ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第17話

天空のアイドルVS冥府のアイドル

「当初の予定では、彼女たち13人はそのままアイドルとしてプロデュースする予定だった」
 ステージの上の久慈樹社長が、最初に思い描いていた計画を語る。

「天空教室で、授業など受けるコト無く……と言う意味でしょうか?」
「ああ、そうだとも」
 派手なスーツを着た男が、両腕を高らかに挙げた。

「ボク自らが、プロフィールや過去を見て厳選した、13人の少女たち」
 ドーム会場の外縁部が明るくなり、空中ステージが新たに幾つも出現する。

「彼女たちは誰もが、従来の義務教育が失われたコトで家庭が崩壊したり、義務教育の場である学校でイジメを受けたりで、心に何らかの傷を負っていた」
 ユミアのを入れて、12の空中ステージがドームの円に沿って等間隔に並んだ。

「当初はそのまま、ユークリッドのネットアイドルとして売り出す予定だったのさ」
 空中ステージには、アリスやタリアら生徒たちが1人ずつ立っている。
カトルとルクス、アロアとメロエは2人で同じ空中ステージに立っていた。

「旧来の教育や教民法によって、心に傷を負った彼女たちが、ユークリッドでアイドルとして成長する姿を見せれば、旧来の義務教育を否定するコトに繋がると、考えたのですね……」

「まあ、そんなところだよ。流石に優秀だね、キミは」
 少しだけ渋い表情を浮かべる、久慈樹社長。

「だが、そこにキミが現れた」
 ガラスの塔のパネルには、ボクと久慈樹社長の顔が映っていた。

「ユミアがボクを雇ったとき、イイ噛ませ犬が来たのだと思ったのでしょうね」
「もちろんさ。だからボクは、自分の計画にキミを付け加えるコトに決めたんだ」

 優越感に浸る男と、唇(くちびる)を噛む男。
観客たちは、社長とボクの対決に集中し始めていた。

「つまりキミは、旧来の義務教育の象徴なんだ」

 声高に宣告する、ユークリッドのオーナー。
その時を境に、ボクは観客たちから古き時代の教育を信奉する狂信者とされた。

「ネット教育VS旧来の義務教育か」
「面白そうな対決ではあるな」
「だけどオレは、アイドルのライブを見るために、会社を午前中で切りあげて来たんだぜ」

 観客席から、期待と不満の入り混じった声が聞えて来る。
空中ステージに立ったままの生徒たちも、不安そうな表情を浮かべていた。

「彼女たちがテストを受けている間、観客たちはテストの様子を見守っているだけですか?」

「無論、そうも行くまい。だから、替わりになるアイドルを用意した」
「替わりになる、アイドル……ユミアやレノンたちのコトですか?」

「イヤ、違うね。ユークリッドのアイドルとして、新たな少女たちがデビューする」
 久慈樹社長の背後のタワーが、虹色の光を放つ。

「ユミアたちが天空のアイドルなら、彼女たちは冥府のアイドルとでも命名しようじゃないか」
 タワーのガラス面に映る、大勢のアイドル少女の姿。
その中には、見覚えのある顔もあった。

「卯月さんに、花月さん、由利さん!」
 卯月 魅玖(うずき みく)、花月 風香(かずき ふうか)、由利 観礼(ゆり みらい)の、アイドルとしてメイクアップされた顔が映っている。

「そ、そんな……どうして!」
 気になって空中ステージを見上げると、アリスが怯えていた。
3人から凄惨なイジメを受けた彼女は、動揺を隠せないでいる。

「久しぶりだね、先生」
「まさか、こんなカタチで再会するなんて、思っても見なかったよ」
「アリスやユミアの教師になってたなんて、ぜんぜん知らなかったしね」

 振り返ると、塔の最下部にあるドアが開き、3人のアイドル少女が現れた。

「それは、ボクも同じさ。今のキミたちがの姿を、想像だにしていなかったよ」
 3人のアイドルに、返答するボク。

 同じボロアパートに暮らし、一緒にキアたちのライブを見に行った卯月さんに、花月さん、由利さん。
今はまるで別人のような瞳で、ボクを見ていた。

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