ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第04章・第08話

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群がるマスコミ

「まったく、利用規約なんか全部読む人がいるなんて、呆れてモノが言えないわ」
 栗色の髪の少女が、ボクに向かってため息を付いた。

「キミがアナログが苦手なように、どうもボクはデジタルが苦手なんだ」
「べ、別にわたしは、アナログ苦手じゃないケドね」
 隣を歩くユミアが、腕を組みソッポを向く。

 直線と直角で構成された四角いオフィスビルは、後ろに小さくなっていた。

「でもキミが、久慈樹社長に助言するなんて、意外だったな」
「そ、そうかしら。別に助言なんて偉そうなモノでも無いわ」

「いや、デジタルが苦手なボクでも、的確な助言だってコトは理解できたよ」
「アイツは嫌味で悪趣味なヤツだケド、プログラミングやデジタルアプリの開発に関して凄腕なのは、認めてるってだけ」

「社長としても、中々のやり手だと思うケドな」
「そうね。でもアイツは、わたしを追い出したがってるのよ。ユークリッドを私物化する為にね」

 果たして、本当にそうなのだろうか?
「アレだけの助言をできるキミを、解雇するほど彼は愚かじゃないと思うが……」

「ん、なにか言った?」
「イヤ、何でもないさ」

 ユミアを解雇する気はなくとも、ボクを解雇する理由などいくらでもある。
天空教室に戻って、生徒たちにできるコトを精一杯しようと思った矢先。

「せ、先生。マンションの前に、人だかりが!?」
「どうやら、マスコミ連中のようだな」

 円筒形の高層マンションの前には、カメラなど取材機材を持った大勢の報道陣が、今回の事件についてインタビューを取ろうと待ち構えていた。

「セキュリティや監視カメラ、ガードマンで固められた本社ビルよりも、キミのマンションの方が攻略し易いと踏んだか」
「ど、どうしよう。このままじゃ、天空教室に行けないわ」

「よし、地下駐車場から入ろう」
 やはり、取材を受けるのを嫌がっている感じのユミアの手を取り、逆方向の大通りに出るとタクシーを拾った。

「このままマンションの、地下駐車場に入って下さい」
「ええ、アソコはユークリッドのマンションなんですよ!?」
「わたし達、関係者なのよ。早くして」

 タクシーは、少女の指示通りにマスコミの車列の間を縫うように走り、地下駐車場へと雪崩れ込む。

「お釣りはケッコウですので」
「これはどうも」
 ボクたちはタクシーを見送ると、エレベーターに向かった。

「デジタルはダメダメなクセに、こう言うところはこなれてるわね」
 虹彩認証でセキュリティチェクをする、ユミア。

「キミとは正反対だな。とりあえず、天空教室に行こう」
 エレベーターは、眼下に群がったマスコミのサイズを、どんどん小さくした。

「あ、先生にユミア。大変なんだ!」
 天空教室の部屋に入った途端、レノンの大きな声が響く。

「玄関にマスコミ連中が、押し掛けてるんだ。これじゃ外に出られないよ」
「仕方ないさ。全員居るのか?」

「キアがまだ戻ってないよ、先生」
「昨日の夜も居なかったんだ」
 カトルとルクスの双子姉妹が言った。

「ゴ、ゴメン、先生。言うべきだったわ」
「いいさ、ユミア。きっと、家に帰ってるだろう」
 昨日のキアの様子から、何となく想定はしていた。

「キアの他は、全員居るか」
 とくに気になったのは、事件の被害者であるテニスサークルの少女たちだった。

「アステ、メルリ、エレト、マイヤ、タユカ、カラノ、アルキ」
「全員居るよ、先生。でも……」
 タリアが、七人の少女たちを抱き慰めている。

「お、お姉さま!」
「あ、あんな動画が……」
「もうイヤァ!」

「酷い仕打ちです。一度ネットに拡散されてしまった動画は、もう……」
「そうだな、ライア」
 正義を重んじる少女にとって、それは許しがたい行為に他ならなかった。

「動画が拡散したのは、ユークリッドのニュースのせいでもあるのよ!」
 ライアの放った言葉に、ユミアは大きく瞳を見開いた。

 

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