2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧
戦争の刻(とき) 「アイツの剣も……重力を操るのか!?」 舞人は、ジェネティキャリパーに身体を強化し、叩き付けられた壁から抜け出す。 「少し違うな。拙者の剣は、重力の束縛から物質を解き放つのだ。例えば、こんな風になッ!」 レオ・ミーダスが、剣を…
無縁仏(むえんぼとけ) 墓場の舞台のマドルとハリカが、歩き始めた。竹崎弁護士の事務所から、2人で別の場所へと向っているのだろう。 「あの……マドルさん。次は、何処へ行かれるのですか?」 ハリカが、遠慮がちに聞いた。 「貴女の、祖母に会うのですよ…
あるサッカー界の新星の迷い1 「倉崎。海馬にチームオーナーを任せるって言った、もう1つの理由は解ってる?」 名古屋の有名な喫茶店の、駐車場から出発する軽自動車の後部座席で、メタボ監督が言った。 「オレの……海外移籍ですか」 サッカー界の新星は、…
舞い戻った女神 「あ、あそこだよ。ボクのオリジナル!」 バル・クォーダのコックピットの中で、群雲 美宇宙(みそら)が叫んだ。 無数の星が煌(きら)めく全天の宇宙に、漂うゼーレシオン。それは、プラネタリウムで小さな星を見つけるよりも、困難な作業…
レオ・ミーダス 「な、なんだよ……いったい、何が起きているんだ!?」 目を覚ました因幡 舞人が、最初に見た光景は闘技場で争う人々の姿だった。 「どうやら周辺の国々が、ラビ・リンス帝国に対して叛旗(はんき)を翻(ひるがえ)したようじゃな」 舞人に膝…
生前の約束 「わたしは、警部補のマドルと申します。改めて、お話を伺っても宜しいでしょうか?」 ハリカに目配せをしながら、マドルが言った。 「モチロン、構わないっスよ。竹崎先生が、あんなコトになっちまって、先生にお世話になった者はみんな、憤(い…
あるメタボ監督の決断3 「フィッシュフライバーガーになります。ご注文は、お揃いでしょうか?」 もう何度も足を運んで来た女性店員が、テーブルの4人の男たちに伺いを立てた。 「それじゃ、追加で……」「セルディオス監督、それ以上は身体に悪いですよ」 …
真っ白な光 この1000年の間に起こった、幾多の戦争や災害によって、地球の環境は劇的に悪化してしまった。人類の進出した太陽系の中心は、汚れた地球では無く、テラ・ホーミングを終えた火星となっている。 「宇宙斗は……地球を元の美しい蒼い星に、戻せ…
計画されていた反逆 「オレの剣、フェーズ・ド・ア・レイの光弾は、どこまでもお前を追いかけるぜ!」 ペイト・リオットの剣から放たれた光弾は、避けようとするミノ・テリオス将軍を自動で追尾する。 「少年と思って、侮(あなど)ってしまったな……」 ミノ…
好奇心旺盛な助手 「わたしには、あの子を殺す動機がありません!」 普段は穏やかな伊鵞 昴瑠(いが すばる)の怒声が、舞台からドーム会場へと響き渡った。 「そ、そりゃ、そうですよねェ」 警部の野太い声が、たじろいでいる。 「わたしは、遺産の相続権を…
あるメタボ監督の決断2 『カラン、カラン』と、ドアの上に付いたベルが鳴り、学生服姿の2人の男が喫茶店へと入って来る。 「おッ! 来たね、2人とも。ここは倉崎の奢(おご)りだから、まあ座ってよ」 メタボ監督が、2人を自分たちの席に座らせ、呼び出…
重力下の再会 ゼーレシオンと、その剣に刺し貫かれたツィツィ・ミーメ。2機のサブスタンサーは、見えないブラックホールへと急激に引き寄せられていた。 「このままじゃ、ブラックホールに飲まれて消滅してしまうぞ。ミネルヴァさん、聞いてるか!?」 ボク…
ペイト・リオット 大魔王の去った闘技場に現れた、周辺諸国からの使者たち。大量の貢物を携(たずさ)え、7人の少年と7人の少女の奴隷を伴(ともな)っている。けれども使者たちは、反抗の意思を示した。 「フッ……お前たち使者風情が、ラビ・リンス帝国に…
2人の少女の首 「掘り返された、2人の少女の首。1つは首桶に入っていたため保存状態が良く、伊鵞 兎愛香(いが トアカ)さんであるコトが判明した。シャンデリアに潰された胴体の首とも、断面がほぼ一致したよ」 墓暴きで発見された2つの首について、観…
あるメタボ監督の決断1 名古屋の有名な喫茶店で、赤いビロードのシートに1人の太った男が腰を降ろす。男は日系のブラジル人で、若い頃は高度なテクニックで鳴らしたサッカー選手だった。 「クリームココアとカレーカツサンド、あとビーフシチューとあんか…
