ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・116話

魔獣(キュマイ・ラー)

「魔獣(キュマイ・ラー)の能力を、ことごとく無効化(レジスト)するとは……これが、貴女たちの召還した高位精霊の力ですか!」
 溶けた槍を回収する、ベレ・ロ・ポンティス。

 彼の手懐(てなず)ける魔獣の前には、風と水の2体の高位精霊の姿があった。

「随分と苦戦しているな、ベレ・ロ・ポンティス。お前らしくも無い」
 鷹のような鋭い眼光をした少年が、赤銅色のカールした髪の少年の背中から近づいて来る。
手には、大暗刻剣(マハー・カーラ)を携えていた。

「拙者は手が空いて、退屈をしていたところだ。手を貸して、やろうか?」
 コーヒー色の身体に黒い髪を頭の後ろで結わえた少年は、銀色の縁取りのある緑色のコートの下に、金色の鎧を装備している。

「余計なお世話ですよ、レオ・ミーダス。彼女たちは、わたしの獲物です。手出しは無用……」
「強がるな、多勢に無勢だ。1体は、拙者が相手をしてやる」

「アナタこそ、わかってませんね。アナタの敵は、まだ倒れてはいないのですよ」
「フッ。なにを言っている、ベレ・ロ・ポンティス。蒼髪の少年は、この大暗刻剣が生み出した、3つの黒きエネルギー球(トゥリ・シューラ)の重力によって、身体を押し潰され……」

 その時、突然なにも無い空間がひび割れ、中から別の空間が覗いた。

「な、なんだ、これは!?」
「言ったでしょう。彼は、時空の狭間で生きていたのですよ」

 ベレ・ロ・ポンティスが語った通り、時空のひび割れは徐々に大きく広がって、中から青い髪の少年が現れる。
けれども、普段は翡翠色の瞳が、ワインレッドに変わっていた。

「キ、キサマ、どうやって拙者のトゥリ・シューラから、逃れるコトが出来た!」
 大暗黒剣を構えながら問いかける、レオ・ミーダス。

 すると、ベレ・ロ・ポンティスの魔獣が激しい咆哮を上げ、背中のヤギの頭までいなないた。

「ど、どうしたのです、キュマイ・ラー。落ち着きなさい!」
 けれども魔獣は、主の静止も聞かずに、舞人に飛び掛かって行ってしまう。

 舞人が、ガラクタ剣を1閃した。
キュマイ・ラーの獅子の頭がボトリと落ち、魔獣の腹の前後でも両断され崩れ落ちる。

「簡単な、話さ。ボクのジェネティキャリパーは、魔王とか強力な魔族を、女のコに変える能力なんだ」

 獅子の頭、ヤギの頭のある上半身、蛇の尾を持った下半身の、3つに分断された魔獣。
やがてそれぞれのパーツは、眩(まばゆ)い光を放ち始めた。

「な、なにが、起きてるの!」
「斬られた魔獣が、ドンドン小さくなってくよ!?」
 驚きを隠せない、ウティカとルスピナ。

「そう言えばお主らも、初見じゃったかの。妾にとっては、見慣れ過ぎて見飽きた光景なのじゃがな」
 ルーシェリアは、ヤレヤレと言った表情で、魔獣が3人の少女に変化する様を見守った。

「随分と、ふざけた能力だな。だが魔王でも魔族でも無い、人間には無力なのだろう?」
「まあね。だから人間のキミとは、身体強化だけで戦わなくちゃならなかった」

「なるホド。だがどうしてキサマは、トゥリ・シューラを撃ち破れた?」
「ジェネティキャリパーは、魔力の弱い魔物は消滅させてしまう。キミのトゥリ・シューラは、暗黒の魔力そのものだったから、消滅させられたんだ」

 レオ・ミーダスの疑問が解決される頃には、眩い光は収まる。
キュマイ・ラーの3つのパーツがあった場所には、全裸の3人の少女が地面に転がっていた。

「な、なんと言うコトだ。わたしの魔獣が、こんな姿に!?」
 気を失っている3人の少女をかき集め、姿を確認するベレ・ロ・ポンティス。

 3人はそれぞれ、ライオンのタテガミのような髪と牙を持った少女、ヤギの様な角を持った少女、ヘビのシッポを持った少女に生まれ変わっていた。

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