2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧
影の首謀者 「シャワー室を出たハリカさんは、自室に戻って睡眠薬入りの紅茶を自身も飲んだ。モチロン犯行を、マスター・デュラハン……レインコートの男の仕業に見せる為の工作さ」 「なる程な。そうなりゃ、警備の2人と自分を合わせた3人の体内から、睡眠…
仏教高校 向かいにあるライブハウスを見張ろうと入ったハンバーガーショップで、ボクはスカウトターゲットだった題醐 鷹春(だいご たかはる)さんと遭遇する。 「ダーリン、あの人こっちに来るよ!」 隣の椅子に座った、沙鳴ちゃんが言った。 「ア~、そこ…
紫色の抱擁(ほうよう) 「宇宙斗艦長、後ろ来てるぜ」 プリズナーの叫び声が、ゼーレシオンの触角を通してボクの脳裏へと伝わって来た。 「わかっているさ」 全てを斬り裂く剣(フラガラッハ)が、背後の敵を両断する。 宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアは、…
時間と空間の牢獄 斬り取られたいくつもの空間が、断続的に連なった異次元の塔。その頂点へと続く赤い糸を追って、サタナトスたちは次元を移動していた。 「かなり、上まで昇って来たな。オレのハートブレイカーの糸も、あと少しだぜ」 ティ・ゼーウスの手に…
シャワー室の真実 舞台に、車の頼りないエンジン音が鳴り響く。 「お前よォ。寄りによって、そんな高いドレス買いやがって。オレの1ヶ月分の給料、余裕で越えてるぞ!」 警部の太い声が、愚痴を言った。 「お陰で、誰も吾輩と気付かなかったじゃないか。館…
ハンバーガーショップと自動レジ ボクと沙鳴ちゃんは、ライブハウスの前に立っていた。 「ロックハウス、ギルバード?」 ポニーテールの少女が見上げる店の全面に、お洒落な書体(フォント)で店名が刻まれている。 「1階は、バンドのTシャツとかグッズ売…
1000年前の言葉 ボクは、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダと、1夜を過ごした。昼夜の無い宇宙空間に置いて、1夜と表現して良いのかは判らないが……。 「お目覚めですね、宇宙斗」 クーリアが、ボクを呼び捨てに呼んだ。 「あ、ああ。クーリ…
ダエィ・ダルスの塔 「なんと言うコトだ。我が息子が、既に死んでしまっていたなどと……」 地下迷宮(ラビ・リンス)の終着地点にある部屋で、膝(ひざ)を落とし崩れ落ちる大建築家。 「お前の息子は、とくに王の寵愛を受けていた。故に、星砕き(アステリオ…
遺言状と封筒 「すまねェが、コイ……彼女は、事件の参考人でな。例の遺言状の、照会をしてェんだが」 警部の野太い声が、言った。 舞台には、美目麗しいドレス姿の少女が立っている。先ほどまでは男装の麗人だった、神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)と同一…
もう1冊のノート 「山の背学園って、ウチの隣にある学校ですよね。歩きだと、けっこう離れてるケド」 土手の上を突き抜ける道を、軽快に進む沙鳴ちゃん。中等部の夏服である、白のセーラー服に、紫色のスカートが可愛らしい。 「うん。でも、も、もう直ぐだ…
宇宙(そら)の王子様 ボクたちと宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアが、マーズの別動艦隊と接触し戦闘となってから、2日くらいの時間が経過していた。 「地球に居た頃は、1日の時間なんて当たり前に同じだと思ってたケド、宇宙に出てしまうと、何を1日の尺…
ミノ・ダウルスの真実 地下迷宮の行きつく先の、荘厳な間の玉座に座る、豪奢なローブを纏(まと)った白骨。 「これが、ミノ・リス王の成れの果てかよ。コイツのお陰で、どれだけ多くの血が流れたと思ってる!」 ティ・ゼーウスは、ハート・ブレイカーを実体…
舞台袖の推理 「オイ、マドル。一応、言って置くがよ。元来お前は、警察の人間じゃない」 車のハンドルを握っているであろう、警部の声が言った。 「言われるまでも無い。吾輩の本職は、探偵なのだからね」 舞台のマドルが、素っ気ない顔で答える。 「たたで…
妹みたいな女のコ 「いいか、一馬。デッドエンド・ボーイズ、最大の弱点はキーパーだ。海馬コーチには申し訳ないが、早急に改善しなきゃならないポイントでな。また、頼めるか?」 御剣 一馬は、夕暮れの公園で、倉崎 世叛に言われたコトを思い出していた。 …
