ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第06章・11話

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宇宙豪華客船

「わたしも行きたいのに、ダメですかぁ?」
 栗毛クワトロテールのの少女が、残念そうな顔でボクを見ている。

「悪いがセノン。もう少しだけガマンしてくれ」
「はぁい。おじいちゃんが言うんなら、仕方ないですね」
 ボクたちは既に、MVSクロノ・カイロスのハンガー(格納庫)にいた。

 目の前にはゼーレシオンと、修復を終えたバル・クォーダの雄姿があり、その向こうには巨大なホタテ貝のアフォロ・ヴェーナーが鎮座している。

「では、会談に赴くのはわたくしと……」
「オレとトゥラン。それに……」
「ああ、ボクを合わせた4名で行く」

 セミラミスへはまず、交渉役としてボクとクーリアが決まり、プリズナーとトゥランが警護として同行するコトになった。

「何もクーヴァルヴァリアさま自らが、行くコトはありませんわ」
「カルデシア財団の跡を継がれる、大切な御身なのですよ」

「有難う、貴女たち。でもだからこそ、わたくしが行かなければならないのです」
 取り巻きの少女たちを説得する、クーリア。

『艦長が離れるのであれば、艦の指揮はお任せいただけますか?』
「ああ。頼んだよ、ヴェル」
 ボクはゼーレシオンに乗り込みながら、艦長としての権限を移譲する。

「ヒュッポリュテーとペンテシレイアは、それぞれの艦隊の指揮を頼む」
「了解だ、艦長」
「無事に帰ってきて下さいね」

 中学生くらいにまで幼くなってしまったアマゾネスの女王姉妹に、艦隊の指揮を任せた。

「それじゃあ、行こうか」
 ボクたちは、超大型の宇宙豪華客船・セミラミスへと向う。

「見ろよ。セミラミスの周りに、サブスタンサーやバトルテクターが大量展開してやがるぜ」
 バル・クォーダを駆る、プリズナーが言った。

「確かにな。何タイプか種類があるみたいだが……」
「赤やオレンジ色の機体がマーズ宙域機構軍の装備で、水色のがメルクリウス直属の部隊ね」
 真珠色の巨大イルカとなったアフォロ・ヴェーナーから、トゥランの解説が聞こえた。

「マーズ宙域機構軍は、100年前の設計の機体も混じってやがる。メルクリウスじゃねえが、流石に更新した方が懸命だろうな」
「見て、何機かこっちに近づいてくるわよ」

 接近してきたのは12機の水色の機体と、それらを率いる様に中央を飛ぶ、豪奢な装備のライトブルーの機体だった。

 周りの機体やゼーレシオンと比べても一回り大きく、30メートルくらいはあり、頭部には1本の長い角が伸びていた。
右手は何も持っていなかったが、左腕には獅子を模した黄金の巨大なシールドが装備されている。

「どうやらメルクリウスさんの、親衛隊みたいだな」
「残念ながら違いますよ、宇宙斗艦長」
 ゼーレシオンの触角が、聞き覚えのある声を感知した。

「そ、その声……まさか、メルクリウスさんですか!?」
「ええ、そうです。お出迎えに参上しました、宇宙斗艦長」
 中央の機体が停まると、周りの12機も時計の文字盤の様な円となって停止する。

「こ、これは、驚きました」
「驚いたのは、こちらですよ。まさか、艦長直々に交渉にいらっしゃるとは」
「彼女たちは、なるべく危険な目に遭わせたくありませんからね」

「フム……随分と、変わった艦長だ。おっと、これは失礼」
「構わんだろ。なあ、艦長」
 事実だと言わんばかりの、プリズナー。

「そうだな。では、ご案内いただけますか?」
「喜んで」
 13機の機体は、踵(きびす)を返しセミラミスへと向かった。

「これが、セミラミス……中に、滝や海みたいなプールまで見えるぞ」
 ゼーレシオンの高度な視覚センサーが、セミラミス内部のリゾート街を捉える。

「人類が生みだした、最高の宇宙豪華客船の1隻ですからね」
「こんな艦が、他にもあるのですか?」
「ええ、1隻は『ナキア・ザクトゥ』。そして、現在就航予定のもう1隻が……」

「メルクリウス、情報漏洩はそれくらいにして置くんだな」
 高圧的な声が、ボクたちの会話にいきなり割り込んで来る。

「ヤレヤレ、アポロ。こんな情報は、この時代の人間であれば 誰だって知っている事実ですよ」
「わざわざ1000年前の古代人に、教えてやる必要も無かろう」
「ハイハイ。解りましたよ、アポロ。みなさん、付いて来て下さい」

 メルクリウスさんの機体は、セミラミス下部のカタパルトデッキに吸い込まれて行った。

 

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