ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第36話

少女探偵の焦燥

「吾輩は、警部に館の現場を任せて、1人で竹崎弁護士の事務所を訪れていた。主を失った建物だったが、事務所の看板はそのまま架け変えられずにいた」

 舞台で、状況説明をするマドル。
もう何度目かの光景であり、事件がクライマックスに近づいているコトを、観客たちは気付いていた。

「こないだココに来たお嬢さん、亡くなったんだってな」
 若い男性の声が、いきなり質問する。

「はい、鬼頭弁護士。吾輩が、力及ばないばかりに、見す見すハリカさんを死なせてしまいました……」
 マドルはまだ、ハリカの死を克服できていない様子を演じていた。

「あの元気で好奇心旺盛な、嬢ちゃんがなあ……オッと、すまねえ」
「いえ、全ては吾輩の短慮が招いたコト。それより今日は、折り入って話があって参りました」

「オウ、なんだい。こっちだって先生のためにも、犯人を野放しにはしたくねえからよ」
 マドルの捜査に協力的な態度を示す、若き弁護士の声。

「実は、伊鵞 重蔵(いが じゅうぞう)氏の遺した遺言状について、お聞きしたいのです。とくに2通目の遺言状について、発見された経緯(いきさつ)をお聞きしたい」

「悪ィんだが、オレは遺言状の件についてはほぼ関わって無ェからな。前も言ったが、竹崎先生は守秘義務を守る人でよ。酔った席で、多少は先生から聞いちゃいるが、アレ以上のコトは……」
「そうですが。ムリを言って、申し訳ありません」

「だが先生は生前、遺言状に関する何かを調べていたぜ。なんせ遺言状に疑いを持っていたのは、先生ご自身だからな」

「これは、吾輩の推理に過ぎないのですが……」
 前置きをする、マドル。

「竹崎弁護士は亡くなる前に、遺言状が偽物であるコトを、突き止めていた。だから、犯人(マスターデュラハン)によって殺されてしまった……と考えているのです」

「なるホドな。確かにそう考えれば、先生が殺された理由も説明が付くぜ」
 若き弁護士の声も、マドルの推理に納得した。

 舞台がまた暗くなり、観客に情報整理の時間が与えられる。

「え、え。どう言うコト!?」
「アンタ、まだ解らないの。ようするに、口封じで消されたのよ」
「あ~、納得、納得」

「竹崎弁護士は、嗅俱螺(かぐら)家の寺の本堂から、焼死体となって発見されました。恐らく、何らかの方法で気絶させられたか、眠らされたと警察は見ています」

「そりゃ、いくら火事が起きたからって、大の大人が寺から脱出できないなんて不自然だからな」

「はい。もし犯人が、マスターデュラハンであれば、竹崎弁護士は眠らされていたのでしょう」
「アア……なんで解かる?」

「これまで殺された3人の少女は、いずれも眠らされた後に殺され、首を刎ねられてます」
「マジか。だが、そんなコトまで話しちまって、大丈夫なのかよ?」

「大丈夫では……無いでしょうね」
 探偵少女は、言った。

「……覚悟は、決まってるってコトか」
 マドルの意図を読み取る、若き弁護士。

「先生には怒られそうだが、オレも覚悟を決めるぜ。先生が生前に集めていた資料、探して見るわ」
「有難うございます、鬼頭弁護士」
 深々と頭を下げる、マドル。

「それから、吾輩と鬼頭弁護士は、人目を忍びながら竹崎弁護士が生前に残していた資料を漁った。けれども資料は、どれも裁判や弁護に関わるモノばかりで、中々遺言状に繋がるモノは見つからない」

「流石は、竹崎先生だぜ。なんの資料も、残っていないとはな……」
「あとは、この開かずの引き出しだけですね」

「そこは、先生の日記が入っているだけだ。備忘録替わりに、日記を付けられていたんだが……鍵は先生ご自身が、お持ちでな。残念ながら、開ける方法が……」

 その時、『ガチャリ』と音がした。

「申し訳ありません、鬼頭弁護士。吾輩は、どうしてもこの事件を、解決しなくてはならないのです」
 舞台のマドルの手には、いつの間にか日記が握られていた。

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