ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第69話

火事の現場検証

 墓場のセットの背景は、真黒な瓦礫(がれき)が1面に散乱し、煙がまだ所々にくすぶっていた。
もちろん本物の火事では無いが、消し炭の匂いが鼻孔を突く錯覚(さっかく)を覚える。

「午後になってから、吾輩と警部も現場に赴(おもむ)いた。消防からの聞き取りでは、竹崎弁護士の他に被害者は存在せず、出火元は寺の本堂だと確認される。折からの強風で火の勢いが増し、嗅俱螺(かぐら)の邸宅にも燃え移ったとのコトだったよ」

 観客たちに、火事で焼け落ちた寺の現場捜査を、演技を交えて語るマドル。

「竹崎弁護士には、先ほど会ったばかりだと言うのに、なんともやり切れないね」
「だがな、マドル。警察ってなァ、こんなモンさ。人の死に直面する機会は、一般人より遥かに多い」
「ああ。吾輩たちに出来る手向けは、1刻も早く事件を解決するコトだよ」

「やはり、犯人(マスターデュラハン)が、放火したと見るべきだな」
「まだ解らないよ、警部。マスターデュラハンはこれまで、重蔵氏の遺産を受け継ぐ2人の少女を、亡きモノとして来た。けれども今回の火事では、ハリカさんは助かっているのだからね」

「言われてみれば、そうだな。もし犯人がマスターデュラハンだったら、ハリカさんを殺し首を刎ねた上で、火を点けそうなモノだぜ」

「失火の原因も、放火と断定するのは早計さ。本堂にあったロウソクが風に煽られ、たまたま倒れただけなのかも知れない」
「ま、まあ、その線もあるっちゃあるか」

「失火原因については、消防の検証を待つしかないね。それより、警察にも事情を聴いてみよう」
「そうだな。こんな時に頼りになるのは、やっぱ身内だぜ」
 マドルも、舞台を歩き始める。

「どうだい、捜査状況は?」
「ハッ、これは警部。捜査はまだ、初動段階であります」
 警部が警察手帳を見せつけている絵が、ボクの頭に思い浮かんだ。

「だろうね。ところで、ハリカさんは無事なんだよね。彼女は、どうやって避難したんだい?」
「ハリカさんは元々、嗅俱螺の邸宅で暮らされておりました。お寺が火事になっていたので、母親と年老いた祖母を連れ、慌てて逃げ出したそうです」

「母親が藤美さんで、祖母がタミカさんだったね?」
「はい。よくご存じで」

「キミもずいぶんと、嗅俱螺家について詳しそうじゃないか」
「ここは、家の菩提寺(ぼだいじ)ですから。去年の祖母の葬式も、ここでお世話になったんです」
 若い警察官の声が、颯爽(さっそう)と答える。

「なるホド……葬式……ね」
「どうした、マドル。なにか、気になったコトでもあるのか?」

「ああ。もしかすると、失われていた2人の少女の首の行方が、解ったかも知れない」
「ホントか、それは!」

「慌てないでくれ、警部。もし吾輩の推理が正しければ、少々大事になるからね」
「お、大事?」

「それより今やるべき捜査を、進めようじゃないか」
「……と、言うと?」

「もちろん、直接本人たちに会ってみるコトさ」
「そ、そうなるよな。ハリカさん達は、何処に居る?」
「街の宿に、宿泊していただいております」

 警察官の返答と共に、舞台が暗転した。

「吾輩と警部は、火事のあった現場を離れ、街の宿へと向かった。街は、京都をこじんまりとさせた風の路地があって、宿はその外れに位置していた」

 マドルが解説を始めると、墓場セットが浮かび上がり、その背景が遠くの街灯りに変化する。
これまでのライブで見られたハデな演出も可能だろうが、あえて最低限の演出に留めているのだろう。

「宿は、和風で趣(おもむ)きのある佇(たたず)まいの2階建ての建物で、避難されたハリカさんら嗅俱螺(かぐら)の人々が、貸し切っていた」

「焼け出されたのに、宿を貸し切れるなんてお金持ちね」
「そう言やあ、嗅俱螺の家も名家だって言ってたモンな」
 観客たちも、嗅俱螺家の財力を再認識していた。

「1階には、警察の関係者が警備目的で屯(たむろ)していて、ハリカさん達は2階の大広間に居るとのコトだった」
 ギィギィと、古びた階段を上がる音が響く。

「衾(ふすま)を開けると、そこには美しい翡翠色と金色の刺繍の入った着物を身に着けた、嗅俱螺 墓鈴架(かぐら ハリカ)さんが立っていたのだよ」

 マドルによる、ハリカへの聞き取り調査が始まった。

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