ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第9章・EP043

敗戦

「ウオオオォォォォーーーーーーーーーッ!!!」
 強敵MIEを相手にゴールを決め、雄叫びを上げる黒狼。

「よく決めたな、クロ!」
「偶然にしちゃ、出来過ぎやで!」
 黒浪さんの元へと、紅華さんと金刺さんが駆け寄って抱き付く。

「確かに角度は、まったくありませんでした」
「ああ。迷いの無い思いきりの良さが、産んだ結果だろうな」
 雪峰さんと柴芭さんは、苦笑いをしながらシュートを分析していた。

「御剣隊員の、頑張りが起点となったでありますな」
 背中から、杜都さんが声をかけて来る。

 ボクだけの力じゃない……ボクは、首を振った。

 ボクの行き詰まったボールを、紅華さんが反応してくれて、金刺さんに繋げてくれたから。
その前にも、バックラインのみんなが頑張ってくれたからだ。

 スコアボードの、9の隣の1が2へと変えられた。
MIEのサポーターたちのテンションも、少しは下がったように見える。

「クッ! アイツのシュートに、反応すら出来なかった!」
 キーパーグローブで、芝生のグランドを殴りつけるアグスさん。

「オメーのせいじゃ無ェよ、アグス。お前は、最初のシュートを防いだ。ルーズボールに先に触られた、オレの責任だ」
 黒浪さんのシュートを許した、クラスさんが言った。

「いいえ、オレの立て直し(リビルディング)が遅れたからです。ヨーロッパのトップレベルのキーパーであれば、とっくに立ち上がってシュートに反応してますよ!」

「その通りだ、2人とも。細かい部分の甘さが、今の失点に繋がったんだ」
 ゴールの中に転がった、ボールを拾い上げるカイザさん。

「オレとて、あの状況からシュートは無いなどと判断してしまった。まったく自分でも、判断の甘さに呆れるレベルだ。地域リーグレベルならばと、油断もあったと思う。これからはキャプテンとして、フルミネスパーダMIEの甘さを1つ1つ潰して行く」

「まったく、オメーは相変わらずストイックなヤツだぜ」
「でも、上に行くためには必要なんだよね、カイザ」
 クラスさんとマグナさん、2人の相方センターバックが言った。

「フッ。この試合まだ、残り時間はたっぷりとある。まだまだ攻めるぞ!」
 カイザさんが、そのままセンターサークルまで歩いて行き、ボールをセットする。

 MIEの猛攻が、再びボクたちデッドエンド・ボーイズを襲った。
直ぐにスコアボードの片方が、2桁に突入する。

 ボクはと言うと、試合途中で交代を命ぜられる。
体力的に限界を迎えていた、紅華さん、金刺さん、黒浪さん、雪峰さんが交代し、汰依(たい)さん、蘇禰(そね)さん、那胡(なこ)さんらが出場した。

 けれどもMIEの猛攻は止まらず、最終的に2-14と言うスコアが刻まれる。

 ボクはベンチで、頭からタオルを被って座っていた。
ポタポタと、地面に汗が落ちて行く。
落ちた汗が広がって、コンクリートの地面を濃い色へと替えた。

「行くぞ、一馬。試合終了だ」
 倉崎さんが、ボクの頭をポンと叩く。

 1際たくさんの汗が、地面に落ちた。

「……はい」
 どうやらそれは、汗だけでは無かったらしい。

「これが、今のウチの実力ね。殆ど高校生のチームが奇跡的に勝ち続けてたケド、今までが出来過ぎだったね。これが、現実よ」
 帰りのバスで、セルディオス監督が長々と説教を続けていた。

 ピッチに何度も転がった海馬コーチも、眠気を必死に堪(こら)えてバスを運転してくれている。

 でも監督の言葉は、誰の頭にも入っていない感じだった。
ディフェンスラインの3人などフル出場したメンバーは、疲れ過ぎて寝てしまったらしい。

 顔を上げると、橋の向こうにオレンジ色の夕日が沈んで行く。

 悔しさを詰め込んだバスは、ホームタウンである名古屋の清棲(きよす)へと帰って行った。

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