ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・107話

時間と空間の牢獄

 斬り取られたいくつもの空間が、断続的に連なった異次元の塔。
その頂点へと続く赤い糸を追って、サタナトスたちは次元を移動していた。

「かなり、上まで昇って来たな。オレのハートブレイカーの糸も、あと少しだぜ」
 ティ・ゼーウスの手にした真っ赤な臓物の剣は、本来の姿を取り戻しつつある。

「だが……大建築家は恐らく、オレたちの追跡を気付いている」
「そろそろ、なにか仕掛けて来てもおかしくは無い……か」
 魔王ケイオス・ブラッドの言葉に、見解を示すサタナトス。

 臓物の赤い糸に導かれたバクウ・プラナティスが、時空を切り裂き、また別の時空へと跳んだ。

「言った途端、来やがったぜ」
 ティ・ゼーウスが、叫ぶ。

「ど、どう言うコトだ……コレは!?」
 焦りを見せる、ケイオス・ブラッド。

「どうやら元の場所に、戻って来たみたいだね」
 彼ら3人の前には、王の間が広がっていて、その中央には大魔王ミノ・ダウルスが戦斧(アステリオス)を抱え立っていた。

「どうした、お前たち。ダエィ・ダルスを、追うのでは無かったのか?」
 金髪の大魔王は、訝(いぶか)し気な顔を見せる。

「オレたちは、大建築家を追っていたハズだったのだがな」
「1瞬にしてこの部屋へと、戻されちまったのさ」
 ケイオス・ブラッドと、ティ・ゼーウスが答えた。

「フッ。魔王ケイオス・ブラッドよ。その口ぶりだと、随分と長く追っていた様だが、お前が時空を斬り裂き出て行ったのは、僅か数秒前だぞ」
「なに? そんなハズは……」

「大魔王の言う通りだぜ、ケイダンよ。オレのハート・ブレイカーも、臓物の糸がほぼ巻き取られていたハズが、この通り最初の状態へと戻っちまった」

 ティ・ゼーウスの剣も、部屋を出る時の痩せっぽちな状態になっている。

「要するに、時間が巻き戻されたってコトだね」
 サタナトスが、言った。

「時間が、巻き戻るだと。そんなコトが……」
「オレだって、俄(にわ)かには信じられ無ェがよ。そう考えるしか、辻褄が合わないんだ」

「オレのバクウ・プラナティスは、時空を超えられるのだぞ。なのに……」
 ティ・ゼーウスの言葉を、否定できない魔王ケイオス・ブラッド。

「忘れたか。ココは、次元迷宮(ラビ・リンス)と呼ばれる場所だ。その製作者が敵に回ってしまったのは、厄介だったな」

「まったく、人事のように言ってくれるね。大建築家を怒らせたのは大魔王、キミじゃないか」

「オレが誰を怒らせようが、オレの勝手よ。だがかつて、ダエィ・ダルスが我が父ミノ・リス王に、高説を垂れていたのを聞いたコトがある」

「ホウ。それは、どんな内容だったのかな?」
 おどけて聞く、サタナトス。

「時間と空間は同じだと、ヤツは言っていた」

「どう言う意味だ?」
「オレにも、アンタがなにを言ってるのか、サッパリ解らん」
 ケイオスとティ・ゼーウスは、お手上げと言った顔をした。

「なる程。空間を操れるのであれば、空間と同じである時間も操れると言うコトかい?」

「恐らくな。聞いた時は、オレにも理解できなかったが、この地下迷宮を見るに少しは理解できる」
 サタナトスの見立てを肯定する、大魔王ミノ・ダウルス。

「どう言うコトだ、サタナトス」
「オレたちにも、判るように説明してくれよ」

「簡単に言えば、ボクたちは時間と空間の牢獄に、捕らわれてしまったってコトさ」
 金髪の少年は、2人の少年の要求に答えた。

「厄介なコトに、なったな」
「時間も空間も好き勝手操れるんじゃ、どうしようも無いじゃねェか」

「イヤ。大建築家が操れるのは、この次元迷宮だけだよ。現にボクは、大建築家を追っていたときの記憶を持っている」

「ムッ。確かに言われてみれば、オレもその記憶があるな」
「そう言や、オレもだがよ。だからって、なんの解決にもならんだろ?」

「まあね。その内イイアイデアが、思い浮かぶかも知れないさ」
 サタナトスは、無邪気な顔をして寝てしまった。

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