ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第一章・EP010

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トミン

「お前、御剣 一馬ってのか?」
 もう一度、名刺を確認しボクを見る、紅華 遠光。

『コクコク!』
 その通りだと、必死に顔をタテに振って訴える。

「ふ~ん、デッドエンド・ボーイズ……サッカークラブねえ」
 名刺には、ボクの名前と顔写真のほかに、当然ながらクラブ名も掲載されていた。

 よ、よし、いいぞ。ボクにしては、もの凄く順調だ。

「あ~、悪ィけどオレ、サッカー辞めたんだわ。他を当たってくれ」
 紅華遠光は、顔にかかったピンク色の髪をかき上げると、ちょうどバス停の前に止まったバスに、スタスタと乗り込んだ。

 うわあ、マズい、マズい、マズい、マズい!
……せっかくここまで、完璧にコトが運んでたのにィ。

 バスの真ん中の扉が閉まる瞬間、テロップに飛び乗った。
咄嗟の判断だったけど、よかったのか!?

 バスは走り出す。
ボクは、ひんやりとしたポールを握り締めながら、辺りの様子を伺った。

 あ、紅華さん、一番後ろの席でドカッと座ってる。

何故だか髪を染めてる人って、後ろの席に座りたがるよね。
 ボクは、ピンク色に染められた髪の高校生の隣に、そっと座った。

「オイ。なんでテメー、隣に座ってんだ。周り全然空いてんだろ?」
 紅華さんに言われて、最後尾から前を見渡すと、バスの中には他に二人の客がいるのみだった。

「こっちの方向は、次の女子高前までは客なんて乗ってねーんだ。オラ、前行け、前。どうせお前、まだ懲りずに付いて来ただけだろ?」

 その通りなので、仕方なく一つ前の席に移動しようとしてると、バスが止まってドアが開いた。

「まったく……お前がチンタラしてっから、やかましいヤツらが乗ってきやがった」
 紅華さんの細い眉毛が、メンドクサそうに山なりになる。

「ねえ、今から和風スイーツ食べに行かない?」
「な、なんでいきなり和風が出て来るワケ?」
「定番のタピオカでいいじゃん……あ?」

 キャアキャアと黄色い声を響かせながら、乗って来た集団の一人が何かに気付いた。

「アレ、トミンいるじゃん」
「あ、ホントだ。トミンだ」
「久しぶりィ。どうしてたのよ?」

 紺色のブレザーに、赤いチェックのミニスカートの女子高生たちは、紅華 遠光の座る後部座席の周りに群がって来た。

 ん、トミン? トミンって誰だ?

 その後、しばらく女子高生たちの様子をうかがっていると、紅華さんのコトをトミンと呼んでいるらしい。

 なんで、紅華さんがトミン?
何かヒントは無いかと、倉崎さんから渡されたノートを開くと、いきなり答えが書いてあった。

 そっか。紅華さん、名前が遠光(とおみつ)だから、トミンなんだ。

 自分で謎が解けて満足していると、次の疑問が頭に浮かぶ。
アレ、でも紅華さんも、ボクと同じ一年だよね。
もうこんなにたくさんの、知り合いが出来たワケ?

「ねえねえ、トミンってやっぱ高校じゃ、サッカー部入ったんでしょ?」
「トミンのドリブル、キレッキレだもん」
「サッカー知らない、ウチらでも解かるしィ」

「なにを偉そうに……ってか、サッカー部なんか入ってねえよ」
「ええッ、マジでェ。じゃあ、なに部に入ったの?」

「帰宅部だ、帰宅部。サッカーなんざ、かったるくてやってられっか」
「ウソォ」「マジもったいなぁい!」
「中学んときみたく、いきなり問題起こしたとかじゃなくて?」

 紅華さんの周りに屯した女子高生たちは、勝手に色んな情報を喋ってくれた。

「ところでトミン、隣に座ってるカッコいいコ、知り合い?」
「さっきから微動だにせず、クールな顔のまま座ってるよね」
「うん、わたしも気になってた。マジ、イケメンじゃん」

「チゲーよ。オレに付きまとってるだけの、おかしな野郎だ」
「な、なんでトミン、イケメンさんに付きまとわれてるワケ!?」

「めんどくせーな。オラ、ここに書いてある通りだぜ」
 紅華さんはボクが渡した名詞を、そのまま女子高生たちに渡してしまった。

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