!?」
赤毛の魔王を前に、舞人は駆け寄ることすらできない。

「ルーシェリア…と言うのか? どこかで聞いた『名』だな?」
 舞人が叫んだ『台詞』に、サタナトスは興味を示した。
「そう言えば、あの『役立たずの魔王』が言っていたような気もするが……?」

「……その、役立たずとの魔王とは……何と言う名……じゃ?」
 砕かれた岩盤の中央で、血まみれの少女がサタナトスに問う。

「あんな雑魚魔王のコトなんて、忘れちゃったよ。でも、奴は確かにキミの名前を……!?」
 そう言いかけたサタナトスは、自身の左手の感覚がおかしいことに気付いた。
「……な、何だ……これは! ボクの左腕が!?」

「お主、油断し過ぎじゃぞ」
 邪眼が縦に三つ並んだ剣を掲げながら、ルーシェリアが言った。
「それは『石化』じゃ。我が剣『エギドゥ・メドゥーサス』の力……侮るで無いわ!!」

「フッ……このボクに、随分とナメたマネをしてくれるじゃあないか?」
 少年は事も無げに自らの左腕を切り落とすと、魔力を集中させて『新たな左腕』を作り出した。

「即興で作ると、こうなっちゃうんだよね。あとで、『気に入った左腕』を見つけないといけなくなったじゃないか!」
 サタナテトスが新たに生み出した左腕は、青緑色のウロコに覆われ、爪は鋭利に尖っていた。

「その能力……お主も魔族か?」
「まあ、そんなところさ。それより、やっと『キミの正体』が解ったよ」
 金髪の少年は、ヘイゼルの瞳に『漆黒の髪の少女』を写した。

「キミは、冥府の魔王『ルーシェリア・アルバ・サタナーティア』だね?」
「『こんな姿』に、成り果ててしまっておるがのォ。お主が言う『役立たず』とは、『モラクス・ヒムノス・ゲヘナス』のことじゃろう?」

「ムダに長くて、覚える気なくなるんだよ。そう言えば奴も、キミの配下の魔王だったね?」
「何百年も、顔も合わせてはおらんがの」

「だけど、配下も配下なら、主も『少女の姿』にされてしまうなんて……可笑しくてたまらないよ」
 少年は、呆れるくらい無邪気な表情で笑った。

「魔族なんて下らない! いずれ人間と共に、ボクの前にひれ伏す運命にあるのさ!」
「なる程……のォ? 妾も、お主の正体が読めて来たわ」
 今度はルーシェリアが割れた岩の上に立つと、金髪の少年をその『真紅の瞳』に写した。

 サタナトスとルーシェリアが対峙している間にも、舞人は荒れ狂う赤毛の魔王の猛攻を耐え凌いでいた。

「マ、マズイ……このままじゃ、街にまで被害が及んじゃう。なんとか、ここで食い止めないと……」
蒼髪の少年は、幼馴染みたちの居る街を守ろうと考え、踏みとどまる。

「……なん……だと?」
 サタナトスの表情から、笑みが消えていた。

「ヌシは……『魔族』と『人間』との、ハーフ……そんなところであろう?」
 漆黒の髪の少女の言葉に、サタナトスは焦りの表情を露にする。

「フッ……それがどうした! そんなコトァはどうだっていいだろ!?」
 金髪の少年は、急に苛立ち始める。

「……気が変わった。キミたちは、目障りだ。この場で始末する!」
巨大な魔王の上空で、サタナトスが右手を挙げる。

『魔王・シャロリューク・シュタインベルグ』が、全身の『氣』を口と両腕に集中させ、その三点の中央に巨大な光の弾が構成された。

「シャロリュークさん、目を覚まして!!?」
「無駄じゃ、ご主人サマよ。アレを喰らったら、一溜りもないのじゃ!」
 それは赤毛の英雄の剣、『エクスマ・ベルゼ』のように、真っ白に光輝いていた。

「こ……こんな姿にされ、更に街を破壊してしまったら……ボクの憧れの『赤毛の英雄』は……もう!!?」
絶望に支配されそうになりながらも、舞人は上を見上げて剣を構える。

