ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第29話

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パソコンとスマホ

「お前にも解かるように言えばユミア、お前のパソコンでお金が増やせるんだ」
 少女のつぶらな瞳に映った、優しい兄が言った。

「お兄様にならイイけど、他の人には……」
「オレじゃ、トレードやマイニングの知識は無いからな。久慈樹に触ってもらうしか無いんだ」
「し、仕方ないな。少しだけだよ」

「そうか、アリガトな、ユミア!」
「ひゃああああ!?」
 倉崎 世叛は、妹を両腕で抱き上げる。

「お、お兄様、パンツ見えちゃう」
 頬を赤らめ、必至にスカートを押えるユミア。

「小学生の子供パンツになんか、興味無いよ」
 どこ吹く風の久慈樹が、キーボードをカチャカチャ鳴らしながら言った。

「お兄様、なんかコイツ、ヤなやつだよ」
「まあまあ。そう怒るなよ、ユミア」
 お怒りの妹をなだめる、兄。

「それより見てくれ、倉崎。この部屋のパソコンはどれも、かなりのモノだぞ」
「そうなのか?」

「天才プログラマーなのに、ホント気にしないんだな。弘法筆を選ばず……ってヤツか」
 久慈樹は、肩を竦める。

「それより株のトレードや、マイニングは出来そうか?」
「問題ないよ。こっちのパソコンなんか、サーバー用のCPUが乗っかってるしね。技術もさるコトながら、よくこれだけ高価なモノを組めたね」

「叔父さんが、デジタル家電やガジェットには目が無い人でな。他の家族からの理解が全く得られて無いらしく、ユミアには甘い様だ」
「娘2人と、奥さんから白い目で見られてるのか。なる程ねえ」

「だが、これで資金を増やせるな。このパソコン、何台か貸してくれないか?」
「い、いいケド、何台欲しい?」

「そうだな……」
 倉崎の視線が、久慈樹に向けられる。

「株のトレード用には、ゲーミング性能が高いこのパソコンでいいだろう」
「トレードに、ゲーミング性能なんて関係あるのか?」
「ディスプレイポートが多くあって、オンボードより描画も安定するからね」

「つまり、モニターを大量に接続するんだな」
「ああ、株のトレーダーがよくやってる、アレさ」

「だが、モニターが無いぞ」
「モニターなんて、ネットで探せば1万もせずにあるよ。ゲームをするワケじゃ無いから、描画性能なんて気にする必要も無いからね」

「ネットマネーの、マイニングの方はどうする?」
「倉崎、キミが借りたマンションの、電力事情次第さ」
「電力事情?」

「ああ。マイニング用のマシンを、常時稼働させて置く必要があるからね。電気代もかかるし、バランスを考えないとだな」

「常時稼働となると、2台が限界か?」
「そんなとことだろうね。夏は冷房代もバカにならないから、導入は秋以降の方がいいかも知れない」

「他に、必要そうなモノはあるか?」
「大いにあるね。スマホだよ」
「スマホなら、オレも持っているが?」

「この部屋に散乱しているのは、どれもキミのより高性能なスマホだよ。特に、カメラ性能が高い。キミの動画のクオリティも、上がるんじゃないかな」

「スマホを、動画の撮影用にするのか?」
「キミの使っている10年前のカメラより、よほど優秀さ。持ち運べるしね」

「なあ、ユミア。早速で悪いんだが、パソコンを3台とスマホ……を?」
 倉崎は、お姫様抱っこをしたままの妹に、目をやる。

「フッ、どうやら寝てしまったみたいだね。可愛いパンツが、丸見えだ」
 クスリと笑う、サラサラヘアの高校生。

「久慈樹……」
「何だい?」
「妹は、渡さんからな!」

「ヘ……イヤイヤイヤイヤ」
 その日、倉崎は妹をベットで寝かし付けると、久慈樹と協力してパソコン3台とスマホ2台を、自分のマンションへと運んだ。

 替わりに妹の枕元には、クマの大きなぬいぐるみが置かれる。
けれども、目を覚ました瀬堂 癒魅亜が、それを気にるコトは無かった。

「なる程な。ユークリッドの2人の天才高校生も、最初はそんな感じだったのか」
 巨大企業に変貌した、ユークリッド本社の地下駐車場。
ユミアの昔の話を聞き終えたボクは、改めて2人の凄さに感心する。

「ええ、そうよ。アイツの第一印象は、イヤなヤツだったわ」
 高校生となった瀬堂 癒魅亜は、恨めしそうに言った。

 

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