ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第35話

遺言状の謎

「彼女の……ハリカさんの直接の死因は、断定できたのかい?」
 心を許せた同年代の少女の、死んだ理由を聞くマドル。

「絞殺だ。発見された首と身体の両方に、ロープの跡があった。だが彼女の手からは、ロープに関する付着物は発見されなかったぜ」

「つまり彼女は、意識の無いまま首を絞められ、殺されたのか……」
「恐らくな。昏睡状態で発見された女の捜査員と女中の体内から、大量の睡眠薬が検出されている。部屋にあったティーセットの紅茶からも、同じ成分が検出されていてな。それに……」

「ハリカさんの胃袋からも、同様の成分が出たのか。でも、女捜査官と女中の2人は生きている?」
「ああ。マスターデュラハンは、重蔵氏の遺産を相続する権利を持ったハリカさんだけを、ターゲットにしたと見て間違いないぜ」

「吾輩を殺さなかったのも、重蔵氏の縁者では無かったから……なのか?」
 思考を巡らす、マドル。

「オメーの寝ている間にも、オレは館に入っていた捜査官を叩き起こして、マスターデュラハンを追ったんだ。ハリカさんの部屋は、館の2階の東側の部屋で、窓が1つ開けっ放しになっていてな。そこから、ヤツが逃げた可能性が高い」

「確か彼女の部屋の前には、大きな木があったね」
「ああ。窓からはそれなりに離れちゃいるが、マスターデュラハンが大柄な男であれば、跳び移って逃げるコトも可能だろうよ」

「でも、窓を開けっぱなしにして逃げたと考えるのも、早計かも知れないよ。重蔵氏の血を引く者の誰かが、外部の者による犯行を偽装して、まだこの館に留まっている可能性もある」

「オレも、そう思ってな。念のため容疑者全員の部屋を、改めさせて貰ったのさ。真夜中に叩き起こされたとあって、不満を漏らす者も居たが、特段怪しい様子は無かったぜ」

「そうか。ところで、ハリカさんの亡くなった今、重蔵氏の遺産は誰が受け継ぐコトになっている?」
「さあな。竹崎弁護士のスタッフに、確認中だ」
 警部の野太い声が、無責任に言った。

「実は警部。もう1つ気になっているコトがあってね。重蔵氏の、遺産についてさ」
「そう言や、前にも言ってやがったな。重蔵氏は遺産を、どうしたかったのかってヤツだろ?」

「ああ。重蔵氏は、遺産を誰に受け継がせたかったのか。もしくは、誰にも受け継がせる気は無かった」

「そりゃあ、無ェだろ。重蔵氏は、2通も遺言状を遺しているんだぜ」
「報告しただろ。吾輩とハリカさんが訪れた、竹崎弁護士の教え子の弁護士が言っていたんだ」
「ああ。なんつってたんだっけ?」

「竹崎弁護士は生前、重蔵氏の遺言状は偽物かも知れないと疑っていた……と」
「オオ、そうだった、そうだった。だが、竹崎弁護士にしたって、核心を持てた話じゃ無ェんだろ?」

「まあね。だから吾輩も、そこまで重要視はして居なかった。でももし2つの遺言状が偽物であった場合、遺言状は誰かにすり替えられた可能性すらある」

「マドル、オメー考え過ぎだろ。遺言状は、弁護士立ち合いの元に承認され、弁護士協会によって保管されてたんだ。すり替えられる余地があったとは、考えられ……」

「弁護士が承認する前の段階であれば、可能性はあるさ」
「そりゃあ、代筆の段階ってコトか?」

「ああ。晩年の重蔵氏は、病によって身体も衰え、身の回りの世話はトアカさんがやっていた。遺言状の代筆も、彼女の手で行われている」

「最初に殺された、伊鵞 兎愛香(いが トアカ)が、遺言状を改ざんしたってのか。だが彼女が死んでからも、マスターデュラハンによる犯行は続いてる。それに自分が死んだら、渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)が遺産を受け継ぐって2通目の遺言状は、必要無いだろ?」

「そこなんだよ。2通目の遺言状は、どういった経緯(いきさつ)で発見されたのか……そこを、確かめなくちゃならない」
 探偵として名を馳せた、マドルが言った。

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