ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・87話

蒼い炎

 大魔王ダグ・ア・ウォンの持つ、3叉の剣トラシュ・クリューザーによって放たれた、水の大魔法アトラ・ハ・ジース。

「我は、サタナトス様の剣によって、大いなる能力を与えられた。次元迷宮(ラビリンス)のミノ・リス王よ。キサマが無事でも、キサマの兵と民は、我が押し流してくれるわ!」

 大魔法は、闘技場全体を包み込むホドの、莫大な水量の水柱を生み出した。
水柱は、激しく渦を巻きながら唸りを上げて、地上の闘技場へと落下する。

「マ、マズいのじゃ。このままでは、闘技場どころか島全体が洪水に見舞われるぞ!?」
 上空に飛んだルーシェリアだったが、落下する巨大な水の渦を前には成す術(すべ)が無かった。

 闘技場では、舞人がガラクタ剣を展開する。
ゴタゴタと貼り付いていた幾つものパーツが剥がれて、剣身の周囲を回転し始めた。

「これを喰らったら、島が水で飲み込まれてしまう。そうなったら、また大勢の人が死ぬんだ」
 身体を強化して、観客席からジャンプする舞人。
超人的なジャンプで、堕ちて来る水柱の渦に迫った。

「ジェネティキャリパー!!!」
 青白い光を放つ剣身が、1層光り輝く。

「オ、オイ。シェルターの外が、なんだか妙に明るく無ェか?」
 ルスピナの召還した水の高位精霊が作り出した、水のシェルターに避難したティンギスが言った。

「そ、そうだな。水の壁が、光り輝いてるぜ」
「どう言うコトだ。外で、何が起こっている?」
 レプティスとタプソスも、訝(いぶか)しむ。

「舞人さんが、戦っているんです……」
 ルスピナが、言った。

「オメェ、外の様子が判るのか?」
「このコは、わたしと心を1つにしていますから」
 水の高位精霊メガラ・スキュレーと、1体化しているルスピナ。

「今、舞人さんは、自身の剣の能力で身体を強化して、上空に向けジャンプをしました。堕ちて来る水の渦を、迎え撃つつもりなんです」

「そ、そんな、ムチャな!」
「いえ、船長さん。もしかしたら、なんとかなるかも知れません」
 シェルターとなった水の精霊の顔が、上空を見上げる。

 水柱の渦へと迫る、舞人。
その手にした青白く輝く剣で、渦巻きの中心を突き刺した。

「消えて、無くなれェーーーーッ!」
 ジェネティキャリパーの剣身から、青白い閃光が放たれる。
閃光は、水柱の渦の中心に小さな穴を穿(うが)ち、そのまま上空へと突き進んで行った。

「な、なんだッ!?」
 ダグ・ア・ウォンが、下から登って来る閃光に気付き、寸前で身を翻(ひるがえ)す。

 巨大な渦の中心に小さく開いた穴は、次の瞬間1気に大きさを広げた。
水柱の渦の中に、同心円状に広がって行く空間。

「み、水柱が、中心からくり抜かれた様に、消えて行くのじゃ!?」
 空を舞うルーシェリアが、紅い目を見開き驚いていた。

「わ、我のアトラ・ハ・ジースが、蒸発させられただと。この能力は……」
 クレ・ア島の遥か上空に居た大魔王は、下を見降ろす。
そこに水柱の渦は存在せず、青い髪の少年が闘技場に向け落下を始めていた。

「蒼い……炎じゃと?」
 そう呟いたルーシェリアは、コウモリの翼を広げ急降下を開始する。
空中で舞人をキャッチすると、そのまま闘技場の観客席に着地した。

「気を失うホド、能力を使いおって。その能力は、危険と言うておろうに……」
 舞人を客席の椅子に寝かせる、漆黒の髪の少女。

「グハハッ、面白い余興であったわ。流石は、サタナトス様が、1目置く存在よ!」
 大魔王ダグ・ア・ウォンは、鉤爪の生えた蒼いウロコの巨大な翼を広げる。

「青き髪の勇者よ、次の戦いを、愉しみにしておるぞ」
 大魔王は、そのまま空の彼方へと消えて行った。

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