ラノベブログDA王

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この世界から先生は要らなくなりました。   第08章・第20話

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深淵なるモノのワルツ

 白鷺 佳斗瑠(しらさぎ カトル)と、白鷺 琉倶栖(しらさぎ ルクス)の双子姉妹は、ドームの中央に出現した白い城に降り立つ。

「本来なら、城はかなり小さめに作っているハズなのに、スケール感とか上手く調節してるわね」
 感心するユミアに、レノンとアリスも同調する。

「言われてみれば……どうやってんだ?」
「不思議なのですゥ」

「恐らく、人間の目の錯覚を利用した、イリュージョンハウスなどの原理を使っているのだろう」
「だろうって、アンタ自身もよく解かってないってコトよね?」
 久慈樹社長に、突っ込みを入れるユミア。

「言っただろう。今日のステージの演出は、2人に任せていると。社長とか総理とかが、全てを把握していなければならないなんて、日本人特有の愚かしい考えだよ」
 社長の論理的で、嫌味のたっぷりと塗られた答えに、栗毛の少女は顔をしかめた。

「さて、どうやら本来の主役である、2人の登場のようだね」

「うわあ、先生。急にステージが暗くなった!?」
 ドームの天井をクルクルと舞っていた赤子の天使たちが、空っ風に吹かれた葉っぱのように散り散りに飛び去って行く。

「見て下さい。ステージが、地獄みたいになっているのですゥ!」
 珍しく、命令的な言葉を使うアリス。

 真っ白な城の下にあるステージには、真っ赤なツタや黒い木々、グツグツと煮えたぎる毒沼などが出現していた。
城では、カトルとルクスが不安そうな表情を浮かべながら、互いに身を寄せ合い怯えている。

「こ、こりゃあまた、スゲェ演出だな」
「まるで、大作ファンタジー映画かゲームの中にでも、入り込んだ気分だぜ」
 揺らぐ赤い空気に覆われた観客席からも、感嘆の声が上がる。

「どうやらステージ演出の意図は、天使と悪魔ってところかしらね」
 ユミアが言った途端、ドームの天井に2つの巨大な顔が映った。

「うわあ、びっくりしたァ!」
「心臓が、止まるかと思ったのですゥ!」

 巨大なドームを半分づつ埋め尽くす、化け物じみた女性の顔。
長い頭髪は蠢(うごめ)く無数のヘビになっていて、瞳は黄色く瞳孔は猫のように細長い。

『もはや地上は、キサマら天使のモノでは無い』
『我ら魔族が、これより地上を支配するのだ』

 城を挟んで相対するように現れた2つの顔が、呪いのような言葉を紡ぎ出す。

「そんなコトは、させない!」
「地上は、善良なる人間たちのモノだ!」
 白き衣を纏い、白き翼を生やしたカトルとルクスが反論した。

『なれば地上は、我らのモノよ』
『何故なら人間に、善良なモノなどおらぬからな』

 地獄のようなステージに、黒く巨大な門が現れる。
『ギギギ』と不協和音が鳴り響き、中から2人の少女が現れた。

「アレが……レアラとピオラの人間体か!?」
 思わず口に出してしまう、ボク。

「どうやら、そのようね」
「さすがに髪の毛は、ヘビじゃないんだな」
「でも服に、大きなヘビが巻き付いてるのですゥ」

 地獄の門から現れた2人は、真っ白な長い髪に黄色い瞳をしていて、赤と黒を基調とした左右非対象のゴスロリ的な衣装を着ている。
所々、官能的にはだけた衣装には、赤と黒の巨大なヘビが巻き付いていた。

『見よ。今宵は新月じゃ』
『天使どもに我らの力、見せてやろうぞ』
 ゴスロリ衣装の大きく開いた背中から、黒い骨格に赤い皮膜の6枚羽根が大きく開く。

『深淵なるモノのワルツ』
『深淵なるモノのワルツ』
 レアラとピオラの声が、ピタリと重なった。

 軽快なピアノとアコースティックなメロディが流れ、新たなる身体を得た2人のAIが歌い始める。
サラマン・ドールの歌声は、不協和音も取り入れた複雑なモノになっていて、高度に洗練されていた。


「こ、これは……」
 形容の言葉が、思い浮かばないボク。

 会場に訪れたアイドルファンたちも、2人の悪魔的歌声に魅了されていた。

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