シャワーの水滴 紫色に輝く長い髪を持った、女性的な外装をした漆黒のサブスタンサーが、同じ色の艦の格納庫へと着艦する。 『コリー・アンダーソン中佐、帰還されました』 艦内に、女性の声のアナウンスが流れた。 「まったく気に喰わないね、あのジイさん…
神の血を引く者 「ミノ・ダウルス……キミは、ボクの下僕(しもべ)かのかい?」 大将軍を剣の能力で大魔王に変化させた、サタナトスが問い質す。 「オレは、誰に下にも付かぬ。ただ1人、父を除いてはな」 大魔王と化していたミノ・ダウルスは、言って退けた…
交通事故の詳細 「オイ、マドル。館の娘夫婦の交通事故って……まさか!?」「ああ。伊鵞 光瑠(いが ひかる)さん夫妻の、事故のコトだろうね」 警部の問いかけに、答える少女探偵。 「なあ。その事故について、アンタ詳しいのか?」「どうでしょうか。自分も…
ある陰謀論者と料理人 黒髪で長身の男が、カフェの片隅でノートパソコンのキーを叩いていた。 「やはりか。日高グループの背後にも、かのドイツ系の名族が関わっていると見て、間違いないようだな。早急に、皆にも知らせねば……」 ノートパソコンには、文章作…
冷凍睡眠者とコピー 火星圏への帰路にて、マーズの別動艦隊の追撃を受けるボクたち。宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアの防衛のため、ゼーレシオンは敵のサブスタンサーと交戦していた。 「やるね、アンタ。見ないサブスタンサーだケド、オリジナルかい?」 ペ…
神と悪魔の申し子 サタナトス、ケイダン、ティ・ゼーウスの3人の少年の前に姿を現わした、牛頭の巨人。大将軍が纏(まと)っていた、五芒星のデザインされた黄金の鎧を身に着け、頭部には2本の角の生えた黄金の兜を被っていた。 「こりゃあ、本当にあのミ…
オンボロ車の事故 「言われて見りゃあ、カケル氏が親である重蔵氏に、隠し子の存在を明かす必要は無いよな?」 真新しいドーム会場に集った、観客の誰かが言った。 「男って、ホンット無責任よね。でも確かに、あえて言う必要は無いわね」「だ、だろ。オレだ…
ある若き板前の断言 大柄な若き板前が、華麗な包丁さばきで新鮮なイカを細切りにしていた。そこは静岡の海鮮市場にある食堂で、看板には野洲田(やすだ)食堂と書かれている。 「野洲田さんトコの倅(せがれ)さん、戻ってたのかい?」 日焼けした中年男が、…
コピーとオリジナル 宇宙戦闘空母クーヴァルヴァリアは、左舷後方に被弾をしながらも、マーズの別動艦隊から逃亡を図っていた。 「敵艦隊を、引き離しつつある。取り付いたアーキテクターを、各個撃破すれば終わりだ」 シルヴィアのアタ・ランティが、仲間の…
神の血と人間の血 「神の血を引く、大将軍か。だが神など、本当に存在するのか?」 ダエィ・ダルスの工房(アトリエ)で、ケイダンが工房の主に質問する。 「どうだなか。だがこの世界には、神の血(イー・コール)を引くとされる人間も、少なからず存在する…
遺言状の真贋(しんがん) 「2通目の遺言状の在り処は、重蔵氏の自室にある、古びた置時計の内側と書かれていた」 マドルが読み進める竹崎弁護士の日記が、当時の様子を呼び覚ます。 「わたしも立ち合い、警察の警部ら数人と置時計の内側を探った。置時計の…
ある汗ばんだ筋肉男の潜水 「1012、1013、1014、1015……」 部屋の中から、汗ばんだ筋肉男の声が聞こえる。 「先日の試合、2対14と言う屈辱的な大敗を喫(きっ)したでありますからな」 部屋には、ところ狭しと戦闘機や銃のポスターが貼ら…
女王を護る騎士(ナイト) 「帰って来たか、宇宙斗艦長。クーリアお嬢様とは、上手くヤレたのかよ?」 宇宙に出たボクに、下品な挨拶をするプリズナー。 「さあな。それより、宇宙船を収容してくれるそうだ」「マジかよ。だが敵の艦に、逃げ込むってのもな」…
不死の大将軍 「オイ、どこまで逃げるつもりだ」 瀕死のサタナトスを抱えながら迷宮回廊を走る、ティ・ゼーウスが問いかける。 「この先に、わたしの工房(アトリエ)がある。この迷宮を、建設していた当時のな……」 ダエィ・ダルスが、答えた。 「ココだ」「…
蝋燭印(シーリングスタンプ) 「吾輩は、竹崎弁護士が生前に、書き記していた日記を開いた」 弁護士事務所の机で、日記を開く仕草をするマドル。 「もちろん、捜査令状も取らないで行った、越権行為である。この時の吾輩は、ハリカさんを護れなかった罪悪感…
あるピンク色の髪の高校生の宣言 ピンク色の髪の高校生が、店の床に散らばった髪の毛を掃除している。 「遠光。お前だって疲れてるだろうに、アタシがやるからイイよ」 白い服に身を包んだ、中年の女性が言った。 店には年季の入った椅子が3脚並んでおり、…