ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第08章・82話

見えない重力

 かつてボクは、宇宙はアナログなのか、デジタルなのかと言う議論をしたコトがある。

 紀元前、4~5世紀にも遡(さかのぼ)るギリシャの哲学者、レウキッポスやデモクリトスによって提唱された、物質の最小の単位。

 例えばリンゴを2つに割り、割ったモノをさらに2つに割り、切って切ってを繰り返していく。
当然ながら繰り返すホドにリンゴは小さくなって行き、やがては原子1つに到達するだろう。

 原子は長らく、物質の最小の単位とも考えられていたが、21世紀の時点でもそれは間違いだったと証明されていた。
原子は原子核と電子で構成され、原子核はクォーツと呼ばれるモノに分けられる。

 ……さらにその先は、あるのだろうか?

 黄金比である16:9の長方形は、その中に納まるように黄金長方形を描き、さらにその中に黄金長方形を描くとする。
その辺を結んだ螺旋は、永遠に渦を巻き続けると言う。

 物質にクォーツよりも小さな単位が存在し、さらにその小さな単位を構成する小さな単位が存在し、どこまでも無限に小さくなれるのであれば、宇宙はアナログだ。

 でも……もしどこかで、限界があるのだとしたら、宇宙はデジタルと言うコトになる。

 宇宙がデジタルであるなら、ブラックホールの内部であっても、アインシュタインの一般相対性理論で、密度が数値が∞(無限大)を示すコトは無い。
物質が小さくなる、限界があるからだ。

 ビッグバン理論のように、宇宙がかつてピンポン球より小さな1点に集約していたと言うのも、成立しなくなる。
理由は同じく、物質が小さくなる限度が存在するからだ。

 宇宙が1点から始まったとするビッグバン宇宙論は、ウソだったというコトになる。
現在の宇宙が空間と共に膨張しているのは事実だが、それは人類の観測範囲に限界があったからなのかも知れない。

 宇宙はデジタルであるコトを示唆(しさ)するモノは、けっこう存在する。

 例えば原子は、原子核の大きさで原子の性質が変化する。
水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム……と、なめらかなアナログ的では無く、デジタル的にまるで階段のように変化を示すのだ。

 光の速度が1定なのも、現在の宇宙がデジタル的と言える証拠だろう。
真空中の光の移動速度は、約秒速30万キロメートルだ。

 光速度不変の法則とも呼ばれているが、光の移動速度がナゼか秒速30万キロメートルなだけだ。
どうしてそうなのかは、よく解っていない。

「本当にあそこに、ブラックホールが存在しているのか?」
 ゼーレシオンの巨大なカメラアイですら、認識できないネメシスと勝手に名付けたブラックホール。

「宇宙がデジタルなら……時の魔女はブラックホールをも複製して……」
 けれどもボクには、考察を続ける余裕を与えられなかった。

「グワッ!?」
 目が覚めるような衝撃が、ボクとゼーレシオンを襲う。
ツィツィ・ミーメが、その巨体を持って物理攻撃を仕掛けて来たからだ。

「気持ちよく寝ていたのに、布団を引っぺがされたみたいだ」
 1000年前のボクは、自宅の自分の部屋が視界の全てだった。
そんなボクを、ある少女が外の世界へと連れ出してくれた。

「クッ……ミネルヴァさん!」
 ボクはなんとか、ゼーレシオンの体勢を立て直そうとする。
けれども目に見えない何かが、それを阻止した。

「な、どうした、ゼーレシオン!? どうして、言うコトを聞かない?」
 ボクは原因を、突き止めようとする。

「この感じ……何かに引き寄せられている!?」
 ゼーレシオンの頭部が、飛ばされている方向を向いた。

「や、やはり、ネメシスだ。目に見えない、ブラックホールに吸い寄せられている!」

 木星クラスの大質量を持つ、サッカーボールくらいの大きさのブラックホール、ネメシス。
ゼーレシオンは、その巨大過ぎる重力に捉まってしまっていた。

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