「……キミはまさか、この攻撃を正面から受け止める気かい? キミの能力があれば、この場が灼熱地獄になる前に、逃げ切ることも出来そうなんだケドね?」

「あの街には、リーセシルさんや、ルーフレアさんが居る。ネリーニャやルビーニャも居る!」
 舞人は、背後にある『ニャ・ヤーゴの街』を思った。
「アイーナやマイーンたち八つ子も居るし、それに……パレアナだって居るんだッ!」

「ヤレヤレ……他人の心配かい? 下らないねえ。いくらキミが立ちはだかったところで、魔王と化したシャロリュークの灼熱の炎は防げやしないよ」
「やってやるさ……絶対に街を護って見せる!」


「だからムチャだと言っておろう!アレを喰らえば、ご主人サマとて……!?」
「ダメだ……シャロリュークさんに、そんなコトさせちゃいけない!!」
「気持ちは解かるが……今は……」

「『人間を魔王に変える能力』……それが、ボクの魔晶剣・『プート。サタナティス』の能力だよ」
すでに川は干上がり、舞人のガラクタ剣の結界の外は、灼熱地獄と化していた。

「でも、本当に彼を『魔王に変える』のは、『大勢の人間』の命さ!!」
 サタナトスは、眼下の少年を見下ろした。

「さあ、見るがいい。炎の英雄『シャロリューク・シュタインベルグ』が、『爆炎の魔王』として生まれ変わるときだよ!!!」

萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十三話

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お転婆ギツネ

 その頃……渡辺は学校付近の森で、久々に再開した憧れの先パイと二人でいた。

「もう平気? 立っても大丈夫?」
 千乃 美夜美は、メガネの後輩を気遣う。

「はい、お陰様で。それより先パイがキツネだなんて、今だに信じられないな」
「ホントはね、人間と獣は関わり合ったらいけないのよ……」
 千乃 美夜美は少し困った顔をした。

「昔ばなしや漫画やアニメで、よくある設定ってヤツですね?」
「軽いなあ、フーミンわ。もっと、深刻な問題なんだよ!?」
 美夜美の頭から、ピョコンと狐の耳が生える。

「もふもふシッポもあるし、キツネ耳まで……やっぱ先パイは、本物なんだ!」
「だ~か~ら、反応がおかしいんだよ!!」
 少女はため息をついて後輩を見つめると、後ろを向いた。

「ごめんなさいね、黙っていて。普通の人間に、ばれちゃマズかったから……」
「でも先パイは、どうして人間の世界に……?」
 後輩は、ずっと聞きたかった質問をぶつける。

「わたしはね……鬱蒼(うっそう)とした森の中で生まれたの。周りには草原や山々、春には一面に花が咲き乱れるところだった」
 千乃 美夜美は過去形で語った。

「でも、山から見える灯りが、段々と迫ってきたわ。反対に、わたしの生まれた森は、バサバサと伐り倒されて行った」
「それって……人間の開発が原因で……!?」

「お母様は、人間を憎んだわ。でも、どんなに抵抗したところで、人の営みが生み出す開発の大波の前では、獣の力なんて無力だった……」
 先パイは、優しい瞳で後輩を見つめる。

「人間の力に叶わないと悟ったお母様は、やがて人間の世界に入り込み、人間の持つ様々な力を利用するようになっていったのよ」
「そ、それじゃあ先パイも、人間を憎んで……!?」

「わたしは……まだ、子供だったからかなあ。人間の街の灯りが、キレイだなあって思って眺めてた」
「子供ってより、先パイだからなんじゃ……?」
「あー! またそうやってキミは、先パイをバカにしてェ!」

「バカになんて、してないですよ。やっぱ先パイは、優しいんだなって思っただけです」
「そ、そお? なら良いケド」
 先パイは、澄ました顔をする。

「わたし、ね……ただの狐だった頃、まだ人間の灯りも村くらいの大きさでね。ある夏の晩に、夏祭りに忍び込んだの」
「また、無茶をしますね。お転婆ギツネだったと?」

「うっさいなあ。でもその時、人ゴミの中に迷い込んじゃって、蹴られるわ、踏まれるわで、ボロボロになって神社の境内で倒れてたの」
「それで、人間の少年にでも助けられたんですか?」

「えー!? それ、先言うかなあ。フーミン、空気読もうね!」
「ハイハイ。すみませんでした」
「わかればよろしい。でね、人間の世界に興味が沸いちゃって……」

「それで、人間に化けて、人間の世界で暮してたんですか?」
「うん……でも、あんなコトいなっちゃって……もう、人間の世界には居られないなって……」
 顔を伏せる、千乃 美夜美。

