ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第10章・EP003

あるメタボ監督の決断2

『カラン、カラン』と、ドアの上に付いたベルが鳴り、学生服姿の2人の男が喫茶店へと入って来る。

「おッ! 来たね、2人とも。ここは倉崎の奢(おご)りだから、まあ座ってよ」
 メタボ監督が、2人を自分たちの席に座らせ、呼び出し鈴を押した。

「雪峰に、柴芭じゃないか。お前たち、学校帰りか?」
「はい。今、終わったところです」
 倉崎 世叛が、学生2人に問いかけると、優等生然とした1人が答える。

「ではお言葉に、甘えさせていただきましょう。ボクは、アイスコーヒーで」
「オレも同じで、お願いします」
 丁度近くに居た女性店員に、注文する柴芭と雪峰。

「倉崎のサイフなんだから、もっとハデに注文して構わないよ?」
 遠慮を知らないメタボ監督は、どさくさ紛れにフィッシュフライバーガーを注文した。

「ですが、いくら倉崎さんでも、1年目のサッカー選手の年俸を考えると……」
「交際費として減価償却できるかも、解らないですしね」

「実は2人を呼んだのは、その為よ」
 倉崎に真面目な視線を向ける、メタボ監督。

「デッドエンド・ボーイズは、スポンサーを集めないとダメね」
 その時、メタボ監督が注文していたアイスココアが、グラスから溢(あふ)れ出た。

「ウワットット!? アイスが解けちゃって、ココアが……」
 慌ててアイスをスプーンですくって食べる、メタボ監督。
けれども、ドリンクココアの上にソフトクリーム並みに盛られたアイスは、中々減らない。

「チョ、チョット、ココアが零れてテーブルが!」
 メタボ監督は、1人パニックになっていた。

「あ、あの、セルディオス監督。お言葉ですが……」
「それ、ココアを先に飲み干した方が、早いのでは?」
 雪峰と柴芭が、冷静に言った。

「へッ……そ、それを先に言うね!!!」
 慌ててストローで、ココアを飲み干すメタボ監督。
ココアの水位が下がって、溢れ出るコトは無くなった。

 雪峰と柴芭が、汚れたテーブルをお絞りで拭く。
バツの悪くなったメタボ監督は、ココアとその上のアイスを食べ終わるまで、間を開けた。

「さて倉崎、話を本題に戻すよ。デッドエンド・ボーイズは、本格的にスポンサー集めをしなきゃならない時に来てるね」

「はい。それはオレも、前々から考えていました」
 倉崎が、メタボ監督の忠告に同意する。

「今は彼らも高校生で、給料が8万とかバイト並みの金額で納得して貰ってますが、いずれは彼らも大人になる。その場合、オレの給料だけでは到底足りなくなります」

「そうね。彼らが、サッカー選手として成長を続ければ、もっと多くの給料を求めるようになるね」

「日本では、金の交渉事はタブーのような文化がありますが……」
 雪峰が、言った。

「雪峰、それは日本独特のおかしな考えよ。世界じゃ、会社に入るのでさえ契約ね。仕事に対する金銭の要求は、プロとしては当然の行為だし、クラブも選手もお互いの主張をぶつけ合うのが普通よ」

「確かに、日本の方が世界基準から、外れているのかも知れませんね」
 アイスコーヒーを掻きまわしながら、納得する柴芭。

「日本だと、義理だの人情だの金銭に関係のないコトで、働かされている人多いね。ブラジルじゃ、考えられないよ」

「ですが正直、スポンサーを探すと言われても、どうするばイイのやら、サッパリで……」
「倉崎は、そっち系は苦手だからね。だから、2人を呼んだのよ」
 メタボ監督は、ビーフシチューにエビフライを食べ始めた。

「倉崎さん。あえて提言します。クラブとしてのデッドエンド・ボーイズの、代表取締役をどうするか決めるべきかと」

「このまま倉崎さんが続ける場合、ご自身の所属する名古屋リヴァイアサンズの遠征など、かなりの期間チームを離れるコトになります」

「確かに、雪峰や柴芭の言う通りではあるが、退くか代理を立てろってコトか?」
「はい。やはり、サッカークラブも会社です」
「給料の支払いなどに不備があれば、最悪税務署なりから監査が入りますからね」

「そ、それは困る!」
 倉崎 世叛は、頭を抱えた。

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