ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第10章・EP014

ある汗ばんだ筋肉男の潜水

「1012、1013、1014、1015……」
 部屋の中から、汗ばんだ筋肉男の声が聞こえる。

「先日の試合、2対14と言う屈辱的な大敗を喫(きっ)したでありますからな」
 部屋には、ところ狭しと戦闘機や銃のポスターが貼られ、棚には戦車のプラモデルやモデルガンが並んでいる。


「主だった敗因は……自分が相手の攻めを……止め切れなかったからであります!」
 汗ばんだ筋肉男は、部屋に置かれた腹筋台に足を絡ませ、腕を頭の後ろで組んで、上半身を必死に持ち上げた。

「ボランチと言えば……チーム防衛の柱……言わば防人(さきもり)であります。それが……相手の突破を……ああも簡単に許したとあっては……チームが敗れるのも必至!」
 汗ばんだ筋肉男は、尚も腹筋を続ける。

「1497,1408,1499……1500、新たなノルマ完了」
 汗ばんだ筋肉男は、腹筋台から立ち上がると、身体中から噴き出した汗をタオルで拭った。

「クールタイムであります」
 そう言うと男は、スポーツボトルで水分補給をする。

「それにしても……プロのサッカー選手と言うのは、本当に凄まじいでありますな」
 腹筋1500回のノルマを終えた男は、敗北した試合の感覚を思い出していた。

「技術的な面では劣るにせよ、フィジカルであれば互角にやり合えると思っていたであります。それが、自惚(うぬぼ)れだったでありますか?」

 自答する男。
激しいトレーニングのため、再び全身に汗が滲(にじ)んでいた。

「自分は、兵としてなにが足りないでありますか。トレーニングで鍛えるだけでは、ダメな気がするであります」
 汗ばんだ男は、自室を出て階段を降り、風呂場へと向かった。

「重忠、まだお風呂沸かしてないわよ」
「解っているで、あります」
 汗ばんだ男は、トレーニングウェアを脱ぎ捨てると、水の張られた浴槽に飛び込む。

「アンタ、水風呂入るのも、いい加減にしなさいよね。お風呂、これから沸かす身にもなって……」
 浴室の外から聞こえていた女性の声も、水の中に潜るコトで遮断された。

「やはり、自分に欠けているのは、精神力でありますな……それは追々として、筋トレの方法が間違っていたでありますか?」
 ボコボコと口から洩れる気泡の音以外に、男の耳に入る音は無くなる。

「筋トレが、サッカーに置いて重要で無いとは思わないであります。でも、フルミネスパーダMIEの選手たちは、自分より多くの筋トレを行っていた?」
 水の中で、考えをまとめようとする男。

「それは、まず無いでありますな。半分、自分の趣味でありますし」
 かいた汗は、冷たい水に溶け込んでしまっていた。

「……にも関わらず彼らは、サッカーの試合を90分戦えるだけの、体力があった。自分ですら90分が終わる頃には、息も上がっていたのにであります」

 男は、水から飛び出る。
浴槽から、激しく水が流れ落ちた。

「チョット! なにやってんだい、重忠。真昼間から風呂場で、ふざけてんじゃ……」
 女性の声が、男が再び水に潜ったコトで聞えなくなる。

「自分たちより2つ年上とは言え、倉崎司令は日本最高峰のプロリーグで、90分の試合に出ているであります」
 自分たちのチームオーナーのプレイを、思い浮かべる男。

「恐らくは、考えも無しに量をいくらこなしたところで、ダメであります。もっと、トレーニングの質を高めないと……」

 今度は、ゆっくりと水から顔を上げる男。

「自分は、やるコトを見つけたであります」
 男は、冷たい湯舟から上がると、バスタオルで身体を拭いた。

「自分が、チームのトレーニングメニューを、考えるであります。それには、もっと色んなトレーニング方法を、調べねば……」
 汗を洗い流した男は、脱衣場へと出る。

「重忠!!」
 そこには、鬼の形相の女性が待っていた。

 前へ   目次   次へ