2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧
コンビニ面接 この道、昨日は通らなかった道だ……。 路線バスは、七人の女子高生たちが乗ってきた、ターミナル駅の停留所には立ち寄らず、街中の商店街へと向かった。 「オイ、お前もたいがいだな」 後ろの席から、機嫌の悪そうな声が聞こえる。 「これからオ…
ロボットの進化 宇宙ゴミ(スペースデブリ)と化した、『漆黒の海の魔女』の残骸を抜け、航行を続けるMVSクロノ・カイロス。 「宇宙開拓時代を代表する、二大軍事企業の戦艦の群れが……」「一糸乱れぬ陣形で、この艦に追従してる」「ある意味、壮観な眺め…
ガラス戸 「その節はどうも」 渡辺は、奥から出てきた店主に向かって、軽く頭を下げる。 「あの……こちらに絹絵ちゃんが居るって聞いて、伺ったんですが」 「うん、まあ、居るには居るんだがね」 細身だが、落ち着いた雰囲気の店主は、無精ヒゲの生えた顎を撫…
フードの少女 「良かったな、解放されて」 ボクは真夜中の警察署を出所する、教え子に言った。 「まったく、お節介な先生だぜ。どうすんだよ、もう電車は無いぜ」 美乃栖 多梨愛は、頭の後ろで腕を組みながら振り返る。 「タクシーでも拾って帰るよ。それよ…
ムオール渓谷の村 「オイ、舞人。どの家も、もぬけの殻だぜ」 赤毛の少女が、ぼやいた。 「ホントですね、シャロリュークさん。人っ子一人いませんよ」 蒼髪の少年も、静寂に包まれた村の家々を覗き込む。遊撃騎士団・隊長に任じられた彼は、初の任務で責任…
見解の相違 うわわ。何で鳴弦さん、涙声なのォ!? 「遠光。確かにアンタには、才能があるよ……」 鳴弦さんは、背後にボクがいるコトなど忘れてる気がする。「アタシよりハサミも器用に使いこなすし、サッカーだって上手じゃないか……」 「あ、それがどうした…
巨大ホタテ貝 宇宙に浮かんだ巨大なホタテ貝は、真珠色の輝きを放っている。 「対比物がこの艦くらいしか無いから、大きさがピンと来ないケド……」「貝の大きさが、100メートルくらいある」「も、もしかして、あのホタテ貝の正体って!?」 真央、ヴァルナ…
上映会の記憶 大茶会の日から、数日が経っていた。 渡辺は、名古屋を走る私鉄の、赤い色をした電車に乗っている。彼の目の前で、つり革に手を突っ込んだサラリーマン風の男が数人、情報交換をしていた。 「一時期、醍醐寺グループは、千乃コンサルタントの親…
深まる謎 「フム、ほうほう……それで? なる程なのじゃ」 一同が声の方を見ると、ルーシェリアが新たに生まれた八つ子と、ヒソヒソ話をしていた。 「ん。もしかして、なにか聞き出せたのか?」「そうじゃな。サタナトスについて、多少は解かったのじゃ」 漆黒…
面会 取り調べを終えた警察官と入れ違いに、ボクは黒く汚れたコンクリートの小さな部屋へと入る。 「どうだ、少しは反省したか」 タリアは、小さな机の向こうで脚を組んで座っていた。 「そんな風に、見えるかい。先生?」 タリアは、かなり大柄で背が高く、…
姉と弟 「アンタ、見たトコ高校生だろ?」 赤い軽自動車は、美容院裏手の駐車場に停まる。鳴弦さんは、ボクの制服を見て判断したようだ。 「……」 コクリと頷く。 「悪いねえ。無理言って、付いて来てもらって」 シートベルトを外し、車を降りると空はスミレ…
新たな八つ子 「……な、何するんですかぁ、シャロリュークさん!?」 八つ裂きにされ、八つの破片となって地面に散らばった、魔王を見て叫んだ。 「シャロ、あんたってヤツは!」「マズイのォ。これは、大変なコトに成りそうじゃ」 ルーシェリアの予測通り、…
巨大なイルカ 「ボクが突入を命じたばかりに、アイツらの命が……」 敵艦内部の奥深くに進入した、ウィッチレイダーたち。悩んでいる間にも、敵艦の誘爆は進んでしまっている。 「ベル、取り残されている娘たちは、何人だ……?」『合計で九人……他は既に、脱出に…
魔王の常識 「魔王の時の記憶が残っているのが、重要なコトなのか?」 赤い髪の少女が、グラーク・ユハネスバーグに質問する。 「重要な事だ、シャロリュークよ。今回の事件の首謀者である、サタナトスの正体を知る鍵となるかも知れないのだ」 「それは、ど…
美容院 六人掛けの席が二つ横並びにあり、七人の女子高生に挟まれたボクは小さく座る。テーブルには、メニューに書かれた様々な料理や、飲み物が置かれていた。 「か~、お前ら容赦なく注文してんな~」 鳴弦さんは、ボクの前の席にドカッと座る。 「だって…
