ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第13章・106話

ダエィ・ダルスの塔

「なんと言うコトだ。我が息子が、既に死んでしまっていたなどと……」
 地下迷宮(ラビ・リンス)の終着地点にある部屋で、膝(ひざ)を落とし崩れ落ちる大建築家。

「お前の息子は、とくに王の寵愛を受けていた。故に、星砕き(アステリオス)にて、木っ端微塵に砕してやったのだ」
 大魔王ミノ・ダウルスは、悪びれるコトも無く言った。

「おのれ……妻ばかりか、息子の命まで奪いおって!」
 ダエィ・ダルスは、ダイア・レイオンを抜く。

「大建築家よ。キサマの石切りバサミなど、オレには通用せぬ」
 ミノ・ダウルスは、腕を組んだまま微動だにしなかった。

「確かにわたしの剣では、キサマに傷1つ付けられぬであろう。だが、我が剣が生み出した地下迷宮は、キサマを捕らえ続けたコトを忘れるな!」

 ダエィ・ダルスは、大魔王ミノ・ダウルスでは無く、地下迷宮に剣を突き刺す。
最深部の部屋は、『ゴゴゴ……』と大きな音を鳴らしながら激しく揺れた。

「オイオイ、大建築家。一体、なにしやがった!?」
 再びの揺れに、慌てるティ・ゼーウス。

「お前たちを、幽閉する。ミノ・ダウルスよ。わたしはお前を倒すコトは叶わぬが、日の目も見ない地下世界にて、永遠に暮らすが良い!」

 大建築家の怒りは凄まじく、ダイア・レイオンによって切り取られた壁や床は、多次元ジグソーパズルのように凄まじいスピードで変化を遂げた。

「小賢しいマネを。オレのアステリオスは、物質をも砕くのだ!」
 大戦斧が、激しく旋回する。

 既に部屋には、大建築家の姿は無かったものの、アステリオスは回りの壁や床を原子レベルに分解し、消し飛ばした。

「な、なんだと!?」
 けれども無くなった壁や床の向こうには、暗黒の空間が出現する。

「無駄なコトだ。わたしが生み出した次元迷宮(ラビ・リンス)は、簡単には抜け出せぬ。いくつもの異なった時空が、複雑に入り組んでいるからだ」
 時空の何処からか、ダエィ・ダルスの声が木霊した。

「どうする、サタナトス。このままじゃ、オレたちまで閉じ込められちまうぞ!」
 アッシュブロンドの少年が、床や壁の1部が暗黒空間に変化した部屋の中で叫ぶ。

「厄介なコトに、なったな。せめて大建築家の居場所が判れば、なんとか手はあるが……」
 ケイダンに抱えられた、サタナトスが答えた。

「居場所なら、解るぜ。ダエィ・ダルスが消える前に、オレのハート・ブレイカーを巻き付けて置いたからな。だが、どうやって辿り着くかが問題だ。なんせハート・ブレイカーの臓物の糸は、ヤツが言うように無数の空間にまたがってやがる」

「それならば、問題ない……」
 サタナトスを抱える、黒髪の少年が言った。

「オレの剣(バクウ・プラナティス)は、時空を移動できる。赤い糸が途切れる前に、さっさと行くぞ」
 ケイダンは、魔王ケイオス・ブラッドへと変化する。

 赤い皮膜のコウモリの翼を広げると、2人の少年を小脇に抱え、大建築家へと繋がる赤い糸を辿った。
部屋には、大魔王ミノ・ダウルスだけが取り残される。

「クソ! 糸が、途切れてやがる」
「イヤ、アレが時空の分け目だ。問題ない」
 錆びた青銅色の石のような剣を振るう、ケイオス・ブラッド。

「へェ。時空が、顔を開けやがった。ケイダン、お前の剣も大したモンだぜ」
「お前の剣の、道しるべがあるからな。本来であれば、何処へ跳ぶのかまったく予期できない」

「ヤレヤレ、2人とも。いつからそんなに、仲良くなったんだい?」
 金髪の少年が、皮肉を言った。

「ハア。誰がコイツなんかと!」
「とんだ、勘違いだ。だが、時空の構造が何となく見えて来た」
「無規則に、連なっているんじゃ無いのか?」

「ああ、サタナトス。大建築家の生み出した構造体は、まるで時空の塔のように上へと伸びている」
 赤い糸は、色々な経路に分断されながらも、上に向かって聳(そび)えていた。

 前へ   目次   次へ