ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第04章・第09話

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天空教室(ドールハウス)の人形たち

「そう……だな。だがそれは、ユミアのせいじゃない」
 ボクは、新兎 礼唖に向かって言った。

「わ、わかっています」
 正義を重んじる少女は、冷静さを失っていた自分を顧みる。
「ゴメンなさい、ユミア。アナタを責めるつもりは無かったのよ」

「いいえ、ライア。ユークリッドを造った一人であるわたしも、非難されてしかるべきよ」
 精神的に打たれ弱そうな少女が、無理をして虚勢を張っているように見える。

「今はわたしも、生活や生計をユークリッドに依存してる身よ」
「だねェ。ユークリッドから、お金まで貰っちゃってるし」
 ライアの言葉に、レノンが反応した。

「ユミアの部屋に居候してるモンね、ボクたち」
「まさかこんな高級マンションに住めるなんて、思ってもみなかったよ」
 カトルとルクスの双子姉妹が、合わせ鏡のように顔を見合わせる。

「ですがユークリッド・ニュースイノベーションは、かなりのマスコミを敵に回してますわよ。これではわたくしたちも、白い目でみられかねませんわ」
「そうですわね、お姉さまの仰る通りですわ」

 美を重んじるアロアとメロエの、ゴージャスな体の双子姉妹の指摘。
それはボクも、懸念するところだった。

「スマンな、みんな。アタシが事件なんか起こしたばかりに……」
「そ、それはわたし達を、助けてくれたからでしょ。お姉さま」
「タリアお姉さまが悪いワケじゃ、ありません」

 タリアの周りに群がった七人の少女は、フードの少女を擁護する。

「ですが瀧鬼川 邦康弁護士も、このまま引き下がるとは思えません」
 アイボリー色の髪の少女が、合理的な意見を述べた。
「マスコミも対抗して、わたし達の顔出しまでしてくる可能性もあります」

「メリーの言う通り、公共の電波を使うテレビならともかく、ゴシップ誌ならやりかねないな」
 ボクは、生徒たちを見渡す。

「今居ないのは、キアだけだな?」
「そうよ」
「マンションの周囲は、マスコミで埋め尽くされてるから、入ってこれないのかも知れない」

 もしくは昨日の彼女の様子から、別の理由も考えられた。

「誰かキアのスマホに、連絡できたりしないか?」
「そんなの、とっくにやってるわ。でも、出ないのよ」
 ユミアによれば、SNSにも反応は無いとのコトだった。

「おや。これは何か、問題でもあったのかい?」
 そんな折、久慈樹社長が天空教室に入って来た。

「何よ、また嫌味でも言いに来たワケ。ヒマな社長ね」
「フッ、相変わらずだね、キミは。けど今日は、別の理由があって来たのさ」

 すると教室に、カメラや照明機材を持った人間が押し寄せる。

「何のマネよ。コイツら、マスコミ連中じゃ無いわよね!」
「ああ、ウチのスタッフさ」

「まるで動画撮影でも、しそうな人たちですね。久慈樹社長」
「その通りさ。キミの授業風景を、動画にしようと思ってね」


「はあ? なに言ってんの、アンタ。そんな勝手は、許さないわ」
「動画にすれば彼女たちの顔を晒し、プライバシーを侵害するコトに……」
 ボクたちの反論に、久ユークリッドの代表取締役は口元を緩めた。

「言ってなかったかな。彼女たちとは、元々そう言う契約なんだよ」

「え……?」
「そ、そんな。ウソでしょ!?」
 ボクとユミアは、天空教室の生徒たちの顔を見る。

「まあ、そうなんだ。仕方ないんだよ」
「みんな、家庭になんらかの問題を抱えてるから、契約を結んでいるんです」
 レノンとライアが答えた。

「そう言うコたちを、かき集めたからね。当然さ」
「ア、アンタってヤツは、どこまで……」

「だから美乃栖 多梨愛。彼女の不祥事だって、気にするコトはないんだよ」
「アナタは当初から、タリアの不祥事を穏便に済ませる気など無かったのですね」
「穏便に済ませてしまえば、誰も動画に喰いつかないだろ?」

 久慈樹社長は、教壇に立つボクを押しのけ、生徒たちに演説する。

「今日からキミたち全員が、ユークリッドの天空教室というドラマの主人公だ。どんどん問題を起こし、ハデに暴れてくれたまえ」

 

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