ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第72話

墓暴(あば)き

「ハリカさんが、この館に来るってのは本当かい?」
 舞台のマドルが、誰かに質問した。

「本当だ。本人の意向でな。母親の藤美さんや、祖母のタミカさんも必死に止めたそうなんだが、ハリカさんは正義感の強い娘らしくてな。竹崎弁護士が亡くなったのを、気にしているそうだ……」
 参ったと言った感じの、警部の声が答える。

「この館では、すでに2人の少女が無残にも殺されていると言うのに、なんともモノ好きなコトだね」

「まったくだ。これで警備の人数を、増やさねばならん。事件解決の、目処すら立っておらんと言うのに、若い娘の好奇心旺盛(おうせい)にも困ったモノだ」

「吾輩も一応は、若い娘なのだがね」
「そうだったか? お前の場合、妙に達観しているからな。忘れていたぜ」
「失敬な。それにしても、ずいぶんとお疲れの様じゃないか?」

「アレから、何の成果も出せてないからな。上にはドヤされるわ、下からは無能扱いされるわで、散々な状態よ。お前にも期待していたんだが、そろそろ手がかりくれェは掴めないか?」

「もちろん、掴めかけてはいるよ。でも、それには警察の権力が必要なんだ」
「ああ、寺でもそんなコト言って……オメー1体、国家権力を何に使う気だ!?」

「焼け堕ちた嗅俱螺(ハリカ)家の寺にある、墓を暴いて欲しいのだよ」
 眉1つ動かさず、平然と言って退けるマドル。

「墓を暴くだとォ! そんな罰当たりなコト、出来るワケ……」
「だったら、事件は迷宮入りだよ。構わないのかい?」

「そりゃあ、クビがかかってんだからよ。だが、なんで墓を暴く必要がある。どんな手がかりが、見つかるってんだッ!?」

「ご名答だよ、警部。まさしく首が、埋まっているのさ」
 猫のように吊り上がった目を会場に向け、妖しく微笑むマドル。

「く、首だとォ!?」
「モチロン、警部のしがない首じゃない。哀れにも殺された、2人の少女の首だよ」
「か、確証は、あるのか?」

「そんなモノは、無いさ。だけど、木を隠すには林に、人を隠すには雑踏(ざっとう=人ゴミ)にと言うじゃないか。だったら、死体を隠すには……?」

「……死体が大量に埋まっている墓地の、墓の中ってワケか!?」
 ようやく警部も、マドルの真意を理解した。

「聞くところによると、トアカさんもサキカさんも、首が見つかっていないコトから、簡易的な葬儀しかされていないそうじゃないか」

「ま、まあな」
「2人を弔うためにも、何とか許可を得て欲しいモノだよ」
「簡単に言うが、墓を暴くなんて大事だぞ。第1、菩提寺である嗅俱螺家が許すワケ……」

「お許し致します」
 警部の声を遮るように会場に響く、1人の少女の声。

「ハリカさん。お越し下さったのですね?」
「はい。たった今、到着致しました」
 舞台上のマドルとハリカが、互いに向き合う。

「今のお話、申し訳ないのですが、ドア向こうでも聞こえてしまいました。2人の少女を弔うためなら、檀家(だんか)の方々も納得して下さると思います」

「ありがとう、ハリカさん。もちろん、当てずっぽうで墓を暴くコトは致しません。地面の土が、緩んでいる場所を見つけて掘り返すつもりです」
「そ、そうなのか、マドル?」

「しっかりしてくれ、警部。犯人が2人の少女の首を埋めたとすれば、あの土砂降りの雨に日である可能性が高い。雨音が全ての作業音を消してくれるし、バッタリ人に出くわす可能性も低いからね」

「長年、踏み固められた土では無く、緩んだ土の場所を探すんだな。ン、雨の中での作業……?」
「雨の中でも、レインコートでも着ていれば、作業は可能だ。例えば、黒いレインコートとかね」

「だ、だとすると、メイド長やハリカさんの見た黒いレインコートを着た人物が、やはりマスターデュラハンだったのかッ!?」

「少なくとも、2人の首を埋めたのは確かだろう」
 マドルは、含みのある言い回しをした。

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