ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第44話

影の首謀者

「シャワー室を出たハリカさんは、自室に戻って睡眠薬入りの紅茶を自身も飲んだ。モチロン犯行を、マスター・デュラハン……レインコートの男の仕業に見せる為の工作さ」

「なる程な。そうなりゃ、警備の2人と自分を合わせた3人の体内から、睡眠薬が検出される。もしハリカが生きてりゃ、ハリカ自身も睡眠薬で眠らされた被害者になるって寸法か」

 舞台に立つマドルは、相槌(あいずち)も打たず尚も推理を続けた。

「ハリカさんも、まさか自分が殺されるとは思って無かっただろう。だけど睡眠薬の効果で眠った彼女は、残忍な方法で殺されてしまった……」

「だったらマドル。ハリカを殺したのは、1体誰だ?」
 野太い警部の声が、より1層低くなる。

「残念ながら、現段階ではまだ判らないよ。少なくとも、ハリカさんと2人の護衛が眠ったコトを、事前に知っていた人物の可能性は高いね」

「要するに、実行犯のハリカにお前を襲わせた……影の首謀者……か」
「可能性はある。モチロン警部も、影の首謀者が誰か、おおよその見当は付いているんだろ?」

「バカにすんな。ハリカは、自分が遺産を受け取るのに邪魔な、お前を排除しようとした。彼女を影で操っていた、存在となれば……」

 頼りない車のエンジン音が、加速する。
墓場セットの背景が、寺の焼け落ちた跡地に切り替わった。

「嗅俱螺 藤美(かぐら ふじみ)さん。今日は、貴女に伺いたいコトがあって参りました」
 いつに無く丁寧な言葉を使う、警部の声。

「どうなさったのです、警部さん。もしかして、ハリカを殺した犯人がみつかったのですか?」
 中年女性の甲(かん)高い声が、ドーム会場に響いた。

「それは残念ながら……今日は、ハリカさんの実の母親である貴女に、別の要件を伺いたいのです」
 今度はマドルが、問いかける。

「なんでございましょう。ハリカが殺され、義母までショックで亡くなってしまいました。マスター・デュラハンを捕まえる為であれば、捜査協力は惜しみません」

「それは有り難い。実は吾輩も、ハリカさんの殺される直前に、男たちに隠れてシャワーを浴びていた最中、黒いレインコートの人物に襲われたのです」

「ま、まあ。それは、大変でございましたね……」
 中年女性の声に、動揺が入り混じる。

「オヤ、藤美さん。どうやら貴女は、吾輩が女であるコトを知っていたのですね?」
「え? ……ええ。あの子は、貴女のファンでしたから。前々から、聞かされておりましたわ」

 藤美が返答を返した後、しばらく沈黙が続いた。

「あの……わたくしに用件とは、何でしょうか。あのコを無残な方法で殺し、マドルさんをも襲った犯人を、1刻も早く捕まえるのが、あなた方の役目ではありませんか?」

「吾輩を襲ったのは、ハリカさんだと我々は見ています。そして彼女に、吾輩を襲わせた影の首謀者は、藤美さん……貴女だ」

「な、なんですって!? あの子は、マスター・デュラハンに殺されたのですよ。どうして死んだあのコが、アナタを襲うコトが出来ましょうや!」
 藤美の声が、激しい怒気を帯びる。

「生前……ハリカさんにとって最期の時間に、彼女は我輩を襲った。藤美さん。母親である、貴女の命令通りに。だが優しい彼女は、吾輩にとどめを刺すのを、躊躇(ためら)った」

「ふ、ふぜけるのも、いい加減にして下さいまし。どうしてわたくしが、あのコに貴女を襲わせる必要があるのです!」

「我輩の捜査が、邪魔だったからでしょう。貴女は確実に、ハリカさんに重蔵氏の遺産を、受け継がせたかった」

 マドルの鋭い瞳が、観客席を見つめた。
1瞬、静まり返る会場。

「ど、何処に証拠が、あるのです。わたくしがあのコに、貴女を襲わせる命令をした証拠など、何処にも無いハズですわ!」

「でしょうな。ですが我々警察は、貴女の義母である嗅俱螺 蛇彌架(かぐら タミカ)さんのご遺体を、検死に回しておりましてな」

「は、義母は、あのコの打ち捨てられた首を見て……ショックのあまり……」

「残念ですが、タミカさんの体内からも薬物が検出されたのです」
「な……ッ!?」

「致死量相当の……睡眠薬がね」
 マドルは、深く眼を閉じながら言った。

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