ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・28話

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乗組員(クルーメイト)の素性

「い、いま、なんて言いました!?」
 光弾の飛び交う中でボクは、ギムレットさんに問い直す。

「オイオイ、戦闘中だぜ」
「解ってます。でも今、プリズナーって!?」
 銃撃戦に集中しながらも、質問の答えを諦められないでいた。

「なんだい。プリズナーって名前に、聞き覚えでもあるのか?」
「は、はい。そうです!」

「ヤレヤレ……少しの間、目を閉じていな」
 黒人の大男は、身体の1部のパーツを取り外して、バリケードに向って投げる。
パーツが下降曲線を描き始めたのを見計らって、銃で狙撃した。

「うわッ!」
 咄嗟すぎて、目が閉じれない。

 パーツは爆弾のように破裂し、爆炎を被ったアーキテクターたちが、炎を纏いながらバリケードの向こうから炙(あぶ)り出される。
ボクたちは、それらをすべて撃破した。

「パーツを外して、大丈夫なんですか?」
「ただのエネルギーパックだ。今日中に補充できれば、問題ない」

「出来なかったら、どうなるんですか?」
「死ぬだけさ……」
 ギムレットさんは、いとも簡単に答える。

「それよりアンタ、プリズナーの野郎を知っているのか?」
 質問責めにされるのに嫌気が刺したのか、間髪入れずに質問された。

「ギムレットさんの言ってる人と同じかは解りませんが、ボクの艦の乗組員(クルーメイト)なんです」

「へえ。アンタ、艦長だったのかい?」
「あまり詳しくは言えませんが、そうです」
 バリケードを突破し、女性囚人棟にいよいよ進入する。

「アンタんトコのプリズナーってのは、アークテクターの相棒は居るのか?」
「居ますね。トゥランって、名前です」

「ヤレヤレ、なんてこった。太陽系ってヤツも、案外狭いのかも知れねえな」
「やはり、ウチのプリズナーは……?」

「ああ。オレが昔脱獄させてやった、冷凍睡眠者(コールドスリーパー)だぜ」
 横を走る男は、突如としてとんでもないコトを口走った。

「プ、プリズナーは、冷凍睡眠者だったんですか!?」
「アンタ、自分の艦の乗組員の素性も知らねェのか……オッと、新手だぜ?」

 通路の十字路に、アークテクターの大部隊が現れる。
何体かを撃ち抜いた後、左右の壁に隠れた。

「隠れられる壁があったのは幸運だが、こりゃマズイぜ」
「同志討ちは……」
「間に合わねェ。来るぜ!」

 年季の入ったアーキテクターたちの立てるガシャガシャと滑稽な足音は、ボクたちが隠れている壁のへこみに向って近づいてくる。

「ゲーのヤツが、本格的に指揮を執り始めたのかもな」
「ど、どうします?」
「また質問かよ。撃て、とにかく撃ちまくるしかねェ!」

 言われた通り、銃を乱射する。
反対側のくぼみでは、両腕に銃器を下げたギムレットさんも、弾を無造作にばら撒いていた。

 アーキテクターの大部隊の先頭は、銃撃によって倒れたが、後続が破壊された仲間の上を踏み絞め向って来る。

「ガアッ!?」
 黒人の大男は、左腕を狙撃され銃を落とした。

「ギムレットさん!?」
「バカ野郎、壁から顔出すんじゃねェ。死ぬぞ!」
 ギムレットさんの指示で、慌てて身体を引っ込める。

 けれども、銃を持ったアーキテクターの大部隊は、すぐそこまで来ていた。

「ゴメン、黒乃……ここまでか!」
 ボクは目を瞑(つむ)って、死を覚悟する。

「ゴメンなどと、軽々しく謝らないで貰いたいわね」
 何処かから、聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

「な……なんだ!?」
 目を開けると、目の前に来ていたアーキテクターたちが、後ろからの銃撃によって鉄屑(スクラップ)へと変えられている最中だった。

「久しぶりね、宇宙斗」
 黒いクワトロテールの女性が、ボクに話しかけて来る。

「でもまさか、貴方がこんなに大胆な行動に出るとは、思わなかったわ」
 ハッキングをしたのであろう、アーキテクターの部隊を従えた黒乃は、スクラップの山を蹴とばしながらボクの前に現れた。

「またキミを……失いたく無かったから……ね」
 気の抜けたボクの口が、勝手に動く。

 どうやらボクの本音は、そんなところだったみたいだ。

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