セノーテの攻防戦
セノーテの底へと辿り着いた真央やセノンは、そのまま格納庫(ハンガー)へと走り続ける。
かつての北アメリカの山岳高地に広がる岩窟は、天然の要塞基地となっており、水路を辿って海に出るコトも出来た。
「アフォロ・ヴェーナーが、ホタテ貝(シェル)モードになってる。アタシらのサブスタンサーを、直ぐに出せるようにしてくれてるんだ」
軍港の格納庫に納まり切らない、巨大な真珠色のホタテ貝を指す、真央。
旧式の潜水艦やサブスタンサーと共に、アフォロ・ヴェーナーが巨大な貝の口を広げ、鎮座していた。
「流石は、トゥラン……」
「それじゃ、急ごう。味方に、踏み潰されないウチにさ」
ヴァルナやハウメアの走る横を、ジャガーの頭をしたサブスタンサーがすれ違い、走り去って行く。
格納庫へと入った4人は、アフォロ・ヴェーナーに格納された、それぞれの機体へと乗り込んだ。
「オッシ。なんとか踏み潰されずに済んだぜ」
コミュニケーションリングに、細いケーブルの付いたロケットを差し込み、サブスタンサーと意識を同化させる、真央。
「おじいちゃんが帰って来る場所を、護って見せるのです!」
セノンも、ピンク色のサブスタンサーと自らを同化させた。
「貴女たち、聞こえるかしら」
すると、コミュニケーションリングを通して、女性の声が聞こえた。
「その声、トゥランさんか?」
巨大な真珠色のホタテ貝を見上げる、真央の蒼いサブスタンサー。
「わたしは今、アフォロ・ヴェーナーで避難民を収容しているわ。万が一のときに、備えてね」
「万が一の、とき……」
「それって、このセノーテが墜ちるときだよね」
「あくまで、最悪のシミュレーションよ。人命は、なにより最優先だから」
ヴァルナとハウメアの不安を、和らげようとするトゥラン。
「プリズナーは、艦長の6人の娘と共に地下トンネルに向かったわ。貴女たちは、上に向かってセノーテを護ってくれるかしら」
「アフォロ・ヴェーナーは、護衛無しで大丈夫なのかよ?」
「心配には及ばいないわ、真央。護衛なら、ちゃんと確保してあるわ」
「アタシらの他に、まだ誰か残って……」
「ラビリアたちが、居るラビ!」
「メイリンたちが、しっかり護るリン!」
真央やセノンらのサブスタンサーの前に、新たに2機のサブスタンサーが現れる。
1機は、鳥の頭に白い翼を持った機体で、もう1機は魚の下半身に三又の槍を持った機体だった。
「そっか、ラビリアとメイリンが居たのですゥ!」
「忘れるなんて、ヒドいラビ!」
「でも、避難民のひとたちは任せてリン」
「こんなときのために、汎用のバックアップ機体を改造して、2人用にチューンナップして置いたのよ。それでも敵の侵攻が激しかったら、クラムシェル(閉じた貝)モードに移行するから、心配はしないで」
「了解だ、トゥランさん。セノン、みんなも聞こえたな」
「了解したのですゥ」
「作戦は、理解した……」
「セシルさんたちだけで、戦ってるんだ。急がなきゃね」
4機のサブスタンサーは、格納庫の上にあるセノーテに向かって、移動して行った。
「なんだってんだい、この大量の数は」
「気色悪いったら、ありゃしないね」
「クモにハチドリ、サギやサルまで居るよ」
その頃、セシル、セレネ、セリスの3姉妹のジャガーグヘレーラーが、セノーテの壁面に付いた様々なカタチの敵に対して、アサルトライフルを乱射していた。
銃弾を喰らい、ハチの巣にされてセノーテの底面に落下して来る、巨大蜘蛛や巨大なハチドリ。
それでも数は減らず、数機の巨大ザルがセシルたちのサブスタンサー目掛けて、落下攻撃を仕掛けて来た。
「ヤ、ヤバい……」
「周りが、クモどもの残骸だらけで、避けきれ……」
「うわああぁぁ!」
3姉妹の脳裏に、死が過ったとき、襲い掛かったサルたちは、空中に押し出されて爆散する。
「フウ、なんとか間に合ったぜ」
爆炎が晴れると、そこには真央の蒼いサブスタンサーが立っていた。
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