 それは、一年前の文化祭の前に発生した、部室棟の火事のコトだった。
「あの火事の原因は、わたしのお母様が……」

「そっか、それで先パイはあの火事のあと、姿を消して……」
 渡辺が一年間考え、悩み続けた謎の答えがそこにあった。

「そのコトは、後で話しましょう。それより今は、お母様を止めないと……」
「そうですね。でも……やはり千乃 玉忌さんは、先パイよりも強いんじゃ?」
「でも、わたしが何とかするしかないわ。あの狸のコだって、頑張ったんだもの」

「狸のコって……き、絹絵ちゃん!?」
 渡辺は、真剣な表情に変った先輩の横顔を見て、とても重要なことを思い出した。

ある意味勇者の魔王征伐~第6章・8話

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プート・サタナティス

 自らを、『サタナトス・ハーデンブラッド』と名乗った少年は、背中に携えられた一本の剣を抜く。

「これは、ボクの剣……『プート・サタナティス』さ。どうだい、美しいだろう?」
 剣は妖しい気に包まれ、金色の刃はしっとり濡れているかの様な光を放っていた。

「戦ろうって言うのか? ……だったら!」
 舞人も、背中の『ガラクタ剣』を抜く。
「冒険者風情が面白い反応をするねえ? でもボクは、キミなんかの相手はしないよ」

「……どう言うコトだ?」「キミの相手は、ボクじゃないってコトさ」
「そうか、配下でも、召喚する気だな!?」
 舞人がサタナトスに向かって身構えていると、背後のルーシェリアが言った。

「おい、ご主人サマよ。その者の申す意味が、少しずつ解りかけて来たぞ!」
 舞人は、背後を振り返ると『驚くべき光景』が待っていた。

「……なッ!? これは一体、何なんだ!!?」
 そこには、瀕死の傷を負っていたハズの『シャロリューク・シュタインベルグ』が、ふら付きながらも立っている。

「……ガア……アア……グアッ!!?」
 けれども瞳は真っ赤に染まり、口元からは牙が伸び『野獣のような咆哮』を上げた。

「シャロリュークさん……どうしたんですかぁ!? なにがあったんです!?」
「無駄じゃ! どうやら理性など、とうに無くしておるようじゃ」
「ルーシェリア、危ない!?」「……なッ!? きゃああああーーーーー!!!」

 少年の言葉など全く耳に届いていない『赤毛の英雄』は、ルーシェリアに突進して跳ね飛ばすと、今度は舞人を目掛けて猛進する。

「ぐゥおおおおォォーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
 蒼髪の少年は、渾身の力を振り絞って『ガラクタ剣』で受け止める。

「なに? まさか、『赤毛の英雄』の一撃を耐えるとは……キミ、意外にやるねえ?」
 サタナトスは空に浮かびながら、余裕の表情で舞人を観察した。

「……お前は、シャロリュークさんに何をした!? どうしてシャロリュークさんが、こんな姿に!!?」
 彼が憧れた赤毛の英雄は、獰猛な魔物のように理性も無く、ただひたすら彼を殺そうと襲い掛かる。

「それは少し違うかなあ? まだまだ、これからなんだよ。本当に『変化』するのは……ね」
「……なッ、何を言って……!?」
 サタナトスの不気味さに、戦慄を覚える舞人。

「言っただろう? ボクの実験は、まだ終って無いって……さ?」
 天使のように微笑む金髪の少年の言葉通り、舞人の目の前のシャロリュークの体は、筋肉が隆起し腕や上半身の服や鎧が弾け飛ぶ。

「うあああああーーーーーーーーーッ!!?」
 その剛腕によって、弾き飛ばされる舞人。
赤毛の英雄は、なおも変化を続け巨大化し、全身が真っ赤な体毛に覆われる。

 先刻まで、世界の人々から赤毛の英雄として賞賛され、憧れられ、救いを求められた英雄は、頭から歪(いびつ)に捻じ曲がった二本の黒い角を生やし、背中に巨大な蝙蝠の羽を広げ、龍の如き尻尾をも生やした。

