ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP042

最後(ラスト)のチャンス

 1-9の数字が並ぶ、スコアボード。
勝敗の行方は、とっくに決している。
でもボクたちは、遺された力を振り絞って最後の攻めに出ていた。

「やらせると思うか!」
 センターバックとしては小柄なカイザさんだったが、必死にジャンプする。

「もっとちゃんと、足腰鍛えんとアカンな」
 けれども金刺さんのジャンプは、カイザさんを頭2つ分凌駕する高さまで達していた。

「クッ! コイツ!」
 カイザさんも空中で身体を当て、金刺さんのバランスを崩そうと試みるが、サーフィンで鍛えられた下半身と、天性のバランス感覚がそれを跳ね除ける。

「へッ! 流石は、波乗り(サーファー)。本物のサーフィンの会社と間違えて、ネットサーフィンの動画編集会社に入っただけあるぜ」
 クロスを上げた紅華さんが、皮肉めいた褒め方をした。

「サーファーの意地にかけて、絶対に決めたるでェ!」
 金髪のドレッドヘアが、海底に生えたイソギンチャクみたいにユラッと揺れる。

 激しくインパクトされたボールが、MIEのゴールの右隅に向けて飛んだ。

「アグス!」
「わかってるぜ、カイザさん。絶対、止めてやる!」
 甘いマスクの守護神が、自身から見て左手側に飛ぶ。

「こ、これは、決まったね!」
「ですが、相手のキーパーは……」
 ベンチで豊満なお腹を揺らし喜ぶメタボ監督に比べ、倉崎さんは冷静だった。

「届けェ!」
 左手のキーパーグローブが、パーでは無くグーのカタチに握られる。
アグスさんは、フィスティングで正拳突きのように、ボールを弾き飛ばした。

「せやケド、まだボールの勢いは死んでヘン!」
 横に飛ばされながらも、尚もゴールへと向かって行くボール。

「ああ……そんな!」
 ベンチで、新人マネージャーの沙鳴ちゃんが、両手で口を覆う。
ボールは、左のサイドバーに阻まれ、ボクたちから見ると右サイド側にこぼれた。

「クリアだ、クラス!」
「わーッてるよ!」
 左センターバックのクラスさんが、こぼれ球を追い駆ける。

「最後のチャンスが、終わったね」
「いえ、セルディオス監督。まだですよ」

「え?」
 倉崎さんに言われ、諦めかけ天を仰いだ監督がゴール方向を見た。

「ここがオレさまの、スタートラインってか!」
 右サイドを、かなりのスピードで駆け上がる選手がいる。
その選手は、真っ黒に日焼けした肌に、天然パーマの髪を左右に結んで垂らしていた。

「クロッ! 先に追いつけ!」」
 紅華さんが、叫ぶ。
けれども、ボールまでの距離はクラスさんの方が遥かに近かった。

「ピンク頭め。オレは、オメーの犬じゃ無いっての!」
 かなりのスピードから、更にギアを上げる黒浪さん。

「バ、馬鹿ヤロウが……なんてスピードだ!?」
 余裕で追いつくモノと思っていたクラスさんも、慌ててスピードを上げた。

「オレさまは、黒狼だぜ! 鈍足のセンターバックなんかに、負けるとでも思ってんのか!」
 最初は、倍近い差があった距離が、見る見る縮まる。

「クロくん、スゴい、スゴい!」
 関係者用のビブスを着た千鳥さんが、真っ黒な本格的1眼レフカメラのシャッターを切っていた。

「あのサイドアタッカー、本気で追いつくぞ!」
「わかってるよ、カイザ。クロスははじき返す!」
 ペナルティエリアで待ち構える、カイザさんとクラスさん。

「これが、全力の黒狼のスピードだぜッ!」
「コイツ、なんだってんだァ!?」
 目の前で黒浪さんにボールをさらわれ、激昂するクラスさん。

「オラァ!」
 黒浪さんは、1ドリブルだけボールを前に持ち出すと、まったく角度の無いところからシュートを放った。

「なッ……なにィ!?」
 目を見開き、驚くカイザさん。

 ボールは、MIEのゴールの天井ネットに突き刺さっていた。

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