ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第51話

事件性のある悲鳴

「さて、キミの生徒たちの学力テストは、半分を過ぎたところだ。つまり、ステージもあとそれだけの時間、残されているコトになる。悩ましい限りだよ」

 額(ひたい)に手を当て、苦悩する久慈樹社長。
ミニスター・コアの最後となる、ミニスターⅤ(フィフス)コアのステージが始まっていた。

「こ、今度のステージは、なんだかおどろおどろしい雰囲気だな!」
「ちょっと怖い。和風の、お化け屋敷みたいになっちゃってるよ」
「ヒロインショーの次は、ホラーかよ!」

 真っ暗闇に包まれた観客席から、不安の混じった声が聞こえる。

 紫色の光が僅かに落ちた薄暗いステージに、揺れる柳の木や雑草のシルエット。
大量の石の墓が観客席の真上に出現し、まるでどこかの霊園のように見えた。

「うわッ、頭の上に墓なんて出すなよ。縁起でもない」
「み、見て、ステージのガラスの塔。お墓に刺さってるヤツみたい になってる!」
「あ、ああ。卒塔婆(そとば)のコトだろ」

 観客の誰かが説明してくれた通り、生徒たちがテストを受けているガラスの塔の表面が、真黒な卒塔婆のようになっていた。
そこに、真っ赤な流れる血の文字が、浮かび上がる。

「『神於繰 魔恕瘤』……読み方わかんねェけど、かみおくり……マドル?」
「うわ、ステージにお化けがいるよ!」
 女性の事件性のある悲鳴が、ドームのあちこちから聞こえた。

 ボクも舞台裏からステージを確認すると、黒い外套(がいとう)を被った人影が立っている。

「あ、血文字が替わったよ」
「今度は、ええっと……伊鵞 兎愛香だって」
「いが トアカで、合ってるのか?」

 すると、薄っすらとしたライトが、外套を着た別の人影の上にも落ちた。

「お、また替わったぞ。渡邉 佐清禍……わたなべ サキカだろ」
「次は、嗅俱螺 墓鈴架……かぐら ハリカって読むのかな?」
「こんなの、完全に当て字だろ」

 観客たちがクイズのように、卒塔婆に書かれた血文字の名前を言い当てようとする。
墓場のステージに、4人の人影が立っていた。

『ゴォーーーーン』
 重く不気味な鐘の音が、ステージに響き渡る。

『カアァァーーーーッ!』
 ステージから黒い鳥の群れが、ドームの天蓋に向け飛び立って行った。

「うわあッ、ビックリしたァ!」
「アレって、本物のカラスじゃない?」
「お化け屋敷だって、こんな演出しないぞ」

 事件性のある悲鳴は数と音量を増し、女性たちは近くの男性に身を寄せる。
場合によっては、その逆もあった。

「ようこそ、皆さま。そんなに怖がらないでくれ給え……」
 最初にライトを浴びた人影が、1歩前に進みながら話し始める。

「吾輩の名前は、神於繰 魔恕瘤(かみおくり マドル)だ。まあ、気軽にマドルとでも呼んでくれ」
 マドルは語りかけながら、外套を脱ぎ捨てた。

「キャアァァーーーーッ!?」
「ガ、ガイコツゥ!?」
 悲鳴の事件性が、ドンドン上がって行く。

 外套の下は、青白く光るガイコツだった。

「フフ、驚いてくれたかな」
 ガイコツのマスクを外す、マドル。
薄い紫色のショートヘアの、凛とした女性の顔がそこにあった。

「察しの良い諸君は、すでにお気づきかも知れないね」
 ガイコツの描かれた、黒いスーツも脱ぎ去る少女。

「実は吾輩は、死んでいるんだ……」
 真っ白な血の気の無い肌のマドルが、真顔で言った。

「えッ……ウソ?」
「そ、そりゃウソに、決まってるだろ」
「ホラー映画によくある、演出さ」

 ボンヤリと光を放つ無数の墓の下で、観客たちも恐怖を感じている。

「生前の吾輩は、探偵だった。こう見えて、難事件をいくつも解決した名探偵だったのだよ。でも、ある館で起きた連続殺人事件の調査中に、ウカツにも犯人だろう人物に殺されてしまってね」

 そう語るマドルのいで立ちは、黒いマントを羽織り、頭には小さなシルクハットを乗せていた。
持ち手がカーブしたステッキを持ち、ワンピースのスカートの上に黒いコートを着ている。

「吾輩は、事件を解決できなかったのが心残りで、現世を彷徨(さまよ)っている。そこで、キミたちに提案だ。吾輩と共に、事件を解決してはくれないか?」
 殺された名探偵は、ニヤっと笑った。

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