「……ど……どう言うこと……じゃ。此れ……は!!?」
「ルーシェリア……無事か!?」
 舞人は、川に飛ばされビショ濡れになった、少女の元へと駆け寄る。

「何とか……のォ。じゃが、此奴(きゃつ)はすでに……『赤毛の英雄』などでは無いのじゃ」
「そ……そんな!!?」
 それは因幡 舞人にとって、最も受け入れがたい現実だった。

「ああ、そうだよ。コイツはもう、『英雄』でも無ければ、『人間』でも無いのさ」
 金髪の少年は、巨大な紅い怪物の前に浮遊しながら、二人に語りかける。

「『魔王』なのさ……コイツはね。 これがボクの剣『プート・サタナティス』の能力だよ!!」

一千年間引き篭もり男・第04章・01話

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戦争ゲーム

 ゲームの触れ込みの一つに、『決まったルートが無く何をしても自由』……というのがある。

 二十一世紀に、冷凍カプセルで眠りについたボクは、太陽系というあまりに巨大なフィールドに放り出され、巨大宇宙艦の艦長まで就任してしまった。
はっきり言って、ボクはこの手のゲームは苦手である。

「さて、ベルダンディ。キミに質問だが、フォボスのプラント事故は、キミたちが引き起こしたモノで間違いはないんだな?」
 ボクは、艦長の椅子の上のカプセルに向かって、語りかけた。

『はい。おおむね間違いではございません』
 フォログラムに過ぎない、ベルが答える。

「オイ、なんだってそんなコトをしやがったんだ!? テメーらの目的はなんだ?」
 プリズナーが、 声を荒げた。

『この艦に置ける地位は、わたしの方が上です。あなたの要求に答える義務はございません』
「やれやれ、ずいぶんな物言いじゃねえか? 勝手にオレらを拉致っといて、盗人猛々しいとは……ま、言えた義理じゃねーがよ」

「なあ、ベル。プリズナーの質問の答えを、ボクも聞きたい。あの事件は本当に、ボクだけが目的なのか? どうして、フォボス女学院の生徒にまで、手を出したんだ?」
 ボクが質問すると、セノンや真央ら女学院の生徒たちが、いっせいにベルを見る。

「ボクの見解だが、フォボスの採掘プラントの社会見学なんてモノは、早々あるモノじゃ無いんじゃないのか? 彼女たちも、意図的に巻き込まれたと考えている」

『わたしたちは、時の魔女様の指示に従ったまでです。残念ですが、作戦の開始日時と、宇宙斗艦長の確保以外の指示は、受けておりません』

「てぇコトはだ。開始日時を設定した、その時の魔女ってェのはどこにいる?」
『存じません。わたしたちはただ、指示を受けそれを実行しているに過ぎません』
「おおかた、テメーの自演じゃねえのか? 運命の女神さんよ」

 プリズナーにも、ベルダンディが運命の女神である知識はある様だった。

「えっと、おじいちゃん。わたしたちは帰してもらえるのでしょうか?」
 栗毛のクワトロテールの女の子が、ボクに問いかける。

「そうだな、セノン。だがこっちは、事件を起こした側だ。強盗犯が人質を返したからと言って、すんなりコトが治まるだろうか?」
「そんな平和な世界がどこにある。ちったあ頭を使えよ」

「何か、いいアイデアでもあるのか、プリズナー?」
「格納庫に、あれだけ色んな宇宙艇が並んでいるんだ。一つくらい拝借して、火星の探知衛星の範囲外から、こいつらを乗っけて打ち出せば済むコトだぜ」

 プリズナーとトゥランは、すでに格納庫にも侵入していたらしい。
「なる程、宇宙艇はプリズナーが操縦できるんだな?」
「自動操縦がぶっ壊れてなけりゃな」

「そっか。ちなみにだがベル。この艦の戦闘能力はどのくらいなんだ?」
『各企業や国家の軍事能力は、非公開の極秘事項ですので推測にはなりますが、現行の宇宙空母打撃群十二個艦隊と同等と言ったところでしょうか』

「ちなみに、空母打撃群一個艦隊の規模は?」
 別にボクはミリタリーマニアでは無いが、アニメやゲームの知識から、それなりには知っていた。

『火星を代表する企業である、マルステクター社の第一艦隊ですと、大型宇宙空母三隻、中型空母六隻、小型空母兼強襲揚陸艦二十四隻、宇宙戦艦一隻、巡洋艦八隻、駆逐艦十六隻、ミサイル艇などの護衛艦を入れますと……』

