宇宙の激闘
「止めろ、ペンテシレイアさん。剣を収めてくれ。キミの部下はもう……」
木星のラグランジェポイントでの戦闘。
辺りには、無数の機体の残骸が漂っていた。
「もはや引くことは出来ません。我々は、人間に反旗を翻してしまったのです」
金色のサブスタンサーは、部下の全てを失いながらも、勇猛う果敢にボクに突っ込んでくる。
「優秀な貴女なら、解かっているだろう。反乱は失敗したんだ」
「なればこそ我らアーキテクターは、引くコトを許されないのです。人間は、反乱を起こしたアーキテクターを、許すとお思いですか、艦長?」
「だったら、ボクたちの艦に来ればいい。キミたちは既に、ボクやセノンたちの仲間になっているハズだ。一緒に、ハンバーガーを食べたじゃないか」
「もう 遅いのです、艦長。既に部下たちは……」
「ええい。何をほだされている、ペンテシレイア。イーピゲネイア様の悲願を、忘れたか!」
ボクとペンテシレイアの間に、彼女の姉が割り込んで来た。
「わたしの部下は、その男に討たれたのだ。部下たちの無念を晴らすまで、我らの戦いは終わらない」
ヒッポリュテーのケンタウロス型のサブスタンサーが、ランスを構え突進してくる。
「フ、フラガラッハァ!!」
後方に下がりながら、全てを切り裂く剣で彼女のランスを両断する。
「舐めた真似を……だがわたしの攻撃は、まだ終わらんぞ」
「しまった、右手を!?」
エポナス・アマゾーネアが、ボクの右腕を掴んで剣による斬撃を阻んだ。
「ペンテシレイア、今だ。コイツの背中を狙え」
ボクのゼーレシオンは、強引に背中を向けさせられる。
「わ、解かったわ、ヒュッポリテー」
そこにスキュティア・アマゾーネアが突っ込んで来た。
「やらせるかってんだ。お前たちの相手は、艦長ばかりじゃねえ」
プリズナーのバル・クォーダが、背骨のような鞭を振るって、ペンテシレイアさんのスキュティア・アマゾーネアを攻撃をする。
「お前の動きなど、読めている。アマゾネスを、舐めるなァ!」
スキュティア・アマゾーネアのスカートが、蛇腹状に展開して、バル・クォーダの鞭を跳ね返した。
「何をしているの、プリズナー。しっかりしてよ」
トゥランが相棒を叱責しながら、アフォロ・ヴェーナーでボクを援護しようとする。
その時、宇宙空間に幾重にも閃光が走った。
「な、なに。新手なの!?」
巨大なイルカは、大きく被弾し体制を崩した。
「きゃあああああ!?」
「うわあああッ!」
セノンや真央の悲鳴が、ゼーレシオンの巨大な触角を通じて聞こえる。
「イーピゲネイア様、感謝いたします」
ペンテシレイアさんが、そう呟きながらボクの背中にランスの刃を向けた。
「まだだ、ペンテシレイアさん。ゼーレシオンには、盾もあるんだぞ」
「そんな盾、粉砕してくれようぞ」
宇宙空間で、盾と矛が激突する。
「ぐあッ!」
「クッ!?」
その物理的な衝撃で、3機はバラバラに弾け飛んだ。
「お、おじいちゃん、大丈夫ですかァ!?」
「セノン、キミたちこそ無事か?」
「アフォロ・ヴェーナーは、一部装甲まで破壊されているわ」
「イルカは、ホタテ貝みてーに頑丈じゃねぇのかよ」
「推進力を高めるために、装甲の間に隙間が出来るみたいね」
「トゥラン、キミたちは一端引いてくれ」
「で、でも艦長。アレを見て」
そう言われて、ボク(ゼーレシオン)の巨大な瞳は、新たな敵の姿を確認する。
「イービゲネイアさん……なのか?」
「いよいよ今回の反乱の、黒幕のお出ましってワケかい」
そこには1機のサブスタンサーが、宇宙空間に優雅に立っていた。
長いオーロラの様に輝く髪と、細身の身体をしている。
「大きさからして、オレのバル・クォーダや、お前のゼーレシオンと同じ、キュクロプス・サブスタンサーに分類される機体だな」
「ああ。それが、アフォロ・ヴェーナーの装甲を貫いたのか……」
「ええ、そうです。我が狩りの女神の、光の矢を……味合わせて差し上げましょう」
イーピゲネイアさんの機体は、光の弓をつがえた。
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