ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第10章・EP017

妹みたいな女のコ

「いいか、一馬。デッドエンド・ボーイズ、最大の弱点はキーパーだ。海馬コーチには申し訳ないが、早急に改善しなきゃならないポイントでな。また、頼めるか?」
 御剣 一馬は、夕暮れの公園で、倉崎 世叛に言われたコトを思い出していた。

「安請け合いしちゃったケド、またスカウトに逆戻りだなんて」
 倉崎さんから預かったノートを片手に、誰も居ない川沿いの道を歩くボク。

「今ならボクなんかより、スカウトに向いた人も居るのにな。どうして倉崎さんは、ボクにスカウトを頼んだんだろ?」

 土手の下に流れる河の河川敷には、小さなサッカー場や野球場があるが、人も疎(まば)らだ。

『ファイトー、ゼッ、オッ、ゼッ、オ』
 うわッ、向こうから、野球部っぽい集団が来た!?
ボクは慌てて、1人ごとを中断する。

 隣を通り過ぎて行く、白に赤い学校名がかかれたジャージの集団。
学校名は、山の背学園と書かれていた。

 山の背学園……今から会う人の、母校らしい。
ボクの通う曖経大名興高校と同じく、中学・高校・大学の一貫校で、普通であれば受験も無く順当に進学できる……のかな?

 自分で通ってるクセに、実はよく解って無いんだよね。

「ダーリン!」
 いきなり、背後から女のコの声がした。

「うわあッ!?」
 背中から、誰かが抱き付いて来たので、ボクは慌てて回避する。

「もう、避けるコト無いでしょ」
 振り返ると、まだあどけなさの残る女の子が、ボクに向かって怒っていた。

「さ、沙鳴ちゃん……ど、どう……して?」
 沙鳴ちゃんは、ボクにしては珍しく喋れる相手だ。

「教室から、ダーリンが何処かへ向かってるのが見えて、後付けて来ちゃいました」
「そ、そう……なの?」
「これでもわたし、デッドエンド・ボーイズのマネージャーですからね」

 ボクの左腕に、へばり着く沙鳴ちゃん。
曖経大名興高校の付属中学の3年生で、家は剣道の道場だ。

「やっぱ、ダーリンなら平気だ……」
「……え?」
 言ってる意味が、解らないボク。

「実はですね。あんなコトが、あったじゃ無いですか」
「岡田先輩の……コト?」

「はい。竹刀持って、勇ましくみんなを助けるつもりが……返り討ちに遭っちゃって。アレ依頼、ちょっと男の人が怖くなってたんですよ」

 練習場の利用を巡って、ウチのサッカー部と中等部のバドミントン部が揉めてるところを、颯爽(さっそう)と現れた沙鳴ちゃんが、友達のバドミントン部の加勢に入る。
でも、岡田先輩に竹刀を奪われ、逆に大ケガするトコだったんだよな。

「ひ、酷い目に、遭ったよね。あの時は、オシッコまで……」
「そ、それは、思い出しちゃダメェ!」
 慌ててボクの口を塞ぐ、沙鳴ちゃん。

「すべて忘れろビーーーームッ!!」
 額に指を当て、独特のポーズを取る。

「へ?」
「いいですか、ダーリン。すべて、忘れましたね?」
「……」

「もう1度、聞きます。す・べ・て、忘れましたよね?」
「は、はい……」
 強引に、顔を縦に振らされるボク。

「よろしい。でも、助けてくれて有難うございます」
 沙鳴ちゃんは、はにかんだ笑顔を見せた。

「ところでダーリン、何処へ行こうとしてるんです。いつもは、正門の方から帰りますよね?」
「う、うん。実は、スカウトなんだ?」

「スカート?」
「スカートじゃなくて、スカウト。ウチはキーパーが弱いから、新しいキーパーをスカウトするんだ」

 沙鳴ちゃんは真っすぐな女のコで、なんだか妹みたいに感じる。
だからボクでも、多少は喋れてるのかな。

「へェ。どんな人を、スカウトするんです?」
「この人……」
 ボクは、手帳を見せた。

「題醐 鷹春(だいご たかはる)……カッコいい、人ですね。なんか、ロックシンガーみたい」
 沙鳴ちゃんが覗き込む手帳には、真っ赤な髪をした人物の写真が載っている。

「……だね。ボクも、そう思った」
「それじゃ、さっそく彼を、ゲットしに行きましょう!」
「え、沙鳴ちゃんも、来るの?」

「言ったじゃないですか。こう見えてもわたし、デッドエンド・ボーイズのマネージャーですから」
 妹みたいな女のコは、小さな胸を張った。

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