「二十一世紀のアメリカ軍の一個艦隊を、大幅に上回る能力じゃないか!?」
『アステロイドベルトを始め宇宙には、無限に近い鉱石がありますからね』
「材料には事欠かない……って、コトか」

 二十一世紀から千年が過ぎても、人類は戦争というゲームの魅力に、憑りつかれたままだった。

この世界から先生は要らなくなりました。   第02章・第19話

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メリー先生

「モノは試しだ。まずはレノン……どの辺りから解らないんだ?」

「どこって言われても……方程式くらいから?」
 レノンは、天井を見上げながら言った。

「けっこう初歩だが、まあありがちではあるな。アリスはどこが解らない?」
「え、わたしですか!? ふ、不等式のらへんが解りません」
 アリスはオドオドしながら、答える。

「それじゃあメリー。二人を同時に見るなど、キミには造作もないコトだろう?」
「先生、そうやって挑発すれば、わたしが従うとでも思っているのですか?」
 少女は、アイボリーの髪を掻き揚げ、ボクを睨んでいる。

「もし、本気で先生が数学を教えたいのであれば、このクラスにはユークリッドの数学教師がいるではありませんか? ねえ、瀬堂 癒魅亜さん」
 メリーが視線を送った先には、髪を本来の栗色に戻したユミアの姿があった。

「そうね。だったら、わたしの動画でも見たら。もっともわたしは、高校の数学担当だから、中学は別の動画になるケド」
 ユミアはクラスメイトを、軽くあしらった。

「流石はユークリッドのアイドル教師。ずいぶんと余裕な態度ですね」
「当たり前よ。わたしは大学レベルまでの数学については、かなりのレベルでマスターしているわ」
 彼女の言葉は、恐らくクラスメイトの多くから、反感を買っただろう。

「どうだ、レノン、アリス。やはり、ユミアの動画で、学んだ方が……」
 ボクはユミアの助け舟を、有り難く使わせてもらうコトにした。

「そりゃそうだよな」「わたしも、そうします……」
「ふざけないで、くださるかしら? 自分が優れた教師だからと言ってって、人を見下すその態度……許せません」


「メリー、それお前のコトじゃん?」
「うるさい、バカライオン! わたしだって、落ちこぼれ二人くらいの面倒は見れます。それで、どこが解らないのです!!」

「え!? ……ええっと、全部」「全部ゥ!?」「そう、全部」
「いいですか、方程式っていうのは、aやb、xという不確定な数字を表す記号を使って……」
「なんで数学に、英語が出てくんだ? 数字と英語が並んでるなんて、おかしいじゃん?」

「もう、このポンコツ!! 使ってる英語は、どの数字が入るか解らないという意味です。また、その中身が何かを計算で導くのも、方程式の重要なポイントです」
「そうか。何となく、解ったような解らないような?」

「でも、何となくは解っただろう、レノン?」
 ボクは、金髪のたてがみ少女に問いかける。
「うん……今までは、ぜんぜん解らなかったケド、少しだけ解った感じ!」

「まったく……それではアリスさん。あなたはどこが解らないのですか?」
「えっと、一次式は解るんだけど……」
「なる程、この辺は確かに、わたしも苦戦したわ。えっと、まずは……」

 メリーは、レノンとアリスに数学を教え始めた。

「アリガトな、ユミア。キミに、悪役まで押し付けてしまって」
 ボクは、ユミアの席の傍らに立って話しかけた。

「いいえ……それより先生は、彼女の性格を見越していたんですね?」
「メリーは、かなりの合理主義者みたいだからね。何かを解りやすく説明する能力が、抜きん出て高いんだ。それに彼女にとっても、復習(アウトプット)になるからね」

「先生って、やはり生易しいモノでは無いですね……」
 瀬堂 癒魅亜は、顔を伏せる。
「レノンってコも、ユークリッドの動画を見てたでしょうに……」

 過去の学校教育に問題があったように、ユークリッドによる動画教育にも問題がないワケでは無かった。

「仕方ないさ。動画は、一方通行。解らなくても、質問ができるワケじゃない。キミだって直接教えられれば、レノンも理解できたハズだろ?」


「違うのよ、先生……わたしは、誰も生徒がいない教室でないと、教えられないのよ……」
 ユミアは言った。

 それからボクは、白板を使って授業を続けた。