ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第73話

経過した4日間

「吾輩が提案した墓暴(あば)きは、翌日決行……とは行かず、関係各所への許可を得るまでに、4日ホドの時を費(つい)やしてしまった」
 頭に乗せた小さなシルクハットに手をやり、残念がるマドル。

「1つは、警察上層部に警部が掛け合うのに時間を要したのが原因で、それは吾輩も想定していた。もう1つはハリカさんの祖母であるタミカさんが、頑(かたく)なに反対したからで、こちらはいささか予想外だった」

「どうしてタミカさんは、反対したのかな?」
「そりゃ寺の管理者の1族なワケだし、反対するのも普通じゃね?」
「年を取ってんだし、それに病気がちなんだろ。頑迷にもなるってモンさ」

 観客たちの、様々な憶測が飛び交うドーム会場。
マドルは、尚も話を続けた。

「火事の翌日に警部が許可を申請し、そこから4日経っての決行だったから、寺が焼け落ちてから5日が経っていた。その間、ハリカさんは何事も無く館に滞在し続ける。事件の資料をまとめたりと、吾輩たちの協力をしてくれたのだよ」

 舞台に立つ、嗅俱螺 墓鈴架(かぐら ハリカ)に視線をやるマドル。

「はい。わたしも、2人の少女が犠牲となってしまったマスターデュラハン事件に、憤(いきどお)りを感じておりました。祖母の看病を母に押し付ける格好になってしまって心苦しいのですが、少しでもお役に立ちたくて……」

「4日間に他に起こった出来事を羅列すると、まず2日目に、会社の所用で館を離れていた、伊鵞 豊(いが ゆたか)さんが館に帰って来た。警部の部下からの報告では、特段おかしな動きはしていなかったそうだよ」

「豊って確か、伊鵞 重蔵の長女の昴瑠(すばる)さんの、旦那だろ?」
「気が弱くて、婿養子って立場なんだよね」
「豊さんかあ。ぜんぜん、マスターデュラハンっぽくは無いよね」

 好き勝手を言う、観客たち。
豊さんが架空の人物で無ければ、憤慨(ふんがい)していたコトだろう。

「3日目には、伊鵞 武瑠(たける)氏の、上海(シャンハイ)のホテルでの自殺の調査報告と、検死報告が警部の元へと上がって来た」
 胸ポケットから、手帳を取り出すマドル。

「報告によると、武瑠氏は事件前日に上海の取引先に赴(おもむ)き、借金の返済期限を延長してくれるよう頼んだそうだ。だが断られ、その日の夜に屋台の集まる酒場で、泥酔(でいすい)していた姿が確認される。いわゆる、ヤケ酒ってヤツだろうね」

「そう言うオッサン、居るよね。ヤダヤダ」
「まあ、自分の会社が潰れるのが確定なんだ。解らんでも無いな」
 観客たちの意見も、非難と同情に分れた。

「屋台で寝入ってしまった武瑠氏は、深夜にタクシーでホテルに送り届けられ、ホテルの従業員(スタッフ)たちによって予約してあった部屋へと運ばれた。スタッフは、合鍵を部屋のベッド横に置き、外からロックを掛けたそうだよ」

 手帳を閉じ、目を伏せるマドル。

「翌日、夕刻が過ぎても部屋から出て来ない武瑠氏を、心配したスタッフが部屋を確認したところ、登山用のロープで首を吊っている武瑠氏が発見された。この時、部屋の鍵は開いていたそうだ」

「オイ。部屋の鍵が開いていたって、どう言うコトだよ!?」
「やっぱ、武瑠氏は誰かに殺されたんじゃね?」
「でも、合鍵を置いてたんでしょ。自分で開けた可能性も、考えられるわ」

 このタイミングで、久慈樹社長がボクに目配せをして来た。

「はいはい。ボクとしては、登山用のロープが気になりますね。ビジネスマンである武瑠氏が、首吊りに使うには相応しくないアイテムだ。むしろ……」

「弟である、伊鵞 絮瑠(わたる)が持つべきだと?」
「そう思います。彼はアウトドア派で、山登りの最中に亡くなったのですから」
「だが彼らは兄弟だ。弟から、譲られたのかも知れんぞ」

「確かにその可能性も、無いとは言い切れません」
 ボクも他の観客たちと同様、事件の犯人の目星がつかないでいた。

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