ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第38話

遺言状の真贋(しんがん)

「2通目の遺言状の在り処は、重蔵氏の自室にある、古びた置時計の内側と書かれていた」
 マドルが読み進める竹崎弁護士の日記が、当時の様子を呼び覚ます。

「わたしも立ち合い、警察の警部ら数人と置時計の内側を探った。置時計の針盤の内側に、埃(ほこり)まみれの封筒が貼り付けられており、その中に2通目の遺言状が入っていた」

「なるホドな。2通目の遺言状は、重蔵氏の自室に隠されていたのか」
 マドルの読み上げた内容に、鬼頭弁護士が相槌(あいずち)を打った。

「2通目の遺言状も、1通目と同じデザインのシーリングスタンプがされていた。警部と話し合った結果、2通目の遺言状も1通目と同じ方法で、重蔵氏の血縁の者の前で開封するコトとなる。それまでの間、2通目の遺言状も警察預かりとなった……」

「2つの遺言状とも、同じシーリングスタンプがされてたってコトは、2通目も本物の可能性が高いってコトか?」

「結論付けるのは、早計です」
 鬼頭弁護士の疑問に、否定で答えるマドル。

「警部に確認したのですが、シーリングスタンプは重蔵氏が、生前にも使っていたモノだと判明しました。ですが、重蔵氏の書斎や部屋をくまなく調べたものの、使われたシーリングスタンプが見つかって無いのです」

「スタンプ自体が見つかって無いんじゃ、中身の信頼性も担保できないな」
「ええ。竹崎弁護士も、その点を気にされてたのでは無いでしょうか」

 舞台は暗転し、観客たちに推理の時間が与えられる。

「ようするに……どう言うコトだ?」
「シーリングッスタンプが押されてたって言っても、そのスタンプ自体が見つかって無いんだから、意味がないってコトでしょ」

「な、なんで? 重蔵のスタンプなんだろ?」
「重蔵氏のスタンプだとしても、ハンコと同じで誰だって押せるんだから!」
「そっかあ。犯人がスタンプを盗み出して、遺言状を偽造したって可能性があるのか」

 観客たちの意見が大方まとまったところで、舞台が明るくなった。

「今日わたしは、再び館へと赴(おもむ)き、遺言状の開封をした。前回と違っていたのは、亡くなった少女と重蔵氏の次男である伊鵞 武瑠(いが たける)氏の姿が無かったコト。それに、大勢の警察が館へと入って、開封に立ち会ったコトだった」

「前回と違って、殺伐とした雰囲気だな。だが重蔵氏の次男は、なんで居ないんだ?」
「自分の会社の所用で、上海(しゃんはい)に赴いていたんですよ」
 最低限の情報だけ、伝えるマドル。

「2通目の遺言状は、渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)と言う知らない少女を指名した。場は騒然となり、わたしも少女が誰なのか質問される。けれども、わたしも少女が誰なのか知らなかった」

「ヘェ。サキカって子が、この後殺される少女かい?」
「ですが開封の時点では、彼女が何者か判明して無かったようですね」
 少女探偵は、日記をめくる仕草をした。

「相続権に関わるコトから、弁護士であるわたしは、渡邉 佐清禍(わたなべ サキカ)と言う少女の素性を調べるコトとなる。警察も協力的で、少女は直ぐにタケル氏の隠し子だと言うコトが判明した」

「マジかよ。タケル氏って、上海に行ってる次男だろ?」
「はい。サキカさんは、母親が亡くなった後に孤児院へと預けられたそうです」
「勝手な男だな。隠し子を、公(おおやけ)に出来なかったんだろうがよ」

「ええ。ですが重蔵氏は、どうしてサキカさんを遺産の相続者に指名したのでしょう?」
「隠し子と言ったって、一応はタケル氏の娘なんだからよ。遺産を受け継ぐ権利くらい、あるだろ?」

「権利としては、あるでしょうね」
「なにか思うところが、ある見てェだな」
 鬼頭弁護士の声が、問いかける。

「遺言状が本物だとすれば、どうやって重蔵氏は、カケル氏の隠し子である彼女の存在を知ったのか……そこを、解き明かさねばなりません」
 マドルの言葉に、会場は騒(ざわ)めいた。

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