事情聴取 パトカーの後部座席で見つめる外の景色が、急に滲み始める。 「……どうやら、涙というワケじゃないらしい」 目元に手を当てたが、湿ってはいなかった。 「先生と言っても、今時はサラリーマンみたいなモノでしょう」 若い警官が、ボクが濡れないよう…
先パイと後輩 次の日、授業を終えたオレは、いつもの様に茶道部の部室に入る。 「あ、先パイ。フウカちゃんとホノカちゃんも、もう来てたんだ」 室内では既に、千乃 美夜美と双子が抹茶と和菓子を愉しんでいた。 「二人のお茶碗、フーミンが買ってあげたんだ…
魔族と人の国 「しかし少年よ。キミの剣は本当に『魔王を少女の姿』に出来るのか?」 グラーク・ユハネスバーグが、舞人に問う。 「はい。ボクと言うよりは、このジェネティキャリパーの能力なんです」「ここに、大量の『生き証人たち』がおるしのォ?」 「…
警察官 「……なんだ、お前らか」 高架下の小さな通路から現れたのは、パーカーを着た少女だった。 「タリア、ここで一体何を!?」「別に……コイツらを、ぶっ飛ばしていただけだ」 暗闇に近い通路から、うめき声が聞こえる。警報機の赤い光が、ほんの一瞬だけ…
命の決断 『内部に侵入したウィッチレイダーたちの戦闘によって、敵艦に多大なダメージを与えられた模様です』 フォログラムのベルダンディが、ボクに報告した。 「ウィッチレイダー……『魔女の侵略者』とは、よく言ったモノだな」 その小さな魔女たちは、ボ…
揃わないパズルのピース 「ヒィ、昨日は疲れたぜ。オレも久しぶりに、本気出して喋ったかんな」 取り壊しの決まったオワコン棟・茶道部の畳の間で、最後の安ら義の時間を愉しむ生徒会長。 「フウもォ~。くたびれたぁ」「ホノだってェ~。クタクタだよォ」 …
魔王パーティー 「シャロリューク様、申し訳ありません。ですが、今のヤホーネスには英雄が必要なのです」 レーマリア皇女殿下が、赤毛の少女に深々と頭を下げる。 「気にすんな、気にすんな。オレも、異存はね~よ」「みんなの裸を覗いたクセに、偉そうなの…
紅華 鳴弦 ボクは終点から二十分くらい歩いて、一つ先の停留所まで戻る。 紅華さんの知り合いの女子高生たちが、降りていったところだ。終点の車庫も兼ねた停留所と比べると、遥かに賑わっているなあ。 ターミナルかあ。地下鉄で帰った方が安いかも。料金く…
自殺 「ずいぶんと、古そうなアパートだな。ここがタリアの家らしいが……」 細い通りから、更に奥まった場所にアパートはある。街路灯は薄暗く、道には雑草が生え、アスファルトがひび割れていた。 「まるで、廃墟ね。コンクリートのブロック塀も、崩れ落ちそ…
娘たちの闘い MVSクロノ・カイロスと同等サイズの、巨大な艦が変形した『漆黒の海の魔女』は、驚異的なスピードで突進してくる。 「わああ、パパ!」「おっきなのが追ってきたよォ!」「あんなの反則じゃん!」「ど、どうしよう」 娘たちの不安な意識が次…
茜雲 大茶会は、満場の人々の歓声や拍手と共に幕を閉じた。 笑顔の客人たちが、次々と会場を後にする。千乃 玉忌の姿も、いつの間にか消えていた。 「……オレは、全てを失った」 そんな中、一人席を立つ事さえ出来ないでいる男。「親父が築き上げた会社も、醍…
女ってのは 「えっと、なになに?」「デッドエンド・ボーイズ・サッカークラブの……」「御剣 一馬……くん?」 女子高生たちは、名詞に描かれた情報を可愛らしい声で読み上げる。 「かっこいい名前だね」「でも、サッカークラブってコトはさ」「このコ、トミン…
狭い空 「ユミア……どうしてここに?」 ボクは突然現れた、栗色の髪の少女に問いかける。 「どうしてじゃないわよ。どうせ先生のコトだから、何の情報もなく美乃棲 多梨愛を探しに出ようとしてたんでしょ?」 まさにその通りだった。でもボクは、彼女が自然に…
新たな英雄 「だからさぁ、カーデリア。ほんの悪戯心じゃねえか?」 「アンタって奴は……ホントにもう、飽きれてモノが言えないわよッ!」 ニャ・ヤーゴの城の会議室で、パッションピンクのクルクル髪の少女が、小柄な赤毛の少女に向って怒りを撒き散らしてい…
トミン 「お前、御剣 一馬ってのか?」 もう一度、名刺を確認しボクを見る、紅華 遠光。 『コクコク!』 その通りだと、必死に顔をタテに振って訴える。 「ふ~ん、デッドエンド・ボーイズ……サッカークラブねえ」 名刺には、ボクの名前と顔写真のほかに、当…