ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

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キング・オブ・サッカー・第三章・EP011

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背・アブラーズ

「見ろよ、相手のチーム名。『背・アブラーズ』だってよ」

 センターサークルに立つ、蒼いユニホームを着た11番の選手が言った。

「自虐ネタってヤツか。コートに立っているおっさん全員が、見事なビール腹だしな」
 同じユニホームの7番の選手が、それに応じる。

「そんな腹で、ホントに走れるのかよ?」
「どうせ直ぐに息切れして、へばっちまうのがオチだぜ」

「お、若いのは威勢がいいねえ」
「わたし達は確かにスピードは無いが、その替わり長年の経験があるからねえ」
「キミたちも簡単に勝てると思ったら、大間違いだよ」

 オジサンたち、けっこう自信あるみたい。
ボク、フットサルもキーパーも、やったコト無いから自信無いよ。
一人だけ、練習用のビブス着てるし。

「大人になると、口だけは達者になるって言うぜ、クロ」
「そうだな。オレたちでさっさと試合、終わらしちまおうぜ、トミン」
 それから直ぐに、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。

「フットサルのキックオフは、ボールを前に蹴り出さないと始まらないぞ」
「わーってるって、ホレ」
 黒浪さんの足元から、紅華さんにボールが渡る。

「どうせ試合に負けた後、背油の浮いたラーメン喰って、ビールでも煽るんだろ」
「よく解っているじゃないか、キミィ」
 足裏でボールを操る紅華さんの前に、大きな腹のオジサンが立ちはだかる。

「でも、一つだけ間違っているよ」
「あ……なにが、あッ!?」
 後ろから、別のオジサンの脚が伸びてボールに触り、前にいたオジサンの足元へと転がる。

「試合に勝って、仕事仲間と共に勝利のビールを味わうのが、休日の愉しみだ」
 オジサンが、ドリブルを開始する。

「なにやってんだ、トミン!」
「うっせえ、直ぐに奪い返して……」
 けれどもオジサンは、華麗なエラシコを決める。

「こ、このデブ、上手い!?」
「デスクワークなんだから、仕方ないだろ」
「キミたちには解らんだろうが、仕事はストレスが溜まるモノでね」

「仕事で溜めた鬱憤を、ビールで胃の中に流し込む……そうやって、大人は生きているんだ」
「オ、オレ、大人になるの、不安になって来た」
「クロ、そっちにボール行ったぞ」

「あ、しまった……」
 黒浪さんが、あっさりとオジサンに抜かれる。
元々ディフェンスが得意じゃない二人とは言え、スゴいテクニックだ。

「二人とも、油断し過ぎだ」
「雪峰司令。自分が仕掛けるので、フォローを任せる」
「了解だ、杜都」

 デッドエンド・ボーイズの誇る二人のボランチが、ボールにアプローチを試みる。

「弾着、今!」
 いつも通りの意味不明な掛け声と共に、杜都さんのスライディングタックルが炸裂した。

「おおっと、これはキレイなスライディングタックルだ」
「なにィ!?」

 オジサンは、あっさりとボールを明け渡す。
ルーズボールは、別のオジサンの足元へと転がった。

 杜都さんは、コンタクトプレイを想定していたんだ。
だからボールが、大きく弾かれて……。

「一馬、サイドから上げて来るぞ」
「え!?」
 雪峰さんの言葉通り、ボールを持ったオジサンから中央にパスが入る。

「うおお」
 中央にいたオジサンが、ダイレクトで合わせた。

「うわあ!」
 シュ、シュート……止めなくちゃ。
ボールは何とか、ボクのキャッチンググローブに当たる。

 やった、なんとか止められ……アレ?
弾いたボールに別のオジサンが反応し、ボールをゴールの右隅へと流し込んだ。

 失点しちゃった。
フットサルって、サッカーに比べてメチャクチャ展開が早い。

「マズったぜ、でも直ぐに取り返して……あ!?」
 センターサークルで、試合再開をしようとしていた紅華さんが、ボールを奪われる。

「お前のテクニックも大したコトねーな、トミン」
「ク、クロ、テメー!」
 黒浪さん、味方のボールを奪ったァ!?

「今度は、オレがスピードでぶっちぎってやるぜ」
 高速ドリブルが、さらに加速する。

「見な、これが黒狼の……おわァツ!?」
 黒狼は、小さなボールに乗ってスッ転んだ。

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