ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第10章・EP019

ハンバーガーショップと自動レジ

 ボクと沙鳴ちゃんは、ライブハウスの前に立っていた。

「ロックハウス、ギルバード?」
 ポニーテールの少女が見上げる店の全面に、お洒落な書体(フォント)で店名が刻まれている。

「1階は、バンドのTシャツとかグッズ売ってるお店で、地下がロック会場っぽいですね」
 3階建ての雑居ビルの1階から降る階段は、地下へと続いていた。

「あ。でも今日は、やって無いみたい。シャッターが、閉まってますよ」
 薄暗い階段を降りて直ぐに、それは確認できた。

「や、やっぱ、平日だから……」
「ですね。どうしましょう?」

「少し……待ってみる」
「わかりました。あっちに、ハンバーガーショップがありますよ。窓側の席から、見張れます」

 ライブハウスから道路を挟んだ向かい側に、ハンバーガーのチェーン店があって、大勢の学生たちで賑わっている。

 ボク1人だったら、ライブハウスの前でひたすら待つんだケド。
今日は沙鳴ちゃんが一緒だし……入るか。

 ボクたちは、ハンバーガーショップに入った。
レジの前では、制服を着た生徒たちが大勢並んでる。

「けっこう、混んでますね。窓際の席、埋まっちゃいそう……イタッ!」
 沙鳴ちゃんを突き飛ばした男が、そのまま列の先頭へと躍(おど)り出た。

「あの……並んでるんですケド?」
「注文すんなら、列の後ろに……」
 順番を抜かされた学生たちが、文句を言ってる。

「アア、なんだテメー。ヤンのか、オラ?」
 男は、真っ赤な長い髪をしていて、鋭い目で学生たちを睨(にら)み付けた。

「お、お客さま。他のお客様の、迷惑になりますので……」
 レジの女性店員が、丁寧な対応を見せる。

「迷惑ってんなら、散々客を待たせるオメーらの方が迷惑だろうが。いい加減、自動レジくらい導入しやがれ。なんで注文すんのに、オメーらを通す必要がある?」
 赤髪の男は、レジの店員を睨み付けた。

 う~ん、言われてみると、確かに2度手間だよね。
どうせ注文番号が印刷された、レシート出すだけだし。

「お、お客さま……そ、そう申されましても……」
「イイから注文、受けちゃって」
 アルバイトであろう女性店員の背後から、中年の男性店員が耳打ちする。

「チョット、アナタ。利に敵(かな)ってるような、敵ってないようなコト言って!」
 ボクの隣に居たポニーテールの女のコが、大きな声を上げた。

「自動レジを導入しない理由もよく判らないケド、だからって順番抜かしてイイ理由にはならないわ」
 竹刀すら持っていない、今日の沙鳴ちゃん。

「ああ? 順番通りに並べとも、順番を抜かすなとも書いて無ェだろ?」
 まあ確かに、コチラからお並びくださいとしか、書かれていない。

「書いて無くたって、常識じゃない!」
「勝手に、決めんな。オメーらの、思い込みだろうが」
 沙鳴ちゃんが睨み合う、真っ赤な髪の男。

 モチロンこの人が、今回のスカウトターゲットである、題醐 鷹春(だいご たかはる)さんだった。

「オレがレジ出るから、他のお客さんの注文聞いちゃって」
「……わ、わかりました」
 女性店員が隣のレジへと移り、代わりに男性店員がレジに入る。

「オッ、中々にイイ連携してんな」
 題醐さんが、男性店員に向って言った。

「あの、お客様。ご注文は、いかが致しましょう?」
「まあイイや。列の後ろに、並んでやる。有り難く思え」
 題醐さんは、すんなりと列の最後尾に並ぶ。

 スマホを取り出し、SNSでも始めたみたいだ。
2列になったレジは、客を勢い良くさばき始める。
ボクたちも注文を終えて、まだ空いていた窓際の席に陣取った。

「ゴ、ゴメンなんさい、ダーリン。わたしったらまた、黙ってられなくて……」
「と、とにかく、無事で良かったよ」

「わたし、熱くなっちゃって気付いてなかったケド、あの人が……」
 沙鳴ちゃんの視線が、レジで注文をしている真っ赤な髪の男に向く。

「うん。題醐さんだよ」
 ボクは、気が重かった。

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