ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第04章・12話

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巨大ホタテ貝

 宇宙に浮かんだ巨大なホタテ貝は、真珠色の輝きを放っている。

「対比物がこの艦くらいしか無いから、大きさがピンと来ないケド……」
「貝の大きさが、100メートルくらいある」
「も、もしかして、あのホタテ貝の正体って!?」

 真央、ヴァルナ、ハウメアの三人は、忠実にオペレーターの職務をこなしていた。

『はい、アフォロ・ヴェーナーの変形した姿です』
 ベルダンディは、艦橋に再び女神の姿で現れる。

『あの形態は、アンチブレイク・シェル・モードと言って、かなり強力な攻撃をも防ぎます。核融合の直近の爆発でさえも、耐えうる強度を持っております』

「あ、ホタテ貝が、開くのです!」
 ボクに圧しかかった、セノンが指さす。

「デ、デカいロボットだ。ホタテ貝の中から、大きなサブスタンサーが出て来た!」
「でも、銀色の肌に金髪……女神さまみたい」
「アレが、アフォロ・ヴェーナーの本体なのか?」

『アフォロ・ヴェーナーは、MVSクロノ・カイロスに搭載された、最大のサブスタンサーです』

「そ、それじゃあ、娘たちは……」
「全員、無事よ。まったく、世話の焼けるウィッチだこと」
 突然聞こえた声は、トゥランさんの声だった。

「パパァ!」
「エ~ン、怖かったよォ!」
「死んじゃうかと思ったぁ!」

 開いた貝から、娘たちのサブスタンサーが飛び出して来る。

「よかった。お前たち、全員無事なんだな」
 どうやら、巨大なシェルによって遮断されていた通信が、回復したらしい。
艦長の椅子に座ると、娘たちの意識が纏わりついて来る。

「よう、トゥラン。ずいぶんと面白そうな『オモチャ』を、手に入れたじゃねえか?」
「そうね、プリズナー。けっこう気に入ったわ」
 プリズナーとトゥランは、離れていても意識の疎通が可能な様だった。

『戦闘は終了いたしました。これより、戦闘に当たったサブスタンサーを収容いたします』
「ああ。頼んだよ、ベル」
 ボクは気が抜けたように、ヘタリ込む。

 宇宙空間を見上げると、残骸となった『漆黒の海の魔女』が漂っていた。

「これで……終わったのか?」
『まだです、艦長』
 ベルから、聞きたくない方の答えが返って来る。

『グリーク・インフレイムと、トロイア・クラッシックの無人艦隊が、間近に迫っております』

「そう言えば最初の目的って、二つの艦隊から逃げるコトだったよね」
「でも、時の魔女の艦を沈めた……」
「そっか。もう、コンピューターのジャックも、解けてるんじゃない?」

『残念ですが、ジャックは続いており、もうすぐ我が艦に追いつきます』
 ベルの言葉は、直ぐに現実となって裏付けられる。

「ど、どうすんだよ。赤や青の艦が、周りを取り囲んでるぞ!」
「でも、攻撃して来ない……」
「なんでだろ。むしろ、並走してるようにも見えるんだケド?」

 三人のオペレーターが言った通り、二つの巨大軍事企業の私設艦隊は、MVSクロノ・カイロスと同じ方向に進んでいた。

「オイ、どうなってやがんだ。まるでこの艦が、二つの艦隊の旗艦みてえじゃねえか!」
『どうやらウィルスが、自我を持っている様です。艦ごとの中枢回路に潜り込んだウィルスが、独自判断で我が艦を旗艦として認識しているモノと思われます』

「なあ、ベル。それってMVSクロノ・カイロスが、二つの艦隊をジャックして従えているように、見えないか?」
『ほぼ間違いなく、そう認識されるでしょう』

「ウソでしょ!?」
「宇宙艦隊を、二個艦隊従えてる……」
「そんなのが、グリーク・インフレイム社や、トロイア・クラッシック社にバレたら」

『時既に遅しですね。艦隊を撮影していた無人機の映像が、既に流されてしまってます』

 ボクたちはいきなり、とてつも無い外交問題を抱えてしまった。

 

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