ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第06章・12話

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3人の取り巻き

 火星の新たなる衛星ハルモニアの前に現れた、宇宙豪華客船セミラミス。

「これは普段、どんな人たちが乗る船なんだ。この時代に、通貨と言う概念は無いんだろ?」
「まあ、完全に消滅したワケでもねえがよ。基本、誰だって乗れるぜ。犯罪者でも無い限りな」
 ボクの疑問を聞いた、プリズナーが言った。

「つまり本来なら、貴方は乗れないってコトね」
「ケッ、別にこんな低俗な艦、乗りたくもねえがよ」

「なあ、やはり『プリズナー(監獄の男)』ってのは……」
「当ったり前だろ。本名じゃねーよ」
 プリズナーの駆るバル・クォーダは、背を向けセミラミスへと吸い込まれて行った。

「踏み込んじゃ、マズかったのかな?」
「いいえ。いずれはあの人も、話すつもりじゃなかったのかしらね」
 プリズナーの相棒のアーキテクターは、まるで人間のパートナーのように呟く。

「トゥラン、キミとプリズナーは一体どう言う……」
「答えてあげてもいいんだケド、いずれあの人が話すと思うから」
「そう……か。そうだな」

 ボクは、ゼーレシオンでプリズナーの後を追った。

「艦長、アフォロ・ヴェーナーはここまでだから、クーリアをお願いね」
 巨大過ぎる真珠色のイルカは、全長2キロを超える巨大豪華客船と言えど、格納庫には納まらない。
その大きな口が開き、クーリアが降りて来る。

「も、申し訳ありません、宇宙斗艦長。実はこの子たちが、付いて来てしまいまして……」
 白地に派手な金色のエングレービングの施された宇宙服を着た、クーヴァルヴァリア。
その背後から、3人の少女が現れた。

「わたしは、シルヴィアと申します。館内での、クーヴァルヴァリア様の護衛が、プリズナー様1人では流石に心もとないと思い、強引ではありますが潜入させていただきました」

「わたしは、カミラです。処罰はクロノ・カイロスに戻って後に、甘んじて受けます。どうか、セミラミスへの同行を許可願いたい」

「フ、フレイアと申します。足手まといにはなりませんので、どうかご許可を!」
 3人の少女は、ボクに懇願する。

「クーリア、彼女たちは護衛としてどうなんだい?」
「シルヴィアとカミラは元々、腕を見込まれてわたくしに付きました。フレイアも、情報戦は得意ではありますが……」

「なら、問題ないんじゃないかな。キミの身も心配だしね」
「ですが、相手はただの護衛程度で、どうにか出来る相手では……」

「どうにか、しなきゃならない。キミやセノンたち全員を、引き渡さなくちゃいけないんだからね」
 ボクにはアポロの誤解を解き、ハルモニア女学院の生徒たちを故郷に還す任務が待っていた。

「艦外の警護は任せたよ、トゥラン。キミに判断ミスは無いと思うが、何かあったら適時対処してくれ」
「ええ、わかったわ。艦長、プリズナー、貴方たちこそ気を付けて」

 ゼーレシオンとバル・クォーダを、アフォロ・ヴェーナーへと格納し、セミラミス格納庫に降り立つ。

「メルクリウスや護衛のサブスタンサー以外にも、かなりの数の機体が配備されてんな」
「ああ。これじゃまるで、軍艦じゃないか」
「とても、リゾート艦には思えませんわね」

 すると金属の両開きのドアが開き、中から銃を所持したアーキテクターが複数現れ、いきなりボクたちを取り囲んだ。

「クーヴァルヴァリア様!」
「我らの後ろに、お下がり下さい」
 主を護る様に身構える、シルヴィアとカミラ。

「これは、随分と大そうな出迎えだぜ」

「両手を上げるって行為は、今でも通用するのかい?」
「それは、相手次第ですわ」
 フレイアを抱きかかえながら答える、クーリア。

「なる程。いつの時代も、変わらないんだな……」
 ボクはアドレナリンを大量分泌させつつも、相手の様子を伺った。

 アーキテクターたちは、合計で20体以上は居る。
フリッツヘルムのような金属の兜に、身体はネービーブルーのロングコートを纏い、両腕にはアサルトライフルの様な形状の銃が装備されていた。

「ようこそ、おいで下さいました」
 アーキテクターたちの輪が解け、ドアまでの間に道が開ける。

「会議までには、いささか時間がございます」
「宇宙服にての出席は、流石にご遠慮いただきたいので、こちらへ……」
 アーキテクターたちはその両端に、銃を抱え直立不動で並んだ。

「これだけ見た目と行動が、乖離しているのってどうなんだ」
「ま、この艦の主は悪趣味ってコトだろ。なあ?」
 プリズナーは、クーリアの顔を見る。

「そうですわね。相変わらず、趣味の悪い義姉のようです」
 クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダは、確かにそう言った。

 

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