錘(アンカー) 「クソッ……まるで見えない1点に向かって、引き寄せられている!?」 重力をある程度は操れるゼーレシオンですら、木星クラスの質量を持つ、小さなサッカーボール程度のブラックホールの、強大な重力からは抜け出せないでいた。 「準惑星エリ…
新たなる刺客 「かつてのミノ・アステ将軍の配下の活躍もあり、命を取り留められる者はほぼ救い終わりました。パルシィ・パエトリア王妃も、お体をお安め下さい」 ミノ・テリオス将軍が、王妃に傅(かしず)きながら言った。 「いえ。わたくしなら、大丈夫で…
2つの少女の首 「緑色の苔が生(む)す黒ずんだ墓は、誰がその下に眠っているのか、墓標に刻まれた文字すら読めない状態だった……」 舞台のマドルが、現場の状況を観客たちに説明した。 「この墓の前は、確かに土が緩んでいるね。それによく見ると、他は薄っ…
あるメタボキーパーの日常 「あ~あ、やっちまったなァ!」 湿った布団に寝転がった、ブタかアザラシのような男が言った。 「やっぱ、ここいらが潮時かもな。アイツらの頑張りを、オレ1人で無駄にしちまったんだからよ」 布団の横にはテーブルがあって、銀…
見えない重力 かつてボクは、宇宙はアナログなのか、デジタルなのかと言う議論をしたコトがある。 紀元前、4~5世紀にも遡(さかのぼ)るギリシャの哲学者、レウキッポスやデモクリトスによって提唱された、物質の最小の単位。 例えばリンゴを2つに割り、…
白いミルクの回復魔法 「残念だケド、わたしの魔法じゃこの人は助けられないよ。ごめんなさい!」 わき腹から血をドクドクと流し横たわる男の前で、悲痛な顔をするウティカ。 大魔王ダグ・ア・ウォンらによって破壊され、蹂躙(じゅうりん)し尽くされた闘技…
掘り返される墓 「伊鵞 武瑠(いが たける)氏の首吊り事件の、調査報告を受けた当日の夕方。伊鵞 絮瑠(わたる)氏の亡くなった山から、伊鵞 朱雀(いが すざく)さんが館へと帰って来た」 墓暴きまでの4日間の、人の出入りの続きを説明するマドル。 「彼…
敵の真意 ゼーレシオンの背中に、突如として現れた巨大なサブスタンサー、ツィツィ・ミーメ。宇宙の法則を平気で覆(くつがえ)し、ボクを襲った。 「ガッ……コ、コイツ!?」 背中にダメージを受け、深淵の宇宙にグルグルと飛ばされるゼーレシオン。 「だ、…
敗戦 「ウオオオォォォォーーーーーーーーーッ!!!」 強敵MIEを相手にゴールを決め、雄叫びを上げる黒狼。 「よく決めたな、クロ!」「偶然にしちゃ、出来過ぎやで!」 黒浪さんの元へと、紅華さんと金刺さんが駆け寄って抱き付く。 「確かに角度は、ま…
嵐のあと 大魔王ダグ・ア・ウォンは、去った。彼の率いた3体の魔王は倒され、地上の闘技場に平穏が訪れる。 「フウ。ルスピナがコイツを呼んでくれたお陰で、助かったぜ。アリガトよ」 ティンギスは、ルスピナの頭を軽く撫でた後、高位の水の精霊であるメガ…
経過した4日間 「吾輩が提案した墓暴(あば)きは、翌日決行……とは行かず、関係各所への許可を得るまでに、4日ホドの時を費(つい)やしてしまった」 頭に乗せた小さなシルクハットに手をやり、残念がるマドル。 「1つは、警察上層部に警部が掛け合うのに…
アーキテクター・ドローン(無人機) 「オイ、やっぱ援軍どころの話じゃ無ェぞ!」 プリズナーの焦り声が、ゼーレシオンの触角を通じて伝わる。 戦闘機から変形した、5機のアーキテクター・ドローン(無人機)。徐々にではあるが、意味不明な挙動をするよう…
最後(ラスト)のチャンス 1-9の数字が並ぶ、スコアボード。勝敗の行方は、とっくに決している。でもボクたちは、遺された力を振り絞って最後の攻めに出ていた。 「やらせると思うか!」 センターバックとしては小柄なカイザさんだったが、必死にジャンプ…
蒼い炎 大魔王ダグ・ア・ウォンの持つ、3叉の剣トラシュ・クリューザーによって放たれた、水の大魔法アトラ・ハ・ジース。 「我は、サタナトス様の剣によって、大いなる能力を与えられた。次元迷宮(ラビリンス)のミノ・リス王よ。キサマが無事でも、キサ…
墓暴(あば)き 「ハリカさんが、この館に来るってのは本当かい?」 舞台のマドルが、誰かに質問した。 「本当だ。本人の意向でな。母親の藤美さんや、祖母のタミカさんも必死に止めたそうなんだが、ハリカさんは正義感の強い娘らしくてな。竹崎弁護士が亡く…