ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第13章・88話

嵐のあと

 大魔王ダグ・ア・ウォンは、去った。
彼の率いた3体の魔王は倒され、地上の闘技場に平穏が訪れる。

「フウ。ルスピナがコイツを呼んでくれたお陰で、助かったぜ。アリガトよ」
 ティンギスは、ルスピナの頭を軽く撫でた後、高位の水の精霊であるメガラ・スキュレーが造ったシェルターから顔を出した。

「それにしても、こっ酷くやられたなァ」
「あんなに立派だった闘技場が、ここまで損壊するとは」
 レプティスとタプソスも、続いて外に出る。

 闘技場の観客席が、大魔王の巻き起こした竜巻や、雲の龍(クラウドドラゴン)によって大規模に破壊され、グランドにはまだ大量の水が溜まったままになっていた。

「また大勢の人が、死んじゃったね」
「うん。わたし達にもっと力があれば、救えたのかな?」
 ウティカとルスピナは、闘技場のあちこちに散乱した動かなくなった人々を見て、身体を寄せ合う。

「お前たちは、良くやってくれたさ。人間ってなァ、神サマじゃ無ェからよ。どんなに力を持ったところで、全ての人間を救うコトなんて出来やしねェんだ」
 ティンギスが、言った。

「そうだ。わたし達は、ウティカ姉さまとルスピナ姉さまに救われたのだ」
「本当に、感謝している」
 イオ・シルら12人の少女たちが、ウティカとルスピナの元へと群がる。

「な、なんだか、照れるよ」
「でも、みんなが無事で良かった」
 イオ・シルたちを抱き寄せる、ウティカとルスピナ。

「ま、黒髪の嬢ちゃんと、青髪のボウズも無事みてェだし、取りあえずはなんとかなったか?」
 両脇に並ぶ、2人の船長に問いかけるティンギス。

「イヤ、まだ地下闘技場の結果が、どうなったか判らねェ」
「最悪の場合、ミノ・ダウルス大将軍が倒されてしまっているかも知れぬ」
 レプティスとタプソスが、答えた。

「ふざけるな。ミノ・ダウルス大将軍が倒されるなど、あり得ぬわ!」
 3人の船長の背後から、罵声(ばせい)が飛んだ。

「オワッ、ビックリしたァ!?」
「ア、アンタ、ミノ・テロぺ将軍だろ?」
「ミノ・ダウルス大将軍とは、それホド強いのか?」

「フッ。異国の者とて、ウワサくらいは聞いたコトがあるでしょう」
 ヒスイ色の長髪を掻き上げる、ミノ・テロぺ将軍。

「ラビ・リンス帝国が、戦争によって周辺諸国の領土を奪い急激に拡大できたのも、一重に大将軍あってのコトなのですよ。大将軍にお仕えする雷光の3将は、代々人が代わっているのですがね。大将軍だけは、ずっとミノ・リス王のために、戦い続けているのです」

「ア、アレ。この将軍サマ、急に口調が替わって、穏(おだ)やかになったな?」
「それより、もしそれが本当だとしたら、ミノ・ダウルス大将軍は何歳なんだ?」
「ウム。優に100歳は越えているような、口ぶりだが……」

「もちろんです。何故なら、大将軍は……」
「その辺にして置くのだな、ミノ・テロぺ」
 何処からか、ミノ・テロぺ将軍の言葉を遮(さえぎ)る声がした。

「ア、アンタは……」
 丁度、ティンギスの目の前に鏡が出現し、中からパルシィ・パエトリア王妃を抱えたミノ・テリオス将軍が現れる。

「申し訳ありません、ミノ・テリオス将軍。わたくしとしたコトが、軽口が過ぎましたね。ところで、地下闘技場の鏡は、復活出来ないのですか?」

「あの迷宮は、特別だからな。地上であれば、わたしのジェイ・ナーズで何とかなるのだが……」
 首を振る、ミノ・テリオス将軍。

「今は、わたくし達の出来るコトを致しましょう。まずは、傷付いた民たちの救護に当たらねばなりません。ミノ・テリオス将軍、引き続き護衛をお願いできますか?」
 金色に輝く美しい髪の、王妃が言った。

「ハッ。一命に変えても、お護り致しましょう」

「そこの2人の、小さな魔法使いたち。貴女方も、ご助力願えませんか?」
「え、わたし達のコトですか?」
「そ、そうですね。まだ、初歩的な回復魔法しか教わっておりませんが、やってみます」

 パルシィ・パエトリア王妃に助力を請(こ)われ、最初は慌てるウティカとルスピナだったが、意を決し求めに応じる。

「では姉さまたちの護衛は、我々がしよう」
「姉さまたちには、指1本触れさせん!」
 イオ・シルたち12人の少女は、2手に別れて2人を護衛した。

 前へ   目次   次へ