ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・104話

神の血を引く者

「ミノ・ダウルス……キミは、ボクの下僕(しもべ)かのかい?」
 大将軍を剣の能力で大魔王に変化させた、サタナトスが問い質す。

「オレは、誰に下にも付かぬ。ただ1人、父を除いてはな」
 大魔王と化していたミノ・ダウルスは、言って退けた。

「父ってのは、ミノ・リス王のコトか?」
 ティ・ゼーウスも、論戦に加わる。

「そうだ。オレは、王を守るために存在する」
 大魔王ミノ・ダリウスは、手にした戦斧を振り降ろした。

「コ、コイツ、戦斧(アステリオス)の威力が、格段に増してやがる!」
 ティ・ゼーウスは、ハート・ブレイカーを地下闘技場の天井に絡め、自身の安全を確保する。
けれども、その足元には物質の無くなった、底なしの床が広がっていた。

「ヤレヤレだよ。完全体のプート・サタナティスを以ってしても、完全には意思を奪えないとはね」
 6枚の翼で宙に舞った、サタナトスもため息を付く。

「感心している場合か。ヤツを止める手立てを、考えねば」
「心配は無いさ、ケイダン。ヤツは味方では無いが、だからと言って敵でも無いんだ」
 サタナトスは、ケイダンの前に降り立った。

「ヤツは攻撃を、仕掛けて来ている」
「どう見たって、敵だろうがよ!」
 ケイダンとティ・ゼーウスは、訝(いぶか)しがる。

 けれどもミノ・ダウルスは、それ以上の追撃は行なわなかった。

「大魔王ミノ・ダウルス。ココを、通してくれるかな?」
 2本の角を持った男に、問いかけるサタナトス。

「それは出来ぬ相談だ。オレは父を護る為に、この地下闘技場に配されたのだ」
 ミノ・ダウルスは、黄金に輝く髪を靡(なび)かせ、蒼い瞳でサタナトスを凝視していた。

「キミの父上は、人間なんだろ?」
 サタナトスが、再び疑問を投げかける。

「それが、どうした?」
「人間は、神や神の血を引いた者ほど、永くは生きられない」

「……」
 ミノ・ダウルスは、反論をしなかった。

「キミも、薄々は気付いているんじゃないか、ミノ・ダウルス?」
 サタナトスのヘイゼルの瞳が、大魔王と化した大将軍を映す。

「オイオイ、どう言うこった。ミノ・リス王が人間だったとすりゃあ……!?」
「王の息子であるミノ・ダウルスが、100年以上も将軍の座に居るのだ。王は既に……」
 ティ・ゼーウスとケイダンも、事態をそこはかとなく把握する。

「着いて来い……」
 大魔王ミノ・ダウルスは、言った。

「王の元へと、案内してくれる気になったのかい?」
 サタナトスは、3度(みたび)問いかけるが、大魔王は答えずに歩き出す。
大魔王の身体が真っ白に輝き、光が収まると黄金の鎧を身に纏っていた。

 大魔王ミノ・ダウルスに続き、サタナトス、ケイダン、ティ・ゼーウスの3人の少年が、来た方向とは別の闘技場から続く地下通路へと歩き出す。
通路は度々変化を繰り返すものの、1向は巨大な広間へと辿り着いた。

「彼が、キミの父上かい?」
 サタナトスの問いかけにも、答えない大魔王。
広間には中央に玉座があり、1人の男が座っている。

「まさか、オレたちが殺したいと願っていたミノ・リス王が、当の昔に死んじまっていたとはよ」
 身動き1つしない男を前に、吐き捨てるティ・ゼーウス。

「大将軍ミノ・ダウルス。キミは、王の死を国民や周辺諸国に知らせないために、孤独な地下闘技場で戦っていたんだね」
 サタナトスの前にある玉座には、王冠を被った干からびた男の死体があった。

「そうだ。このラビ・リンス帝国は、父上のカリスマ性があっての帝国なのだ。父上の死は、帝国の崩壊を意味する」

 大魔王と化したミノ・ダウルスは、物言わぬ父の元で跪(じざまず)く。

「オレはてっきり、ミノ・リス王が神の血(イー・コール)を引く人間だと、勘違いしていたぜ。まさか、神の血を引いていたのは……」

「パルシィ・パエトリア王妃の、方だったとはな」
 ティ・ゼーウスの嘆きに、ケイダンが言った。

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