ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第41話

舞台袖の推理

「オイ、マドル。一応、言って置くがよ。元来お前は、警察の人間じゃない」
 車のハンドルを握っているであろう、警部の声が言った。

「言われるまでも無い。吾輩の本職は、探偵なのだからね」
 舞台のマドルが、素っ気ない顔で答える。

「たたでさえ、マスター・デュラハン事件も解決して無くて、警察署なんざに帰りたかねェのによ。お前が警察署に入ったら、警部補に偽装してんのがバレちまうんだが?」

「バレるだろうね。でも遺言状は、警察署に保管してあるんだろ。なんなら警部の権限で、持ち出して来てくれても構わないよ」

「オレに、そんな権限なんて有るかっての。簡単に持ち出せんなら、わざわざ出向いて貰ってねェよ」
 頼りないため息を吐く、警部の声。

「仕方ない。吾輩を、そこで降ろしてくれ」
「どうする気だ?」
「本来の性に、戻るのだよ。女の姿にね」

「なるホド、アリガテェ!」
「あのブティックで、女性用の服を買い込むから、お金をくれるかな?」
「な、なんだと。お前には、捜査協力費を渡して……」

「イイのかな。警部の首が飛んでも、知らないよ」
「わ、わかったから。なるべく、安目のモン買うんだぞ」

「了解だよ」
 そう言うとマドルは、舞台袖に掃ける。

「オッと、まさか男が居るとは思わなかったよ」
 舞台から掃けて来たマドルが、舞台袖のボクや久慈樹社長と鉢合わせた。

「も、もしかして、ここで着替えるのか?」
「急いで着替えないと、警部を待たせてしまうからね」

 ボクの問いかけに、舞台と同じくからかい交じりに答える、神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)。
物語の登場人物と会話をしている様で、不思議な気分になった。

「久慈樹社長。恐れ入りますが、しばらくこちらへ」
 女性スタッフが、申し訳無さそうに目配せしている。

「ヤレヤレ、しょうがない。移動するとしよう」
「そうですね」
 ボクたちは、舞台袖にあった部屋に入った。

 中は薄暗く、照明などを操作するスイッチが、赤く光っている。
数人のスタッフたちが、たくさんのモニターを確認しながら作業をしていた。

「舞台裏は、こんなになってたんですね」
「どうやら、そうらしいな」
「社長が、末端まで把握しなきゃならない、道理は無い……と?」

「中々の、名推理じゃないか。だがボクとしては、彼女たちの舞台の推理を、期待しているのだが?」
 薄暗い中で、久慈樹社長の瞳がボクを捉える。

「そうですね。マスター・デュラハンも、かなりシッポを出して来たと思います」
「確かに、謎のレインコートの男が現れ、シャワー室でマドルを襲い、3人の少女の首を寺に遺棄したりしてるからな」

「まだ男と、決まったワケじゃありませんよ」
「ほぼ男で、確定だと思うが?」

「……だとすると、レインコートの男はマドルを襲った後、どこに消えたのでしょう?」
「なる程な。レインコートは、男に見せるための小道具か……」

「恐らくは。そして、大柄な男が着てそうなレインコートの中身は……」
「小柄な……少女と言うコトか」
 久慈樹社長は、腕を組んで納得する。

「レインコートはコンパクトに折りたためるし、小柄な少女であれば部屋の片隅に隠れられます」
「つまり、マドルを襲った犯人である少女は、元々部屋に潜んでいた……」
「そして、警部が飛び出して行った後にでも、逃げ出したのでしょう」

「だが……その少女と言うのは、一体誰……」

「社長、お待たせいたしました。もう、戻ってもらってケッコウです」
 先ほどの女性スタッフが、部屋のドアを開け言った。

「もう少し、推理を聞きたかったのだがな。特等席に、戻るとしよう」
 社長とボクは、再び舞台袖へと戻る。

 舞台には、艶(あで)やかなドレスを着たマドルが立っていた。

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