ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第11章・第34話

捜査の順番

「ハリカさんの首が発見された寺の現場にて、吾輩は警部と検証を行った。現場では当時、タミカさんが倒れて発見されおり、人命を優先したために大くの人の足跡が残ってしまっていた」

 マドルが、嗅俱螺 墓鈴架(かぐら ハリカ)の首が発見された現場の、捜査状況を説明する。

「現場に残された、複数の足跡。この中に、マスターデュラハンの足跡もあるハズだ」

「だが、マドルよ。現場は、タミカさんの救助を優先したため、かなり荒らされちまっている。この中から、マスターデュラハンのモノを特定するのは、骨が折れそうだぜ」
 警部の声が、捜査が困難なコトを伝えた。

「例えどんなに困難でも、やらなければならないよ。まずは当時の現場に居た人物の、靴を特定するところから始めよう」
「そうだな。現場の封鎖が遅れたのが、致命傷にならなきゃイイが……」

 墓場セットの舞台は、暗転する。
再びセットが浮かび上がるが、背景は紅く染まっていた。

「なんとか、関係者の履いていた靴は洗えたぜ。タミカさんのモノ、駆けつけた医師や警官たちのモノを除くと、この大きな足跡が浮かび上がったな」

「イヤ、警部。他にも不明な足跡が、あるじゃないか」
 マドルが、反論する。

「そりゃ、問題外だろう。寺の入り口付近の、たった1、2歩だぜ。首の発見現場からはかなり離れた場所だし、しかも大きな足跡の下敷きになって、消えちまっている。大方、近所の子供のモノだろう」

「吾輩も、そう思うよ。この足跡は、子供のモノさ」
 舞台のマドルは、地面を探る仕草をしていた。

「マスターデュラハンの足跡は、この大きな足跡で間違いはあるまい。靴跡は、くっきりと残されている。警察は、靴の特定に動くぜ」

「ああ、そうしてくれ。吾輩は、この周囲の聞き込みを行ってみる」
 マドルは、墓場セットの舞台を歩き始める。
舞台セットの、背景の紅はスミレ色へと変化し、数多の星が煌めき始めた。

「マドル、こんな時間まで何処ほっつき歩いてやがったッ!?」
 警部の怒声には、心配の感情が潜んでいる。

「聞き込みと、言って置いたじゃないか」
「そんで、有力な情報は得られたのか?」
「有力とまでは行かないケド、それなりにね……」

「マドル。ここんトコ、オメー無理し過ぎだぜ。シャワーでも浴びて、休め。今度はオレが、付きっ切りで張ってやっからよ」
「跳んだ、変態オヤジだね。姪の裸に、そこまで興味があるなんて知らなかったよ」

「お前なあ。そりゃガキの頃に比べりゃ、多少はデカくなってたが……あ痛テッ!?」
 警部の頬には、マドルの手形でも付いたコトだろう。

「ところで、警部。伊鵞 重蔵(いが じゅうぞう)氏の遺産とは実際、どれだけの金額なんだい?」

「竹崎弁護士の同僚の話じゃ、地方の予算に匹敵するレベルだそうだ。マスターデュラハンで無くとも、遺産を欲している連中は大勢居るだろうよ」

「吾輩は、順序を間違ったのかも知れない」
「順序……って、なんのだ?」

「捜査の、順番さ。吾輩は、ハリカさんの首の捨てられた寺を捜査した。だが、殺人が行われたのは、この館の彼女の部屋だ。モチロン、雨風に晒される屋外の現場を、優先したと言うのはあるケド……」

「ハリカさんの惨い死に様を、見たくは無かったんだろう」
「ああ……吾輩は、探偵失格だ」
 項垂(うなだ)れる、マドル。

「心配すんな。そっちだって、検死のプロや刑事が検証を行ってんだ」
「ハリカさんは……どんな状況だった」
「オメエ、それはだなァ」

「イイから、聞かせてくれ。彼女を救えなかった吾輩には、聴く責務があるんだ!」
「ああ、わかったよ……」
 警部の声には、いつもの勢いが完全に失われていた。

「ハリカさんは、首の無い状態で発見された。前日に着ていたドレス姿で……な」
「そこまでは、聞いている。彼女は、ロウソク立てに串刺しにされていたのだろう」

「ああ、そうだ。局所から、無くなった首の食道にかけてロウソク立てが突き通っていて、ご丁寧にロウソクまで灯されてやがった」

「出血は……どうだった」
 悲痛な面持ちの、マドル。

「検死や鑑識の話じゃ、内股には大量の血痕がこびり付いていたし、スカートの内側にも血が付着していた。だが、首からの出血は僅かだったらしいぜ」

「つまり彼女は……」
「ああ。殺されてから首を飛ばされ、串刺しにされたって報告だ」
 警部の声を聴いた会場は、静まり返っていた。

 前へ   目次   次へ