女王を護る騎士(ナイト)
「帰って来たか、宇宙斗艦長。クーリアお嬢様とは、上手くヤレたのかよ?」
宇宙に出たボクに、下品な挨拶をするプリズナー。
「さあな。それより、宇宙船を収容してくれるそうだ」
「マジかよ。だが敵の艦に、逃げ込むってのもな」
「そんなコト、言ってられないだろ。ここは、戦場になるんだ」
ゼーレシオンとバル・クォーダは、すでに敵の姿を捉えていた。
周囲には、互いの艦砲が飛び交い始めている。
「しゃーない。美宇宙、お前はクーヴァルヴァリアに着艦しろ」
「了解だよ」
ボクたちの乗って来た小型宇宙船を任せた少女は、心地よい返事を返した。
「敵は、3ヶ艦隊か。土星を攻めるマーズ艦隊の、別動隊って話だが……」
ゼーレシオンの長く伸びた触角が、敵の規模を把握する。
「タイタンで確認したんだが、マーズ艦隊のカラーは赤やオレンジだ。あの艦隊は、ほぼ漆黒で統一されている。どうやらレムスの艦隊とは、完全に別系統の艦隊らしい」
土星圏を制圧すべく、マーズは双子の息子の1人であるレムスを最高司令官として、大規模な艦隊を派遣していた。
「別動隊の指揮官が誰かなんて、どうだってイイ話だ。今は、生き残るコトを考えるんだな」
「敵艦隊に、攻撃を仕掛けるか?」
ボクは、戦場のプロに質問する。
「いくらクーヴァルヴァリアが最新鋭艦とは言え、3ヶ艦隊を相手に戦えるかって。そんな芸当が可能なのは、アンタの船くらいなモンさ」
「だったら、どうする?」
「逃げるが勝ちって、トコだろ。クーヴァルヴァリアは、後退を始めてやがる」
ゼーレシオンが確認すると、純白の巨大な宇宙戦闘空母は、艦砲を放ちながらも撤退戦を始めていた。
お付きの11人の少女たちの乗るサブスタンサーも、艦の護衛に当たっている。
「敵の進軍速度より、クーヴァルヴァリアの方が速いってコトか?」
「らしいぜ。あの艦隊も新造だろうが、設計自体は古い上に、技術の粋を詰め込んだクーヴァルヴァリアとは、性能面でもかなりの差があるからよ」
バル・クォーダが、接近して来たアーキテクターを、撃破した。
「だが敵が、アーキテクターを出して来たぞ!」
ゼーレシオンも、全てを斬り裂く剣(フラガラッハ)で1機を両断する。
「宇宙斗艦長にも、解るだろ。敵はアーキテクターで打撃を加えて、クーヴァルヴァリアの速度を落とす気だぜ」
見ると、クーヴァルヴァリアに敵のアーキテクターが、取り付いていた。
「ボクの任務としては、クーヴァルヴァリアを護ればイイんだな」
「そう言うこった。女王を護る、騎士(ナイト)みてェによ」
皮肉を飛ばす、かつての少年兵。
「了解した。それくらいは、やって見せる」
ボクは、クーヴァルヴァリアへと向かった。
その頃、大財閥・カルデシア財団ご令嬢の名を冠する艦の周囲では、11人の少女たちが駆るピンクと薄紫色の機体が、厳しい戦いを強いられる。
「何としても、持ち堪えるのだ。敵を、クーリア様の艦に近づけるな!」
アイスブロンドの美しい髪をしたシルヴィアが、味方に奮闘を促した。
「で、でもでも、敵が多過ぎですよォ。倒しても、倒しても、キリがありません!」
幼児体形で、キャロット色のユルフワヘアのフレイアが、弱音を口に出す。
「フレイア、後ろだ!」
ピンクブロンドのカーリーヘアのカミラが、フレイアの機体の後ろに敵の姿を確認した。
「イヤァッ!? ま、間に合わな……」
閃光に包まれる、アーキテクター。
「なんとか、間に合ったな。フレイア、大丈夫か?」
フラガラッハが、フレイアを襲った敵を両断していた。
「そ、宇宙斗艦長ォ、有難うございますゥ!」
涙声でお礼を言う、フレイア。
「艦長には、また助けられたな」
「火星でも、命を救われたモノね」
「クーリアさまが好きになるのも……あッ、なんでも無いです!?」
「フォボスの地下プラントのコト、覚えていてくれたか」
「そりゃ、忘れるワケ無いでしょ?」
「そんなに昔の話じゃ、無いワケだし」
「そうか。とにかくみんな、無事で良かった」
3人が、時の魔女に操られていないと感じ、安堵する。
「油断せず、戦いを続けよう」
ボクは、11人の少女たちを気にしながら、敵を撃破して行った。
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