ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・103話

神と悪魔の申し子

 サタナトス、ケイダン、ティ・ゼーウスの3人の少年の前に姿を現わした、牛頭の巨人。
大将軍が纏(まと)っていた、五芒星のデザインされた黄金の鎧を身に着け、頭部には2本の角の生えた黄金の兜を被っていた。

「こりゃあ、本当にあのミノ・ダウルス大将軍なのか!?」
 アッシュブロンドの少年が、気圧されながらも、ハート・ブレイカーを身構える。

「違うよ、ティ・ゼーウス。コイツは、大魔王ミノ・ダウルスさ」
 金髪の少年は、言った。

「確かに人間の状態に比べ、身体も倍以上は大きくなっているぞ」
 ケイダンも、師匠譲りの幻影剣・バクウ・ブラナティスを具現化させる。

「コイツは……味方なのか?」
 ティ・ゼーウスは、牛頭の巨人に近づいた。

『ムオオオォォォーーーーーッ!!』
 他を威圧する咆哮(ほうこう)と共に、大魔王ミノ・ダウルスは戦斧を振り上げる。

「残念だが、まだ完全に魔王となったワケじゃないみたいだ。彼の身体に流れる神の血が、魔王になるのを阻(はば)んでいるんだろうね」

 牡牛のような黒い毛波みと化した皮膚に、元々角のある兜から伸びた、立派な2本の角。
牛頭の大魔王は、前身の筋肉を躍動させ、アッシュブロンドの少年を襲った。

「それを、先に言えっての!」
 ハート・ブレイカーの臓物を、地下闘技場の崩落を免(まぬが)れた天井に貼り付かせて難を逃れる、ティ・ゼーウス。

「だがこちらを、完全に敵として認識してはいないようだな?」
「マジか。確かに、追撃はして来ねェが……」
 臓物を解除し、ケイダンの後ろに降り立つティ・ゼーウス。

「彼は今、戦っているのさ。彼の中にある、魔族の魂と神の魂がね」
 サタナトスは、魔晶剣・プート・サタナティスを具現化させた。

「ボクの剣は、どうやら完全には、キミを魔王にするコトは出来ないみたいだ」
 金髪の少年の背中から、天使の白い翼と魔族の黒い翼が現れる。

「でも……キミの人間であった心だけは、完全に魔族にさせられる!」
 金髪の少年は、6枚の翼を以って宙に舞い、大魔王ミノ・ダウルスに向け突進した。

『ブオオオォォォーーーーーッ!!』
 大魔王は、苦しみながらも戦斧を振り回す。

 けれども、サタナトスのアメジスト色の剣が、大魔王の牛頭の眉間(みけん)に突き刺さった。

「……や、やったか!?」
「イヤ、ヤツの攻撃はまだ終わっていない」
 ケイダンが、バクウ・ブラナティスで時空を斬り裂く。

「な、なんだと。またアイツが、星砕きの攻撃を喰らったら、今度こそ身体が……!?」

 振り回された星砕き(アステリオス)が、サタナトスの身体を粉砕しようとした瞬間、空間が裂け中からケイダンが現れた。
間一髪で、金髪の少年を時空の裂け目へと引き吊りずり込む。

 次の瞬間、星砕きは闘技場の壁や床を粉砕し、完全に消し去った。

「グワァッ! やはり星砕きは、普通の戦斧なんかじゃねェ。壁や床が、消えちまってやがる!」
 ティ・ゼーウスは、ハート・ブレイカーを使って難を逃れる。

 大魔王ミノ・ダウルスは、闘技場を破壊しつつ、苦しみながら暴れまわった。
その巨体が真っ白に輝き、やがて小さく収束する。

「こ、これが……サタナトスの剣の、真の能力だと?」
 光が収束した場所へと近づく、ティ・ゼーウス。
彼の目の前には、真っ白な肌の男がうずくまっていた。

「その通りさ。そして今、新たな大魔王が誕生したんだ」
 サタナトスとケイダンが、ティ・ゼーウスの背後から現れる。

「コイツは、お前の部下になったのか?」
「さあね。目覚めてみないコトには、解らないよ」

 瓦礫だらけの床に伏せった、男を見守る3人の少年。
やがて男は起き上がり、少年たちに蒼い目を向ける。

「目覚めたみたいだね。キミは、誰だい?」
 金髪の少年は、天使のような笑みを見せた。

「オレは、ミノ・ダウルス。神と悪魔の、申し子よ」
 男は均整の取れた美しい肉体を持ち、頭の横から2本の角が伸びていた。

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