ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第13章・101話

不死の大将軍

「オイ、どこまで逃げるつもりだ」
 瀕死のサタナトスを抱えながら迷宮回廊を走る、ティ・ゼーウスが問いかける。

「この先に、わたしの工房(アトリエ)がある。この迷宮を、建設していた当時のな……」
 ダエィ・ダルスが、答えた。

「ココだ」
「ココって、なにも無い壁じゃないか?」

「イイから、少し下がっておれ」
 大建築家は、鋭利な石切りの剣(ダイア・レイオン)を壁に突き刺す。
すると壁が、難解な立体パズルのように複雑な動きをしながら開き、巨大な工房が出現した。

「大そうな仕掛けだな。だがアンタの剣さえあれば、ミノ・ダウルス大将軍を迂回して、ミノ・リス王の元へ辿り着けるんじゃ無いか?」
 サタナトスを工房の椅子に降ろす、ティ・ゼーウス。

 工房の中央には大きな図面台が配され、周りには様々な工具が詰まった棚が並んでいた。
回転するノコギリや旋盤なども置かれ、天井から吊るされたランプの光を浴びている。

「それが出来れば、苦労はせぬ。この次元迷宮(ラビ・リンス)は、あの地下闘技場を境として2つに別れておる。複雑に組み合わさってはおるが、地下闘技場を抜けずして王の間には辿り付けぬ設計なのだ」

「厄介な設計に、してくれたモンだぜ」
「本来が、王の命を守るための迷宮なのだ。仕方あるまい」

「それで王に騙されて、自分が作った迷宮の牢に繋がれてちゃ世話無いぜ」
 アッシュブロンドの少年も、疲れたとばかりに図面台に足を投げ出した。

「ところでキサマは、何者なのだ?」
 ティ・ゼーウスの目の前に立つ、黒髪の少年が詰問(きつもん)する。

「お前か。サタナトスの言ってた、頼りになる援軍ってのはよ。ミノ・テリオス将軍とやり合ったみたいだが、随分と遅い到着じゃねェか」

「質問に、答えろ……」
「血まみれで凄まれたところで、コッケイなだけだぜ」
 2人の少年の間に、緊張が走った。

「ま、いいや。オレは、ティ・ゼーウス。いずれ、王となる男だ」
 アッシュブロンドの少年は、堂々と言い放つ。

「王だと? お前の方こそ、滑稽だな」
「こう見えて、配下になりそうなヤツは居るんだぜ。今頃ヤツらは、地上の方の闘技場で、暴れまわってやがるかも知れねェ」

「なるホド。オレはケイダン。サタナトスとは、ガキの頃に同じ孤児院で育った」
 黒髪の少年は、ティ・ゼーウスの前の席に腰を落ち着けた。

「……てコトは、アンタ生まれながらの魔族じゃ無ェのか?」
「ああ。オレはサタナトスの魔晶剣プート・サタナティスによって、魔王となった」
 ケイダンの流していた紫色の血は消え、身体の傷もかなり回復している。

「コイツの剣が、物騒なモノだってのは、拝ませて貰ったぜ。この国の麗しの女将軍サマが、見るも無残な肉塊となって消し飛んだんだからよ」

「そうか。だが、プート・サタナティスはまだ、本来の力を……」
「イヤ。取り戻したさ、ケイダン……」
 椅子に座らされた金髪の少年が、ケイダンの言葉を遮(さえぎ)った。

「サタナトス……お前、ミノ・ダウルス将軍の渾身(こんしん)の1激を喰らったってのに、大丈夫なのかよ?」
「まあ、大丈夫とは言い難いケドね。徐々にだが、回復はしているよ」

「それより、プート・サタナティスが復活したと言うのは、本当か?」
「ああ、ケイダン。完全に、本来の能力を取り戻せたさ。僅かにだが、大将軍にも1撃入っている」

「残念だが、お前の剣は大将軍には通じんよ」
 ダエィ・ダルスが、口を挟む。

「……どう言う、コトかな?」
「なぜプート・サタナティスの能力が通じないと、断言できる?」
 苦しそうなサタナトスの代弁をする、ケイダン。

「ミノ・ダウルス大将軍が、神の血(イー・コール)を引いているからだ」
「神の血だと。それでは、大将軍は……」

「察しの通り、限りなく神に近い存在よ。故に、不死にも限りなく近いのだ」
 大建築家は、言った。

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