ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第48話

クリティカル・テック・ストライカー

「地球の破滅を目論む、ダーク・フォレスター。今度は、こっちから行くよ!」
 アイドルライブのステージで、戦闘員と戦う4人の少女たち。

「クリッター・ピンクの、ピンク・クリティカル・キックをお見舞いだァ。トウッ!」
 フリフリのスカートを大きく翻(ひるがえ)し、脚を高く上げて回し蹴りを入れる、ルミナ。
戦闘員は上半身と下半身に分断され、床に崩れて消滅した。

「流石は、切断王女(ギロチン・プリンセス)。情け容赦なく、残酷だぜ」
「で、でも、子供向け番組なんだよね?」
「実は設定年齢は、高いらしい。でも子供が間違って見て、泣き喚(わめ)くって話だぜ」

 原作アニメについて、ボクは詳しくは無かったものの、子供が見て泣く姿は容易に想像が付く。

「喰らいなさい、ダーク・フォレスター。グリーン・トルネード・アロー!」
 ジゼルが弓に複数の矢を番(つが)え、戦闘員に目掛けて放った。

「今度はドリルみてーな矢が、一斉に飛んでったぞ!」
「敵の身体、貫通しちゃってるし」
「これじゃ、どっちがヒロインだか判んないよ」

 原作を知らない観客の多くが、ボクと同じようにドン引きしていた。

「ボクだって、負けてられないね。イエロー・ローリング・サンダー!!!」
 クロルの重ねた拳に、電流がバチバチとスパークする。
電気を帯びた2つの拳が、戦闘員たちを次々にブッ飛ばして行った。

「まるでアニメみたいに、戦闘員が宙に飛んで行ってる」
「普通のヒロインのショーじゃ、お目にかかれない演出だな」
「でも戦闘員のお腹、穴が開いちゃってるケドね」

「ヤレヤレだよ。どうやら彼女たちの演出スタッフは、ずいぶんと悪ノリしているね」
 流石の久慈樹社長も、呆れ顔だ。

「あわわ、わたしも頑張らないとですゥ!」
 クリッター・ブルーのホタルが、背中から黒い甲羅を取って盾として左手に構え、突進する。

「えい、ブルー・パイル・ランサー!」
 甲羅に開いた6個の穴から、次々に杭(くい)が撃ち出されて、敵の身体を貫いた。

『グロロ、よくもオレさまの部下たちを、倒してくれたな。だがお前たちの命も、今日までだ』
 倒された戦闘員が消えると、ステージには肉食恐竜の身体にドラゴンの翼、獅子の前脚に人の頭部を持ったモンスターが現れる。

「スゲェ、デカいの出て来たァ!」
「一体どうやって、動かしてんだ?」
「あんなのと、戦うの?」

 恐竜映画に登場するティラノサウルスのように、全長10メートルはあろうかと思われるモンスター。

『我が暗黒火炎を、喰らえ!』
 人の頭部から、クリティカル・テック・ストライカーに向けて、暗黒の火炎を吐き出した。

「きゃあぁッ!」
「イヤァッ!」
 悲鳴を上げながらも、側転やバク転で炎をかわす少女たち。

「オオオッ。スカートの中は、ちゃんとパンツだ!」
「チョット、どこ見てんのよ!」
「イデデデデッ」

 モンスターは巨体を揺らしながら、黒炎のブレスを吐き散らした。
次第に追い詰められる、クリッターの4人の少女たち。

「こ、このままじゃ、行けない!」
「みんな、わたし達に勇気をちょうだい」
 跪(ひざまづ)いたクリッターピンクとグリーンが、会場に助けを求めた。

「ボ、ボクたち、このままじゃ負けちゃうんだ」
「お、お願いします、みんなの勇気ある声を、届けて」
 クリッターイエローと、ブルーも観客に願う。

「な、なに言ってんだ、アイツら?」
「ヒロインアニメの映画じゃ、定番の演出なんだがな……」
「まさかソレを、オレたちにヤレってのか!?」

 幼い女の子が集っているワケでもない観客席に、動揺が走った。

「クリッター……ホラ、みんなで叫んで。クリッター!」
「お願い、みんな……クリッター」

「ボクたちだけじゃない」
「み、みなさんも、クリッターなんです」

 クリッターこと、クリティカル・テック・ストライカーの4人の少女たちは、強引にステージを推し進める。

「オ、オレたちは、別にクリッターじゃないんだがな」
「胴体真っ二つにするヤツらの、仲間になんてなりたくねェよ」
 けれども会場の反応は、すこぶる悪かった。

 前へ   目次   次へ