ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第04章・13話

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ロボットの進化

 宇宙ゴミ(スペースデブリ)と化した、『漆黒の海の魔女』の残骸を抜け、航行を続けるMVSクロノ・カイロス。

「宇宙開拓時代を代表する、二大軍事企業の戦艦の群れが……」
「一糸乱れぬ陣形で、この艦に追従してる」
「ある意味、壮観な眺めだね」

「そんな悠長なコト言ってる場合じゃないだろ」
「オペレーター共の言う通りじゃねえか。艦長から、艦隊司令官に出世した気分はどうだ?」

「いいワケないだろ。どうすんだよ、こんな事態になって」
 人の不幸を喜んでいるプリズナーに、ボクはムッとした。

「あ、ウィッチレイダーさんたちが、帰ってきたよ、おじいちゃん」
 ボクの膝に乗ったままだったセノンが、立ち上がる。

「たっだいま~パパァ!」
「なんとか帰ってこれたぁ」
「死んじゃうかと思ったよぉ!」

 レオタードのようなスーツに身を包んだ娘たちが、ボクにジャレついて来た。

「全員無事だったか、お前たち!?」
 少女らしい柔らかい体躯や、きめの細かい肌、天使のような髪の毛が纏わり付く。


「うん。でっかいイルカに助けて貰った」
「アレ、ホタテ貝だったかな?」
「アリガトね。え~っと?」

 娘たちの視線の先には、クアトロ・テールの女性型アーキテクターがいた。

「トゥラン、助かったよ」
「いいえ。アフォロ・ヴェーナーだったかしら。この艦の装備が優秀だったお陰よ」
「それでも、娘たちの命の恩人に変わりはない。礼を言うよ」

「ずいぶんと謙虚な、艦長さんね。アナタも見習って、褒めてくれてもいいのよ?」
 トゥランは、プリズナーに視線を飛ばす。

「ケッ。お前なら出来て当然のコトを、褒めてどうする?」
「あら、そう。でもそれって、けっきょくは褒めてない?」
「う、うるせえ」

 恋人同士の様な会話を成立させる、プリズナーとトゥラン。
「人間とロボットが、ここまで自然に会話できるなんて、不思議なモノだな」

「おじいちゃんの時代だと、ロボットは無かったですか?」
「あったケド、まだまだ発展途上だったな」
 ボクは久しぶりに、二十一世紀のテクノロジー事情を思い出す。

「音声を認識して、それなりの答えは返せはする……」
「もうロボットとの会話が、出来てたですか?」

「いや、どうかな」
 会話の定義にもよるのだろうが……。
「ロボット自身に感情があって、自分で考えて答えを返すワケじゃなかったからな」

「へー、アタシたちのご先祖サマって」
「感情がなかったんだ?」
 見ると、トゥランの髪の毛から分離した、四体のラサが感想を述べていた。

『現在のロボットに該当する、アーキテクターやサブスタンサーには、感情がありますね』
「え、アーキテクターは解かるケド、サブスタンサーにも感情があるの?」

「そうだよ、パパ」
「だから、会話する感じなんだ」
「命令を無視されたり、怒られちゃう場合もあるケドね」

「乗っているロボットと会話……か?」
 二十世紀前後のロボットアニメにも、そんな設定のが何個かあったような……。

「人型に限らず、今付き従えてる戦艦たちも、一隻ずつがロボットで感情があるよ」
「それに造ってるのも、人間じゃなくロボットだし……」
「製造、修理からバージョンアップまで、やっちゃってるんだ」

「それって……ロボットたちに、生殖機能があって、進化までするってコトか?」
 真央、ヴァルナ、ハウメアのオペレーター三人娘の言葉は、衝撃だった。

「人間が、アーキテクターやサブスタンサーを生み出したんだよな?」
「だが今となっては、その仕組みや製造方法も、解からないってワケさ」

 どうやら千年後の未来のロボットたちは、人間の手を完全に離れてしまっているらしい。

 

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