ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第68話

燃え盛る炎

 嗅俱螺(かぐら)家の複雑な家系図は、観客たちを更なる混乱に陥(おとしい)れた。

「みなさん。状況が複雑化しているときホド、1度状況を整理して見ましょう」
 舞台のマドルが、観客席に向かって提案する。

「今回、館で発生した2件の殺人事件の犯人として、嗅俱螺(かぐら)家の中で疑わしいと思われる人物は居るでしょうか?」

「え、どうなんだ?」
「長男のカケルは戦死で、その子供のアグルも病死してんだろ?」
「許嫁のタミカが、怪しいっちゃ怪しいか」

「でもカケルって、次男のタケルたちとは年が離れてるんじゃなかった?」
「ああ、言ってた言ってた。だから、長男なのに徴兵されたんだろ」
「そのカケル氏の許嫁ってなると、かなりの年になるのか」

 観客たちは、得た情報を互いにアウトプットし、頭の中の情報を整理していた。

「さて、また同じ質問をして恐縮なのだが……」
 本当にい恐縮しているとは思えない、久慈樹社長が問いかけて来る。

「2人の少女を殺害した犯人とされるマスターデュラハンが、竹崎弁護士の挙げた嗅俱螺家の家系図の中に、居るのかって話になりますね」

「今のところ、なんとも言えないな。2件の事件に、まったく関わっていない可能性もあり得る」
「そう考えるのは、動機が希薄だからですよね。ですが、嗅俱螺 墓鈴架(かぐら ハリカ)と言う存在が、発覚しました」

「なるホド。彼女は確か、重蔵の直系だったな。重蔵の遺産を相続する権利を得た少女の登場で、伊鵞(いが)家のみならず嗅俱螺家の関係者にも、遺産目当ての犯行があり得るのか」

 久慈樹社長は、ボクの意図を明確に読み取った。

「推理の時間は、一先(ひとま)ず終わりだ。竹崎弁護士の情報を得た吾輩と警部は、今後の方針について話し合った」
 マドルの背景(バック)に、また墓場のセットが浮かび上がる。

「やはり、マドル。嗅俱螺 墓鈴架(かぐら ハリカ)さんをこの館に呼び寄せるのは、危険だな」
 警部の、野太い声が言った。

「それは正論であり、同感だね。だけど犯人(マスターデュラハン)として見れば、なにもこの館に居るときにだけ、殺人事件を起こしてやる義務は無いのだよ」

「ウム。タケル氏の自殺も、ワタル氏の山での転落も、まだ犯人の仕業じゃないと決まったワケでも無ェからな。彼女の周辺にも、警備を敷いて置くに越したコトは無いか……」

 警部の声が、警備の増強を提案したときだった。

 墓場のセットの背後の風景が、真っ赤になって揺れる。
けたたましいサイレンが鳴り響き、バチバチと言う効果音が上がった。

「な、なんだ。一体、なにがあったッ!?」
「警部、丘の下を見て。火事が起きてるんだ!」
 1人芝居のマドルが、絶妙な演技で叫んだ。

「マドル、あの方角は、まさか……」
「ああ。竹崎弁護士の言っていた、嗅俱螺家のお寺のある方角だよ」

 墓場のセットの背後の炎が、更なる勢いを見せる。
ドームの内部も炎のエフェクトに包まれ、観客たち全員が、炎の中に取り残されているかの様だった。

「キャアァ、なんかヤダァ!」
「本物の火事って、こんな感じなのかなァ」
「流石にこれだけのドーム全体が火事になるなんて、滅多に無ェケドな」

 派手に燃え盛った炎は、やがて徐々に勢いを失い、墓場の風景には僅かな残り火しか確認できくなる。

「うおお、マジでビビったぜ」
「でもこの火事って、絶対マスターデュラハンの、犯行だよね?」
「ああ、まず間違いは無いな」

 やがて僅かな炎さえ消え、マドルの背後はまた暗闇に包まれた。

「火事は、なんとか鎮火はされたが、嗅俱螺の邸宅とお寺は、完全に焼け落ちてしまった。翌日、消防と警察に寄る合同の現場検証が行われ、寺のオお堂の中で1人の焼死体が発見される」

「ハ、ハリカちゃん、館に来る前に死んだのかよ!」
 観客の誰かが、大きな声を上げる。

「イヤ。遺体は明らかに男性のモノであり、ハリカさんは事前に避難できていいて無事が確認された」
 観客の声に答える、マドル。

「遺体は翌日、竹崎弁護士のモノと確認された」
 沈痛な顔をした、名探偵が言った。

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